いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる   作:リーグロード

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腸狩り再来

 ロズワールとの不快な話し合いが終わると、その後味の悪さに舌打ちする者や、ロズワールの狙い──あるいは聖域の秘密について考えを巡らせる者、単純にスバルの人生を面白半分で眺める者など、それぞれ異なる反応を見せた。

 

「しかし、一体ロズワール先生は何を考えてるんだ?」

「騙そうとしているというよりかは、スバルを育てる……いや、望む方向に誘導しようとしている感じはするな」

 

 あの話し合いからロズワールの真意を見定めようと、アインズとターニャが意見交換する。

 そして、そんなターニャの意見に同意するかのように、デミウルゴスもそのメガネをキラリと光らせて、考察を口にする。

 

「恐らくですが、ロズワール先生はナツキ・スバルの死に戻りの力を知っているのではないでしょうか?」

「死に戻りの力をか!?」

「ええ、そう考えれば、魔女教の襲撃に何の対策もしていなかったことにも、一応の説明はつきますね」

 

 誰かに口外することすらペナルティになる死に戻りの力をロズワールが知っているというデミウルゴスの発言に、ターニャが予想外だといった風に驚く。

 

「いや、確かに、デミウルゴス君の言う通りならば、先の話し合いでのロズワール先生の発言にも納得は出来るが……」

「なにより、ロズワール先生は強欲の魔女であるエキドナと何らかの繋がりを持つ存在。ならば、魔女の力である権能とやらの恩恵によって、ナツキ・スバルの死に戻りの力を把握していたとしてもおかしくはないのでは?」

「ふむ、言われてみれば、どうしてこんな単純なことに気づかなかったのかと、自分でも呆れてしまうな」

 

 デミウルゴスの考察を聞いたターニャは、納得したように頷き、そこから導かれる結論についてそれぞれの考えを交わし始めた。

 周囲では、その高度な読み合いについていけず、目を白黒させる者が何人かいる。その中の1人であるアインズも、余計な発言をして議論に巻き込まれないよう口をつぐみ、まるで置物のような気分で2人の会話に耳を傾けていた。

 

 そんなアインズと同じく2人の会話についていけないポンコツ女神は、我関せずとばかりにスクリーンを眺めていると、夜空の下で密会するかのようにスバルと出会うエミリアの姿に気づいた。

 

「あ、エミリアが起きたみたい」

 

 その一言に、ロズワールの狙いを考察していた2人と、それを聞いていた者らの意識がスクリーンに集中する。

 

『ごめんね、また失敗しちゃって』

『気にし過ぎなくていいよ。試練の挑戦権は消えないみたいだし、後はエミリアたんの気持ち次第──』

『私の、気持ち……』

『辛そうなのは見てて分かる。でも、この聖域の解放は君がやらなきゃ意味がない……と思う。その為に、また挑める?』

 

 試練に失敗して消沈するエミリアにスバルは優しく期待を掛ける。

 本人は気づいていないかもしれないが、それは試練で見たスバルの両親が彼へと向けていたのと同じ期待だ。

 

「やっぱり、あの人の子だな……か。まさにその通りだな」

 

 それは、試練で見た過去のスバルを縛りつけていた呪いとなってしまった言葉。それを今のスバルを目にして、ターニャはふとそれを思い出し、苦笑する。

 きっと元の世界でも、スバルと父親を見ていた人々は同じような気持ちを抱いていたのだろう。

 

『スバルの、馬鹿』

『って、急に罵倒!?』

『そんなに優しい目と声で言われて、出来ないなんて言えっこないじゃない。私、あんまり頭はよくないけど、これが私のお役目ってことくらい分かってる。甘やかさないで、信じてて……』

 

 まるでこの先にハッピーエンドが待っているかのような物語みたいな展開に、誰かがほっと息をついた。

 異世界転生初日、屋敷での一週間、魔女教の襲来と、数えだしたらキリのないスバルの死に戻りと幾度もの悲劇──そんな出来事がこの聖域では起こらないと、そう思えるような。

 

 再び試練に挑む。その気概を見せて立ち上がったエミリアが心残りとしているアーラム村の住人の件をスバルが預かる。

 スバルがエミリアを信じ、エミリアがスバルを信じる。ここに至るまでに2人が築き上げた信頼の光景に、カズマを始めとした善性を持つ者たちが温かい目で見守る。

 

