いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる 作:リーグロード
もうリゼロのアニメは4期が終わろうとしているのに、この小説の方はまだ2期後半にも届かないという情けない状況。
息を切らしたスバルは、遺跡のような施設を見つけると、まるで何度も訪れたかのように迷わず奥へ進んでいった。いや、一度来たことがある。それはガーフィールに監禁されるという、不本意な形での訪問だったのだが……。
やがて、何らかの仕掛けがありそうな場所に辿り着いたスバルは、その窪みに誰かの記憶通り輝石をはめ込んだ。すると、転移魔法が発動した時のように眩い光が放たれ、行き止まりだった壁が消えていた。
「すっげぇ、ファンタジー世界らしい仕掛けじゃん!」
「カズマ!カズマ!私たちの屋敷にもあのような秘密の部屋へ入るための仕掛けが欲しいです!!」
「いや、いらねえだろ。ウチにそんな何かを隠すような物なんてないんだから」
駄々をこねるめぐみんの頭を押さえつつ、カズマは内心で、ちょっぴりエッチな物を隠すには案外いいかもしれないと思っていた。
そうして、隠された秘密の部屋にスバルが入ると、そこにはクリスタルの中で裸のリューズさんが鎮座していた。
「ていっ!」
「何度も食らうか!!」
スクリーンにリューズさんの裸が映った瞬間、駄々をこねていためぐみんの目潰しが炸裂。しかし、何度も経験済みのカズマはギリギリでめぐみんの手首を掴んで止めた。
「カズマは自称ながらも紳士を名乗っていた人間ですよね?ならばここは素直に目を潰されて紳士的な対応をするべきではないでしょうか?」
「ふっざけんなよ!紳士的な対応に目潰しは含まれねえんだよ!!ってか、他の女性の裸を見てほしくないってんなら、そういう態度を見せろよ!態度をさぁ!!」
ギャーギャー!と言い争うカズマとめぐみん。周りからすれば、痴話げんかも時と場所を選べと叱られそうな状況である。
そろそろ誰かが2人の喧嘩に仲裁を入れようとしたその時である。
『よもや、ここへ来て半日のスー坊に暴かれるとは思わなんだ』
『記憶のおかげさ。嫉妬の魔女に吞まれた誰か?ここを知ってた誰かの記憶。横の子は、昼間の転移で俺を案内してくれた子……か?』
後をつけられていた……いや、聖域の目によって監視されていたのだろう。スバルが部屋に入ってちょうどのタイミングでリューズさんが姿を現したのは、それが理由だと考えられる。
「そうか、まだこの時点じゃ半日しか経ってないのか。スバルの死に戻りのせいで何日も聖域にいるから、現地の奴らと時間感覚が合わねえな」
「ですね。言われてみれば、スバルさんが死に戻りした直後の日なら、まだ一日も経ってませんもの。私がリューズさんの立場なら驚いちゃいます」
リューズさんの半日という言葉を聞き、尚文とラフタリアはやり直しによる時間のズレを認識する。本来なら尚文のような反応が普通だが、流石は幾度も死に戻りを直に繰り返してきた本人は平然と軽口を叩いていた。
そうして、現れたリューズさんに、スバルが協力を願い出る。
『今のスー坊には逆らえんな。『強欲の使徒』の言葉には逆らえん。それがリューズ・メイエルの複製体である私らに課せられた契約じゃからな』
「また契約か。あの異世界……あるいはスバルの周りは契約や誓約が身近にあるのか?それとも……」
「さぁ、どうでしょうね?ですが、我々も重みこそ違えど契約や誓約は普通に使いますし、あまり重要視しなくてもいいのでは?」
「ふむ、デミウルゴス君の意見ももっともだな……」
ここで再び契約という言葉が出たところで、ターニャが疑問を感じていたが、デミウルゴスからの回答に納得すると、その後は何も言うことは無かった。
