いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる   作:リーグロード

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なんか投稿の頻度落ちちゃってすんません!



墓所の試練

 陽が完全に沈み、墓所の周囲に篝火が灯される。

 その墓所の前でいつか見たような光景、エミリアが微精霊に触れ合う神秘的な光景が繰り広げられる。

 

「やっぱこうして精霊と戯れるエルフってのは絵になるよな。まさに王道の異世界ファンタジーって感じで!」

 

「あ~、それは俺も良くわかる。俺の世界じゃエルフは見たことないからな。獣人とかならいるんだがな……」

 

 元々、ラノベ好きなカズマと尚文は映像越しとはいえ、テンプレなファンタジーの光景に興奮している。

 ラフタリアは小声で「ケモ耳じゃなくて、耳長の方が尚文様の好みなのかしら?」と呟き、自分の耳に触れる。

 

『頑張れぇ!負けるなぁ! E・M・T! エミリアたん・マジ・挑戦者!』

 

『ふふっ!ありがとう』

 

 大げさすぎる応援に、エミリアも試練を前に肩の力がほどよく抜けている。エミリアが墓所に近づくと、淡い光が墓所そのものを包み込む。ガーフィールの説明によれば、これが試練に認められた証拠らしい。

 

『行きます!』

 

 少し緊張した表情を浮かべながら、エミリアは墓所の中へ足を踏み入れる。そして、ついに試練が始まる。

 

「さて、これがアニメや漫画なら、悪戦苦闘しながらも、村の住人に認められた自信が後押ししてハッピーエンドって感じだろうが」

 

「異世界でも、現実って厳しいからな。特に、スバルのとこの異世界は手加減とか手心が一切ない鬼畜仕様だもんな……」

 

 白鯨と魔女教徒の討伐を成功させた後のレムの惨事が尾を引っ張っているのだろう。

 尚文とカズマはこの試練でエミリアがどんな困難に直面するのかを覚悟した顔つきになる。

 

『外に出らんねえのは同情すんぜ。でもなんで自分でやらねえんだ』

 

 責めるような口調のスバルの言葉に、カズマを中心に感情的になりがちな者たちは大きく頷くが、冷静なターニャやアインズのような者たちはそこに何らかの理由を感じ取り、黙って事の成り行きを見守る。

 

『ちっ!やれんならやってんだよ……』

 

 ガーフィールの呟くような小さな声に、普段のガーフィールの態度とこれまでの行動から訳アリだと、ようやくカズマ達もここで気付く。

 だが、一体どういう理由があるのかと考えを巡らせるよりも先に、墓所の光が急に消えて無くなった。

 

『試練が続く限り、光が消えるなんて、ありえねぇ!?』

 

『エミリアぁ!!』

 

 困惑しながらも、ガーフィールの口にした言葉にスバルは即座に墓所へと飛び込む。そして、驚くことにスバルが近づくと光の消えた墓所が再び光始める。

 

「これもエキドナか、あるいはロズワール先生の計画通りなのか?」

 

 資格を持つスバルが墓所へ足を踏み入れるのを見つめながら、ターニャは考え込むような表情で意味深な言葉を漏らした。

 

「どちらにせよ、試練の内容次第じゃないか?先に中に入ったエミリアがどうなっているか分からない上に、資格を持たない者が入れない墓所の中じゃ、増援は望むべくもない。敵を倒す系統の試練なら、スバルが助けになれる確率は低いが……」

 

「あれだろ、ファンタジー物でよくある過去のトラウマを克服する精神系の試練なら、スバルだったら突破できるって言いたいんだろ」

 

 尚文の発言に対して、オタクコンテンツに詳しいカズマがその意図を的確に汲み取り、続く言葉を予想して話を繋げる。

 2人の会話を聞いたアインズも、ゲーム内で似たようなシチュエーションや、ギルドメンバーの友人から振られた話題を思い出し、それらの予備知識を引き出して一定の理解を示す。

 

(なるほど、精神性においては、非凡な一般人であるスバルにも十分攻略の可能性がある。エミリア君は見た目と違い、その内面は少々幼い。武力ではなく精神を試す試練では、少し厳しいかもしれない。いや、現状を鑑みれば、既に失敗したと考える方が妥当か……)

 

 アインズの予想は的中していた。墓所に入ったスバルが奥で見たのは床に倒れ伏すエミリアの姿だった。

 

『エミリア!?』

 

 慌ててエミリアに駆け寄ろうとするスバルの耳に誰かの声が聞こえてきた。

 

『まずは、己の過去と向き合え』

 

