いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる   作:リーグロード

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お互いに分かり合えう為の歩み寄り

 

 スバルとエミリアがラムに案内されて、ロズワールのいる部屋に入った途端、視界に映るのは包帯をミイラのように巻いた重傷のロズワールの姿だった。

 

『会ったらどついてやろうと思ってたんだが、どうしたんだよ?』

 

『アナタがこんな大怪我するなんて……』

 

 まさかのロズワールの状態に絶句するスバルとエミリア。

 それは他の皆も同じ反応だった。

 

「こいつは……」

 

「まさかの状態だな」

 

 魔女教なんて面倒事をスバルに任せっきりにしていたロズワールに、内心「これだから貴族は!」と怒り心頭だったカズマ。しかし、全身包帯だらけのロズワールを目の当たりにすると、顔を引きつらせながらも文句の一つも言えなかった。

 ようやく口から出たのは、ロズワールがなぜこんな大怪我を負ったのかという疑問の声で、それにアインズも驚いたように呟いた。

 

「まさか、ガーフィールがこれをやったのか!?」

 

 今現在の情報でロズワールにこれほどの大怪我を負わせることが出来そうな者など、ガーフィールくらいだとカズマが驚くが、冷静に戦力の分析が出来るターニャがこれを否定。

 

「ロズワール先生は魔法の天才だ。本人のふざけた性格を抜きにすれば、我々の中でも屈指の真っ当な実力者だ。ガーフィールも強いだろうが、魔法という遠距離攻撃が主体かつ、空を飛べるロズワール先生に対抗出来る手段を持ち合わせているとは考えづらい。だとすれば、先生がこれほどの大怪我を負ったのは余程の不測の事態に陥ったのか、あるいは()()調()()()()()()()()

 

「つまり、ロズワール先生は同情を誘うためにわざと怪我を負ったというのか?」

 

「まっ、別の異世界だろうが、貴族なんてそういった小賢しい手を使ってくるもんだろ。まったく、ヘドがでる」

 

 ターニャの推測に対し、貴族社会に詳しいダクネスと、王族や貴族に嫌な記憶しかない尚文がそれぞれ反応する。

 2人の言葉を受けて、ターニャの言葉の意図を理解した者たちのロズワールを見る視線は、痛々しいものから胡散臭いものを見る目へと変わっていく。

 

「んだよ。結局はロズワール先生もアルダープのおっさんみたいな嫌な貴族ってことかよ!」

 

「そのアルダープという貴族がどういった人物かは知らないが、まだロズワール先生が故意に大怪我を負ったとは断定出来ない現状では、その評価は時期尚早だろう」

 

 カズマは鼻を鳴らしてロズワールへの悪態を吐くが、アインズは大人の意見でそれをたしなめる。

 その言葉でカズマの怒りは多少冷めたものの、彼の中でロズワールの評価は底まで落ちており、この先の展開でその評価が覆ることはないだろうと半ば確信していた。

 

『ああ、その前に一個だけ。クルシュさんとの同盟は成ったぜ。これで俺を置き去りにした結果に満足かよ』

 

『ああ、満足だ~とも。まさにまさに、君は得難く待望の拾い物だった』

 

 これでロズワールが間違いなく、レムではなくスバルにこそ、クルシュ陣営との同盟を果たさせようとしていたことが確信できた。

 もっとも、現状では、レムの存在が消えているからという可能性もないわけではないが、それならまた別の表現を口にしていたはずだ。

 

『ロズワール、ここは何なの?ここに着いて。ううん、結界に触ってからだと思う。ずっと胸がザワついて落ち着かないの。聖域なんて呼ばれ方なのに、私には全然そんな風には思えない。むしろそれよりも──』

 

『──魔女の墓場、そう呼んだ方がず~っと納得できると?』

 

 敢えて口にしないようにしていたエミリアの気遣いを鼻で笑うように、ロズワールは彼女の心を見透かす。

 そんなロズワールの意地悪とも言える態度に、カズマらや尚文らのように情で動きやすい者らは、怒りや不快感を表情に出すが、それ以外の理性的なメンバーは普段のロズワールとは些か違う態度に疑問を覚える。

