いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる 作:リーグロード
今回のループは、スバルが試練を受けた直後がセーブポイントになっているようだ。
前回同様、スバルは泣きじゃくるエミリアを連れ帰り、落ち着いた彼女を囲んで話し合いが始まる。違う点があるとすれば、前回のループでガーフィールに言われた言葉をきっかけに、スバルが試練への挑戦権とクリアを報告することだろうか。
『遺跡が光ったのを見てただろ?俺にも『試練』を受ける資格があったんだ。それで、クリアした』
そんなスバルの発言に、皆が驚いたリアクションを取る。
「さて、これがどう変化に繋がるか?」
「いい方向に繋がってくれるならいいが、スバルの人生って最後以外は基本的に失敗ばかりが目立つからな」
スクリーンに映る皆の反応から、アインズはスバルにとって良い方向への変化を期待する。
一方で、カズマの見立てでは逆に悪い方向に傾くんじゃないかと、これまでの展開と自身の苦い経験から嫌な予想をしていた。
『戯言でないのなら、大きな成果だわ。本当なら結界が解ける。ガーフ、結界の様子は?』
『変化ァねェな』
『噓をついたわね。死になさい』
『結論が早ぇよ!!あっ?どうした、ガーフィール?』
『別になァんでもねェよ』
怪訝な顔でスバルを見つめるガーフィール、その表情は、驚きでも喜びでもなく、警戒と苛立ちだった。
そんなガーフィールの様子に、めぐみんが首を傾げる。
「どうしたのでしょうか?試練をクリアしたと聞いたなら、もっと喜んでもよさそうなのに?」
「きっとあれよ!スバルが嘘をついたとか、急なことでまだうまく飲み込めてないんじゃない?」
アクアのそんな言葉に、めぐみんはどこか納得できない様子だったが、それ以上は深く追及しなかった。
そのままスバルの墓所で知った事を話す姿を見続ける。
試練の数や前回のガーフィールの言葉を踏まえて、新たに浮かんだもう一つの選択肢としてエミリアの代行を提案した。
『待てェよ。──黙って聞いてりゃァ、やッけに好き勝手に話進めてやがッけどなァ。俺様ァ、そのお姫様……エミリア様以外が『試練』を受けッのァ反対だ。少なくッとも、テメェにだけは絶対に結界を解いてもらいたいとは思わねェ』
『な──っ!?』
そのガーフィールの反対意見に、スバルと一緒にカズマもまた大きく混乱する。
「はぁ!?エミリアの代わりに試練を受けろって言ったのはお前だろ!?」
「そうです!言ってることが違いますよ!!」
「そうよ!そうよ!自分で言ったことなのにもう忘れてるのぉ!?」
「いや、アクア。それはスバルが死に戻りする前の言葉だから、覚えていないとかじゃないぞ」
カズマの怒りに、めぐみとアクアも乗っかってくる。唯一冷静なダクネスはアクアの発言に訂正を入れていた。
その様子を、この上映会ではもはや定番だなとばかりに冷静に見つめるデミウルゴスはパンパン!と手を鳴らして3人の意識をガーフィールからこちらに向けさせて、喧しい場を鎮めさせる。
「さて、静かになりましたね。皆さんが騒ぐのも理解出来ますが、あまり騒がれては彼らの会話を聞き逃してしまいますよ」
静かになったところで、デミウルゴスは今回のガーフィールの発言の変化を推察して、いくつかの仮説を口にする。
「さて、ガーフィールの発言の変化は一体何が原因か?考えられる理由は3つ。1つはエミリア君が試練に失敗し続けた姿を未だに見ていないから。ガーフィールはどうにも感情的になりやすい性格だからね。前回のループでスバルに代行するように提案した理由も、エミリア君の泣く姿を何度も見たからだろう。2つ目は、前回のループでスバルが見ていなかった場所で、ガーフィールの周囲に何らかの状況変化が起きていた。だから、それがまだ起こっていない今回のループでは彼はエミリア君に試練を突破させたがっている。私の中ではこの2つ目が一番可能性が高いと思っているね。そして3つ目だが、スバルが試練にクリアしたと聞いたから。これが理由になるのは、前回のループでスバルが試練を受けたのを知ってはいても、クリアしたとは知らなかったからだね。この違いが何故影響してくるのか、それは今後のスバルの歩んだ道のりを見れば分かってくるだろう。とまあ、以上の3つの仮設がガーフィールの発言の変化に繋がっているのではないかと私は思っているよ」