そうして、いつまでもあの部屋で話す訳にもいかなかったのだろう。場所を移動してリューズ宅にて話し合いを行う。
とりあえず、ベットに腰を下ろしたスバルの隣に複製体である白い服を着たリューズさんがちょこんと座り、スバルの服を握る。
『やけに懐かれた……』
「かなり急というか……」
「一瞬で幼女を堕とすとか、やりますね」
「だな……」
「いや~、スバルの奴、アーラム村のガキんちょ共や、ペトラちゃんにベアトリスちゃんにも懐かれてたし、小さな子供に好かれやすい体質なんすかね?あっ、だったら、ウチの少佐もそのうちスバルの奴に懐いちゃったりして」
「ほぉ、それは興味深い話だな、グランツ中尉?」
「ゲェッ!?あ、いや、その……。皆さん!?」
「「「……プイ」」」
「見捨てないで!!?」
気が緩んでの談笑でつい口を滑らせたグランツがターニャに睨まれ、仲間たちから見捨てられていた。
案の定、目の敵にされたグランツは冷や汗をかき、幼女とは思えないターニャの威圧的な視線を浴びる。そのままの緊張感の中、スクリーンではリューズさんが聖域の成り立ちと目的について語っていた。
『そう、ここはかの魔女が描いた夢を叶える実験場じゃよ』
『一体何を実験してたんだ?』
『こうしてスー坊の前におるじゃろ。魔水晶の中にワシとそっくりな娘が閉じ込められておったじゃろう。あれこそ本物のリューズ・メイエル。それ以外のワシを含めた全てのリューズは、その複製体。紛い物じゃ』
スバルにとっては驚きの事実だろうが、既にデミウルゴスとバニルによって見抜かれたその事実を聞かされた者たちは違う反応を見せる。
「随分と簡単に喋るものだ。既に現物を見られたからか、あるいは複製技術はそこまで秘匿されるものではなかったのか?」
「どうでしょうか?隠しても意味が無いと悟ったからか、それとも彼女がシーマではなくビルマであるからこその考えの違いという可能性もあります」
「あ~くっそ!?ややこしいな!シーマにビルマ、他にもロズワール先生にガーフィール、まだここまで見てないけど、聖域解放反対派も色々と考えてるんだろ?思惑が入り乱れてる上に、屋敷と聖域への襲撃まであって、どうやって解決するんだよ!?」
アインズとデミウルゴスがリューズさんの様子を見ながら、自分たちなりに解釈を深める傍ら、それを耳にしたカズマがここまでに登場してきた人物たちの思惑を思い出しながらも、未だに全容が明らかになっていない聖域問題に混乱していた。
「確かに、尚文の推理通りなら、同じ複製体でも考えの違いがありそうなリューズさん。ロズワール先生はスバルをこの機会に自分の望む方へ成長させたい。ガーフィールは魔女に関わりのあるスバルを自由にさせたくない。聖域解放反対派は特にこれと言って動きを見せていない。この様々な思惑に加えて、殺人鬼と三大魔獣の襲撃ですからね。まるで魔王軍幹部と大物賞金首が手を組んで襲い掛かってきたようなものです」
「めぐみんの言う通りだな。策略はともかく、襲撃なら私も、大兎か殺し屋と魔獣のどちらか一方なら、この身を盾にして守れるだろうが、あいにく体は一つしかない。くっ……クルセイダーとして情けない!」
グッと拳を握って悔しがっているダクネス。知らぬ者からすれば、苦しむ他者を慈しむ誉れ高き騎士の姿に見えただろう。
だが、ダクネスの性癖を知る者からすれば……。
「なあ、あれって絶対にどっちの痛みも味わえないってことに悔しがってるだけだろう」
「だな。流石はララティーナお嬢様だ。こんな時にもブレねえな」
「ですね。というか、元々スバルの世界の話なんだから、どっちも会えないでしょうに」
「いや、わからんぞ。アルベドさんの話じゃ、あのペテルギウスってヤベェ奴も学園に来たらしいし、ひょっとしたら、もうこの世界にあのヤベェ連中がひょっこり現れてるかもしんねえぜ」