 

「ふむ、やはりどうにもロズワール先生らしくないな……」

 

「うむ、確かに普段から飄々とした態度で人を怒らすような人物であったが、最低限のラインは守る人だったからな」

 

「だとするならば、ロズワール先生にとって、あの聖域──いえ、魔女の墓場とやらはそのあり方を変える程に重要な場所。あるいは、思い入れのある場所なのかもしれません」

 

 ターニャの言葉にアインズが賛同し、デミウルゴスが考察を述べる。

 それを聞いた途端、先程まで不満げな表情を浮かべていたカズマと尚文の顔が、たちまち思案顔へと変わった。

 そうして、ひとまず湧き上がる感情を抑え込み、流れ続ける映像の会話から、情報を得ようと必死になっていく。

 

 それから語られる聖域を生み出した魔女の名や、聖域とメイザース家との関係。そして何より、この地を単なる名称としての聖域ではなく、真に聖域だと認識しているロズワールの想いが伝わる。

 

『それじゃ、その強欲の魔女とメイザース家は昔から……』

 

『──エキドナ』

 

 エミリアの言葉を遮るように強欲の魔女という肩書きではなく、本名で呼ぶようロズワールが告げる。

 

「これで確定か……」

 

「ロズワール先生は魔女エキドナに何らかの特別な思い入れを持っている。それが尊敬か、忠誠か、あるいは……」

 

「なんにせよ、ロズワール先生と魔女エキドナの繋がりはあると思って見て良さそうね」

 

 アインズはロズワールの反応から、魔女エキドナとは家柄としての繋がりだけではなく、個人としても関係があることを確信した。デミウルゴスもまた、ロズワールの感情の動きから、その特別な感情が好意的であることを確信し、アルベドが締めくくる。

 

 そう結論づけている間にも、ロズワールは聖域の結界の効果を簡潔に説明する。 その説明に驚きはなく、予想の範囲内であったため、スバルも特に興味を引かれず、それよりもロズワールの怪我の件に話題を移す。

 

『エミリア様は不思議に思いませんでしたか?』

 

 聞かれたロズワールはため息を1つ零し、代わりにラムが話始める。

 

『聖域に逃れて来た住人たち、それにロズワール様やラムがこうして屋敷に戻らず、この場に留まり続けていることを』

 

『あっ、それは……』

 

『だから、お前が怪我しているからだろ?』

 

『──今、わ~ぁたしたちは全員、この聖域に軟禁されている状況なんだ~よ』

 

『「──は?」』

 

 軟禁──ロズワールを相手にそれを実行できる奴がいる、そのことに映像内で驚くスバルとエミリア。いや、2人だけじゃなく、今こうしてロズワールの口から語られた説明に、部屋の者ら全員が驚きの声を上げる。

 

『なんだ、まァだ、たらたら話してやがんのかよォ』

 

『軟禁って、ロズワールの怪我、まさか──!』

 

 まるでタイミングを見計らったかのように現れたガーフィールに、エミリアが睨み付けながら、厳しい口調で問いかける。

 

『ちげェよォ!そいつの傷は試練に拒否された結果だ』

 

『試練……!?』

 

「そういえば、エキドナの奴が別れ際にスバルに試練に挑む資格を与えるって言ってたな」

 

「それが無かったから、ロズワールは大怪我を負った?だとしたら、エキドナはロズワール以上の魔法の使い手とも言えるな」

 

 ガーフィールの口から出た『試練』という言葉に、カズマはまるで思い出したかのように、エキドナがスバルと別れる際に言った言葉を呟く。

 それを踏まえて考えたアインズは、現状を見てエキドナ>ロズワールの式を頭の中で浮かべる。

 

『結界に触れたらどうなるか、そいつは体験済みだろ。あの調子で中に入った混血は、外に出られなくなるのさ』

 

