いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる   作:リーグロード

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ルプスレギナの1人旅 その5

 森からぞろぞろと現れる魔女教徒たち。その数は先程と比べものにならないほど多く、3~4倍近くにも達していた。そして、当然のようにその集団の中で唯一覆面を外している人物がいる。

 今度は若い男性のようだが、その狂気に満ちた目と雰囲気から、短い付き合いのルプスレギナですら、彼が何者かを一目で理解するほどだった。

 とはいえ、その顔には見覚えがないのだが……。

 

「おいっす!こうしてまた出会うだなんて、ストーカーとかマジでドン引きっす~!!」

 

「ふっふっふ、相も変わらずのそのふざけた態度、そしてワタクシの魔女からの授かりし寵愛である見えざる手を避けるなど――あ、あってはならないのデス!!ああぁぁぁ!!脳がぁぁぁ震えるぅぅぅ!!!!」

 

 冷静さを装っていたものの、ルプスレギナのふざけた挨拶によってその仮面はあっさりと剥がれ、内側に潜む狂気が顔を覗かせる。

 そして、彼女の期待通りの行動を示すようにぺテルギウスの背後から不可視の腕が飛び出す。それも1本や2本ではなく、数十本という数だ。

 

「それはっ!もう散々懲りたっすよ!!」

捕まるのは一度で十分だと言わんばかりに、ルプスレギナは再び見えざる手を滑らかな動きで搔い潜りながら、一直線にペテルギウスの懐へと駆け寄っていく。

 

「そうはさせないのデス!!」

 

 新たに作り出した見えない手を地面に叩きつけると、積もった大量の雪が壁のように舞い上がり、ルプスレギナとぺテルギウスの間に立ちはだかった。

 

「ちっ!流石に同じ手は通用しないっすか……」

 

「「「「────!!!」」」」

 

 足を止めたルプスレギナを狙うように、雪の壁の左右から魔女教徒らが襲い掛かってきた。

 

「よっ、ほっ、はっ!っと──」

 

 魔女教徒たちが振るうナイフを巧みに(かわ)し、時折襲いかかる見えない手に捕らわれないよう、ひたすら身を翻す。

 しかし、防御に徹しているわけではない。敵の隙を突き、自身の武器を豪快に振り回すだけで、近寄ってきた魔女教徒たちを次々と惨殺死体へと変えていく。

 

「う~ん、正直言って退屈っすね。そりゃ、楽なのは万々歳なんすけど、こうも楽しみもなくちゃ退屈になるっすよ」

 

 どれだけ殺しても命乞いどころか悲鳴すら上げない人形のような敵を相手に、ルプスレギナのモチベーションは下がっていた。

 それでも彼女の動きに支障はなく、むしろ視覚に頼らず見えざる手を避けることに慣れてきたのか、回避の動きは徐々に洗練されていき、紙一重とも言える最小限の動きへと変化していった。

 

「ぐぬぬぬぬ!!!お~の~れ~ぇ!!!我が寵愛を侮辱するばかりか、我が手足となる指先までもここまで殺してくれるとは~~~っっっ!!!」

 

 自らの頬の肉を抉り取る勢いで自傷をしつつ、ぺテルギウスが咆哮を上げる。

 それに合わせてぺテルギウスの背後から再び見えざる手が何十本と生えてルプスレギナに襲い掛かる。

 

「だ~か~ら~、そんなのいくら増やしたところで、もう二度と喰らってあげたりなんかしないっすよ!」

 

 上空に展開された無数の見えない手の攻撃も、ルプスレギナの優れた五感には全て見透かされ、その隙間を巧みに掻い潜っていく。

 それはもはや単なる作業と言えるほどで、同じ敵と何度も戦い続けたからこそ培われた熟練の技だった。

 しかし、それが決定的な油断を招く結果に繋がることもある。

 

「かかったのデス!」

 

「──やばぁ!?」

 

 空から迫る最後の見えざる手を避けたのと同時に、足首をナニカに捕まれる感触を感じた。

 完全に避けきったと油断したのが仇となったのか、最後の最後で不可視の腕の一本がルプスレギナを見事に捕まえたのだった。

 

「アナタがワタシの見えざる手を見て避けているのではなく、それ以外の方法で避けているのはもうバレバレなのデス!!だから、上の方に意識を集中させつつ、地面に伏せておいた見えざる手の方へと誘導したのデス!!」

