いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる 作:リーグロード
目を覚ましたスバルが最初に見たのは、薄暗い廊下の床だった。顔を上げて周囲を見渡すと、そこは自分が入った遺跡の中だと気づく。
後ろを振り返ると、かなり歩いたはずなのに出口の光がはっきりと見えている。戻された地点が出口の近くだったのか、それとも歩いていたのは幻の中だったのかは定かではないが、とりあえずスバルは光に導かれるままに出口に向かう。
『誰かに……なんか言われたような……?』
「記憶がない?さっきの誓約とやらのせいか」
「まあ、嫉妬の魔女のように破った際のペナルティを与える術がないのならば、記憶を奪うのが手っ取り早いだろうからな」
スバルの独り言に対して尚文が反応し、その原因について推測を立てる。それを肯定する形で、アインズも自身の考えを語る。
実際、アインズも同じような状況なら、コントロール・アムネジアの魔法でスバルの記憶を書き換えるだろうという判断からだ。
そうして、スバルが遺跡から出て最初に目にした光景は、地面に倒れて目を回しているオットーの姿だった。
『オットー!?』
『そんなッとこから堂々と、いい度胸してんじゃァねえか余所者』
突然声をかけられたと思ったら、スバルは背後にいた誰かに持ち上げられ、そのまま空高く投げ飛ばされてしまう。一般人並みの身体能力しかないスバルでは、下手をすれば致命的な高さまで飛ばされ、地面に激突するかと思われたが、咄嗟の判断で駆けつけたパトラッシュが竜車をクッション代わりにしてスバルを受け止めた。
「へぇ~、指示もなくあんな一瞬で動けるなんて、しかもパトラッシュってスバルから調教も受けてないのに、随分と利口な子だね」
調教師としてパトラッシュの一連の動きの見事さに、アウラは感心したように呟いた。その表情はまるで是非とも手に入れたいと思うコレクターのようであった。
そんなアウラの様子を見て、保護者であるアインズは、もし自然の生物であれば捕まえてプレゼントしてあげたいと思ったが、スバルの地竜であるため、ここから戻れたらスバルに交渉次第で譲ってもらえないかと内心で真剣に考えていた。
「にしても、スバルを助けるためとはいえ、随分と乱暴な動きだったが、中にいるエミリアは無事なのか?」
心配するターニャだったが、スバルもすぐに同じ考えに至り、竜車の窓を開けて中を確認すると、傷一つなく無事に眠っているエミリアの姿を見つけることができた。
『はっ!痺れる判断だ!いい地竜だな!』
「ガーフィール!?ここであいつが出てくるのか!」
「うお、マジかよ!襲撃者の正体がアイツなのは安心かもしれねえけど、あの中二病野郎が敵はスバルとオットーじゃキツイだろ」
ようやく姿が現れた襲撃者を見て、尚文とカズマが驚きと同時に厄介事に発展するだろうと顔をしかめる。
事実、ガーフィールの敵意は緩むことなく、それを察知したパトラッシュが単身でガーフィールに突撃を仕掛ける。
微動だにせず棒立ちのままのガーフィールの無防備な肩を食い千切らんとするパトラッシュ。
『いい女じゃねえか、てめェ!』
にも関わらず、ガーフィールは涼しい顔でパトラッシュの突進を受け止め、食われた肩も鋭い牙が食い込むことなく、無傷を貫く。
「マジか!盾の勇者でもないのにあの防御力!?」
「さ、流石は物理系紅魔族だな……」
あまりにも違いすぎる格の差に、尚文とカズマは驚きの声を上げる。
しかし、驚くべきはその防御力だけではなかった。
『痛てェ目には遭わせねェ!!ちーっと寝とけやあああッ!!!』
パトラッシュに肩を食われた状態のまま、プロレスの投げ技のように首を掴み、その巨体を投げ飛ばす。そんな信じられない光景に、口をあんぐりと開けたまま固まってしまう者もいた。
