いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる   作:リーグロード

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お久しぶりの投稿です。
一ヶ月近く投稿が空いてすみません。
ダンまちで小説書いて遅れました。


強欲の魔女

 

「ほおぉ~」

 

 白髪ロングの清楚なお嬢様といった雰囲気を醸し出す美女が現れたことに、カズマは鼻の下を伸ばしながらひっそりと感嘆の声を上げる。

 確かに、映像の中の美女は顔立ちも整っているが、それと同時に人目を惹く点があった。

 その豊満なバ……胸部装甲にカズマの視線が釘付けになる。

 

「カズマ、一体どこを見ているのですか?」

 

「べっ、べ、別に!?何処も見てねえし!」

 

 めぐみんの軽蔑の眼差しと共に放たれた言葉に、カズマは慌てて否定の言葉を紡ぐが、動揺が隠し切れていない。

 勿論、その様子は他の皆にも筒抜けで、呆れと侮蔑の含んだ視線が送られる。

 

「カズマさん、最低ですね」

 

「ああ、最低だな」

 

「最低ダナ……」

 

「風紀委員としてあるまじき行為ですよ」

 

「うぅ……。すみません」

 

 カズマの下品な視線に、ヴィーシャ、ターニャ、コキュートス、デミウルゴスが非難の声を上げる。

 針の筵と化した場の中で、カズマはすっかり落ち込み、反省している様子だ。

 

『ボクの名前はエキドナ。強欲の魔女と名乗った方が、通りがいいかな?』

 

「魔女とは、あの世界では随分と物騒な名乗りだな」

 

 エキドナの自己紹介に、尚文は警戒した声で呟いた。周囲のみんなも、スバルがたった一人で強欲の魔女と名乗る人物と対峙する状況に緊張を隠せないでいる。

 

 魔女の下位互換に思える大罪司教ですら、何度も死に戻りを繰り返し、頼れる仲間の助けを借りてようやく討伐することができた。

 死に戻りの復活地点次第では、あれ以上の過酷な状況がスバルを襲うだろうと考えると、部屋の空気が自然と重苦しく張り詰めたものに感じられた。

 

『ここは何処だ?俺は真っ暗な遺跡の中にいたはずだ。いつ転移させた!?』

 

『残念だが、勘違いだよ。君は肉体的な転移を体験したわけじゃない。ボクの茶会に招かれただけさ』

 

「ん?遺跡の中から外に出たんだから転移じゃねえのか?」

 

「いや、決めつけるのはまだ早い。幻影あるいは幻惑に類する魔法による効果やもしれん」

 

「流石はアインズ様!見事なご慧眼です!!」

 

 エキドナの説明に疑問を抱くカズマ。その疑問に答えるアインズに対し、アルベドは感激のあまり目をトロンとさせながら称賛する。ナザリックの他のメンバーも、エキドナの魔法の正体を一目で見抜いたアインズに尊敬の眼差しを向ける。

 

「い、いや、まだそうとは決まった訳ではない。あくまで、状況的に見た私の予想というだけで確定したわけじゃないぞ!」

 

 これでハズレていたら醜態モノだと、アインズは内心で汗をダラダラと流しながら言い訳をする。

 そんなアインズの動揺をよそに、スバルはエキドナの正面に腰を下ろし、用意された茶を漢らしく、あるいは無思慮に一気に飲み干した。

 

「うわぁ~、スバルの奴、躍起になってるな」

 

「死に戻りがあるとはいえ、自白剤や麻痺毒、あるいは我々の想像を超える何かが混ざっている可能性もあるだろうに。まあ、アインズ君の言う通り、あの世界が夢や幻の類なら、その心配も無用だろうがな」

 

 スバルの行動にカズマとターニャは呆れるような、感心するような口ぶりで言葉を投げる。

 しかし、スバルの様子はいつもと変わらないままだった。用意された茶がただの普通のものだったのか、それともアインズの言う通り幻の類だったから問題がなかったのかもしれない。

 

『うまくもまずくもなかったけど、なんのお茶だったんだ、これ?』

 

『ここで生成したものだからね。言ってしまえば、ボクの体液だ』

 

『なんてもん飲ませてんだ、てめぇ!?』

 

「た、体液……だと!?ごくっ……」

 

「ねえ、ダクネス。さすがに体液を飲まされたで興奮するなんて擁護できないわよ。言っとくけど、さっきのカズマさんよりもよっぽど変態よ、変態!」

 

「くぅ!あ、アクア、そんなに私を辱めて一体どうするつもりだ!?」

 

「うわぁ~……」

 

 アクアのドン引きの視線を受けてさらに頬を朱色に染めるダクネスに、もともとダクネスがドMだと知っている皆も、この反応には先ほどカズマに対して見せた以上の冷たい視線を向ける。