 スバルの声らしきものが聞こえた瞬間、スバルは転ぶように地面に倒れ意識を失い、映像はブラックアウトした。

 

「今のは……!?」

 

「己の過去と向き合えと聞こえたが、試練はどうやらカズマや尚文の予想通りの内容のようだな」

 

 突如聞こえてきた言葉にターニャが疑念を抱く中、アインズはその声の言った言葉から2人の考察が的中していたことを察する。

 そんな冷静な2人をよそに、他の面々は試練が始まる前に倒れたスバルの安否を心配し、ざわついていた。

 その時、場面が切り替わり、ベッドの上で目を覚ますスバルの姿が映像に映し出される。

 

「あっ、どうやらスバルは無事のようですね」

 

「はぁ~、急に倒れてしまって心配しちゃいましたよ」

 

 どこも怪我をしていないスバルの姿に安堵するめぐみんとヴィーシャ。

 一方で、スバルの周りに映し出されたものを見て、現代を知るカズマ、尚文、ターニャ、アインズは驚愕の表情を浮かべていた。

 

「これは元の世界……?」

 

「じゃあ、スバルは自分の世界に一度帰ってたってのか?」

 

「いや、スバルが倒れる前に聞こえてきたあの言葉。もしその通りだとするなら、精神の世界によるもの……つまり、あそこは心象風景である自分の部屋ではないか?」

 

「なるほど、つまり試練はもう始まっていると?」

 

 4人が口々に疑問に思ったことを口にしていると、そんな疑問を吹き飛ばすような衝撃の光景が目に入ってきた。

 

『グッッッッッモ──────ニング、息子ォ!!』

 

『はむらびほうてんっ!!』

 

『おいおいおい、どしたどしたどしたよ。朝の目覚めに愛情たっぷりのダイビングプレス、いつものこったぜ。油断大敵火がバーニングじゃねぇの!』

 

『がほっ、えほっ、寝てる相手に……どんな高望みを……っつか、いったい』

 

『またしても、どしたよ。まるで、朝っぱらから全裸の中年親父でも見たような顔してるぜ、お前!』

 

「「「「ええぇ~~~……」」」」

 

 呆れとも驚きともつかない感情が口から漏れる。

 朝から強烈なフライングボディプレスを息子に食らわせた男は、上半身裸で筋肉を誇示するようにポージングしている。

 そんな、ある意味スバルを超える個性の塊とも言える人物の登場に面食らってしまう。

 

「あれ、もしかしなくてもスバルの親父さんか?」

 

「だろうな。顔立ちが似てるのを抜きにしても、言動がそっくり過ぎるだろ」

 

 尚文とカズマが呆れて半笑いになる中、映像はスバルの日常を映し出す。

 他愛ないというには少々プロレス技がガチ過ぎる気もするが、父と息子の過激なスキンシップが繰り広げられる。

 

「なんか懐かしいな。俺も親父とは小学校の頃よくやってたよ。まあ、俺が中学になった頃にはもうしなくなったけど」

 

「カズマにもそんな時期があったんですね。やっぱり、男の子がいる家庭ってそういうものなんでしょうか。もし私も女じゃなくて男だったら、父とあんな風に喧嘩してたんでしょうか?」

 

 カズマの懐かしむような言葉に、めぐみんはもしもの自分を思い浮かべる。

 喧嘩っ早くて、魔法職の筈なのに冒険者のカズマよりも地味に腕力が強いめぐみんが男だったら、間違いなくわんぱくな息子になっていただろうと、カズマを筆頭にめぐみんを知る者たちは密かに確信する。

 

 そうして、しばらく父と子の過激なスキンシップを続けていると、コンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。

 

『──ちょっと二人とも。お母さんそろそろお腹すいたから、朝ごはんにしたいんだけど』

 

「あれは、スバルさんのお母さんでしょうか?」

 

「顔立ちは父親似だが、目つきは母親似なようだな」

 

 新たに現れた女性の目を見て、ヴィーシャとターニャはすぐに彼女がスバルの母親だと察した。

 

 言動からして彼女はかなり天然らしく、そんな彼女に文句も言わずに従う様子から、家庭内のヒエラルキーでは母親が圧倒的な強さを誇っているように見える。

 

 平和な家庭、楽しげな声が響く朝食の風景。献立が少し変わっていることを除けば、特におかしなところもなく、暗い影などどこにも見当たらない。この光景の何が試練だというのだろうか?