 そうして、竜車にアーラム村の住人を乗せて村に帰ろうとする場面に切り替わる。

 

『それにしても、よくガーフィールを説得できましたね』

『まる2日掛かっちまったけどな。エミリアが結界の外に出られない限り、アーラム村の人達は解放しても問題ないって分かってくれた』

 

 まるで事もなげにガーフィールとの交渉を成立させたスバルの一言に、何人かが「へぇ~」と感嘆の声を上げた。

 

「やはり、王都でのクルシュ陣営とアナスタシア陣営との交渉を成功させた経験が活きてるな」

「白鯨に魔女教なんて強敵の討伐要請を敵対する陣営相手にまとめ上げたんだ。これくらいできて当然だな」

 

 スバルの成したことに、後方腕組彼氏みたくターニャと尚文が無自覚にドヤ顔を晒している。

 そんな2人に、カズマは内心で「(うわ~、後方腕組彼氏面してる)」とドン引き気味に思った。

 

 そんな中、スバルが右腕に巻かれた白のハンカチを見て、ラムが口を挟む。

 

『フレデリカが新入りに悪さを働くなんてありえない。そこまで外道に墜ちるはずもないわ』

 

 昔からの顔馴染みでフレデリカの性格をよく知るラムは、スバルが密かに気に掛けている新入りメイド──ペトラが無事だと、さりげなく伝える。

 そのさりげなさが、逆にラムらしい。

 

「やっぱり、ラムさんって口ではスバルさんのこと嫌ってる?ような事を言ってますが、ちゃんとスバルさんの事を見てるんですね」

 

 ヴィーシャが微笑ましそうに言うと、ターニャが肩をすくめた。

 

「だな。あれほどテンプレなツンデレはむしろ清々しいが……メイドとしては落第点だが、人としてならば、あの世界で彼女ほど合格点を出している者はそうはいないだろう」

 

 ラムを認めるターニャの発言に、多くの者が無言で首を縦に振って肯定する。

 

『それと、ロズワール様からの伝言。フレデリカと相対するのに不安があるなら、ベアトリス様を頼りなさい。そしてこう言うの、『ロズワールは質問をしろと言っていた』と』

『質問……?』

『詳しくはラムも知らない。ただ、それがベアトリス様の耳に入れば、状況は変わる。ロズワール様はそう仰せよ』

 

 意味深で不安を誘うその伝言に、スバルだけでなく、それを耳にした尚文も眉間に皺を寄せた。

 

「また何かしらの悪だくみか。ベアトリスを間接的に動かす為にスバルを使っているのか?あるいは、スバルを思惑に嵌める為にベアトリスを使おうとしてるのか?どっちにしろ、ロクでもない事がありそうだ」

 

 屋敷で何かしらの騒動が起こると、確証も無しに尚文は、その伝言から伝わるロズワールの悪辣な思惑を感じ取り、警戒感を強める。

 そんな尚文の雰囲気に当てられて、先程安堵の息を吐いた者たちにも緊張が走る。

 

 そうして、見送りにやって来たエミリアからのおまじないを貰って、ガーフィール案内の元、スバルたちは竜車に乗ってアーラム村へと出発する。

 その道中でガーフィールがスバルに1つの質問を投げかける。

 

『──てめぇ、墓所で『試練』を受けッただろ?』

 

 予想外──ではなく、スバル自身も試練に詳しい者ならば気づいたであろう事実を突きつけられて、一瞬返答に迷う。 

 その反応が答えだとばかしに、ガーフィールは続けた。

 

『隠す必要はねえ。見てりゃわかる』

『それを聞いてどうするつもりだ?』

『簡単な話だぁ。エミリア様の代わりにてめぇが試練に挑むんだよ』

『それはダメだ!それが崩れちゃ前提が──』

『そもッそも、本当に過去なんざ乗り越える必要なんざあんのかよ。俺様もエミリア様が試練に挑むのは見てんだ。折れんのもな。その度にあんな取り乱して出てくるんだぜ。見ちゃいらんねェよ』

 

 エミリアを心配して出てきたその言葉に、スバルは先程の勢いを失いながらも、自らの考えを曲げないとばかりに口にする。

 