 ただ、今のダクネスに声をかけるのはなんとなく気味が悪──面倒くさいと感じてスルーする。

 

『やはり君は不思議な人物だ。こうして、普通にボクの前に立てているのがその証拠だよ』

 

『なにがだよ。自分が美少女すぎて普通だったら相手の目が潰れてるってか? 言っとくがな、俺は俺的に最高の美少女で常に目の保養をしてるんだ。だからお前のことを見ても別にそんな大して可愛いなとか思う回数は少ない』

 

『いや、普通の人ならボクの前に立つと吐くんだよ。面白いだろう?』

 

『なんも面白くねぇよ!?』

 

「吐く?そういえば、前にナザリックに不法侵入した女も私が魔力隠蔽を解いた瞬間に吐いたが、やはり実力差がある者同士が対面すると吐くのか?」

 

 ゲームではそんな仕様はないし、現実世界でも圧倒的強者と対面したことのないアインズは天然らしい一面を見せる。

 

『俺をどうするつもりだ?』

 

『別にどうも、勝手に入ってきたのは君の方だ。帰りたいなら帰らせてあげるけど。君はそれでいいのかい?』

 

『なにがだよ』

 

『ボクの前から帰って、だよ。──強欲の魔女に話を聞ける機会なんて、君以外の誰が求めてもそうそう得られるものじゃないのに』

 

 確かに、突然現れたエキドナには警戒していたが、『強欲の魔女』という肩書きを持つ人物から話を聞ける機会は、情報の重要性を知る者にとって喉から手が出るほど魅力的だ。

 だが、その魅力が毒にもなり得ることを知りえる大人組は、さらに警戒心を強める。その情報の対価や潜む危険性を考えると、まともに話を聞くのもリスクが高いと感じる。

 

『お前は……俺が知りたいことの、答えを知ってるのか?』

 

『このボクに、知識の在り処を問う──か』

 

 疑うスバルの疑問を晴らすために、エキドナは言葉ではなく行動で意思を示した。

 用意された茶会のセットは砂のように崩れ落ち、テーブルや椅子などすべてが霧散して消えていく。

 それだけにとどまらず、広がっていた草原も青空さえも砕け散り、歪な亜空間のような世界へと変貌を遂げた。

 

「世界が変わった。強欲の魔女ってこんなことも出来るのか!?」

 

「いや、あの世界が本物ではなく、エキドナが作り出したまやかしの世界ならばそう難しいこともないだろう」

 

 驚きのあまりビビった声を出すカズマを落ち着かせるように、アインズは冷静に自身の持つ知識と照らし合わせて答える。

 確かに、あの世界が現実ではなく魔法で造り出した異空間ならば、エキドナの意思1つでどんな姿形にも変化可能かとカズマは落ち着きを取り戻す。

 まあ、それはそれで物凄く凄いことなのだろうが。

 

 いきなりの光景に圧倒されるスバルを置いてきぼりにして、エキドナは次々と自身の知る魔女の情報を小出しに語る。

 

『さあ、なにが聞きたい? 知り得ることであるならば、ボクはなんでも答えよう。飢餓から世界を救うために、神と異なる獣を生み出した『暴食の魔女』ダフネのことか? 世界を愛で満たそうと、人あらざるものたちに感情を与えた『色欲の魔女』カーミラのことか? 争いに満ちた世界を嘆きながら、あらゆる人々を殴り癒した『憤怒の魔女』ミネルヴァのことか? 安らぎをもたらすそのためだけに、大瀑布の彼方へ龍を追いやった『怠惰の魔女』セクメトのことか? 幼さ故の無邪気と無慈悲で咎人を裁き続けた『傲慢の魔女』テュフォンのことか?』

 

「やられたな……」

 

「ああ、話の主導権をいきなり相手に握られてしまったな」

 

 アインズとターニャは、エキドナがスバルの興味を引きつけるために、意図的に情報を小出しにしていることを理解し、彼女がただの力任せの相手ではないと認めた。知らない情報にはそれほど魅力を感じないが、ほんの少しでも──いや、ほんの一部しか知らされないからこそ、その全貌を明らかにしたいというのが人間の好奇心というものだろう。

 

『ありとあらゆる叡智を求めて、死後の世界にすら未練を残した知識欲の権化。『強欲の魔女』エキドナのことかい?それら全ての魔女を滅ぼし、自らの糧として世界を敵に回した『嫉妬の魔女』──あの忌むべき彼女のことかい?』

 

「まさに毒。いや、沼だなあれは。足を掴みズルズルと沈み込ませる底なし沼だ」

 

 この魔女は、スバルの知りたいことをすべてではないにしても、かなり多くを知っていると思わせるような口調で話す。その様子を尚文は底なし沼のようだと形容したが、それもあながち間違いではないだろう。