「信じられん腕力だな。それに、あの牙で嚙みつかれても血の一滴も出ないのは亜人という種族故か、それとも何らかの加護とやらが働いてるせいか?」
「ふむ、恐らく後者だろうな。もちろん、あちらの世界の獣人種特有の力も関係しているかもしれないが、可能性としては加護の影響が大きいと私は考える」
ガーフィールが見せた圧倒的な強さに、ターニャとアインズが考察を始める。
そんな2人の様子に、ヴィーシャは思わず乾いた笑みを浮かべながら、
「こんな場面でも相手の力の分析だなんて、流石は大佐とアインズさんですね」
「うふふ、まあ、当然よね。アインズ様はナザリックで最も知恵深い御方ですもの。どんな事態が来ようとも、それにも備えて完璧に対応策を練っておくのが、アインズ様の英知の高さですもの」
「アルベドの言う通りでありんす」
「そうそう」
「ぼ、僕もそう思います!」
「まったくですね」
「シカリ!」
ヴィーシャの言葉を拾い上げたアルベドが鼻高々とアインズの自慢をすると、他の守護者達もアルベドの言葉に賛同する声を次々と上げる。
そんな身内の反応に、アインズは手で顔を覆いながら「そこまで褒められるほど深く考えてないんだけどなぁ……」と、誰にも聞こえないように小声で呟いた。
『てめェらは半殺しにして森の外に捨てッてやらァ!ここのこと誰にも言わねェって誓えるようになってからなァ!』
『待て!お前、フレデリカの関係者だろ!?』
『────ッ!』
ガーフィールの拳が振り下ろされる直前、スバルの叫び声にガーフィールの動きが止まった。どうやらビンゴだったらしい。
その後も短絡的なガーフィールが殴りかかってきそうになったが、なんとかその前に誤解を解き、拳を収めさせることに成功した。
「ふぅ~、見ててヒヤヒヤしたぜまったく。アイツの言動っていちいちチンピラじみてて、ほんと怖えんだよな~……」
「ヒキニートのカズマさんって、ああいう人種が苦手だものね。プ~クスクス!」
余計な一言でからかってくるアクアの頬を無言で引っ張りながら、無事に誤解も解けてロズワールの元へ向かうスバルたちを見守る。
『完全にやられ損なんですが、この怒りはどこへやればいいんですかねぇ!?』
『うるっせェ御者だな。謝っただろうがァ!』
先程まで殺す気レベルの敵意を放ってたとは思えないほど、竜車の中でリラックスしているガーフィールの姿は、確かに昭和のヤンキーを彷彿とさせる身勝手さだ。
グチグチと殴られて文句を垂れるオットーを無視して、ガーフィールは寝ているエミリアを指して確認する。
『ロズワールの野郎が抱えている銀髪の半魔……だろ?』
『ハーフエルフ!だ!二度とそんな呼び方すんじゃねえぞ』
『ハッ、なんだなんだ、気合い入った声も出せんじゃァねェか』
「ちっ、これだからガキは、デリカシーのない。私はああいった礼節の足りないガキは嫌いだ。諸君らはありえないと思うが、もし私の前であのような見苦しいマネをしようものなら──分かっているな?」
「「「「「はっ!!!」」」」
恐ろしさから思わず起立して敬礼の構えで返事をヴィーシャたち。
それを後ろの席で見ていたレルゲンの脳裏には、彼女を幼女の皮を被った化け物と評するきっかけとなった士官学校での、学生が遅刻した時の出来事が思い浮かんでいた。
まだガーフィールが転校してきて日が浅いが、風紀委員であるターニャと乱暴で粗雑なガーフィールがぶつかるのは必至だろう。そうなれば担任である自分が止めに入らないとだろうから、気が気でないレルゲンであった。
「ううぅ……、胃が……」
そうして密かにレルゲンが将来の不安で地味に胃を痛めていると、眠っていたエミリアが目を覚ました。
『誰……!?言っておくけど、スバルには指一本触れさせないから!』
『待って、エミリアたん!嬉しいけど、男としてすっげえ複雑だし、大丈夫だから!』
「ぶはははははっ!スバルの奴、男としての威厳ねえな!!」
