いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる   作:リーグロード

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まだ毎日投稿で…きて…る。(ガクッ)


絶望を切り裂く光

 

「なんだよ、あのエルザってイカれ女が出てくるかと思ってビビッたぜ……」

 

 現れたのがエミリアだと知って、先程まで騒いでいたカズマ達は安堵しながら席に座り直した。

 

 必死こいて徽章を盗んだフェルトには悪いけど、元の持ち主であるエミリアが来たことで、この勝負は決着だ。

 

 現に、あの場で一番厄介なロム爺もその巨体を緊張させて動けないでいた。

 この部屋にいる者全員が、エミリアとパックのコンビが強いのを知っている。例えエルザが来たところで、不意打ちで腹を切り裂かれなければ勝機は十分にある。

 

 そう安心したようにエミリアとフェルトに詰められるスバルを見守っていると、目敏い者は扉から忍び寄る黒い影に気がつく。

 その目敏い者の中にはスバルも入っており。

 

『──パック! 防げ!!』

 

 反射的にスバルが叫び、エミリアの首付近に迫る凶刃を防ぐ氷の魔法陣が展開される。

 

「っげ!こんな時に現れやがるのかよ!?」

 

 エルザの突然の出現に、カズマが顔を引きつらせながら吐き捨てた。

 

『──精霊、精霊ね。ふふふ、素敵。精霊はまだ、殺したことがなかったから』

 

 エルザは間一髪で攻撃を防がれたことを見ると、好戦的な笑みを浮かべながらエミリアとパックから距離を取る。

 このサイコパス女がと心の中で悪態をつきながら、拳を握り締めながらこの後の展開を見守るカズマ。

 

『おい、どーいうことだよ!徽章を買い取るのがアンタの仕事だったはずだ。ここを血の海にしようってんなら、話が違うじゃねーか!』

 

『盗んだ徽章を、買い取るのがお仕事。持ち主まで持ってこられては商談なんてとてもとても。だから予定を変更することにしたのよ。この場にいる、関係者は皆殺し。徽章はその上で回収することにするわ。──あなたは仕事をまっとうできなかった。切り捨てられても仕方がない』

 

 その言葉に画面の中のスバルがキレて怒りの声を上げる。

 それと同じく、フェルトに近いくらいの歳で妹みたいに可愛がっているお姫様が重なり、カズマの怒りの沸点が一瞬で振り切れた。

 

「ぬっがぁ〜!!あのクソ女ぁ!美人だけど、なんつう性格の悪さだ!!同じ見た目詐欺でも、これなら駄女神やポンコツクルセイダーの方が100倍マシだわ!!!」

 

「ちょっと!前半は同意だけど、後半の悪口はどういうわけ!?私は神聖なる水の女神なのよ!!」

 

「そ、そうだぞ、カズマ!!私だってクルセイダーらしくやっている!!」

 

「何処がだよ、そういうのは普段の行動を見直してから言うんだな!!」

 

 カズマの怒気に巻き込まれたアクアとダクネスが抗議する。

 そんな2人に怒りながら普段の問題行動を指摘するカズマ。

 

 その間もずっと画面の中ではスバルがエルザに対して罵詈雑言と言っていいのか怪しくなる程の悪口を喚いていた。

 その罵倒を静かに聞いていたエルザも、あまりの支離滅裂な言い分に本気の困惑と呆れを見せていた。

 

『……なにを言ってるの、あなた』

 

『テンションと怒りゲージMAXでなにが言いてぇのか自分でもわかんなくなってきてんだよ! そんなお日柄ですが皆様いかがお過ごしでしょうかチャンネルはそのままでどうぞ!』

 

 言いたいことを一気に捲し立て、一息ついてやれることは全てやったとばかしにパンと手を叩く。

 

『時間稼ぎ終了──やっちまえ、パック!!』

 

『後世に残したい見事な無様さだったね。──ご期待に応えるよ』

 

 スバルの呼びかけに、パックがエルザの頭上から氷の槍を降らせる。

 

「ほぉ、感情的かと思えば中々に策士じゃないか。勝利する為ならば恥も外聞も捨てる。これはスバルの評価を改める必要がありそうだ」

 

 あの場で最も弱いスバルが敵の目を引きつけている間に、精霊であるパックに仕留めてもらう。

 単純だが最も勝率の高い作戦を、あの一瞬で閃き実行したスバルに称賛の声を上げるアインズ。

 