 だが少々脅かし過ぎたのだろう。変容する世界の衝撃が抜けきらないうちに、魔女の狂気じみた圧に押され、スバルの顔には好奇心よりも恐怖が浮かんでいた。

 

「ゴクッ……」

 

 映像越しですら感じた圧に、最初はその美しさに見とれていたカズマも、まるで捕食者を見るような目へと変わっていた。

 横を見ればめぐみんもアクアも似たような反応で、ただ見ていただけなのに、彼女に対して恐怖を覚えて震えていた。

 ダクネスだけは興奮する様子はなくとも、エキドナを危険な存在と判断して眉をひそめ、警戒の色を浮かべている。

 

『しまったな、脅かしすぎてしまったか。昔からどうしても、ボクは興が乗ってしまうとこうして口が滑りすぎる。厄介なものだよ、魔女という性は』

 

 まるで何事もないかのような態度を見せるエキドナに、スバルは恐怖と警戒を解くことなく、目の前の彼女を魔女として見つめていた。

 聞きたいこともあるだろうし、今すぐその場を離れたい気持ちもあるだろう。しかし、そんな簡単な行動すらできないほど、今のスバルはエキドナの雰囲気に飲まれてしまっていた。

 そんなスバルへの変化は唐突に訪れた。

 

『────ッ!?』

 

『おお、思ったより早かった。流石に適合者は馴染むのが早い』

 

『何を言ってる──!?』

 

『お茶を飲んだろ。あれで怠惰の魔女因子に働きかけて、君の抵抗力を強くした。これでじっくりボクとも話ができる』

 

「やはり、あの茶に混ぜ物があったか」

 

 用意されていた茶にやはり異物が混ぜられていたかと、ターニャは当然のように呟く。

 

「茶というか、あの女の体液らしいから、混ぜ物どころの問題じゃないだろうがな。しかし、魔女因子……」

 

「確か、ベアトリスが言ってたやつだな。怠惰を倒したと聞いて、その後どうなったのか気にしていたが、やっぱり魔女因子はゲームの経験値みたいに、倒した相手から譲渡されるモノで、それでスバルの中に入っていたのか?」

 

 ターニャの呟きに被せるように、尚文が呆れた声を漏らしながら、エキドナの言及した魔女因子に引っかかりを覚える。その引っかかりはアインズも同じで、スバルが屋敷でベアトリスと話した際に得た情報を思い出しつつ、魔女因子について考察を呟いた。

 

『誤解しないでほしいんだけど、ボクは悪さをしようと思ってお茶を飲ましたわけじゃない。むしろボクは君の存在を好ましく思っている。少し恥ずかしいな』

 

 先程の魔女らしさは何処へいったのやら、恋する少女のような笑みで照れを見せるエキドナにカズマは困惑する。

 

「敵意は無さそうだけど、さっきのおっかない様子を見た後だと、演技にしか見えねえな」

 

「実際、ああいう態度は人の警戒心を解きやすいですからね。特にカズマのように女性に対して自分の欲求を優先しがちな人物なら、なおさらね……」

 

 デミウルゴスの一言に、カズマは気まずそうに頭をかく。デミウルゴスの言うことに特に間違いはなく、同じ風紀委員として女性関係で散々醜態を晒してきた手前、反論の余地もなかった。

 

『ここ数日の間に君は怠惰の魔女因子の持ち主を殺しただろう。その死に際に、魔女因子は新たな憑代に君を選んだ。この墓所に入って無事なのもそのお陰だよ』

 

『墓所……、墓ってことか?』

 

『そう。ここは死後、ボクの魂が囚われている魔女の墓所、聖域だ……』

 

「あそこが聖域か。ってか、死後ってことは、エキドナはアンデッドってことか?」

 

「だったら生意気ね!薄汚いアンデッドがいる場所が聖域だなんて絶対認めないから!」

 

 エキドナの言葉にカズマは疑問を抱き、アクアはシュシュ!と怒りを込めて叫びながらシャドーボクシングでその感情を表現する。

 

『お前、聖域を知っているのか!?』

 

『君は勇敢なのか大胆なのか、経験の少ないボクには判断しかねるな』

 

 興奮してエキドナの肩を掴みにかかるスバルに、慎重派のメンバーはその行動に顔をしかめ、頭が痛いと言わんばかりに手を額に当てる。

 

「馬鹿なのか奴は。白鯨と魔女大罪司教の討伐の際には頭の回る優秀さを見せてたのに、死に戻りがあるせいか行動に迷いというか、思慮深さが欠落しているぞ」

 

「仕方がない。それもスバルの美徳の1つだろう。ただ、先の茶の件といい、スバルに会えたなら考えて行動する大切さは説かねばならんな」

 

