いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる   作:リーグロード

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無意味な怒り

 

「死に戻り?……なんだそれは?」

 

 アインズの口にした死に戻りという言葉に疑問を口にするダクネス。

 その疑問はタイムリープ等のSF知識を持たない異世界組も同じ思いを抱いたのだろう、皆が皆アインズに説明を求めるような視線を向ける。

 

「死に戻りとは、その名の通り死をトリガーに死ぬ直前、あるいはそれより以前の過去に巻き戻る能力のことだ」

 

「っ!?そ、そんな能力が存在するというのか!」

 

「私も架空の能力だとばかり認識していたが、まさかこの目で確認する日が来ようとは……」

 

「しかし、だとするとスバルはかなり強力な能力を持っているということになりますね」

 

 アインズの言葉にダクネスとめぐみんが驚愕を露わにする。

 

「けれど、めぐみんの言う通り、スバルも異世界へ来た際にチートをゲットしたみたいだし、これなら何度殺されても安心ね!」

 

 楽観的な考えのアクアはスバルが本当の意味で死ぬことはないと気楽そうに言う。

 しかし、それを否定するようにターニャが立ち上がる。

 

「貴様、それは本気で言っているのか?」

 

「へぇ?」

 

「スクリーンを見てみろ」

 

 ターニャに指摘されたアクアがスクリーンを目をやると、そこには酷い顔で膝から崩れ落ちたスバルの姿が映し出されていた。

 それから果物屋の店主に介抱され、日陰で惨めに蹲るスバル。

 ぶつぶつと殺される前の言い訳を呟き続ける今のスバルの精神状態は、とても正常であるとは思えない。

 

「いくら死んでも巻き戻るとはいえ、殺された記憶は奴の中で残り続ける」

 

続けてアインズもアクアの楽観的な考えに否定を述べる。

 

「ターニャの言う通りだ。死ぬ直前の痛みや恐怖は非常に記憶に残りやすい。私も時に死は慈悲である。そう痛感するような場面には何度か遭遇したことがある」

 

(主に、ウチのナザリックに侵入してきた奴らのことなんだけどね……)

 

「うっ、じゃ……じゃあ、スバルが可哀想過ぎるじゃない!!」

 

 スバルが味わった恐怖を想像したのか、アクアが顔を青くする。

 そしてそれは、アクアだけでなくカズマ達やヴィーシャ達も同じで顔を青くしていた。

 

 こうして映像の中で憔悴しているスバルの姿は見ていてとても痛々しい。

 どうにかしてあげたい。助けてやりたい。傍にいて支えてあげたい。そう思わせるだけの悲壮感が今のスバルにはあったのだ。

 

 やがて色々諦めたのだろう、前回とは逆に盗品蔵の方ではなく、その反対の道へ一歩進もうと立ち上がった瞬間だった。

 向こうの通りから人混みの中であろうと目立つ銀髪が目に飛び込んできた。

 

『ちょ、待って……待ってくれ……っ。頼む、待って……』

 

 迷子の子供が親を見つけたかのように必死になって追いすがるスバルは、遠ざかるエミリアの耳に届かせる思いで彼女の名を叫んだ。

 

『待ってくれ。──サテラ!』

 

 そこでようやくエミリアの足は止まった。

 だが、同時に周りの群衆の動きまで止まったのにスバルは気づいていなかった。

 

「なるほど、これは厄介そうな事態になりそうだ」

 

「そうだな、恐らく一悶着はありそうだ」

 

 周囲の状況を訝しんだターニャが呟くと、同じ思いだったのかアインズもそれに同意する。

 

『あなた……どういうつもり──?』

 

 振り返ったエミリアの瞳には確かな怒りが宿っていた。

 

『誰だか知らないけど、人を『嫉妬の魔女』の名前で呼んで、どういうつもりなの!?』

 

「嫉妬の魔女?なんとも物騒な名前だな」

 

「でも、そう名乗ったのはエミリアさんですよね?」

 

 偽名を名乗った本人がその偽名に対して怒りを露にする。

 何とも奇妙な状況にヴィーシャが疑問を口にする。

 

「大方、エミリアのことだ。誰もが恐れるような存在の名を名乗って遠回しにスバルを遠ざけたかったのだろう。もっとも、その名をスバルが知らなかったというのは想定外だったのだろうが」

 

 ターニャの説明になるほどと納得をするヴィーシャ。

 

『──用がないなら行くわ。私も暇じゃないの』

 

 言い淀むスバルに興味をなくしたのか、エミリアは踵を返して立ち去ろうとする。

 その瞬間を狙ってフェルトが徽章を盗んでいった。

 