 そんな疑問を抱きつつ、スバルの家の日常は何事もなく過ぎていく。 皿の上から料理が消え、空っぽの皿は母親によってキッチンへ運ばれ洗われる。

 その後、仕事や学校へと向かうのが普通の流れだが、スバルは「昼まで寝てる」と不貞腐れた様子で自分の部屋へ戻っていった。

 

「やっぱし、スバルは不登校の引きこもりか……。本人の口から聞いてたけど、アイツの態度から全然想像つかなかったんだよな」

 

「その点、カズマさんは見た目と言動ですぐにヒキニートって分かるものね!」

 

「あ゛ぁ?失礼な事を言うのはこの口かぁ?」

 

「い、いひゃいいひゃい!!!」

 

 ナチュラルにバカにしてくるアクアに、怒ったカズマがお返しとばかりに両頬を引っ張りながら仕返しを始める。

 そうして、夫婦漫才のようなやり取りをしている間にも映像は流れるように過ぎ去り、スバルが自室のベッドで体調を悪そうにしながら、目の前の時計と睨み合いをしている。

 

「スバルさん、一体どうしたんでしょうか?」

 

「ねえねえ、ご主人様。黒髪のお兄ちゃん、どうして苦しそうなの?あの緑の豆みたいなのいっぱい食べちゃったから?」

 

「さあな、不登校の奴の気持ちは俺には分からないが、アイツなりに色々考えたり悩んだりしてるんだろうな。あとフィーロ、何でも食べ物と結びつけるのはやめろ。絶対にそれじゃないから」

 

 引きこもりの概念を知らないラフタリアにとっては、スバルの様子が異常に見えるのも無理はない。しかし、現代社会の引きこもり問題を知る人間であれば、学校に登校する時間に恐怖を感じているのだと理解できるだろう。

 時計の針が8時を過ぎた途端、行かない理由を得たことでスバルは安堵の息を吐いて苦しみから解き放たれたような顔をする。

 だが、すぐさまスバルは胸を押さえて再び苦しみだす。

 

『うっ!なんでだ?いつもなら落ち着くはずなのに』

 

「不登校ってのはこんなに苦しむものなのか、カズマ?」

 

「なんでそこで俺に聞いてくるんだよ。ってか、絶対に違うって分かって聞いてきてんだろ!?」

 

 さすがに尋常ではないスバルの苦しみ方に、引きこもり経験者であるカズマに尚文が問いかける。

 まさか尚文からそんないじりのような話題を振られるとは思っていなかったカズマは、驚きながら思わず声を荒げて常識的に考えてそんなことないと否定する。

 無論、怒りながらもこれが尚文なりに場を少しでも和ませる程度のジョークのようなものだとはカズマも理解している。

 

「しかし、この苦しみよう。それにスバルが元の世界に戻ったことに疑念を抱いていないことからも、試練に関する記憶以外は抜け落ちていると見て間違いないな」

 

「なら、この試練のクリア条件は不登校の克服といったところか?」

 

 ターニャとアインズの2人は、スバルの苦しみや状況をもとに現状を分析し、試練の内容やクリア条件を推測するものの、解決への道筋が見えてこない。

 社会人である2人にとって、不登校に至る理由やその心情を理解するのは難しいからだ。ディストピア社会で生まれ、小卒でも幸福と感じるアインズと、規律や規則に縛られてきたターニャでは、その感覚が大きく異なるのだ。

 

「それにしても、学業を放棄するとは……。これまでの活躍で見直していたが。いや、まだ死線を潜り抜けていない学生にあのような過度な期待をするのは酷かもしれんな」

 

「そうだな。しかし、スバルが不登校になるなんて少し意外だ。普段の授業態度は真面目とは言えないが、それで登校拒否するようなタイプには見えないし、いじめとも無縁そうだろうから、一体何が原因なんだ?」

 

 学ぶ態度は些か不真面目ではあるものの、元の世界の仲間達や別の異世界に飛んだ同郷のカズマや他のクラスメイトらとも、良好な関係を築いているスバルの不登校の原因が分からず、アインズは首を傾げる。

 スバルの不登校の理由に首を傾げていると、朝から変わらずのハイテンションのままのスバルの父親がマイケルジャクソンのムーンウォークを無駄にクオリティの高い動き披露して現れた。

 

『ポォウ!ちょーっといいかよ昴』

 

『……返事の前に入られたら声かけた意味なくね?』

 

『おいおい、親子という固い絆で結ばれた俺とお前の間にそんな必要……。いや、あるよな!ごめん!思春期だもんな。悪い、十分したらまたくるわ!』

 