「ちょっと怖いこと言わないでくださいよ。下校時に怖くて1人で帰れないじゃないですか!?」
「おっ、なら手を繋いで帰ってやろうか?学生グランツ君?」
「だな」
「も~、やめてくださいよ!」
ダクネスのブレない性癖に呆れた様子で談笑するケーニッヒ、ノイマン、グランツの3人。最後に怖いことを言い出したケーニッヒのせいで、冗談交じりに怯えるグランツを面白おかしくからかっていた。
そうしている内に、リューズさんから複製技術の秘術とも言える秘密を暴露する。そして何よりも驚愕なのは、複製技術は疑似的な不老不死。強欲の魔女の新たなる肉体を作るための実験と聞いて、その価値を正確に理解できてしまえる者たちが冷や汗を掻いていた。
「よもや、このような場所で随分と興味深い研究を聞けるとはな」
「もしこの情報を本国に持ち帰ることが出来れば、その研究結果次第では、国の情勢が一気に塗り替えられるぞ」
今や劣勢にある帝国にとって希望の光になるやもしれぬリューズさんの語った実験の目的に、ルーデンドルフ校長とゼートゥーア副校長の眼差しは一層鋭くなる。
不老不死という響きは、権力者なら誰もが憧れる魅惑の言葉。その情報をちらつかせれば、自らの権力基盤の強化や、周辺諸国の腰の重い重鎮たちを動かすことも連合軍内部の裏切りを誘発させることも可能だろう。ただし、使い方を誤れば新たな敵を生み、帝国からその技術を奪おうと必死になる国々が現れるに違いない。
いや、下手をすればこちら側の内部崩壊さえ招きかねないその内容に、レルゲンは無言のまま背中に冷や汗を流していた。
そんな風に不老不死実験に食いつく者がいる反面、それを嘲笑う者もいる。
「やはり、人間は愚かですね。寿命という定命の者らはそれらに抗おうと無駄な抵抗を試みる。まあ、我らがナザリックにも寿命を持つ人間種はいますが、全員がその命尽きるまでアインズ様に奉仕するという崇高な使命を持っていますからね。そのようなくだらない試みなど、欠片も興味はないですね」
「ええ、それに不老不死が欲しいのなら、アンデットや悪魔に転生すればいいだけの話ですもの」
寿命を持たない悪魔のデミウルゴスとアルベドは、エキドナが研究する不老不死の実験を冷淡に否定した。彼らにとってはそんな遠回りな手段を取る必要はなく、種族を変えれば済むと嘲るように言う。
そして、その意見は他のナザリックのメンバーもほぼ同じで、寿命に囚われる発想に対しては、魔女であっても所詮は下等生物だと見下す視線を向けていた。
だが、ただ1人だけ、一般人の思考を持つアインズだけは、内心でその実験に感嘆していた。
(いやいや、不老不死の実験ってすごいことじゃないか?そもそも、寿命のない悪魔やアンデッドに簡単に転生できるのは、ユグドラシルのゲームアイテムが現実になったからで、普通はアルベドが言うほど簡単じゃないんだよな)
そう心の中で呟きつつも、アインズは冷静な支配者の仮面を被り続けた。
『そういうことか、あいつがやけに俺に馴れ馴れしかったのは!』
リューズさんから不老不死の実験について聞き、スバルはエキドナの自分への態度に納得する。
死に戻りというリューズさんには聞かせられないエキドナがこちらを同類扱いして自分を贔屓する原因を心の中で呟く。
『(俺の死に戻りも、ある意味不老不死。あいつは同類を見つけて嬉しかったのか?)』
そして、その心の声はスピーカーを通して部屋にいる全員の耳に届く。
「あの手の女が同類を見つけたぐらいで親身になったりするか?俺にはどうもまだ何か隠し事があるように感じられるがな」
「いやいや、それはちょっと考えがひねくれ過ぎじゃね?もうちょっとぐらい人の優しさとか信じたらどうだよ?まあ、胡散臭くて怪しいのは同意するけれども……」
