いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる 作:リーグロード
他の短編小説を書いてて遅れました。
悲惨な目に合ったオットーを捨て置き、リビングへ戻ればフレデリカが紅茶を用意してもてなしてくれる。
『エミリア様に、スバル様がどれだけ頼りになるか、それはそれは言葉を尽くしていただいたので、期待半分でお待ちしておりましたの』
『へっ!?なに?何の話してたの?』
「うわ~、スバルがリア充になってって羨ましいんだけど」
「嫉妬は見苦しいですよ、カズマ」
嫉妬の声を漏らすカズマだったが、その顔は初期の上映会を観ていた時に見せていた苛立ちを含む表情ではなく、どこか誇らしげで、具体的には後方彼氏面のような表情だった。
「いやしかし、死に戻りの時間を抜けば、あの王都でのいざこざから一週間も経ったかどうかだろうに、よくもまあ、ここまで信頼を回復させたものだ」
「ですが、大佐。あれを見てれば、ああなるのも納得ですよ!」
ターニャのつい口に出た言葉に、グランツが思わず反応する。
確かに、あの活躍を見れば、誰だって信頼を回復させるだろう。
っと、まあ、エミリアとスバルのごちそうさまイベントを終えて、話題は聖域の場所に戻る。
『だから、フレデリカにおねがいしたの。聖域の場所を教えてって』
『フレデリカが教えてくれるってのか?』
『エミリア様に根負けしてしまいました』
そんなゴリ押しによる方法に、カズマが時たま見るエミリアの謎の活発さを思い出す。
「まあ、エミリアって何気に押しの強いところあるからな。しかも純粋なぶん、下手な押し売り業者よりもタチが悪い」
「ふはははは!確かにあの娘の強引さは時折悪魔である吾輩も舌を巻くレベルだからな。それに、インチキ上等の自称神聖を謳う神よりも純粋無垢なあの娘のお願いは早々断れる者もいまい!」
「はぁ?失礼なこと言わないで!!噓つきエリスはともかくとして、私はエミリアと同じくらい純粋で……って、なんで皆してそんな胡散臭い人を見るような目をしてるの?」
バニルの言葉を否定するアクアだが、周囲からの「何言ってんだこいつ?」という視線にビクッと肩を震わせる。まあ、これも日頃の行いの結果だろう。
そして、クリスはアクアの「嘘つき」という言葉に胸を押さえて黙り込む。それがアクアの発言に胸を痛めたものなのか、それとも心当たりがあるのかは、ご想像にお任せする。
『いえ、私は屋敷に残りますので、同行は出来かねます』
『えっ、一緒に来てくれないの!?じゃあどうやって行けばいい?』
『ふっふっふ、察しが悪いですね、ナツキさん』
オットーのその言葉と、エミリアとフレデリカの笑顔から色々と察せたスバル。
『少しでもエミリアに協力的に接して、その後ろ盾のロズワールの印象を良くしようっていう魂胆で』
「こういった裏の察しは異常に良いのがスバルクオリティーってやつか……」
「オットーの奴、エミリアからの驚きの目に精神的ダメージ入ってるし、スバルも中々にエグいな」
尚文とカズマによるオットーへの評価には、次第に憐憫の念が含まれ始めている。ただし、本人たちの関係性を考えれば、仲の良い学生同士のような軽いノリであることも理解できるため、そこまで同情する必要もないと言える。
『これよりお話ししますのは、口外無用のクレマルディの聖域の場所と入り方。そして、その聖域に行くにあたって忘れてはならない名前ガーフィールという人物にお気を付けください』
「ガーフィール。あのオットーと一緒に転校してきた奴のことか……」
「だとすれば、これで学園に転移させられた者は全員揃うことになるが、今回の上映が終われば、この上映会も終了するのか?」
「まあ、まだ今回の上映で仲間入りするかは分かりませんし、レムも依然として眠り続けていますから、その辺りは一旦置いておくのが良いでしょう」
ガーフィールという名前に反応するカズマとターニャ。特にターニャが口にした上映会の終わりに関する言葉に何人かが期待を寄せるが、直後のデミウルゴスの指摘で「まあそうだよな」と落胆する。
そんなひと悶着を挟みつつも、スバルたちは聖域へ入る方法を知り、その後のやり取りは客室の準備が整ったという報告を受けてお開きとなった。
『レム、じゃあ行ってくる。フレデリカにちゃんとお前のこと頼んでおいたから、いい子で待っててくれな』
レムとの別れの挨拶を済ませると、部屋を出るスバル。そんなスバルの前に小さなメイドが待ち伏せていた。
『もういいの?』
『おう、新入り。ちゃんとメイド服着こなしてるな』
『でしょ~!』
くるりとその場で一回転し、メイド服姿の自分の可愛さをアピールするペトラ。
お辞儀をしながら、屋敷を留守にするスバルからのお願い事を、にっこりと微笑んで了承するペトラ。その表情から、勘の鋭い者は何かを察する。
