いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる   作:リーグロード

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終わりの決まった世界

 

 エルザの相手を獣化したフレデリカに任せ、スバルたちは未だに屋敷に残っているレムとベアトリスの救出に走る。

 一刻を争う緊張感の中、それを見守るカズマたちは手に汗を握っていた。そんな中、スバルがレムのいる東棟に足を踏み入れた瞬間、目に飛び込んできたのは、思わず息を呑むような異様な光景だった。

 

『閉め忘れ……。にしては数が多すぎるわ』

 

 前のループで見た景色が、そのままそっくり目の前に広がっていた。

 

「まさか、もう既にエルザがレムを……!?」

 

 ペトラを人質に捕らえてスバルたちのいる部屋へ向かう前に、エルザがすでに眠っているレムを殺してしまったのではないかと、アルベドが慌てて声を上げる。そんなアルベドと同じくレムの安否が気になったスバルは、すぐにレムの眠る部屋へ駆け出そうとした。

 

『やばい……やばい……っやばい!!急いで二階に……!』

『ヴァオオオオオッ!!』

 

 身もすくむような咆哮と共に、屋敷を壊して巨大な魔獣が現れた。

 

「はぁ!?こんなところで魔獣!?まさか……!!」

「どうやら屋敷を襲ったのはエルザだけじゃなく、魔獣も一緒らしいな。もしや、第二部で村に魔獣をけしかけた黒幕がいるのか?」

 

 突然の魔獣の乱入に、カズマは思わず驚きの声をあげた。そして、この絶妙なタイミングで現れた魔獣に、アインズは新たな敵の存在を不安に感じる。

 他の者たちも、レムとベアトリスの救出が一気に難しくなったことに渋い表情を浮かべ、スクリーンを睨みつけていた。

 

 襲い掛かってくる魔獣から逃れるために、動揺するスバルをペトラが引っ張って、近くの部屋へと緊急避難する。

 

『なんで魔獣が……!?』

『言ってる場合じゃない!いるものはいるのよ!』

 

 惚けるように呟くスバルに、ラムが気合を入れて活を入れる。そんな2人のやり取りを余所に、魔獣は部屋の扉を強引にぶち壊し、無理矢理に部屋の中へと押し入ろうとしてきた。

 

『厩舎から地竜を連れてくるわ』

『パトラッシュを……』

『魔獣がいるなら足が必要になる。ラムが引き付ける間に、2人を回収しなさい』

 

 そう言って魔獣にフーラをぶつけて注意を引きつけたラムが、囮となって魔獣をスバルたちから引き離した。

 そうして残されたスバルはラムの期待に応えんと動き出したが、肩に刺さった千本による出血のダメージが大きいのか、足がふらついてその場に倒れてしまう。

 

「ああ、もう!あんなに酷い怪我した状態で走るなんて無茶よ!私がいればヒールですぐに治せるのに!!」

 

 アクアはスバルの肩から流れる血を見て、アークプリーストとして傷を癒したい気持ちを隠さずに示しつつも、ただ見ていることしかできないことにイライラしている。

 

『血が……!痛いから我慢してっ!』

 

 素手でスバルの肩に突き刺さった千本を握れば、当然手のひらは切れて血がにじむ。だがペトラはその痛みを無視し、悲鳴すら上げずにさらに力を込めた。

 

『三、二──!』

『ぎぐゅい──!』

 

 情けない声を上げるスバルだったが、それを嗤うのはルプスレギナのようなサディスティックな性格の者だけだった。

 一方で、自傷もいとわず機転を利かせて応急処置を施すペトラの手際に感心する者は多かった。

 

『ペトラ、ごめんな。いつも危ない目に遭わせてばかりで』

『変なこと言わないっ。わたし、スバルにはちゃんと感謝してるよ。いつも危ない目に遭ってるのを助けにきてくれるもんっ!だから今度はわたしの番!レム姉様とベアトリスちゃんを連れて、ラム姉様とフレデリカ姉様と、みんなで!』

『……ペトラはすげえよ。俺は情けねぇな』

 

「ううぅ……。そうだな、ペトラはすげえよな!」

「えっ、カズマさん、もしかしてガチ泣きしてるの?」

 

 子供らしからぬ堂々とした大人顔負けの言葉に、カズマの目から思わず涙がこぼれた。

 なにせ、自分のパーティーには、いつも厄介ごとを持ち込み言い訳ばかりする駄女神、爆裂魔法しか使えずやらかしては開き直る頭のおかしい魔法使い、そしてモンスターの群れに勝手に突っ込んでいくドMクルセイダーがいるのだ。

 そんな個性の強すぎる仲間たちに振り回されているカズマの目から見たペトラの姿は、思わず感動を覚え、さらにはそんなペトラを仲間に持つスバルに嫉妬するほどであった。

 そして、そんなカズマの様子を見て、なんとなく事情を察した人々は、思わずカズマに憐れみと同情のこもった視線を向けるのだった。

 

『行こう。お前の言う通り、全員で脱出する』

『うんっ!』

 

 手を繋ぎ、慎重に部屋の外をうかがうスバルの背後で、ペトラが思わず声を漏らした。

 

『うん、じゃなくて、はいだった……。でもなくて、はいでした』

 

 理由は、思わずクスッと笑ってしまうほどくだらないものだったが、不思議と肩の力が抜けるようなものだった。

 それは、ラムが囮になって魔獣を引き連れていく姿を見て、無意識にこわばっていた皆の表情をふっと和らげた。

 そういった点も含めてペトラの評価が上がっていくのだが、次の瞬間に油断してしまった2人の上の天井が突然崩落してしまう。

 

