いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる 作:リーグロード
パソコンの前に座るよりもテレビでYouTube見ちゃう駄目な作者です。
迎えに来たラムに案内されて辿り着いたのは、村の中で一番大きな家だった。
『どこのバルスか存じ上げませんが、遅すぎる到着で失望したわ。ああ、期待したラムが馬鹿だったわね』
『存じ上げませんって言うなら、最後までその設定を貫き通せよ!』
『ハッ!』
「……はぁ、ラムは相変わらずというか、変わらないんだな」
「ここでレムはどこ?っと、聞いてくれれば、スバルもありがたかったんだろうがな。まあ、そうそう例外なんぞありえんだろうな」
あまりにも変わらないラムの態度に、一瞬レムのことを覚えているのではと尚文は淡い期待を抱いたが、そんな都合のいい展開になる筈がないとターニャは鼻を鳴らす。
そんな2人のやり取りを耳にした周りの皆は暗い顔を床に落とす。
そんな中で、異形種の精神を持つアインズは悲観する気持ちもなく、映像を見つめる。
「ふむ──」
知らぬ間に自分の半身とも言えるレムが記憶から消えているラムのことを考えると──いや、スバルがラムにレムのことを話して信じてもらえなければ、スバルはきっと深く後悔するだろうとアインズは強くそう思った。
「やはり、暴食の権能は凶悪だな。どうにかスバルが潰してくれれば楽なのだが……」
白鯨や怠惰を討伐したとはいえ、高校生の子供に危険な犯罪者とも言える大罪司教を倒してほしいと願う自分は、大人として失格だなとアインズは心の中で自嘲する。
それでもやはり、アインズにとって最も大切なのは仲間たちが残してくれたNPCの存在であり、それ以外のすべてを切り捨ててでも守れるのなら、自分はその選択を取るだろうと自覚している。
『オイ、御者野郎、案内すッからついてこい』
『それ僕のことですか!?今までで最悪の認識なんですけど!っていうかあなたと二人っきりで!?』
『骨は拾ってやるぜ!』
『僕の扱い雑すぎません?』
『何言ってんだ。俺が気絶してる間、お前が居てくれたからエミリアは無事だったんだ。感謝してる』
『おっ、おぉ、えっ、いやまぁ、感謝の気持ちがあるなら……』
『ちょろい……』
あまりに即落ち2コマな展開に、沈んでしまった部屋の空気が、わずかではあるが蘇った。
「それにしても、なんというちょろさ。ゆんゆんに友達だとちらつかせた時と同じレベルのちょろい人間がいたとは……」
「言っとくが、お前も爆裂魔法とか中二病っぽいのちらつかせれば大概だからな」
「ぬあにおっ!!ぐむむ……」
その呆れた物言いに、めぐみんが噛みつきそうになったが、自覚があるのか席から立つことはなかった。ただ、目が紅く光っていることから怒っているのは間違いないだろう。
おそらく、ゆんゆんと同レベルに扱われたことへの反発だろうが、まあ面倒くさい話だ。
めぐみんは普段そっけない態度を取りつつも、内心ではゆんゆんをライバルとして認めており、彼女より優れていたいという欲求がある。これだからツンデレ娘は──。
「けど、オットーって、ゆんゆんと同じで友達いなさそうだし、見るからに幸薄だしと共通点あるから、もし学園で出会ったりなんかしたら、ワンチャン友達になるんじゃないか?」
「は?ゆんゆんに……友達……?」
「おい、なんか壊れたロボットみたいだぞ、めぐみん。つか、わりと気が合いそうな気がするし、本当に友達になったりして──」
「いいえ、ありえません。ゆんゆんに友達が出来るだなんて。もし万が一にゆんゆんがオットーと友達になれたとしても、相手は商人です。ゆんゆんは友達とか友情とか青春なんて言葉をちらつかせればアクアよりも馬鹿になります。もしそうなったら、売れ残った油とか、幸せになる壺なんかを高額で購入させたりという展開に!!」
「え?なに?いま私さらっと馬鹿にされたの……?」
「ならねえよ!……たぶん」
「たぶん!今たぶんって言いましたよね!!決めました。学園に戻ったら、オットーにはゆんゆんのあることないことを吹き込んで、絶対に近寄らせないようにします」
「オットーにかよ!?ゆんゆんに忠告とかじゃなくて?」
「ねえ、めぐみん聞いてる?さっき私よりも馬鹿ってはっきり言ったわよね?」
「なんで私がわざわざゆんゆんに会いに行って忠告しなきゃならないんですか?それに、あの子の事ですし、そんなこと言って下手に引き剝がそうとしたら、逆に興味を持つかもしれないじゃないですか!!」