「なあ、アレって惚れてるよな、スバルの奴に?」
「倒置法を使って言うな馬鹿者が。だがそうだな、子供というのは得てして年上の存在に好意を持ちやすい。それも命の危機を救ってくれた存在ともなれば初恋となるのも頷けるだろう」
「おっ!なんだ、ターニャ。体験談か?」
「そんな!相手は誰ですか!?ヴァイス大尉ですか?ケーニッヒ中尉?ノイマン中尉?まさか!!レルゲン先生に恋を!!?」
カズマの迂闊な一言でヴィーシャが錯乱したように慌てふためきだす。
事の発端となったカズマはここまでヴィーシャが取り乱すとは思っておらず、変なところに火を点けたと若干後悔しながらターニャの方を見ると、無言の口パクで『あ・と・で・お・ぼ・え・て・ろ』と放課後校舎裏なとヤンキーに呼出しされるパシリ君の気持ちになった。
「あ~、取り敢えず落ち着きたまえ、セレブリャコーフ中尉。私はまだ初恋なんぞしておらん。というか、戦場に身を置く私がそんな面倒事を抱える訳ないだろう」
「た、大佐。それはちょっと言い過ぎな気も……」
恋愛を面倒事だと切り捨てるターニャの恋愛観に、ヴィーシャはドン引きする。幼いながらも達観しすぎたターニャの価値観に対し、もう少し夢を見てもいいのではないかと内心で将来を案じる。
そんな周囲の心配に気付くことなくターニャは上手く場を納められたと、少し得意げな顔をしていた。
そうして、眠り続けるレムの世話やその他の色々をペトラに任せたスバル。
屋敷の前に止められた竜車の前で、フレデリカは森の結界を越えるためのネックレスをエミリアに渡し、ペトラはお守りとして白いハンカチをスバルに手渡した
『あれ、なんで急にそんな反応?突然の反抗期に寂しい俺』
「「「「いやいや、それはない……」」」」
スバルのあまりにも鈍感すぎる反応に、見ていた主人公ズは揃って呆れながらスバルの発言を否定した。
そうして、屋敷を出発し、聖域目指して進む竜車の中で、エミリアはスバルにパックが姿を見せないことを悩みとして打ち明けていた。
「にしても、パックが出てこないとなると、エミリアの戦闘力が激減するな」
「あいつにも何か考えあっての事かもしれねえけど、説明放棄して他人任せは無責任過ぎるだろ!」
パックの突然の不在により、ターニャは戦力の大幅な低下を懸念し、カズマはその無責任な態度に苛立ちを覚えた。
確かに、この状況で説明責任を放棄したパックの行動は、あまりにも意地の悪いものと言えるだろう。
「まあ、何か言えない事情があったやもしれん。パックは精霊。そして精霊は契約によって術者と繋がる。っが、どうにも、エミリアとパックの契約には不審な点が多く見受けられるように感じる」
「同感だな。俺もアインズ同様にあの2人の契約内容は不自然な点が多く見受けられる。もしかすれば、当人同士も知らない内容が契約内容として含まれてる可能性すらありえる」
精霊、特に大精霊であるパックとの契約において、等価交換の原則が無視されていることについてはアインズも疑問を抱いていた。ただし、それは錬金術やゲームに適用されるものであり、まったくの別モノともいえる精霊との契約に当てはめるのは正しくないかもしれない。
その上で、尚文はアインズの意見に賛同していた。正しいかどうかの正否は別にして、パックの行動や発言には不審感を持っており、それは契約内容の曖昧さが原因であると考えていた。
もしかすれば、未だ登場していない第三者の介入。あるいは、世界の意思ともいえる超自然的現象。そういったものによって、パックがエミリアの傍を離れている可能性だってあると。
「けどさ、尚文。そんなこと本当にありえんのか?当人同士すら知らない契約が結ばれるなんて?」
「ありえるだろう。お前もカードゲームとかするだろ。その時、類似した効果が重複したり、裁定が複雑になりすぎて、カードを作った本人たちでさえ把握できていない、なんて状況があるだろう。パックとエミリアがいつどこでどんな状況で契約を結んだのかは分からないが、その結果、当人同士でも把握しきれない内容の契約が成立した可能性もあるんだ」
「それは……確かに……」
尚文の説明にカズマも納得した。
ただ、その説明を理解できたのはカズマやターニャ、アインズといった転生者だけで、遊○王を知らない異世界組は頭に?を浮かべていた。
『でも、私は微精霊の子達とも契約してるから、その子達とも戦えるし、何があってもスバルを守ってあげる!』
『やだ、男前』
「情けねえ、ってのは、俺が言えた義理じゃねえかな」
「自分で言ってて虚しくはならないのか?お前も冒険者ならば、普段から筋トレの1つぐらいだな」
「あ~!あ~!聞きたくありません。ってか、今更才能のない俺なんかが筋トレ程度の努力したところで、お前みたいな腹筋バキバキ女に勝てるぐらいつよ……あっ、やべぇ!」
ダクネスからのお説教に思わず反論してしまったカズマは、慌てて地雷を踏んだことに気づき、口を押さえた。