「ふん、信用できる奴なら信じてやるが、ああいうビッチみたいな女は裏の顔を持ってるもんだ。いいか、スバルもそうだが、カズマ、お前も悪どい女に十分に注意しろよ。あいつらは自分のためなら平気で裏切る連中だからな!」
「お、おう……。気を付けるよ」
スバルの考えを否定する尚文の言葉に、カズマは苦笑しながら応じた。だが尚文は、どうにもエキドナからビッチと改名されたマルティに似た雰囲気を感じ取り、スバルがどうしても協力したい理由には別の背景があるのではないかと疑っているようだ。
そして、そんな鬼気迫る顔で注意を促す尚文に、カズマは顔を引きつらせながら、内心で「尚文ってビッチな女性に騙された経験があるんだ」と勘違いしつつ、頷いていた。
『それで、エキドナの狙いは成功したのか?』
『いいや、エキドナは引き継がれておらんよ。魔女の目論見は不完全な形でしか叶わんかった』
『不完全な形?』
『強欲の魔女を受け入れるには、リューズ・メイエルの器では不足じゃったんじゃ』
『そんなこと、やる前に分からなかったのかよ?』
実験は失敗。その言葉に落胆したのは、この部屋に一体何人いたのだろうか。もっとも、エキドナが生きていない時点で成功などあり得ないのは明らかではあった。ルーデンドルフ校長とゼートゥア副校長が期待していたのは、実験の詳細と失敗の理由を聞き出すことだったが、内容は詳しく語られず、失敗理由も魂という帝国では観測すらできない次元の話に終始し、興味の「き」の字すら失わせてしまった。
『魔女の死後も施設だけは残り、今なお複製体は増え続けておる。マナで出来た体じゃ、生きるのに資源を必要とせんのが、せめてもの救いじゃがな』
『茶は飲んでるみたいだけど?』
『これはワシの趣味じゃ。長生きの間に獲得した個性の一種じゃよ』
「生産され続ける複製体か……。もしかしたら、共和国には兵士を複製させる技術でもあるやもしれんな」
「だとしたら、人は畑から採れるという話も、まんざら噓ではないかもしれませんね」
「もぉ~、2人共冗談でも趣味が悪いですよ」
スバルとリューズさんのシリアスな話し合いに挟まれた冗談に、ターニャが乗っかり、ヴァイスが相槌を打つ。そんな2人のやり取りに、ヴィーシャが困った表情で口を挟み、苦言を呈する。
やがて、リューズさんが複製体としての苦労話を交えた後、スバルを指して語っていた強欲の使徒の話へと移った。
『簡単に言えば、ワシらリューズ・メイエルの複製体への指揮権を持った存在のことじゃ。スー坊は墓所で魔女から使徒としての証を授けられておらんか?』
『証って……?』
『例えば、魔女の髪や爪など、身体の一部』
『……まさか、ドナ茶!?』
思い当たる節にスバルが叫ぶ。
「ふむ、なるほど……」
「なんのなるほどだよ?」
今のリューズさんの説明に、デミウルゴスが意味深な一言を呟くので、離れた席のカズマがいちいち反応してツッコミを入れる。
「いえ、そう大したことではありませんよ。ただ、前回の死に戻り前にガーフィールが複製体であるリューズ・メイエルに命令を下せていたのは、仲間だからではなく、スバルと同様に強欲の使徒だからなのではと思いましてね」
「「「ッ!!!」」」
デミウルゴスの指摘に、あの時の光景をはっきり覚えている者が気付き、小さく声を漏らした。確かにリューズさんの言う通り、複製体に指示を出せる存在が強欲の使徒であるなら、ガーフィールもまた強欲の使徒である可能性は十分にある。
つまり、ガーフィールもスバルと同じように墓所でエキドナに会っているかもしれないということだ。
「あれ?じゃあ、ガーフィールは試練への挑戦権を持っているのに、聖域の解放をしていないってことは……」