『なぁっ!?じゃあ、エミリアも?』

 

 この時点で、軟禁というのは誰かによるものではなく、結界によるものだと気付く。

 だが、そこに1つの矛盾が生じることにも気が付く。

 

「ふむ、これで結界によって軟禁されたのだと理解は出来た。しかし、結界の効果を考えるに、軟禁されたのはエミリアのみ。ロズワールやラム、そして村の住人らは自由に出入りが可能な筈だ」

 

「いや、どうやらネタバレがあるみたいだぞ」

 

 結界の軟禁による矛盾を考えるターニャの思考に、尚文が割り込む。

 

『結界を解くには墓所の試練に挑むしかねえ。だが、混血以外の奴が試練に挑めば──」

 

 最後まで口に出さず、ロズワールの方に顎をしゃくる。それが答えのようなもの。

 

『村の連中は一か所に集めてある。暴れねェ限りは手は出さねェ。三食昼寝付きだァ』

 

「なるほど、結界とガーフィールの両方による軟禁か」

 

「だが、正直理解に苦しむな。この程度の人質の条件など、ロズワールが回復すれば全てお釈迦だろう。それとも、ガーフィールと同程度の実力者がまだいるのか?はたまた、この一件にロズワールが裏で噛んでいるのかのどちらかだろうな」

 

 ターニャはロズワールたちが動けなかった理由に一応納得したものの、まだ理解できない部分も残っていた。その部分について、尚文は事の真意を測りかねている様子を見せていた。

 

「え?え?どういうこと?」

 

 状況をよく理解出来ていないアクアはキョロキョロと周りを見渡しながら、困惑している。

 そんな状況をよく理解していないアクアに、めぐみんが懇切丁寧に説明を始めた。

 

「いいですか。現状ではエミリアが王選候補者に立候補した今、領地に魔女教が乗り込んでくる可能性が高く、ロズワール先生は領地を任された貴族としての防衛の責任があります。そんなロズワール先生が回復したならば、いくらガーフィールが人質を取ろうとも、ラムの2人がかりならば人質の回収も可能。それを付き合いの長いであろうガーフィールが見落とす筈もありません。もし仮に人質の警護にガーフィールと同程度の者がいれば回収は困難ですし、あの怪我がロズワール先生の自作自演ならば、今こうしてガーフィールがエミリアを脅しているのはロズワール先生の指示ということになります」

 

「う~ん、つまり、ロズワール先生が悪い奴の可能性があるってこと?」

 

「まあ、簡単に言ってしまえばそうなのですが……」

 

「やめとけ、めぐみん。アクアに陰謀論の説明をしたって、理解なんかできねえよ」

 

 めぐみんの説明にざっくりとした結論を出すアクアを見ながら、カズマがため息混じりに首を横に振る。

 

「なんですってぇ──!!」

 

「く、首を絞めるな──!!」

 

 馬鹿にされたと感じたアクアが、怒り心頭でカズマの首を絞め付ける。

 そんなふざけた2人を見ていた尚文が呆れながら頭に手を当てる。

 

「いい加減にしろ。じゃれ合うのは結構だが、夫婦漫才は帰ってからにしておけ」

 

「「夫婦じゃない!!」」

 

 そうして2人の諍いを止めている間に、ロズワールたちとの話し合いを終えたスバルが、軟禁されている住人の元へ単身で乗り込んでいく。

 

『スバル様!』

 

『よくぞご無事で』

 

 どうやらスバルは住人たちからかなり信頼されているようで、彼が姿を見せただけで、軟禁されていた住人たちの表情が一気に明るくなった。

 

「本当に、スバルはアーラム村の住人たちにとって、希望の存在になっているのだな」

 

「だな。まあ、正直、今までの活躍を見てれば当たり前かもしんねぇが」

 

 住人たちの反応に、ダクネスが感心して笑みを浮かべ、カズマもまた友人の評価に誇らしく笑う。

 