指を3本立てて、デミウルゴスの仮設を唱え終わると、その言葉に、カズマたちは思わず黙り込む。
そして、その仮説を聞いていたアインズが、顎に手をやり頷く。
「なるほど、確かに納得できる仮説だな。流石はデミウルゴスだ」
「おお、勿体ないお言葉……!」
「(正直、最初の仮説以外は俺なんかじゃ思いつきもしなかったからな。本当になんでこれだけ優秀なのに、一般サラリーマンの俺のことを自分よりも優れた知恵者だって誤解し続けるんだ!?)」
デミウルゴスの仮説に感心しつつも、自分への評価にだけその優秀さが発揮されないことに頭を悩ませるアインズは、こぼれそうになる溜息をぐっと飲み込み、スバルたちの話し合いへと意識を切り替えた。
『スバルは……。わ……私には任せられないって思うの?私がダメなところを見せちゃったから……。だから、代わりにって』
『そうじゃない。ただ、過去なんて無理に……』
『でも!向かい合わなきゃ試練は越えられないの!嫌なことから目を背けて、スバルに押し付けて逃げて。それで私、どうなるの……』
拗れかけた話し合いは、ラムの提案で幕を閉じた。
そうして、各々が解散するなか、スバルは帰ろうとするガーフィールを呼び止めて話を聞く。
『──ちょっといいか?さっきの俺の提案への反対。ありゃ、どういうことだ?』
『そりゃ──』
『それがロズ坊の望みだからじゃ』
返答しようとしたガーフィールの言葉を遮って、リューズが代わりにスバルの疑問に答えた。
『ロズ坊はエミリア様の手で聖域の解放が為されるべきだと考えとるんじゃろ』
『それを、リューズさんたちは支持するってことか?』
『勘違いすんなァ。野郎のことが嫌いなのは俺様も同じだ。けどなァ、──わっかんだろォ!』
『──そっか、結界が解けて正式に領地に迎え入れられたとしても』
『ここはロズ坊が管理する土地じゃ。意向に逆らって立場を悪くしたくない。スー坊らには悪いがの』
『なんか、ますますロズワールに信用が置けなくなるな』
ガーフィールの発言の変化の理由を知って、悪意ある智謀を張り巡らす貴族が嫌いな尚文が盛大に舌打ちを鳴らす。
「結局、あのガーフィールって奴の考え方の変化は、ロズワールの野郎が嚙んでいた可能性が高いってことか。だとするなら、デミウルゴスの仮説の2番目が当たりっぽいな」
「ええ、私としても、一番有力視していた仮説が当たったことに、恥をかかずに済んで良かったですよ……。まあ、彼のスバルの反応を見るに、考え方の変化の理由は私が口にした2番目の仮説だけが理由じゃなさそうですがね」
デミウルゴスは穏やかに微笑むが、その瞳は微塵も笑っていなかった。
そんなデミウルゴスの様子に、一部の悪意などに鋭い者らの肩がぶるり!と震える。
『クソッ、エミリア』
上手くいかなかった試練の攻略の代行と、それによって再び拗れそうになったエミリアとの関係に悪態をつきかけるスバルは即座に考えを切り替える。
今は制限時間のない試練よりも、腸狩りのエルザが襲来する屋敷の方を考える。
その為に、今すべき行動はなにか?そう考たスバルの足が向かう先は決まっている。
『それで、私に何をして欲しいのか~な?』
『アーラム村の人たちを連れ帰る。それをロズワールから、リューズさんたちに提案して欲しい。今回はどうも……、俺からだと折り合いが悪くなりそうなんだ』
『──今回』
今回というスバルの発言にロズワールの目が僅かに細まるが、スバルはそれに気付かない。
だが、今の一連のやり取りを見たターニャはその反応に気付く。
「今のスバルの発言に対するロズワール先生の反応。やはり、彼はスバルの死に戻りの力を知っているというのか」
「そうですね。じゃなきゃ、ほとんどの人が聞き逃しそうな今回って言葉に反応なんかしませんものね」
ターニャの確信を得た呟きに、ヴィーシャが同意する。
周りを見れば、2人の会話に同意するような顔でロズワールを見る者がチラホラいる。
特に、死に戻りなんて強力ながらも使い手の精神をゴリゴリ削る忌むべき力を悪用せんとするロズワールに対して、憎しみに近しい感情を瞳に宿した尚文と怒りを宿したラフタリアの2人は、射殺さんばかりにロズワールを睨みつけていた。
『アーラム村に残ってる人たちに、家族の無事を伝えに行きたい。その為に、俺だけで村に戻る。当然、フレデリカが何か企んでいる屋敷にも……だ』
『ラムにそのことは聞いている。しかし、私が知る限り、フレデリカは軽はずみな』
『──お前になにがわかる』