 強力な氷の魔法がぶっ放されたことで、白い冷気の霧がエルザの姿を包み隠す。

 

『やりおったか!?』

 

『そのフラグ建てんな爺!?』

 

「はい、これお決まりのパターンのやつね……」

 

 完全にやってないパターンのフラグにスバルが悲鳴を上げ、カズマが遠い目で呟く。

 すると、案の定というべきか、エルザへ放った巨大な氷塊が突如として砕け散った。

 

『──備えはしておくものね。重くて嫌いだったけれど、着てきて正解』

 

 現れたエルザは羽織っていた黒の外套を脱ぎ棄て、その下の肌にフィットした黒装束となっており、その体には一切の傷跡が見えなかった。

 

「どういうことだ?今のは間違いなく命中した筈だ。致命傷に届かずとも、肌に傷1つ負わせられないとは考え難い」

 

 エルザの無傷な姿に、ターニャが困惑を隠せずにいた。

 

「恐らくは、何らかのスキルか魔法。あるいは特殊なマジックアイテムによる防御だろうな」

 

 アインズの推理を肯定するように、画面の中でエルザがネタばらしをする。

 

『──私の外套は一度だけ、魔を払う術式で編まれていたの。命拾いしてしまったわね』

 

「アインズ君の言う通りだな。やはり、こういった純粋な異世界での戦闘はアインズ君の知恵に頼らざるを得ないか」

 

「よしてくれ。スバルの世界では加護という、私でも知らない未知の力が存在する。私が知っているのは知ってることだけだ」

 

「あっ、なんかその台詞聞いたことある気がする」

 

 ターニャの賛辞にアインズが謙遜し、それを聞いたカズマがどこかの物語で出てくる委員長が言ってそうな台詞に反応する。

 

『精霊術の使い手を舐めないこと。敵に回すと、恐いんだから』

 

『攻撃と防御の役割分担──実質、二対一の状況だ』

 

『アレが精霊使いの厄介なところじゃ。片方が攻撃して、片方が防御。場合によっちゃ片方が簡単な魔法で時間を稼いで、もう片方が大技をぶっ放す……なんてのもできる。『精霊使いに出会ったら、武器と財布を投げて逃げろ』ってのが戦場のお約束じゃな』

 

 あちらの世界での精霊使いの強みを説明してくれるロム爺の話を聞いて、改めてエミリアとパックのコンビの強さを再認識する。

 

『戦い慣れしてるなぁ、女の子なのに』

 

『あら。女の子扱いされるなんてずいぶんと久しぶりなのだけれど』

 

『ボクから見れば大抵の相手は赤ん坊みたいなものだからね。それにしても、不憫なくらい強いもんだね、君は』

 

『精霊に褒められるなんて、恐れ多いことだわ』

 

 エミリアとパックの猛攻を受け流しながら、それでも軽口が叩ける程度には余裕のある態度を見せるエルザに、ターニャとアインズは警戒を強める。

 画面の中でのエルザとの戦いが続く中、それを固唾を呑んで見守っていたカズマ達は、もはや戦況はエミリア達の方に傾いている。そう確信していた。

 

「アインズ君……」

 

「ああ、このままでは少々マズいな……」

 

「お、おい! ターニャもアインズも止めろよな!そういうフラグになるようなことは!?」

 

 ターニャとアインズの意味深なやり取りを聞いて、カズマが慌てて2人を止めようとする。

 

「……まあ、カズマの言いたいことは理解できる。しかし、このまま状況が好転せねば時間制限でパックが戦線離脱してしまうぞ」

 

「え?……ああ!!」

 

 学園ではパックは5時を過ぎても顕現できていたため、カズマはそのことを失念していた。

 そういえば確かに、スバルがエミリアと一緒に徽章を探している世界線では、日没から少し経った頃にパックは眠りについていた。

 

 映像の中から見える窓の外の景色は夕暮れから夜に変わろうとしている。

 アインズが言うように、パックが眠りにつくのは時間の問題だった。

 

『あ、マズイ。ちょっと眠くなってきた。むしろ、今ちょっと寝ながら戦ってた』

 

 

『ちょっとパック!しっかりやってよっ』

 

『……はっ!寝てない!寝てないよ!ボク、全然寝てないよ!』

 

 アインズの悪い予想が的中してしまったらしい。

 しかし、パックもただ闇雲に攻撃していたわけではなかった。

 

『──足が』

 

『無目的にばらまいてたわけじゃ、にゃいんだよ?』

 

