いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる 作:リーグロード
聖域……ロズワール達が避難した場所の手掛かりを求めてスバルはふらりと廊下を彷徨い歩く。傍から見れば無計画、その理由を聞いてもなんとなくという当てのない行動なのだが……。
『よぉ、ベア子。久しぶりだな』
『──屋敷が騒がしいと思っていたら、戻ってきていたのかしら』
「相変わらずというか、これは勘が鋭いというだけで片付けていいのか?」
「死に戻りや魔女との関係以外にも、スバル自身ですら分かっていない謎が多いからな。きっと、この扉渡りという魔法を破れているのも、スバルの体に秘められた謎の一部が原因だろうな」
一発でベアトリスの扉渡りを破ってみせたスバルの勘の良さに、ターニャは疑問を抱き、アインズはこれまでの事を総合して考えた結果の意見を述べる。
そんなアインズに、周囲の者らは流石はアインズ様!といった視線を向ける。
「やっぱし、アインズって頭いいんだな」
「ふっ、流石は我がライバルと褒めておきましょうか」
「ま、デミウルゴスや他の連中も主と認めてるんだ。当然といえば当然だろうな」
しかも、NPCだけでなく他のメンバーも程度の差こそあれど似たような視線を投げかけてくるため、アインズはたまらずわざとらしく咳払いをし、鑑賞に戻るよう促した。
(はぁ、勘弁してくれ。NPCだけじゃなくて、他の連中まで俺が知恵者であるデミウルゴスよりも賢いなんて勘違いされたら、無い筈の胃が限界を迎えちゃうよ……)
誰にも見られていないタイミングで、胃に当たる部分を優しく手で押さえて溜息を吐く。
『皆がお前の心配してたんだぞ。後でいいから、ちゃんと謝っておけよ』
『謝る?ベティが? 誰にどうして、そんなことする必要があるのかさっぱり見当もつかないのよ』
「なんつう態度だ!!生意気なクソガキっつうのがピッタリなロリッ子だな!!」
「カズマ、カズマ。そこら辺にした方が良さそうですよ」
「ん?なんでだよ?」
「だって、ほらあっち……」
めぐみんが指さす方向、そちらに顔を動かしてみれば、ジッとこっちを見ている普段通りの無機質なマーレの瞳から、カズマへの敵意や怒りを感じる。
「っていうか、無言の圧が超怖ええぇぇぇ!!」
「ベアトリスはマーレの友達なんですから、普段ああゆう大人しい子が怒ると怖いので、あまり滅多な事を口走らない方がいいですよ」
思わず学園に戻ったら大人の怖さを教えるためにお仕置きしてやろうかと口走る前に止めてくれためぐみんに内心で深く感謝しつつ、未だにこちらを見つめ続けているマーレから視線を外し、映像に意識を集中させる。
『お前は、ロズワールの考えをどれくらい知ってたんだ?』
「さて、これで一体どういう返答が返ってくるやら」
スバルの問いかけにベアトリスがどう返答するのか静かに傾聴するターニャ。しかし、返ってきた答えは大したものじゃなく、彼女さえもロズワールの思惑を聞かされてはいないようだった。
『俺もお前も周りの連中も皆、ロズワールを買いかぶり過ぎているだけなのか?魔女教相手に無策なはずがないって……』
「ふむ、確かにこれまでのループを見ていればその結論になるのはおかしくはない……が、しかしだ──」
「あのロズワール先生が本当になんの対策も取っていないとは考えづらい。そうでしょ?」
「ん?けどさ、結局のところスバルが解決しなきゃ村も屋敷も、エミリアだって魔女教に滅ぼされてた訳だろ?やっぱし、ロズワール先生のミスじゃねえのかよ?」
「確かに、ターニャやデミウルゴスの言う通り、ロズワール先生が無策なのは考えづらい。かといって、カズマの言う通り、これまでの状況を見るにスバルの存在なしには領地の民並びに候補者のエミリア君も殺されていた。どちらが正しいのか、あるいはどちらも正しくないのか……」
知恵者である両者の意見も、カズマの単純な客観的な意見も、どちらも正しいのだろう。
どちらにも一理あり、どちらが正しいのかを断言することは出来ない。
「ならもし、あのロズワール先生がスバルの力の存在。死に戻りの能力を知っていたらどうなんだ?」
アインズの疑問に、尚文が2つの意見にある程度矛盾しない答えを提示する。
確かに、それならば今回の一件にロズワールがなんの対策も取っていないことに、そこそこの納得は出来る。
だが、そうなってくると新たな疑問が浮かんでくる。
「は?なんでロズワール先生がそんな事知ってんだよ。だって、死に戻りの能力を教えようにも、あの黒い手に邪魔されるんだぞ。知りようなんて──」
「いや、その可能性は私も考えていた。思えば、王都でのクルシュ陣営との交渉の際の採掘権の分譲、それに加えてのレムの付き添い。白鯨や怠惰の事で考えを疎かにしていたが、もしあれがスバルを成長させる為のアシストだとしたら?」