 集まってくる住人に事の次第を説明し、他の住人の無事と敵の撃退を伝えると喜びの声が上がる。

 っが、すぐに自分達の置かれた状況を思い出し、その声が沈む。

 

『だけど大丈夫。何故なら皆を解放する為に試練に挑んでくれる子がいるからだ!』

 

『それって……』

 

『もしやスバル様が?』

 

 住人たちの期待を向けられたスバルはそれを否定し、真打の為に横にズレる。

 そうして後から現れた者の姿を見て、住人たちから不安による声が漏れる。

 

『皆も知ってる筈だ。王選候補者のエミリア。彼女が試練に挑む』

 

 そのスバルからの言葉に戸惑いや心配する声が響く。

 それはつまり、エミリアに期待をしていない。あるいは、エミリアでは役不足だと思われているのだろう。

 

「う~ん、やはり、まだまだアーラム村の住人とエミリア君との溝は深そうだな」

 

「ですけど、もしここでエミリアさんが活躍したら、きっとアーラム村の住人の人たちもエミリアさんのことを見直してくれますよ」

 

 住人たちの反応から、アインズは両者の信頼関係の浅さに対する不安を口にする。そんなアインズに対し、ラフタリアは、不安と落胆に押しつぶされそうになりながらも、震える手で住人たちに頭を下げるエミリアの姿に未来への希望を見出す。

 

『一つだけお聞かせ願いたい。何故です?先日もあなたは私共に頭をお下げになった。ですが、その手を拒んだのは私共です』

 

「そうだろうな。分からない──すなわち、未知は恐怖だ。そこにどんな思惑があるか分からない。だから人はそう簡単に他人を信用しない。特にそれが昔から伝えられる魔女の容姿そっくりな者であれば当然のこと」

 

(だろうな。俺も無条件であなたを助けますなんて言われたら、詐欺かこちらの懐に入り込むためのスパイ行為だと警戒するだろう)

 

 村長の疑問の声にターニャは頷く。そしてそれはアインズもまた内心で同じように思っており、ここでどう答えるかによってエミリアの運命も大きく変わってくるであろう。

 それをスバルも理解しているからこそ、何も言わず、エミリアを信頼して後ろで見守っている。

 

『私には、今立派なことを答えられる自信がありません。すご~く説得力があって、皆を納得させられるような言葉は何も。ただ、私には何日か短い間だけど、ここにはいない皆の家族と過ごしました。それで改めて思ったんです。家族は一緒にいなくちゃダメだって!私は、あなた達を家族のところに帰してあげたい。そう約束してきた訳じゃないけど。自分の胸に誓ったの。理由はそれだけです』

 

 ところどころつっかえながらも、真剣な眼差しで真摯に自分の想いを口にするエミリアの演説を聞いて、アーラム村の住人の目からはもう恐れの感情は無くなっていた。

 

『エミリア様』

 

『は、はい!』

 

『都合がいいと思われるのは承知しております。ですが、よろしくお願いします』

 

 村の住人全員がエミリアに頭を下げた。

 すなわち、今この瞬間、ようやくエミリアの存在がアーラム村の住人に認められたということだ。

 

「ふっ、流石は我々の委員長だな」

 

「ああ、多少の問題点に目を瞑れば、いい演説であった」

 

「素直にいい演説だって言えばいいのに、ターニャはツンデレだな」

 

「なんにせよ、エミリアが村の住人らから認められたのは大きいだろうな」

 

 エミリアの演説に拍手を送りながら、皆がエミリアを称賛する。

 なんなら、アクアとめぐみんなんかはスタンディングオベーションし、エミリアを信じていたラフタリアは薄らと目尻に涙を浮かべながら拍手していた。

 




めぐみんの説明シーンが蛇足やった気も……。
でも、一話に一回くらいこのすばらしさをぶち込みたかったしと葛藤する俺氏

4章でのスバル視点外の放送

  • エミリアの試練
  • ラムの告白
  • ガーフィールとエルザのバトル
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