 

「……意外と狂っている風に見えて、冷静だったんすね」

 

 まさか罠が仕掛けられているとは思わず、完全に引っかかってしまったことに焦りながらも、拘束されているのが腕一本だけならばと、武器を振りかぶり切断しようとする。

 だが、それすらも読まれていたのか、別の方向で待機していた魔女教徒たちが魔法でいくつもの火球を作り出し、それをルプスレギナに向けて放った。

 

「「「「────!!」」」」

 

 群れなければ何もできない雑魚だと思い込んでいたため、ペテルギウス以外の魔女教徒たちの脅威を軽視してしまった失策。火球はすでに目前に迫り、避ける余裕は残されていなかった。

 

「うぇ!?あれはちょっとヤバいっす!!」

 

 目前に迫る火球に焦りを覚えるが、片足を見えざる手で拘束されているため、咄嗟に飛び退いて逃げることができない。火球はルプスレギナに直撃し、複数の火球が一気に爆発を起こした。それはまるで軍用の爆弾が起爆したかのような規模の爆発で、常人どころか魔獣の類であっても生き残ることはできないと確信できる。

 

「油断!怠慢!即ち怠惰!アナタは我が見えざる手を躱す手立てを持っていた。っが、しかし!それ故にアナタは見えざる手を全て避けられると過信してしまったのデス!!その油断が、傲慢が!アナタを殺すのデス!!!」

 

 これまで散々おちょくられてきた鬱憤晴らしか、それとも生来の性格によるものか、おそらく後者だろうが、悪意に満ちた笑い声を上げながら、ペテルギウスは立ち込める爆炎をじっと見据えている。おそらく、あの爆炎が消えた後にルプスレギナの死体から福音書を回収するつもりなのだろう。

 

 だが、その目論見は爆炎から現れた1つの影によって、木っ端みじんに砕かれてしまう。

 

「どっせぇーい!!」

 

「なっ──!?ぐべぇっ!!?」

 

 爆炎が渦巻く中から現れた影の正体、それはルプスレギナだった。それも、薄着の傭兵姿ではなく、ナザリック地下大墳墓の戦闘メイドの装いに身を包み、彼女は不意打ちによる奇襲を仕掛け、巨大な武器でペテルギウスの頭を一撃で粉砕した。

 あまりにも唐突な出来事に、感情を持たない人形のような魔女教徒たちも、その場で呆然と立ち尽くしていた。

 

「あっれ~?いいんすか、そんな悠長な反応して?」

 

 ペテルギウスの頭を潰して武器を引き抜いたルプスレギナは、それを肩に担ぎながら挑発的な言葉を投げかけた。その言葉に我を取り戻した魔女教徒たちは、次々と武器を手にして飛び掛かってくる。

 だが、それこそがルプスレギナの狙いだった。一斉に襲い掛かってくる魔女教徒たちを見据えた彼女は、肩に担いだ武器を力任せに振り回すだけで、襲い掛かってきた魔女教徒たちはミンチとなって吹き飛んでいった。

 

 厄介な見えざる手で襲ってくるぺテルギウスがいなくなったことで、後は有象無象の雑魚ばかり──っと、ルプスレギナはそう短絡的な考えをしてはなかった。

 

「っと!やっぱし、そう上手くはいかないもんっすね」

 

 残りの魔女教徒たちを殲滅している最中、ルプスレギナの五感が見えないナニカの存在を察知し、とっさにその場を離れた。

 

「ああぁぁぁ、ありえないぃぃぃ!!指先が4つも失われるなどぉぉぉ!!!これは我が身の怠惰のせい?それとも、至高なる魔女に歯向かう愚物のせいなのデスか!?お答えください魔女よぉぉぉ!!!」

 

 先程まで覆面を被っていた魔女教徒の1人が覆面をはぎ取りながら、涙を流しながら狂気の籠った叫び声を上げる。

 覆面の下から除く顔はダンディーなおじさんといった風貌で、やはりぺテルギウスの乗り移る対象に年齢や性別は関係ないのだろうと、ルプスレギナはそう判断した。

 

「うっさいっすね~!そもそも、至高なる存在はこの世で41人の御方のみ、それ以外の有象無象が至高を語るなんて、不敬極まりないわ」

 

ルプスレギナの挑発的な言葉に、ぺテルギウスは感情が一周回って冷静さを取り戻した。

 