「ガーフィールが聖域解放反対派である説が有力になってきましたね」
デミウルゴスの指摘から、カズマとめぐみんが更なる推察を展開する。
現在の状況やこれまでの経緯から、ガーフィールが聖域解放に反対している可能性が高いと感じ、思わず顔をしかめた。
「いえ、お2人とも。断言するのは早計です。もしかしたら、ガーフィールにも何か理由があって解放していない可能性だってあります」
「あいつもあれでまだ中学生くらいの年頃なんだろ。それで、姉と離れて聖域に暮らしている。両親の話も聞いた覚えも、この部屋でそれを見たこともないなら、エミリア同様に、過去にトラウマがあって、試練を乗り越えられていないだけって可能性もある」
カズマとめぐみんの出した推察とは逆に、ラフタリアと尚文はガーフィールに肩入れする意見を述べる。
正直、この時点ではガーフィールがどちらの陣営に属しているのかは断定できない。ただ、未来で彼がスバルを大将と親しげに呼び、それにスバルが照れながら返事をする姿を知っている者たちは、どうかこれ以上仲違いが起こらないようにと、静かに願っていた。
『待てよ、複製体への指揮権が使徒の証っていうなら、ガーフィールも墓所に入って、試練を受けたんじゃないか?』
デミウルゴスの指摘をきっかけに、少し前に皆が気付いた事実について、スバルがリューズさんに質問する。
「やっぱしスバルって頭の回転早いよな。俺らもデミウルゴスが言わなきゃそこに気付かなかっただろうし……」
「ええ、そうですね。けれど、そうしなきゃならない状況に追い込まれているからこその力だと思うと、ちょっと同情しちゃいます……」
「「「「…………っ」」」」
呑気にスバルの思考力に感心しているカズマの隣で、めぐみんはその力が今の苦しい状況を変えるために必要だからこそ発揮されているのだろうと悲しく思い、複雑な表情を浮かべた。
そんなめぐみんの言葉が静かに部屋中に伝染していくようで、先程までの冗談が言えていた空気は鳴りを潜め、徐々に張り詰めたものとなっていく。
やがて、スバルの質問にリューズさんは無言でうなずき、その質問を肯定した。
それを受けてスバルの中で何かしらの答えか──あるいは、策でも浮かんだのだろう。真剣な表情でリューズさんを見つめ、1つの頼み事をする。
『リューズさん。俺が強欲の使徒ってことは、ガーフィールには黙っておいてくれ。俺たちが通じていることも』
『身内と間男に関係があると知れば、ガー坊も黙っておらんじゃろうからなぁ』
『表現に悪意がある上に、俺の業が深すぎる。けど、ひとまずOKだ』
再びのリューズさんの十八番とも言える自虐めいたネタに、先程のめぐみんの言葉で重くなった部屋の空気が和らぐ。
そんな中、思わずため息を漏らす者もいる。
「はぁ、ラムもそうだが、あの世界のピンク髪の女はいちいち相手を性犯罪者扱いするような言い方をしなきゃ励ませられないのか?」
リューズさんの自虐ネタが、覚悟を背負ったスバルを励ますためのものだと察した尚文は、頭に浮かんだ同じピンク髪のラムの姿と重ね合わせながら、不満を漏らす。
しかし、その顔にはわずかな笑みが浮かび、どこか憎めない彼女たちの性格を嫌ってはいないことが見て取れる。
『ありがとな、リューズさん。そういえば、オリジナルの家名はメイエルなのに、リューズさんはビルマって家名だよな?あれはどこから?』
『リューズと名乗ることは、植え付けられた役割じゃ、ゆえにワシらの個性は別の場所に見出すしかない。趣味、嗜好、それに名前。……なあ、スー坊や』
『うん?』
『嫌でなければ、また同じ質問をワシにしてくれんか?──また明日以降に』
それを最後に、スバルは小屋を後にして帰路についた。
「ねえ、今の最後のお願いってなんだったの?」