『……エミリアは必ず『試練』を乗り越えられるって信じてる。だから俺は……』

『期待すんのは自由だ。けど、エミリア様は本当に過去を乗り越えてェのか?怖い怖いって泣いてるのが本音じゃぁねェのかよ』

『エミリアの本音……』

 

 恋をした彼女に理想を見ていたスバルの盲目が晴れたかのように、ガーフィールの言葉はスバルに突き刺さった。

 そんなスバルの様子に、守護者たちがスバルのエミリアへの認識に呆れかえる。

 

「まったく、呆れたものでありんすな」

「だね。好きになった人に理想を見るのはいいけど、現実は見なきゃいけないよね」

「シカリ、理想バカリニ目ヲ向ケタ結果、現実ニ足ヲ躓カセルナド……」

「で、でも、スバルがそう思っちゃうのもしょうがないっていうか……」

「そうでしょうか?守るべき存在に理想を押しつけて、分不相応の働きを期待するのは少々どうかと思いますがね?」

「そうね、デミウルゴスの言う通りよ。その点でいえば、レムはスバルに対して、期待と同時に厳しさを押し付けた。その結果として、想い人を英雄に仕立て上げたのは素敵だったわ」

 

 そんな守護者たちの会話を耳にした偉大なる支配者(一般サラリーマン)であるアインズはというと……。

 

「(いやいや、マーレ以外どの口でみんな言ってるの!?俺の方がスバルがエミリアに期待しているよりもデカイ期待とか押し付けられてるからね!!?特にデミウルゴス!聖王国での後は流れでみたいな計画指示書を渡されて働かされたこと、俺まだ忘れてないからな!!)」

 

 まあ、失望されて反旗を翻されるよりかは多少はマシとはいえ、重すぎる期待に無いはずの胃がキリキリと痛ませることが多々あるアインズは──、

 

「(いや、ほんとに……期待の押し付けって言葉、俺が一番刺さるんだけど!?エミリアより俺の方がよっぽど被害者だよ!!)」

 

 口には出せない爆弾みたいな想いを胸の中に厳重に封印し、守護者たちの会話をスルーしながらスクリーンに意識を無理矢理に集中させる。

 

『結界が近けェな。俺様がついててやれッのもここまでだ。──持ってけ』

 

 首に掛けていた首飾りをガーフィールがスバルに渡した。

 それは、フレデリカがエミリアに渡した青い輝石の首飾りと同じような物だった。

 

『こっちの事情を話すつもりァねェよ。ただ、てめェが戻ってこなきゃ俺様たちが困っちまう。いざとなりゃフレデリカに見せろ』

 

 それはガーフィールなりのスバルへの信頼の証のようなものなのかもしれない。

 それを受け取ったスバルがアーラム村へ辿り着いたのは夕日の沈んだ頃、アーラム村の住人もオットーも村へ残して、スバルはたった1人で屋敷へと帰還する。

 

「フレデリカが心配ならベアトリスに頼れってロズワール先生は言ってたけど。やっぱし、スバルが1人だけで屋敷に帰るのは不安だな」

「そうですね。フレデリカに出会う前にベアトリスに出会えればいいのですが……」

 

 夕暮れという不気味さが漂い始める時間帯に帰還したスバルを見て、スクリーン越しにカズマたちは自然と息を呑んだ。

 空は赤黒く染まり、屋敷の影はまるで何かが潜んでいるかのように伸びている。

 そんな中、スバル屋敷の中へと入っていく。

 

『誰もいねえのか?』

 

 誰の気配もない広い屋敷の中にスバルの足音だけが不気味に響く。

 そのまま屋敷の奥へと進んで行くと、不自然に扉が開けっ放しにされており、スバルは不安からペトラに巻いてもらった白いハンカチに手を伸ばす。

 

『レム──!レムは!?』

 

 焦りと不安に駆られ、慎重に歩いていたスバルは一転して目的の部屋へと全力で駆け出した。廊下を走り抜け、階段を駆け上がった先で、レムが眠るはずの部屋の扉が開いているのを見て、スバルの脳裏に最悪の想像がよぎった。

 そして、レムの部屋に辿り着こうとしたその瞬間、グチャッと何かが飛び出す音が部屋中に響き、同時にスバルは何かにつまずいて転んだ。

 

「今の、音は……」

 