それは未来を見てきた者だけが口にできる、確信に満ちた言葉だった。
続くロズワールの考えを否定するスバルの言葉は、かなり熱の入ったものだった。
それを聞いたロズワールは冷静に受け止め、今度はスバルの楽観的にも見える判断に冷や水を浴びせた。
『仮に彼女が敵対したら、君はどうするんだい?残念だ~けど、君では歯が立たない』
『……っ』
王都での再スタートと違って、この聖域では連れて行ける戦力は皆無。まさに詰んでいるに相応しい状況だ。
『一人を除けばそうなるね~え』
「ラムさんか……」
「ラムさんでしょうね」
「逆に今この状況でラムさん以外いないでしょう」
「だな……」
ロズワールの提案した一人が誰なのか、帝国軍人の男子メンバーは全員理解していた。
案の定、次の日の朝日が昇る時間帯に、スバルに悪態を吐き続けるラムの姿が見受けられた。
『はっきり言って、気に入らない状況だわ』
『まだそれを言いますかよ。姉様』
『ロズワール様のお体が万全でない今、傍を離れるのは不安で仕方ないわね』
『つっても、なにができるってわけでもないだろ?あの包帯、ガーフィールが巻いたって聞いて啞然としたぞ』
『馬鹿馬鹿しい。ラムがやってロズワール様のお怪我が悪化したらどうするの』
『反省しろ!!』
言葉遣いもダメ、掃除もダメ、洗濯もダメ、庭の手入れもダメ、料理もふかし芋以外はてんでダメで、主の包帯すら巻けないポンコツメイドの開き直った姿に、メイド長の立ち位置にいるユリのメガネがキラリと光る。
「おっ、ユリ姉の鬼教師スイッチが入ったっすね!」
「あらあら、ユリ姉様の扱きを前に、ラムが無事でいられるかしらね?」
「きっとぉ、バテバテにへばってぇ、ユリ姉様にお仕置きされちゃうわぁ」
「…………容易に想像できる」
長女であるユリの教育という名の扱きを知る妹たちからは、からかうような発言が飛ぶ。
そんな妹たちからの評価に、ユリはすまし顔から一変して、頬を若干赤らめながら「いくらボク──私だって、よそのメイドにそんな真似しないわよ!」と反論する。
頬を赤らめて慌てるユリは、普段の冷静沈着な姿からは想像できないほど可愛らしい。
「「ジー……」」
そんな可愛らしげなユリの様子に、シャルティアとカズマの視線がジッと向けられている。
その事に気付いたユリは、コホンと咳払いをしていつも通りの冷静沈着な出来るメイド長の姿に戻る。
「ユリさんって、あんな可愛らしい一面もあったんだな」
「カズマもユリの魅力に気付いたでありんすか」
そこから先の言葉は必要なく、互いに美女の見せる意外な一面に対するギャップ萌えに対してグッ!と親指を立てて通じ合う。
そんな女好きの変態共の心通わすワンシーンを、尚文とターニャは冷めた目で見ていた。
『いい女に挟まれて堂々のご帰還ッてか。大層なご身分だなァ、オイ』
『こんな朝っぱらから見送りに来るとは思わなかった。聞いたんだな?』
『正直勝手に話進めッられたのは面白くねェが、……反対はしねえよ』
『そっか、そりゃ助かる。邪魔しに来られたら、ラムを遠くに投げて囮にするしかなかった』
『引っ掛かる訳ねェだろォ!……ねえよな?』
『知らねえよ』
スバルの軽妙なジョークに、ガーフィールは強気に食ってかかったものの、「もしかして引っかかってる?」と自分でも不安になるような、どこか子供っぽい揺らぎを見せた。
そんなガーフィールの様子に、ラフタリアは思わずクスリと微笑んだ。
その柔らかい笑みに、尚文は横目でラフタリアを見て、今の2人の会話のどこに笑う要素があったのかを聞こうとした。
「今の会話になにか可笑しな点でもあったのか?」
「あ、いえ、そういうわけじゃないんですけど。なんとなく、ガーフィールさんってちょっと変わった言葉遣いだったり、顔や態度が怖そうだなって思って見てたんです。でも、さっきのスバルさんとの言い合いを見ていたら、なんだか尚文様とキール君のやり取りを思い出してしまって、微笑ましい気持ちになってつい……」
「俺とキールの?」
尚文はラフタリアの言葉に驚きを覚える。
ガーフィールがキールに似ていると言われれば、確かに納得できる部分はあるが、常識人である自分がスバルに似ていると言われても、どうにもピンとこない。
ラフタリアの勘違いなんかじゃないかと否定する尚文だが、「そうやってムキに否定するところとか、ちょっとスバルさんに似ていますよ」なんて言われてしまえば、これ以上の反論は無駄だと諦めるしかない。