『……してやられたってことかしら?』

 

「おっしゃ──ー!!!」

 

 パックの戦術が見事に決まったことにカズマがガッツポーズをする。

 そしてそれはカズマだけではなく、周りを見渡してみれば、アクア、めぐみん、ダクネスも前のめりに映像に釘付けになっており、ターニャ達の方は男子らの反応が大きく、ヴァイス、ケーニッヒ、ノイマン、グランツらが席から立ち上がって興奮したように歓声を上げていた。

 アインズ達の方は流石の貫禄というべきか、映像の中の展開に感心はしていても、そこまでのリアクションは見せていなかった。

 ただ1人、コキュートスだけは声に出してはいないものの、口に当たる部分から興奮した際に出る白い冷気の息が吐かれていた。

 

 身動きの取れなくなったエルザにトドメの一撃とばかしに、パックはこれまでのよりも巨大な氷の魔法が発動する。

 当たれば確実に決着がつく。そんな一撃だった。

 

『嘘、だろ……』

 

 画面の中のスバルの声は、まるで自分達の心の声を代弁してくれたかのようであった。

 

『嘘じゃないわよ。ああ、素敵。死んじゃうかと思ったわ』

 

 そして、そんな声を否定せんと、いまだ生きているエルザが涼しい顔で立っていた。

 その右足は無理に氷で縫い付けられた拘束を引き剥がした結果、皮膚が剝がれ血が滴っていた。

 日本ならば確実にモザイク必須のグロ映像に、耐性のないカズマが吐き気を催す。

 

「ホオ、自傷ヲモ厭ワナイ覚悟トハ……イヤ、ソレトハ別モノカ。ダガ、ソレニシテモ敵ナガラ見事ダ」

 

 後ろの席から聞こえてくるコキュートスの感心の声を、カズマが恨めしそうに聞く。

 それでも、今は胃から込み上げてくるものを抑えるのに必死だった。

 

 今の攻撃が避けられたことも最悪だが、それ以上にパックが限界を向かえて顕現時間が切れてしまった。

 去り際にまだ最後の切り札があるようなことを言ってはいたが、形勢は完全にエルザへと傾いてしまったのであった。

 

 劣勢のエミリアにロム爺とフェルトが加勢の姿勢を示す。

 しかし、消えたパックの代わりがこの2人に勤まるのかといえば、答えはNOだ。

 

 ロム爺がエルザに果敢に挑むも、蝶のように舞い、蜂のように刺すという言葉を体現するかのようなエルザの動きに翻弄されてしまう。

 やがて、頭上を取られたロム爺はエルザに致命の一撃を叩き込まれようとする。

 

『させっかーっ!』

 

 間一髪のところでフェルトの横やりが間に合い、ロム爺は殺されることはなかった。

 しかし、エルザの放った刃はロム爺の背に深く刺さり、戦闘不能の状態になるのは避けられなかった。

 

『悪い子』

 

 ロム爺を殺せなかったのが不満だったのだろう。

 邪魔をしてきたフェルトを睨むと、蛇に睨まれた蛙のようにフェルトは恐怖で動けなくなってしまった。

 

『覚悟も戦う力もない。ならばせめて部屋の隅で、小さくなっているべきだったのに』

 

 命を奪うのにこれっぽっちも躊躇のないエルザが、フェルトへその手に持つナイフを振り下ろす。

 

『はいだらぁぁぁぁぁぁ──っ!!』

 

 そう叫び、スバルがフェルトを抱えて間一髪のところでエルザのナイフを避ける。

 その勢いのまま、スバルはフェルトを抱えて転がりながら距離を取ると、してやったりとひきつる笑みで勝ち誇った顔をした。

 

「よっしゃー!ナイスだスバル!!」

 

「うむ、よくぞ動いたものだ!」

 

 スバルの活躍にカズマとダクネスが賞賛の声を上げる。

 

「危機一髪だったが、あの状況でよく助けに動けたものだ……」

 

 ターニャもまた、スバルの行動に感心する。

 

『よし、どうにか動く。いっぺん死にかけて逆に覚悟決まったか。空元気でも元気、蛮勇も勇気。やる、やるとき、やらねば、やるべし、やったらんかい!』

 

『お、おい、兄ちゃん……』

 

『よく聞け、リッスンミー。いいか、フェルト。俺は今から、討ち死にしたロム爺とおんなじ感じで時間を稼ぐ。どうにか隙の一個でも作ってみせっから、その間にお前は逃げろ。わき目も振らずに入口から全力疾走。エスケープだ、いいか?』