「……ふぅ~。しかし、アナタのその服装、なるほどメイドデスか……。大方、メイザース辺境伯の隠し玉といったところデスかな?」

 

「ぶっぶ~!残念ハズレっすよぉ~!!」

 

 的外れなペテルギウスの推理に、ルプスレギナは嘲笑するような表情を浮かべながら、腕をバツ印にクロスさせた。

 

「そうデスか。デスがその服、なるほどなるほど。あの爆炎の中でなぜ五体満足に生きていたのか不思議でしたが~、その服が守ったのデスね!素晴らしいぃぃぃ!美醜だけに囚われただけの服かと思いましたが、こうして装着者を守るその勤勉さ!!その身に纏う服すらも勤勉に己の役割を果たしているというのに、我が身のなんたる怠惰なことか!!!ああぁぁぁ!!!魔女よ!魔女よぉぉぉ!!脳が──震え……るぅぅぅ~~!!!!」

 

「おっ!この服の良さが分かるなんて見る目あるっすね。でも、だからって手加減はしないっすよ!」

 

 ペテルギウスの叫びと共に、再び無数の見えざる手がルプスレギナを襲いかかる。

 しかし、ルプスレギナもまた、その手に持つ巨大な武器で襲い来る見えざる手を迎撃していく。

 

「今度こそ、もうその見えないナニカには捕まらないっすよ!!」

 

 そう軽口を叩きつつも、この場にいる魔女教徒の中で何人がペテルギウスの次の憑代(よりしろ)になるか分からない以上、油断はできない。

 むしろ、これ以上戦闘を続けるのは危険と判断し、逃げる段取りを考えている。

 

「逃がさない。逃がすわけがないのデスよ!!」

 

 ルプスレギナがこの場から身を引こうとしているのを感じ取ったのか、ぺテルギウスは憤怒の形相で見えざる手を周囲に解き放つ。

 それは的確にルプスレギナの退路を塞ぐ一手であり、その包囲網を無理に突破することは不可能だと判断し、ルプスレギナは舌打ちする。

 

「さあ、これで逃げ場は失ったのデス!アナタのその勤勉さも我が見えざる手とワタシの勤勉さによって怠惰となる!!あっひゃっひゃっ!……嗚呼、嬉しいデスね!!」

 

 両手を広げてルプスレギナを見つめ、ペテルギウスがケタケタと哄笑を上げる。

 

 以前として吹雪が吹き荒れ、生き物が生きることを許さぬ極寒の大地の上でルプスレギナ対魔女教徒の闘いは続いている。

 一体何人殺したのか、ルプスレギナの手に持つ武器に付着する真っ赤な血が寒さで凍って固まり、その切れ味を落としていく。

 更に、ぺテルギウスが生み出す見えざる手の量が増えていっているせいで、完全に避けきるのも難しくなっており、その美しい肌と創造主から渡されたメイド服が傷物にされていく。

 

「ちっ!至高なる御方から授けられた装備によくもっ!!!」

 

 自身に刻まれた傷以上に、至高の御方から賜ったメイド服を傷つけられたことに、本能的な怒りが沸き起こった。だが、それでも無謀な攻撃を選ぶほど愚かではない。

 見えざる手が唯一包囲していないぺテルギウスの上空を飛び越えて、戦う戦場を集団戦闘には向いていない森へと変更した。

 

「ああ、もう!いい加減にしつこいってのよ!!」

 

 普段の仮面を脱ぎ捨て、本性を曝け出しながら、迫り来る魔女教徒と見えざる手を捌きつつ、森の木々の上を飛び移りながら進む。

 一見するとルプスレギナが一方的に狩っているようにも見えるが、実際は彼女もまた追い詰められていた。体力も魔力も消耗していっており、このまま長引けば敗北が濃厚になりつつある。

 集団戦闘の連携を封じるため森に戻ったにもかかわらず、四方八方から次々と魔女教徒が現れる。木々に守られて袋叩きは避けられるものの、次々と襲い来る攻撃が厄介だ。特に、仲間の犠牲を厭わない見えざる手の特攻が手強い。

 

「ちびちびと殲滅してたんじゃ、こっちの魔力の方が尽きちゃいそうね。だったら、消費覚悟で一発デカイのぶち込んであげる!!!」

 