『余計な気まわすなよ!別に何もしてねぇよ!それで……』

 

『そうだな。昴、好きな子とかいる?』

 

『中学生か!?』

 

「うわ~、親と……それも父親と恋バナとか、スバルも苦労するよな」

 

「まあ、気持ちは分からないでもありませんが、いい親じゃないですか。だってほら、先程まで苦しんでいたスバルの顔色も心なしか良くなっていますよ」

 

 めぐみんの言う通り、先程まで胸を押さえて罪悪感か、はたまた自己嫌悪によるものか、負の感情に押し潰されていたスバルの顔が少し和らいでいる。

 そんなスバルの心情の変化を、まるで自分のことのように喜ぶめぐみんは、自分の事のように喜びながらカズマに同意を求める。

 

「……っま、そうだな」

 

 確かにスバルの親はどちらも無茶苦茶な性格の人物ではあるものの、その根底にはスバルへの愛情がある。

 ごく普通の一般家庭で生まれ育ったカズマの目から見ても、あの両親はまぎれもなくいい親なのだろう。

 

「あっ、そうか。スバルが時折捻くれるのってもしかして……」

 

「ん?どうしたの、カズマさん?」

 

「いや、なんでもねぇ……」

 

(スバルの奴が両親にコンプレックスを持ってるだなんて、俺の勘違い……だよな?)

 

 確証はない。理由だって今まで見てきた光景で不意に自分だったらあの2人の個性に押し潰されるかもしれないと思ったからだ。

 結局、自分は頭が良いと言っても、せいぜい悪知恵が働く程度の人間だ。他人の深層心理を読み解く能力なんてないし、ターニャやデミウルゴスみたいに、人の精神を覗けると言えるほど賢いわけでもない。

 だからこれはただの自分の勘違い、それでいいんだ。そう思い込むことにした。

 

『ま、なんだ。いい天気なんだし──ちょっと、外で親子トークと洒落こもうぜ』

 

 そうして連れ出されたスバルは、桜の咲く道を歩いていた。天気は良く、気温も快適そうで、まさに散歩日和だ。それなのに、父親の後ろをついて歩くスバルの表情は、普段とは違ってどこか憂鬱そうだった。

 その理由も分かる。街を歩けば誰もが父親に気軽に声を掛けてくるのだ。それはまるでアーラム村でのスバルのようだ。しかし、その輪の中にスバルは入ろうとせず、まるで自分には父親と肩を並べる資格がないとでも思っているかのようだった。

 

「ど、どうしたんだろ?いつものスバルさんっぽくないっていうか……」

 

「うん、な~んかよそよそしいっていうか、家と違って外では壁を作ってるって感じがするね」

 

 双子の姉弟はスバルの普段とは違う態度に、どこか違和感を覚えていた。

 しかし、そんな2人の疑問に答える者はおらず、そのまま映像は流れていく。

 そうして歩くこと数分、また父親の関係者と出会う。その人は平日の昼間に学校に行っていないスバルに質問するが、それに対して上手く答える事の出来ないスバルに頭痛が襲い掛かる。

 

『すみません……』

 

『あ、おい、こら、昴!悪いな、おっちゃん。また今度、ゆっくり寄らしてもらうからそんときに話そう』

 

『あ、ああ……なんか、すまんこと言ったみたいだな。あの子に、謝っておいてくれ』

 

『謝られるようなことねぇよ。後はあいつの問題なんだから』

 

 突如襲ってきた頭痛を理由に、後ろめたさから逃げるスバル。その様子に、映像を見ている皆はどうしようもない表情を浮かべている。

 

「辛いよな、理由もなく学校をズル休みしたことを聞かれるのって」

 

「カズマさんも昔はご近所で噂されてたんじゃない?」

 

「いやいや、俺は平日の昼間は家から出ないし、活動するのは夜中だから、ご近所さんに噂されるようなことはないぜ」

 

「理由がくだらないわね」

 

 引きこもり生活で培った習慣を得意げに語るカズマに、アクアはジト目で呆れている。

 なんなら、周りで聞いていた人たちも呆れているし、ターニャに至っては頭の中で真人間改造プログラムを組み立て始めていた。

 




いせかるの3期PVを見て、七陰とプレアデスの絡みとか早く見てみたいと密かに興奮しています。
っというか、PVでガーフィールとアルベドが取っ組み合いしてるので、それが今後の作品にどう影響するか戦々恐々としてます。

4章でのスバル視点外の放送

  • エミリアの試練
  • ラムの告白
  • ガーフィールとエルザのバトル
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