「…………ふ~ん、そうか。ターニャ、今度お前達の国の訓練、私とカズマも参加させてもらってもいいか?」
当然のごとく、カズマの失言を聞き逃さなかったダクネスが、ニヤリと黒い笑みを浮かべた。
「ああ、任せろ。大の大人でも泣き声と悲鳴しか上げられんような、とびきりハードな訓練を戻ったら用意してやる。嬉しいぞ、カズマ。お前から我が地獄に足を踏み入れてくれてな!」
「「「「ガタガタガタガタ!!!!」」」」
ターニャから発せられる暗黒のオーラのようなものに、部下であるヴィーシャらが揃って身を震わせて怯えている。
そういえば、先程も自身の不用意な発言でターニャを怒らせたことを思い出したカズマは冷や汗ダラダラで言い訳をあれこれ考えるも、脳内ターニャに全て論破&罵倒で封じられ、絶望に打ちひしがれる。
「あ、アインズ!尚文!?」
「すまん。自業自得としか……」
「触らぬ神に祟りなしだ。俺たちに助けを求めるな」
もはや打つ手なしと助け舟を求めたが、両者から即座に見放されて、カズマはムンクの叫びみたいな顔で絶望する。
憐れカズマ、君の犠牲は忘れない!2人が現実逃避気味にそんなことを思いながら、スバル達の動向を観ていると、突如としてエミリアが貰ったネックレスが光を放ち始めた。
『どこだ、ここ……?』
「転移の罠?しかし、あのネックレスが通行の許可証のようなものでは?いや、違う?あれをスバルが直前で持っていたからこそ、あそこに転移させられた?」
「原因がなんにせよ、スバルとエミリアが離れ離れになったのは面倒だ。それに、エミリアの突然の昏倒。どうやら、フレデリカというあの女。聖域の詳しい説明をしていないか、ハーフエルフが聖域に近付けばどうなるか知らなかったようだな」
あまりにも突然の事態に混乱するスバル。観ているだけの者たちも似たような反応を見せる中、アインズとターニャは冷静に状況を分析し、今起きたことを理解し始めていた。
ガサッと草木が揺れる音を聞いて振り返るスバルの視線の先に、ピンク髪のエルフ耳の少女が立っていた。
『お前は?その耳、ひょっとしてエルフ』
思わず声を掛けたスバルだったが、驚いたのか警戒したのか、少女は森の奥へと駆け出してしまった。慌ててその背中を追いかけたスバルだったが、思った以上に素早い少女の走りに追いつけず、結局その姿を見失ってしまう。
「見失ったか……」
「しかし、目の前にはどう見ても意味深な遺跡がポツンとあるな。これで聖域と無関係ということはないだろう」
少女を完全に見失ったことで、これからどうするべきかという意味でアインズはボソッと呟いた。
そして、見失った少女に導かれるように遺跡に到達したことに対し、ターニャは不審の念を抱いていた。
『おい!誰かいないか!?ここが聖域なら、誰か返事してくれ──!!』
呼びかけても誰からも返事はなく、スバルは意を決して目の前の遺跡に足を踏み入れる覚悟を決めた。
「それは少々軽率というか、短絡的がすぎるな」
「だが、入らなければ次に進めないだろう。それに、スバルも死に戻りの能力があるからこその判断だろうしな」
スバルの無謀にも見える行動にターニャが苦言を呈するが、アインズがすかさずフォローを入れる。
遺跡の中の通路を歩くスバルだが、いつまで経っても誰とも出会えない。それどころか、同じ造りの廊下を延々と歩かされている。遺跡の外観と中身の構造がどう考えても一致していないことに不審を抱くものの、魔法が存在する世界であるため、驚きは少ない。なんなら、かつて屋敷でベアトリスが空間を捻じ曲げる魔法を使い、同じように廊下を延々と歩かされた経験があるため、それほどの驚きはない。
ただ、通路を進むにつれてスバルの顔色が悪くなっていく。
「なんだかスバルの顔色が悪いな……?」
「当然だろうに。延々と続く暗闇を歩かされているのだ。常人ならば発狂する可能性すらあるぞ」
「確か、パニック発作とかいうやつだったな。暗闇みたいな場所に長時間閉じ込められると、感覚が遮断されて精神的に追い詰められる。拷問とか洗脳でも使われるって聞いたことあるな」
「怖えよ!どこでそんな知識仕入れてんだよ!?」
顔色が悪くなっていくスバルを心配するカズマに、ターニャが呆れた様子で説明する。
それに加えて尚文が補足説明をすると、カズマはドン引きした様子でツッコミを入れる。
『立ち止まれるか……!なんだろうが諦めねぇぞ──』
『──なるほど、それが君の欲の根源か。なかなか興味深いことだね』
世界が書き換わった。薄暗い廊下は、青空が広がる草原に姿を変え、そこでは紅茶を楽しむ美しい女性が茶会を開いていた。
まだ他の短編小説が書き終えていないので、今後の更新は遅れると思いますが、ご了承ください。
4章でのスバル視点外の放送
-
エミリアの試練
-
ラムの告白
-
ガーフィールとエルザのバトル