「えっ、なっ、はぁ!?」

「エルザ……いや、魔獣の襲撃か!?」

 

 突然の事態に困惑の声を上げるカズマと、冷静に何が起こったのかを推測するターニャ。

 スバルが気絶したのか、それとも死に戻りが発動したのか、スクリーンの映像が暗転する中、スピーカーからはラムの声と激しい戦闘音が響き、やがて暗闇の映像がぼんやりとスバルの現状を映し出し始める。

 そこへパトラッシュの鳴き声と、魔獣らしき巨大な生き物の赤く光る目が映った瞬間、スバルは屋敷へと吹き飛ばされた。窓を突き破り廊下の壁に叩きつけられたスバルの視界は血で赤く染まり、苦しげな咳が漏れる。

 そのあまりにも危機的な状況に、先ほどのやり取りで緩んでいた者たちの背筋に冷たいものが走った。

 だが、本当の地獄を見るのはこの先だった。

 

『大丈夫か、ペト……ラ……』

 

 未だ血で赤く染まった視界の中、左手に繋がれた先を見たスバルは、そのあまりにも悲惨な光景に思わず叫び声を上げた。

 

『──おああああああああッ!!』

 

「そん……な……。ペトラ……ちゃん……」

「噓ぉ。さっきまで無事で、みんなで脱出するって……」

「っ!ちくしょう──!」

 

 スバルの悲鳴を聞きながら、スクリーンに映し出される悲劇に、フィーロとラフタリアは思わず口元を押さえて込み上げてきそうな吐き気と絶望に耐える。

 尚文もまた、スバルに降り注いだ理不尽な惨劇に、怒りの感情のままに手すりを殴りつけていた。

 

「────」

 

 無言ながらペトラという少女を高く評価していた善良なセバスは、彼女に降りかかった理不尽な運命に、血が滲みそうなほど強く拳を握りしめた。

 

 そうして、ペトラを守れなかった無力感にふらつきながらも、それでもレムを救おうと亀のような歩みを続けるスバル。

 その背後から、場違いなほど陽気な声がかけられた。

 

『──ああ、ようやく見つかってくれたわね』

『ふれ……でりかは……』

『大きなメイドさんのこと?安心して、それなりに楽しめたから』

 

「言葉は通じても、会話は通じんか。つくづく狂人というのは始末に負えんな」

 

 エルザの返事に、ターニャは忌々しげに吐き捨てた。

 だが、状況はほぼ詰みと言っていい。ペトラはおそらく死亡し、フレデリカも同じだろう。ラムは安否不明だが、エルザに加え魔獣が蔓延るこの屋敷で無事に生き残っている保証はない。

 現状、エルザと一対一で対面しているスバルにこの状況を覆す手段はないだろう。

 

『誰の依頼で俺たちを狙った……?』

『依頼主については話さない。一応、それぐらいの礼儀はわきまえているの』

 

「殺人鬼が礼儀なんて、冗談もいい加減にしやがれ……」

「だが、ここで有利だからと、向こうの内情をうっかり話してくれないのは、こっちとしてはもどかしいな」

 

 快楽殺人鬼の癖に、暗殺者としての礼儀を持ち合わせるエルザに、尚文とターニャは揃って舌打ちした。

 だが、次のエルザの言葉に1つの疑念が解けた。

 

『あなたの帰りが予定より早いから、少し依頼と違った形になってしまったけれどね』

『違う……形……?』

『メイドが2人と『ひきこもり』が1人。あなたの帰りに合わせるつもりだったの』

 

「帰り」と「予定」という言葉に、鋭い者の脳裏に閃きが走った。

 前回のループとの違いは、エルザの襲撃が早かったことと魔獣の乱入。後者は単にスバルが見ていなかっただけと片付けられるが、前者の原因は不明だった。

 だが、今のエルザの発言で、襲撃のトリガーはスバルの帰還だと判明。そして、聖域に出掛けているという状況を知っているのは、スバル側の事情を理解しているこちらの陣営の者だけだろう。ここまで情報が揃えば、依頼主が誰なのか特定できる。

 

「どこまで人の命を使って試せば気が済むんだ、あのピエロ野郎!」

「落ち着け、尚文。現状証拠だけでは……いや、ほぼ十中八九あの男なのだろうがな」

 

 真っ先に犯人像が浮かび上がった尚文が怒りの声を上げると、ターニャが落ち着くようにフォローしかけるが、ターニャ自身も怒りを隠せておらず、途中で言葉尻が荒くなってしまう。

 2人の会話を聞いていた者らも、何人かがエルザの依頼主の正体に気づき始めていた。その顔には、「まさか」という疑いと「やっぱり」という嫌悪が入り混じって浮かんでいた。

 

『天使に会わせてあげるわ』

『(終わる世界だろうと──、レムのことは傷つけさせない)』

 

 スバルの心の中で固めた決意の声が、スピーカーを通して部屋中に響き渡った。

 そんなスバルの覚悟に、アルベドはよく言ったと言わんばかりの僅かばかりの微笑みを浮かべた。

 

『レム──!……どうして、どうして助けた、ベアトリス!?』

 

 レムの眠る部屋に入った先でスバルが見たのは、ベッドで眠るレムではなく、もう1人の助けるべき対象のベアトリスの姿だった。

 

スバルの第二の試練後にIFストーリーを入れる

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