気付けばスバルとガーフィールの会話はもう終わっており、ラムと一緒にパトラッシュに乗り込むスバルの姿がスクリーンに映る。
『……そう言えば、俺に渡すものはないのか』
『あァん?なに言ってんだ?』
前回の聖域から出て行く際は、ガーフィールから輝石を渡されていたが、今回のループではそれもないようだ。
「やはり、今回のループではガーフィールの好感度はあまり稼げてはいないようだな」
「ギャルゲーでもないのに、キャラの好感度稼ぎとか。しかも、相手が野郎じゃ口説き文句も浮かばねえよな」
その尚文の呟きに、カズマがゲーム脳丸出しな発言を返す。
その発言に尚文も一瞬、「そうだな」とゲーマーとして返答しかけるが、流石に常識人としての恥ずかしさがあったのだろう。
故に、カズマの発言はスルーし、視線をスバルたちのやり取りへと戻した。
『なら、ラムになにか気遣いは?惚れた女が役目を果たしにいくのよ。力になりたいとは思わないの?』
『都合のいい時ッだけ、てめェって女は……。そらよォ』
スバルの考えを察したのか、ラムがガーフィールを問い詰める。
そのラムの言葉に、ガーフィーは不承不承といった様子で輝石を乱暴にラムへと放り投げる。
「ふっ、やはりラムは優秀だな。まあ、メイドとしては何度も言うように落第点ではあるが……」
彼女の人を見る目や察しの良さによって、ターニャの中でポンコツメイドのラムへの評価が一部だけぐんと上がった。
その評価に、皆が同意するように首を縦に振っていた。
そうして、ガーフィールと別れた後、森を駆け抜けながら、スバルはふと横目でラムを見た。
『さっきから、やけに浮かない顔だな?』
『さっきの話よ。ラムを囮に投げ飛ばすなんて言っていたでしょう。そのことが、なぜか妙に胸に引っ掛かったの。まるで、……本当にそんなことがあったみたいに』
その呟きに、スバルは心がざわめくのを感じ取る。
いや、スバルだけでなく、ラムの今の発言に、親しい仲の者らはギュッと胸にくるものがあった。
そんなラムの言葉を聞いた瞬間、上映会の空気が一気に重くなる。
その中で、最初に口を開いたのは、アルベドだった。
「やっぱり、レムの存在が消えても、そこに空いてしまった穴はちゃんとあったのね……」
それが喜ばしいことなのか、あるいは悲しむべきことなのか、悪魔であるアルベドに答える術はなくとも、その呟きは皆の心に重くのしかかる。
『ラム、大事な話があるんだ。お前にとって世界で一番大事な話だ』
『……そんなもの、ロズワール様以外にないはずだけど』
『いや、あるんだよ。──だから、その話をするよ。レムって子がいてさ』
スバルが真剣な顔で、レムという聞き覚えのない子の話をし始めると、ラムは黙ってじっと耳を傾けていた。
そんな2人の様子を見て、レムという2人にとってかけがえのない存在の消失に胸を痛ませるカズマが口を開く。
「やっぱし、早く暴食の大罪司教とやらをやっつけて欲しいよな。まあ、スバルに何度も死んで頑張れっていう意味じゃないんだけどさ」
「ええ、その気持ちはここにいる誰もが同じです。きっと、この聖域や屋敷の問題を解決した後に、沢山の仲間と一緒に討伐してくれるでしょう」
めぐみんが、時折見せる保母のような優しさを瞳に宿して、カズマの言葉に同意しながら、明るい希望の未来を見据える。
そうして、ついにスバルとラムは問題となる屋敷へと到着した。
果たして、鬼が出るか蛇が出るか。固唾を飲みながら、スバルが死なないでくれとその先の展開に祈りを捧げていた。
そうやって、屋敷の門前におっかなびっくりの様子で、覚悟を決めている最中のスバルの耳に聞きたかった女の子の声が届く。
『お帰りなさいませ、スバル様。思ったより、ずーっと早いお帰りでしたね』
そこには腹を裂かれていない、元気で明るいペトラがそこに立っていた。
ゴールデンウィーク中にストック作りたかったのに、休みが少なすぎて全然書けなかった(嘆き)
4章でのスバル視点外の放送
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エミリアの試練
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ラムの告白
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ガーフィールとエルザのバトル