「ですね。ただのメイドや魔獣の一件があったとはいえ、偶然の流れで住み込みとして働くようになったスバルを、そんな重大な交渉の名代、並びにエミリアからの正式な使者に任命するのは、リスクが大きすぎると言えます。しかし、もしスバルが死に戻りの能力を持っていることを知っているのであれば、それはもはやギャンブルではなく、確実な手段となるでしょう」
カズマの疑問と否定の声を遮るようにターニャもまた尚文の推測を肯定し、デミウルゴスもこれまでのロズワールの動きからその可能性が大きいと口にする。
それに対して、結果論だと口にしてしまいたくなるカズマ。もしレムが諦めることを否定しなければどうなっていたのか、当然村も屋敷も魔女教に荒らされて全員死んでしまっていただろう。
だが、結果としては大きくエミリア陣営の成果を上げ、クルシュ陣営との同盟も成立させている。悪知恵が働く以外はそこまで頭がいいと思っていないカズマは、3人の意見を否定出来る答えを導き出せなかった。
『どうして、よりにもよってお前がそれを……』
『奪い取った、ってほど欲しい本でもなかったんだけどな。言ったろ。魔女教が屋敷を囲って悪さしてたって。その首謀者から取り上げたんだよ。持ち主は……もうこの世のどこにもいない』
『これの持ち主は……死んだって、言ったのかしら』
『……ああ。死んだよ。車輪に噛まれて……俺が殺したんだ』
『お前も、ベティーを置いていったのかしら、ジュース……』
「ジュース?飲み物……じゃなくて、人の名前か?」
「かなり変わった名前だが、ペテルギウス・ロマネコンティのことか?」
ベアトリスが口にした人物名と思わしき名に、思わずカズマが反応する。それに続くように尚文がその名の持ち主がペテルギウスだと察しを付けるが、何故別名なのかを疑問視する。
「ふむ、恐らく、その名前は最初にペテルギウスが憑依していたあの瘦せぎすの男の名前じゃないのか?」
「あっ!?そうか、ペテルギウスって人に乗り移る精霊の名前だから、ジュースってのは憑依された最初の奴の名前か!!」
アインズの言葉にカズマが納得がいったと声を上げる。
『お前が知る必要はないのよ。それより、『怠惰』を殺したのがお前だっていうなら魔女因子はどうなったのかしら』
『事情通がなにも知らない奴に専門用語ちらつかせてんじゃねぇよ。なんなんだ、魔女因子ってのは。聞くだにいい印象がねぇぞ』
『知らない……?まさか、本当に?それなら、お前はいったいなんのために『怠惰』を殺したっていうのかしら。意味がわからないのよ』
『降りかかる火の粉を払っただけだ!お前はなにが言いたいんだよ!』
『こんなこと、知らない。……ベティーの判断できる領分を越えているのよ』
「どうにも、不測の事態が起きているといったところだが……」
「魔女因子……。不穏な名だが、もしかしてそれが見えざる手の力の源。権能とやらの根源か?」
「しかも、聞く限りじゃ、それを持った相手を殺せば、その因子が手に入るような口ぶりだったが、もしかしてスバルもあの見えざる手が使えるようになったとか?」
慌てるベアトリスの口ぶりから色々と考察するアインズ、尚文、カズマの3人。
他にもまだまだ聞きたいことはあったのだが、スバルが聖域の名を出した途端、ベアトリスの顔色が変わった。
『──お前の欲しがる答えは全部、その聖域にあるかしら』
「やはり、どうにも聖域とやらでトラブルが起きる予感しかしないな……」
「それが単純なトラブル程度で済めばいいが、スバルのこれまでを考えれば、トラブルというより大事件と言った方が似合う事が起きそうだな」
ベアトリスの意味深な発言に嫌な予感が止まらないターニャは、思わず顔をしかめながら指の爪を嚙む。
そしてアインズもまた、ターニャと同じように嫌な予感を感じつつも、それがさらなる過酷な現実になりそうだと達観の姿勢をみせる。
『──だあ!』
『ぎゃー!』
「「「「あっ!」」」」
先程までのスバルとベアトリスの意味深なシリアスパートを吹き飛ばすようなギャグみたいな場面の展開に、思わず誰もが声を上げた。
「なんつうか、ウチのアクアよりも運がないよな、オットーって……」
「不幸の星の元で生まれてきたと言われても納得するレベルだな」
これまでのループで白鯨と遭遇し、スバルと関わらなくても魔女教と遭遇し、さらには時期が悪くて大量の商品の在庫を抱えてしまうというオットーの不運な状況に、思わず呆れ果てたような口調になるカズマと尚文。どちらも冒険者や勇者であり、商人が本業ではないにもかかわらず、オットーよりも遥かに商才を持っているのだから、世の中とは不公平なものだ。
スバルの第二の試練後にIFストーリーを入れる
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