『やられたっ。このための足止め……あなたもグル!?』

 

 完全にとばっちりだが、状況的にはそう見えなくもない。

 エミリアはスバルに敵意を剥き出しに睨み付け、そのまま徽章を盗んだフェルトを追いかけていった。

 

 後に残されたスバルは目まぐるしく変化する現状に混乱しながらも、この異世界で唯一の心の拠り所であるエミリアの誤解を解くために追い掛ける。

 しかし結局、動き出すのが遅かった為にスバルは2人の姿を見失ってしまう。

 

『誰かもっと、俺に優しくしろよ! 何のための異世界召喚だよ!』

 

「スバル……、お前本当に異世界で大変な思いしてたんだな」

 

 以前、一緒に遅刻した日に屋上で自分達の異世界での境遇を話し合った際に否定したカズマだったが、今こうして見せられるスバルの境遇に目の端から涙が零れそうになっていた。

 

『いい加減にしろよ! 性懲りもないにもほどがあんだろうが!』

 

 本日3度目のチンピラ組との遭遇に、スバルは苛立った声でチンピラ達を怒鳴りつける。

 

『その態度が気に入らねえな。命令すんのがどっち側か、わかってねえよ』

 

『三対一で無様に負けておいて、どの面下げて大口叩くんだ、お前ら……負け犬でももうちょっと申し訳なさそうに遠吠えするわ』

 

「本当よね。あんなにカッコ悪く負けた癖に、また性懲りもなくスバルに挑むだなんて」

 

「いや、多分そうじゃないんじゃないか?アインズが言ったように、スバルの能力が死に戻りだとすれば、死んで過去に巻き戻った結果、あの路地での喧嘩もなかったことになる。だからあのチンピラ達もそれを覚えていないのだろう」

 

 スバルの言葉に同意するアクアだが、ダクネスの説明に「あ、そっか!」と納得する。

 つまりはあのチンピラ達は、スバルに負けたという記憶を持っていないのだ。だからこそ、再びスバルに喧嘩を売ったのだろう。

 そんなチンピラ達にスバルは一度勝ったこともそうだが、死んだことによる体験がチンピラ達の恐喝に恐怖する感情が薄れていた。

 

『そーら、取ってこーい!!』

 

 無駄な戦闘を避けるべく、チンピラ達が狙っている獲物であろうビニール袋を遠くの方へ投げ捨てて逃走を図る。

 案の定、そちらに目を奪われたチンピラ達の隙を搔い潜って、スバルが猛ダッシュする。

 駆け巡る様々な自身に起きた謎を考えながら、大通りへ出ようと足を踏み出した途端、ぐらりと体が揺れて地面に崩れ落ちる。

 

『あれ、おかしいな……』

 

 違和感の原因を探ろうと自分の身体を見てみれば、腰の上に突き刺されたナイフが目に入った。

 それを認識した瞬間、堪え難い激痛と熱さがスバルを襲い始める。

 

『ごぁっ……がっ……』

 

 誰か助けを……、そう叫びだそうとするよりも先にスバルの背中にもう一度ナイフが突き刺さる。

 

「ひ、酷すぎるだろ……」

 

「あのクソチンピラ共!私があの場にいたのならば、ギタギタのボコボコにしてやるというのに!!!」

 

 あまりにも悲惨な状況に、カズマは口を押さえながら絶句し、めぐみんがその瞳を紅く輝かせて怒りに震える。

 周りの者も同じ思いなのだろう。あのダクネスですら興奮せずに悲痛な顔で画面に映るスバルを見つめている。

 

 やがて、チンピラ達のモメる声もだんだんと遠くなっていき、ナツキ・スバルは三度、命を落とした。

 

「っく!」

 

「ちょっ!?カズマ──!!」

 

 スバルが三度死んだ瞬間、カズマは堪え切れずに立ち上がる。

 めぐみんが呼び止めるのも無視して、そのまま席から離れようとするカズマにアルベドが座ったまま鋭い眼差しを送る。

 

「カズマ、あなたはそこまで馬鹿ではないと思っていたけど、私の過大評価だったみたいね?」

 

 ゆらりとアルベドから漏れ出る殺気に、カズマは肩をビクッと跳ね上がらせる。

 それから、引きつった顔を浮かべながら振り返るとアルベドは無感情な表情でカズマを見ていた。

 

「そ、そりゃ、俺も馬鹿な真似をしてるって自覚はあるよ!でも、あんなの見せられて何も行動しない訳にはいかないだろ!?」

 