 森の中の少し開けた場所に降り立つと、魔女教徒らは恐れもなく、警戒すら抱かぬ様子でルプスレギナに飛び掛かってくる。

 

「逃げたり怖がったりしないってのは利点かもだけど。その反面、罠とかこういった場合の対策が疎かになるって理解していない時点で三流以下よ」

 

 ルプスレギナが手に持つ武器を地面に突き刺した。

 それはまるで墓標のように、これから起きることを予期した死への秒読みだ。

 

「じゃあね、せいぜい苦しんで死になさい」

 

炎柱(フレイム・ピラー)

 

 武器を手放した空いた手を掲げると、空中に球体状の魔法陣が現れた。それに魔女教徒らは驚いたが、反応するには遅すぎた。

 魔法陣が赤く輝いた瞬間、その中央から紅蓮の炎が螺旋状の柱となって放たれ、ルプスレギナに襲い掛かった魔女教徒たちをすべて包み込み、灰へと変えた。

 

「むむむうぅ!?何デスか、今の魔法は?ゴーアによるもの?しかし、不思議不可思議!?ワタシも長年魔法使いに精霊使いと相手にしたことがありますが、そのどれとも違う!!」

 

 後方で見えざる手を伸ばしていたぺテルギウスは今の魔法に巻き込まれずにいたようだが、それでもルプスレギナが使った魔法の異質さに驚きを隠せない。

 それも仕方のないこと、あれはこの世界ではなく異世界、それもユグドラシルというゲームの中の魔法なのだから。

 一目見ただけでそれを自分たちの使う魔法とは別物だと見抜いたぺテルギウスの観察眼は、やはり侮れないものがある。

 しかし、なんにせよ、今の魔法で魔女教徒の7割近くが焼失した。

 

「今の中にぺテルギウスの憑代が沢山いたのなら万々歳なのだけれども、流石にそんな馬鹿な真似はしていないでしょうね」

 

 現在のペテルギウスの憑代である男も、覆面をしていた時には戦闘中に殺されない程度の距離を保っていたように思える。だが、もし憑代がすべての魔女教徒だとしたら、ペテルギウスを完全に殺し尽くすのは至難の業だろう。

 しかし、それはないだろうとルプスレギナは推測していた。

 

 その理由として、ペテルギウスが頻繁に口にしていた『指先』という言葉が挙げられる。おそらくペテルギウスの憑代は両手の指先に関連する10人、または足の指を含めた20人の可能性も考えられるが、それほど多くはないだろうと推測される。

 もう一つの理由として、ペテルギウスが自己紹介の際に口にした『怠惰担当』という言葉。自身の上司ともいえる存在のデミウルゴスの配下には、七つの大罪をモチーフに作られた悪魔がいることを知っている。

 これらを踏まえると、その大罪に関する担当者が7人存在し、その上にデミウルゴスのように7人を統括する存在、つまり魔女がいるのではないかと推測される。

 要するに、ペテルギウスは幹部のような立場であり、ボスというわけではないため、魔女教徒全員を支配しているわけではないから、全員が憑代であるとは考えにくいだろう。

 

「なんにせよ、これで逃げることが出来そうだけれども。下手に逃げて減らした憑代を増やされるのも不味いわよね」

 

 少し前までは逃げることを考慮して戦っていたが、憑代が10人いたとして、既に4人を倒している。残りは6人とほぼ半数に減らしたものの、ここで退いて再び対峙する際に憑代の数を戻されてしまうと、こちらの情報がいくつか知られている分、より苦戦を強いられるのは確実だ。

 それに、これで急いでアインズの元に戻るという目的とも一致した為、ルプスレギナは戦闘を続行する決意を固めた。

 

「いいわ!ここで全員殺し尽くしてあげる!!さあ、せめて1度くらいは悲鳴ぐらい上げなさい!!」

 

「悲鳴?誰が?何故に?ワタシが上げるは魔女への賛美と我が身の勤勉さを示す声だけデス!!怠惰に生きるアナタ達とは違うのデス!!!」

 

 飛び掛かるように襲い掛かる魔女教徒らを、ルプスレギナは手にした武器を再び取り回しつつ迎え撃つ。

 こうして、両者の闘いは激化の一途を辿っていくのだった。

 




次回は0時に投稿します。

4章でのスバル視点外の放送

  • エミリアの試練
  • ラムの告白
  • ガーフィールとエルザのバトル
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