 大人としての立場から、ターニャとアインズはスバルの行動を危なっかしいと感じ、もう少し慎重に行動してほしいと考えている。

 そんな困ったスバルはエキドナに先程小出しに情報を出された魔女のことではなく、ここが聖域かどうかを問いただす。

 

『そうとも。君の願い通り、遺跡の外は聖域だ。さあ、他には何か聞きた──』

 

『お前に言えば外に出してくれるんだよな』

 

『えっ?ああ、それは保障するけど……』

 

 聞きたいことを聞き終えたスバルは、他にエキドナに質問することなく、即座に外へ出ようとした。

 さすがのエキドナもその答えには驚いた様子で、鳩が豆鉄砲を食らったような表情を浮かべる。しかし、スバルはエキドナの反応にも誘惑する言葉にも目もくれず、外への出方だけをひたすら求め続けた。

 

「ふっ、まあ、あいつは魔女とかそういうのよりも、エミリアのことしか頭にないよな」

 

「俺としては魔女の事とか気になるから、聞いてほしいところではあるけど、まあスバルだしな」

 

 話の主導権を握っていたはずのエキドナの有利を、ちゃぶ台返しのようにひっくり返すスバルの態度に、尚文とカズマは呆れつつも、それがスバルらしい行動だと笑っていた。

 

『お前との茶飲み話は、また別の機会に作ってやるから』

 

『死者に……、それも魔女に……、そんな簡単なことのように約束を取り付けるのか』

 

 あまりにもそっけないスバルの態度に、本当に魔女なのかと疑いたくなるほど弱々しい様子を見せるエキドナ。

 結局、エキドナはスバルを引き止めることは無理だと判断したのか、元の世界へ戻るための通路を出現させる。

 

「なんか、本当は物凄い奴なんだろうけれども、スバルに振り回されてしょうもない奴に見えてきたな」

 

「言ってやるな、カズマ。なんか、可哀想だから……」

 

 スバルに振り回され、気落ちしてテーブルに突っ伏すエキドナ。その姿からは、途中で見せた圧倒的な存在感は影を潜め、見た目相応の儚さと弱さが際立っていた。

 そんなエキドナに憐れみの目を向けるカズマに、アインズは同情心から静かに止めるよう注意を促す。

 

『本当に帰るなら、最後に対価を頂こうか……』

 

『なっ!言っとくが、俺は万夫不当の一文無しだぞ』

 

「まともに取り合うな馬鹿め。魔女だのなんだのと、信用もならん胡散臭い奴の話に耳を傾けよって!」

 

 苛立ちながらターニャは映像の中のスバルに文句を言う。

 

「まったくその通りです。ただ、スバルの力だけであの場を切り抜けるのは難しいでしょうし、相手の機嫌を損ねるリスクを考えれば、賢明な判断とも言えますね」

 

「まあ、それもそうだな……」

 

 自分と匹敵するほどの知恵を持つデミウルゴスの冷静な意見に、ターニャは納得せざるを得なかった。

 幸いと言っていいのか、エキドナがスバルに要求した対価はそこまで重いものでもない。元々、スバル自身が死に戻りの能力の口外禁止がされている以上、そこに茶会の出来事もプラスされただけだ。

 

『それと、せっかくだ。お土産を持たせてあげるよ。君に、この聖域の試練に挑む資格を与えよう』

 

『聖域の試練?』

 

『今はまだ分からなくても、その場所を知ればその価値に気づける。そうなった時、君がボクにどんな感情抱くか。それはそれは、素敵な期待だね』

 

「あの魔女め、一体何を企んでいる?試練などと、何様のつもりだ。しかし、どうにも嫌な予感しかせんな」

 

 艶めかしく己の指を舐めるエキドナの妖艶さは、ターニャが警戒するのも無理がないほどのものだった。

 そしてなによりも、望まぬ契約を結び、求めていない対価を押しつけるその有様は【存在X】の影がチラつき、ターニャの心中を穏やかではいられなくさせる。

 

『──お前、やっぱり、魔女なんだな』

 

『──ああ、そうだとも。ボクはとても悪い魔法使いなんだぜ?』

 

 そう言いながらスバルの額に指を押し当て、後ろへ倒そうとするエキドナの力に抗えず、スバルはエキドナが作り出した外の世界へ通じる道へ背中から倒れ込み、姿を消していった。

 




前回の投稿でエキドナ登場による盛り上がりの感想にちょっぴし気合い入れて皆の反応が不自然にならぬように頑張りましたけど、大丈夫っすかね?

読者の皆様からの感想待ってます。

4章でのスバル視点外の放送

  • エミリアの試練
  • ラムの告白
  • ガーフィールとエルザのバトル
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