「カズマ、お前そうやってスバルのことを笑ってるが、いざという時に私を盾にするようなお前が笑えるような立場ではないぞ」
カズマが腹を抱えて涙が出そうなほど笑い転げる様子に、ダクネスは呆れつつも嗜める。
そんな中、エミリアは相手がガーフィールだと知るとすぐに警戒を解いた。
エミリアも落ち着いたことで、スバルが改めてガーフィールに避難してきた皆の無事を確認する。
『疑うのァそっちの自由だけどな。今さら引き返すなんざできやしねェ。どっちにしろ、もう結界は越えッちまったんだ』
『え……?もう結界を抜けちゃったの?いつの間に?』
『おいおい、勘弁しろや。そもそも、結界に近付いたッから、てめェは寝てたんじゃねェかよォ』
「ふむ、しかし、結界に近付いたから気を失ったとは。事前説明が全くされていないのは、ただの過失なのか。それとも何らかの狙いがあってのことか?」
「『聖域』それに魔女エキドナが口にしていた『試練』、どうにも今回も一筋縄ではいかない様子ですね」
ガーフィールの説明に今回の聖域の避難民とロズワールの迎えに一波乱が起きるとアインズとデミウルゴスが予想する。
その予想に、薄々とそのことに勘付いていた皆も顔をしかめるように覚悟する。
『そういえば、あの石が光ったのも……』
『同じタイミングだった』
フレデリカから渡された石を取り出してみせると、ガーフィールの視線がその石に注がれる。
『そういや倒れたのはエミリアたんだけだった』
『ハッ!結界がてめェら無視してこの女にしか反応しねェのは当然だろうがァ。結界に引っ掛かるのはハーフエルフに限らねェ、俺様や他の連中もそうだ。なんせ……』
『アナタたちも混血ってこと?』
『つまり『聖域』ってのは、亜人族の中でも、混血の人たちが暮らす場所ってことか』
『ご名答だ』
「随分とおかしな結界だ。ハーフにしか通用しない。いや、効果のない結界にどのようなメリットが?」
「それに、ガーフィールの今の言い方では、どうにも結界に守られているというよりも、阻まれているという印象を受ける」
アインズとターニャが、ガーフィールの言葉から結界に隠されているかもしれない謎を紐解こうと思考する。
『ロズワールは『聖域』なんて気取って呼んじゃいるが、ここァそんなお綺麗な言葉の似合う場所じゃねェ。半端者の寄せ集めが暮らす行き詰まりの実験場だ』
「実験場とは、随分とまた聖域には似合ない単語が出てきましたね。しかし、実験場……。ふむ、少々興味が湧いてきましたね」
「デミウルゴス様。今はここからの脱出が優先事項の筈。くれぐれもご自身の趣味に走られては困ります」
「おや?この魔法もスキルも使用できない空間では相手の出方を様子見る以外の選択肢はない状況。ならばこそ、アインズ様もこうしてナツキ・スバルの人生とやらの上映会を観ているのですから、臣下である我々も大人しく観てるのが正しいのではないかな?その上で、ナザリックに利益を出す方法を見つけ出すことこそが、真に忠義を重んじる忠臣だと私は思うがね」
バチバチと見えない火花がデミウルゴスとセバスの間に走る。
普段の学園生活では接点のない2人が、この上映会では何度も衝突する。その様子を見て、ナザリック勢以外の皆は「本当に仲が悪いんだな」と遠巻きに眺めている。
「はいはい、その辺でお互いの言いたいことは一旦置いておいて、そろそろ次の展開が始まりそうですよ」
パンドラが手を叩いて喧嘩を止めさせ、映像に意識を戻らせると、竜車の前に1人のメイドが姿を現した。
『戻ったの、ガーフ。ずいぶんと遅かったようね』
『ラム!』
異世界かるてっとの3期次第で反応が変わりそうな回になりました。
個人的にガーフィールってカズマよりもターニャに怒られそうなキャラになりそうな予感。
スバルの第二の試練後にIFストーリーを入れる
-
OK
-
NO