『──!よくねーよ!なんだそりゃ、アタシにケツまくって逃げろってのか!?』

 

『そうだ、ケツまくって尻尾巻いて逃げちまえ。本当なら俺がそれやりてぇんだぜ。こんな暴力空間、一秒だって長居したくねぇよ。お前は十五で、俺は十八。たぶん、お前が一番年下ってことになる。したら、お前が生きる確率が一番高いとこを選ぶのが当たり前だ。当たり前なんだよ』

 

「自分の命を投げ出してでも誰かを救う。それは誰にでも出来ることではありません」

 

 セバスがスバルの行動に敬意を示す。

 もしあの場に自分がいたのならばと、この場で何も出来ないでいる自分に歯痒さを感じる。

 

『狙いは上々。でも、殺気が出過ぎてて見え見えなのが残念』

 

『殺気か! それの制御方法は知らねぇや!』

 

『今だ! いけよ、フェルト──!!』

 

 スバルの作り出した好機にフェルトが走り出す。

 結果として、見事にフェルトは盗品蔵からの脱出を成功させ、スバルの囮作戦は成功した。

 

「だけどここからどうすれば……」

 

「はっきり言って、この状況は不利過ぎるな」

 

「エミリアにはまだ切り札があるだろうが、未だにそれを切っていないのは、発動に何か条件があるからか、それともスバルに危害が及ぶかもしれないからか……」

 

 カズマ、ターニャ、アインズの順に意見を言い合う。

 あの優しいエミリアのことだ。アインズの言ったように誰かに被害が出てしまうのなら切り札を切るのを戸惑うのも分かる。

 実際に、映像の中でアインズが危惧したようにエミリアの切り札は切ればスバルを殺しかねないようなものらしい。

 だとしたら、エミリアが切り札を使用するのはスバルが死んだ後になるだろう。

 つまり、今回もスバルは死に戻りをしてしまう。

 

 それでも──、

 

『ノーカウントだ……』

 

『──え?』

 

『さっきの俺の言葉はなし!全部なし!マジ燃えてきた、バーニング!!やってやるぜ、クソだらぁ!切り札なんざ、絶対に切らせねぇ!!テメェぶっ飛ばして!ハッピーエンドだ!!』

 

「ふっ、諦めないか。それでどこまでやれるのか、魅せてみろナツキ・スバル!」

 

 アインズは画面の中で立ち上がるスバルの瞳に、死を覚悟して進む人の意思が宿るのを見て、かつての戦場で対峙したガゼフを重ね合わせた。

 

『んな面すんじゃねぇよ、美人が台無し!そんでもって、そんな面させてんじゃねぇよ、空気読めや、サディスティック・オブ・ジ・イヤーが!美人が台無しアゲイン!』

 

『……元気が有り余っているようね』

 

『今回は一回も流血沙汰してないかんね!でも、今宵の棍棒『虎鉄』はお前の血に飢えてるぜ?ふん!ふん!』

 

『おふざけはもうけっこうよ。踊りを始めましょう。ちゃんとついてきてね』

 

『お前の方こそ、早々に沈むんじゃねぇぜ。右投げ左打ち、舐めんなよ』

 

 だが、気概だけで実力が上がるわけでも、隠された潜在能力が解放されて覚醒するわけでもない。

 エルザの猛攻をスバルが必死に凌ぐ、防戦一方な展開が続く。

 

『っぐるあ!これならどうだぁ!!!』

 

『はい、掴んだ』

 

 棍棒の振り下ろしと見せかけて、奇をねらっての回し蹴りを放つも、余裕の笑みで足を掴まれてしまう。

 そのままエルザは掴んだ足を切り落とそうと、ナイフを大きく振り上げる。

 

『──そこまでだ』

 

 凛とした声が切迫した状況に響き、スバルとエルザの動きが止まる。

 そして次の瞬間、屋根を貫いて最強が登場した。

 

「「「「ラインハルト!!!?」」」」

 

 本日再びの最強登場に、先程よりも大きな驚きの声が重なる。

 

 

 




そろそろ第一章が終わって追加メンバーが……。
ただでさえ、まだ会話できてる人数が少ないのに、追加でやれるのか俺……!?

4章でのスバル視点外の放送

  • エミリアの試練
  • ラムの告白
  • ガーフィールとエルザのバトル
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