「さあ、同じ質問を明日もしてくれって、よく意味がわかんねよな?」
リューズさんの最後の言葉の真意がわからず首を傾げるアクアとカズマだったが、逆にその意図を察した者は多くいた。
「ふ~む、これは恐らく……」
「ええ、バニル先生もそう思いますか」
「今までのリューズさんの話と他に家名を名乗るシーマという複製体のことを考えるに、先生とデミウルゴス君が思い描く通りなんじゃないか?」
悪魔2人と悪魔と恐れられる幼女はリューズさんの最後のお願いの意味に気づいたのだろう。
それぞれが意味深な笑みを浮かべながら、互いの解釈の確認をするように頷き合う。
「ねぇ~、今のがどういう意味なのか、答えがわかったら教えてちょうだいな。ほんと、悪魔って種族は陰険で困っちゃうんだから。ターニャも、そんな奴らといつもつるんでるから、陰険さがうつっちゃうのよ!」
行儀悪く座席の背もたれに後ろ向きでもたれ掛け、足をぶらぶらさせながら、アクアがバニルとデミウルゴス、そしてターニャの3人に絡んでいた。
そんなアクアの軽い挑発に、バニルはこめかみに青筋を浮かべ、怒りで震える。
「っ、これだからチンピラ女神はぁ~!!」
「ふっ、落ち着きたまえバニル先生。こんな低レベルな挑発に乗る必要はない。ああ、本当にこういうのは無視すべきだ……!」
「ターニャ殿も少し感情的になっていますよ。深呼吸されてはどうです?」
三者三様の反応を見せる中、一番冷静なデミウルゴスが説明役を買って出る。
「これは仮説ではありますが、恐らく明日以降のリューズ殿は別の複製体のリューズであると予想されます」
「別のって、なんでそうなるの!?」
デミウルゴスの推理に、頭の回らないアクアが驚きを隠せない。
「ええ、驚かれたようですが、これには理由があります。彼女はマナでできた体だから資源を必要としないと言っていましたが、本当にそうでしょうか?」
「つまり、リューズさんは嘘をついているか、もしくはそれだけではないということか?」
「はい、その通りです。飲食は不要でも、それを補う何かが必要なんです。そのナニカは、生き物が生きるための欲を考えれば自然と答えが出ます」
「生きるための欲ってことは、食欲と性欲と……ああ、睡眠ってことか!!」
デミウルゴスの仮説に尚文は相槌を打ち、カズマは閃いたようにパンッと膝を打った。
「マナで出来た体ならば、動くことでそのマナが消費される。そして、その回復方法として、飲食を必要としないのであれば、残された手段は順当に考えればカズマの言った通り、睡眠などの休息でしょう」
「なるほど、つまりリューズさんは1日の活動後はマナの充填のために深く眠りにつき、その間はシーマと名乗った別のリューズさんがいたことから、他に喋れる別の複製体のリューズさんが聖域の管理を担うということですね」
「正解です。それが我々が導き出した結論というわけですね」
「……いえ、そう褒められるようなものじゃありませんよ」
パチパチとデミウルゴスが答えを出しためぐみんに拍手を送る。
いつものめぐみんなら、その拍手を胸を張って満足げに受け取るはずだが、聖域の内外での様々な問題のことを考えているせいか、いつものような調子は出せず、その拍手を静かに受け取った。
それは他のメンバーも同じで、今もスクリーンに映る歩きながら聖域の問題解決に頭を悩ませるスバルを、心配そうに見守っていた。
作者のやる気は感想で増えるので、多くの感想を待ってます。
スバルの第二の試練後にIFストーリーを入れる
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OK
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NO