「ねーってばぁ!?お願いだから私を無視して会話しないでよぉぉぉ!!!」
ついに無視され続けて泣き出したアクアが、めぐみんの肩を掴んでガクガクと揺らし始めたところで、会話は終わった。
仕方なく泣きつくアクアを引き剝がし、めぐみんも紅くなった目を落ち着かせ、泣いているアクアを抱きしめた。
「はいはい、アクアはそこまで馬鹿じゃありませんから。ただちょっと考えなしに行動するクセがあるだけですからね」
「グスッ、ねえ、それって慰めてるの?」
泣きついてくるアクアの頭を撫でながら、めぐみんが適当に褒めて慰めて泣き止ませる。
馬鹿な子だからコロッと騙されちゃうアクアは泣き止んで、「そうよね、私は馬鹿なんかじゃないもんね」と自分の席に座りなおした。
『いや、元気かなと思って。最後に別れた案件が案件だろ、その後連絡が付かなくて、正直すっげえヤキモキしてたからさ』
『見ての通り、ラムは今日も可憐で爽健よ。アーラム村の住人にも被害は出ていないわ、安心なさい』
その言葉に不安顔だったスバルの顔にひとまずの安心が与えられた。
「やっぱり、ラムさんって口調が強いことが多いですけど、実は人を気遣って心配してくれる優しい人ですよね」
「これで、俺の顔を見て姉妹揃って性犯罪者呼ばわりするのを止めてくれたら、俺も文句なしに褒められるんだがな」
ラムの傲慢とも取れる言葉だが、その内心ではスバルを気遣っていることが伝わり、ラフタリアは微笑みを浮かべる。一方で尚文は、以前あの口調で性犯罪者扱いされたことを思い出し、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
とはいえ、それもあの姉妹なりのコミュニケーションだと割り切っているため、そこまでムキにはなっていない。
『あ、あのさ……』
『ねえ、ラム。いつまでも立ち話をしてるのもなんでしょ。案内お願いしていい?』
『かしこまりました』
口ごもるスバルの気持ちを察し、エミリアがラムにお願いすると、彼女はエミリアの望みを叶えるべく移動を促す。
その一連のやり取りを見て、レムの事情を知るエミリアが助け舟を出したことに、アインズは感嘆の息を吐いた。
「ほぉ、天然な部分が目立つ子だが、ああいった機微には敏感なところがあるな。やはり容姿と種族故の苦労がそうさせているのか?」
「だろうな。容姿や肌の色で差別は何処の世界にも存在する。ましてや、過去に実在した脅威と瓜二つともなれば、それは差別ではなく区別の領域だろう。エミリアがそういった類の扱いを受け続けているのはこれまでの出来事を観れば一目瞭然だ」
前世の地球の歴史だけでなく、現在進行形で戦争を経験しているターニャの言葉には、この場にいる多くの者が知らない実体験の重みがあった。
そんな彼女の言葉に影響されたわけではないが、尚文はエミリアに対し同情に近い、尊敬にも似た感情を抱いた。
「それでもなお人のために動けるのは、パックの育て方が良かったのか、それともエミリア本人の性格によるものなのか。いずれにせよ、俺にはない優しさだな」
「そんなことありませんよ。尚文様だってエミリアさんと同じくらいお優しいです」
「うん!ご主人様、エミリアお姉ちゃんと同じくらい優しいもん!」
尚文の呟きに、ラフタリアとフィーロが優しく否定し、そんな3人の心温まる光景に周囲で見ていた者たちは苦笑する。
他者か自分か、乏しめる言葉には違いがあれど、その優しい在り方は尚文が苦手としていたラムと瓜二つだったからだ。
『行きましょう。レムのことも、色んなことも、全部が良くなれるように』
『了解。なにがあっても俺は肉の盾として、エミリアたんを守るよ』
そうして、エミリアに励まされ、決意を新たにしたスバルはようやくご待望だったロズワールとの邂逅を果たすのであった。
感想を貰ったきっかけで書き始められたので、感想という名の燃料をくれればやる気出します(多分)
4章でのスバル視点外の放送
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エミリアの試練
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ラムの告白
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ガーフィールとエルザのバトル