 何処かで聞いた覚えのある音と、何もない場所で転んだスバルに、カズマの中で猛烈に嫌な予感が膨れ上がる。

 そして、スバルが転んだ原因となるものに目を向けた途端、そこには夕暮れの赤と混じった真紅の鮮血と共に長く伸びた内蔵が廊下に広がっていた。

 

「──はぁっっ!!?」

「スバッ、スバルが!腹を切られて!!?」

「このやり方!まさか!?」

「噓ぉ!?どうして!?ねえ、どうしてぇ!!?」

 

 腸を切り裂かれたスバルの惨状に、カズマたちが悲鳴を上げる。

 

『約束したでしょ。次に会う時まで、腸を可愛がっておいてって』

 

 スバルが見上げた先には、かつて王都で敵対した腸狩りのエルザが、血に染まったククリ刀を手に立っていた。

 その姿を最後に映像は暗転し、スクリーンの光が消えると、暗闇に包まれた部屋でカズマたちは呆然としていた。

 そんな中で最初に口を開いたのはアインズだ。

 

「ふむ、まさかここであの女が現れるとは……」

「あの女って、アインズは知っているのか?」

「ん?そういえば、尚文は屋敷からの参加だったから、スバルが異世界転移した初日の内容は詳しくは知らなかったな」

 

 アインズは、少しだけ思い返すように語り始める。

 先程の女が異世界に来てスバルの最初の死因となった存在で、王都でエミリアの王選参加の条件である徽章を盗もうとして雇われた存在であると説明する。

 

「怪しいな。魔女教に加えて、今度は殺し屋の登場だと?これもロズワールの狙いだっていうのかよ?」

 

 アインズの説明を聞いた尚文は、嫌な予感が的中したことで奥歯をギリッ!と噛み締めた。

 そんな尚文を横目に、ターニャは屋敷に何故エルザがいたのかを考える。

 

「屋敷を襲撃したのは、フレデリカの手引きによるエミリアの暗殺といったところか?それとも、王都で仕事の邪魔をされた私怨だったりする可能性も……」

「いや、どうでしょうか?私としては、屋敷の扉が全て無造作に開けっ放しにされていたことに、今回の屋敷の襲撃の意図が隠されているのではないかと睨みますがね」

「デミウルゴスの言う通りだとしたら、目的は屋敷に保管されているナニカの略奪。あるいは、扉に関するのならば、ベアトリスのいる禁書庫を繋ぐ扉渡りとやらが関係しているのかしら?」

「じゃ、じゃあ、ベアトリスちゃんを狙って、あのお姉さんがやって来たってことですか!?」

 

 アルベドの言葉に、マーレはベアトリスの危機を予想し、顔色を変えた。

 そんな不安そうに焦るマーレに、アウラは元気づけるようにその肩を叩く。

 

「安心しなよ。スバルが死んだんだから、またやり直し出来るって」

「そ、そうだよね……。よかったぁ……」

 

 そんなアウラとマーレの発言だったが、人の命の価値に優先順位をつけたようにも聞こえ、一部の者には癇に障る物言いだった。

 もちろん、2人に悪意はなく、ただ思ったことを素直に口にしただけだったのだが……。

 

「おい、スバルが死んだってのに、冗談でもそんな言い草──」

 

 ちょうどカズマが立ち上がって、そんな2人の不謹慎な発言に物申そうとしたタイミングで、暗転した映像が切り替わり、薄暗い部屋を映すと同時に、腹を押さえて咳き込むスバルの姿が映し出された。

 

「ああ、ごめんねカズマ。流石に今のはちょっと不謹慎過ぎたよねぇ」

「…………」

「──っ!」

 

 空気を読んだアウラの謝罪に、カズマはもう何も言う気になれず、マーレの無機質な瞳に見つめられて少し気圧される。

 

「今回も頑張れよ、スバル!」

 

 聖域の試練に加えて屋敷の襲撃の対応という難題を課せられてしまったスバルの今回のループは、前回よりも難易度がまた上がってしまっているのをカズマは感じ取っていた。

 そして、そんなスバルの苦難はまだ終わらないことを、この時はまだ誰も知る由は無かったのだった。

 

 




もうスバルの死に対するキャラの反応ネタが枯渇し始めてきた。
やる気アップの為にも感想と高評価をお願います。

スバルの第二の試練後にIFストーリーを入れる

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