「そうよ!カズマの言う通りよ!!私も女神として、あんなの見せられて黙ってられないわ!」

 

 カズマに便乗するようにアクアも抗議の声を上げる。

 しかし、アルベドは尚も冷たい視線を送るばかりだ。

 まさに一触即発のそんな雰囲気を壊すようにアインズがアルベドの肩を叩く。

 

「よせ、アルベド。それにカズマにアクアも落ち着け。学友であるスバルの惨状に義憤に駆られる気持ちは分かるが、これはスバルの今までの人生を映像にしたもの。つまりは過去の記録だ。ここを無理に出たとしても、スバルの今までの運命を変えることは出来ない」

 

「それは……」

 

 アルベドはアインズの言葉に渋々と引き下がり、カズマとアクアもアインズの言葉を聞いて悔しそうな表情を浮かべる。

 

「で、でもさ、アインズならなんとか出来るじゃないか?ほら、物凄い魔法とか伝説級のアイテムとかでさ!!」

 

「不可能だな。私の魔法に時を止める効果を持つものは存在するが、過去を改変するような魔法は存在しない。ただ、記憶を弄る魔法はあるから、それを使ってスバルの辛い記憶を消去するという手は使えるが……」

 

「それは、ちょっと違うっていうか……」

 

 アインズの言葉にカズマ達は肩を落としながら拳を握る。

 

「た、ターニャは!?ターニャはなんかこう凄い魔法とかチート能力とかないのかよ?」

 

「ないな。この中で最も何とかできそうなアインズ君が不可能と断言しているのだ、諦めるしかあるまい」

 

「諦めるしかって……、スバルが、スバルの奴があんな目にあって仕方ないとかで済ますのかよ!?」

 

「ならどうするというのだ?そもそも、この部屋から出られない時点で、我々に何か出来るわけがなかろう」

 

「出られないって?そんなの普通に扉から出ていけば……、あれ?」

 

 ターニャの指摘に、カズマは部屋を見渡す。

 そこで、ようやくこの部屋には外に繋がるであろう扉の類が存在しないことに気が付く。

 

「ちょ、これって俺達マジで閉じ込められてんじゃねえか!?」

 

「まさか、今頃気が付いたのか?」

 

 馬鹿を見るような目でターニャがカズマを見る。

 その目に宿る感情は、もはや呆れを通り越して哀れみの感情に変わっていた。

 

「し、仕方ないだろ!!急にこんな場所に転移させられて動揺してたんだから!!」

 

「だからこそだろう。見知らぬ場所に飛ばされたのならば、まずは周囲の警戒は最優先だ」

 

「っぐ!あ、アインズは気づいていたか?」

 

「まあ、私はアンデッドだからな。暗闇の中でも昼間同然に見えるゆえ、この暗闇でも然程注意せずとも、ある程度把握できている」

 

「そ、そっか……。ならアクアは!?お前も気付いてなかったよな?」

 

「いや、気付いてたけれど?私にはアンデッドよりも優れた神の目を持っているのよ。普通に部屋をぐる~っと見渡して扉がないことに気付かないわけないじゃない!」

 

「えっ、じゃあもしかして気付いてなかったの俺だけ……?」

 

 アクアの指摘に呆然とするカズマ。

 

「安心してください、カズマ。気付かなかったのはカズマ1人だけではありませんよ。ねえ、ダクネス?」

 

「う、うむ……、私もこの薄暗い部屋に飛ばされて一体どんな拷問や屈辱的な責め苦を与えられるのか楽し……覚悟していたからな。気が付くのが少々遅れてしまった」

 

「え~、俺こいつと同レベルってことかよ……。つか、アクアが俺よりも先に気付いてたっていう事実がショックなんだが……」

 

「はうっ!そんな不快さを混ぜた目で見るだなんて……!!!」

 

「ちょっと、私がカズマよりも気がついてて、どうしてショックなのよ!!?」

 

 凄く嫌そうな顔でアクアとダクネスを見るカズマ。

 そんなカズマにダクネスはモジモジとしながら頬を赤らめている。

 

「っていうか、扉がないって地味にやばいだろ!?」

 

「落ち着かんか、カズマ」

 

「いや、逆になんでターニャはそんな落ち着いてられんだよ!?ひょっとしたら、このまま一生ここに閉じ込められる可能性だってあんだぞ!?」

 

「だとすれば、ここで我々にこんな悪趣味な映像を見せる必要性はないだろう。それに、そう焦らずとも、恐らくは問題はない」

 

「問題はないって、何を根拠に……?」

 

 ターニャの落ち着いた態度に、カズマは訝しみながら問いかける。

 

「ここで1つ確認しておこう。我々は今朝リビングで例の謎のボタンを発見し、アインズ君から連絡を受けて急いで学校へ向かった。その際に朝食を取らなかったが、今現在で空腹を感じる者はいるかね?」

 

「「「「…………」」」」

 

 ターニャの質問にヴィーシャ達は肯定せず、首を横に振るだけだった。

 

「カズマ達にも聞いておくが、お前達はどうなんだ?」

 

「確かに、俺らも同じような状況で朝飯を食う前にこの馬鹿2人が押したけど、確かに空腹は感じてないな?」

 

「そうですね!あと馬鹿とは誰のことですか?」

 

「私もお腹は減ってないわ!あと、私は馬鹿じゃないから!!」

 

「私もだ!ついでに私にも罵倒攻めを……!!」

 

 少し余計な言葉を付け足されたが、どうやらカズマ達も同様に特に空腹などは感じていなかった。

 

「既に私の体感時間的に、この部屋に来て1時間近くの時間が経過している。個人だけならともかく、この人数で朝食を抜いているにも関わらず、誰一人として空腹を感じていないのは不自然だ」

 

「確かに、少佐の言う通りですね」

 

「考えてみれば、セレブリャコーフ中尉が朝食を抜いて、鑑賞中に腹の音を1度も鳴らさないのは不自然だよな」

 

「それもそうだな」

 

「だな!」

 

「も、もう~!皆さ~ん!!」

 

 皆のからかいの言葉に、顔を赤くしたヴィーシャが声を上げる。

 緊張していた空気が今のやり取りで若干和らいだのを感じながら、ターニャはゴホン!と咳払いで注目を戻して推測を続ける。

 

「恐らくは、我々をこの部屋に転移させた何者かが、途中離脱をさせないための処置だろう。だとするならば、他にも可及的速やかにこの部屋から出る用事、例えばトイレなどの尿意などが催すこともない筈だ」

 

 ターニャの説明にカズマ達も納得して頷く。

 そして、それを聞いたアインズは険しい表情を浮かべる。

 

「なるほど、生理的欲求のないアンデッドである私では気がつかない点だな」

 

「いや、それはしょうがないだろう。それに我々人間では気がつかない点も、アンデッドであるアインズ君なら気が付く可能性もある。ところで、アインズ君はこの部屋から他に何か異常を感じたり、あるいは我々のこの現象に心当たりはないか?」

 

「ふむ、今のところ異常を感じたりはないな。だが、ターニャが気が付いた異変に対する心当たりなら1つある。これは私の考えになるのだが、おそらくこの部屋には維持する指輪(リング・オブ・サステナンス)と同じ効果を持つ魔法、あるいはアイテムによって中にいる者の疲労・睡眠・食事が無効となっているのだろう」

 

「リング・オブ・サステナンス?なんだそれは?」

 

「さっきも言ったように、疲労・睡眠・食事の3つのデバフとなる状態を無効化する指輪だ。それを装着すれば装備している間は文字通り、疲労困憊や睡眠不足に空腹といった状態異常にはならない優れものだ」

 

「ほぉ、そのような代物があるとは。是非とも欲しいところだが、少々本題からズレてきてしまっているな」

 

「そうだな、つまり今現在、この部屋には我々の魔力を封じる効果のほかに、維持する指輪(リング・オブ・サステナンス)と同等の効果が発動されていることになる」

 

「やはり、未知の敵の目的は我々にスバルの人生を鑑賞させることだろうか?」

 

「現状ではそれしか思い当たらないな」

 

 ターニャとアインズは互いに意見を交換し、推測を積み重ねる。

 

「っというわけだ、カズマ。今の状況じゃ、我々にはどうすることもできない。ここは辛いかもしれないが、スバルがこの窮地をどう切り抜けるか、それを見守ることとしよう……」

 

「……っ、そうだな。悪いアインズ、ちょっと落ち着いたわ」

 

 カズマは冷静さを取り戻すと、席へと戻り画面の中で自分の能力に憶測を立てているスバルを見守る。

 

「……頑張れよ、スバル」

 




日刊ランキング初の1位に歓喜!!!
過去作で2位止まりだったので、滅茶苦茶嬉しい!!!
やはり、毎日投稿は強い!!!

これからも高評価と感想を待ってます!!!

4章でのスバル視点外の放送

  • エミリアの試練
  • ラムの告白
  • ガーフィールとエルザのバトル
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