数日後木村は実家へ様子を見に帰った、神棚の設置を確認するためだ
その間に尾形さんに電話してみる
「何だい?」
「あの、気になってた事があるんですが…あの掛け軸が木村の家の神棚にあった事知ってましたよね?」
「…それが?」
「もしかして…尾形さんが神棚に入れたんじゃないですか?」
「……なぜそう思う?」
「何か…木村の家に詳しくないですか?」
「はっはっはwなるほど今時のガキだねぇw」
「?」
「神崎、お前の家は神棚も仏壇も無いんじゃないか?」
確かに無い
「本来家には神棚と仏壇があるものなんだ、仏壇に置くのは先祖、神棚はその他の家を守るモノって相場が決まってんだよw」
何か田舎の家って感じだが、そうか、家って本来そうなのか
「でも木村は神棚開けた事あったけど、あの箱無かったそうですよ?」
間が空く、多分タバコ吸ってる
「あのな『私恨まれてます』って証拠なんざ見える所に置くか?」
そうか?いやそうかも
「そうだ神崎、この前の蝿のアレどうした?」
クロムハーツって単語を知ってる訳ないか、溶かした事を伝えると
「そりゃ良い!火は浄化の『意味』があるからねw」
聞きたい…木村の母親の反応……
「もう良いか?商売があるんでね」
いや、これ以上他人が踏み込むべきじゃないか
「ありがとうございます」
切れたスマホを見ながら
「案外鋭いじゃないかw」
ニヤケる占い師
…………………………………………
「ちゃんと神棚付け直したぜw」
「普通に通販にあるんだな……」
通販サイトに載ってるとは…
「これで俺の家を守る意味があるわけだ、でもあのオッサン家にいるんだぜ?」
「あれどんな様子なんだ?」
「それがよ、白装束っていうのか?あの棺桶に入る時の」
???
今までの霊達の話を聞く限り服装は亡くなった時の物……って事は白装束を着てから?どういう事?
「昔から不思議だったけど反応が無いんだ、シカトしてるみてぇに、でも漸く分かった」
?
「あいつ俺達家族が見えて無いw恨む相手が見えないんだなw神棚に置く意味が分かったぜ、なのに俺子供の頃から話しかけたりしてよw」
「なぁ…尾形さんに詳しく聞いてみようか」
「…いや…それはいいや……今家族は守られてるしな」
多分木村も気になってる、尾形さんの違和感
…………………………
「うおおぅ……」
「初めて見た……」
森の中に古びた洋館、今回の依頼もいつも通り
『手掛かり無いから何か探せ』
はい馴れました
場所は温泉街だが現在は廃墟の街、人は居ないし何十年も前に潰れた温泉旅館やホテルが並ぶ、そこから山道を少し登って行くと突然現れた
「本当にあるんだな、こんな洋館」
某探偵マンガに良く出て来て『日本にそんなにあるのか?』と思ってたが
「入ろうぜ!」
扉の鍵は開いている、夏の日差しと蝉の合唱の中から入ると一瞬真っ暗…目が慣れると静かな洋館
「バイオ◯ザード!」
「すっげえっ!!」
いきなりデカい階段ある、登ってみる
「ゾンビいねぇか?w」
「サバイバルゲームで使えそうw」
実は今回の依頼内容は詳しく聞かされていない、寺の時の危険性があるからだ、あの時証拠隠滅していたのは一人だったが、人数が多かった場合最悪俺達が拉致された可能性があるそうだ、
だから
「バカなユー◯ューバーを演じておいて下さい」
児島さんからこれだけ言われている、だから普段着でスマホで撮影してるフリをしてムダにテンション上げる
「ハーブあるか?w」
「ひゃひゃひゃ!やべぇ!武器無ぇ!w」
「ナイフだけでも落ちてないか?!w」
次々に扉を開けて部屋の中を見る、人は居ないが霊も居ない、それを確認して
「木村、どうだ?」
「ダメだな、何も居ねぇ」
いつものテンションに戻る、どうやら安全だが問題は何も無いことだ、家具一つ無い、つまり調べるモノがない
「窓ガラス一枚割れてない」
「スプレーの落書き一つ無いのな」
心霊スポットや廃墟の肝試しをやりたいなら温泉街にいくらでもある、山道登ってわざわざ来ないだろうし、そもそも知られていないっぽい
ホコリだけ積もった殺風景な建物だ、住む事は出来なくても美術館になりそう
「はー……何探せってんだよ」
「ココまで何も無いとはな」
座ろうにも椅子も無い
「外出てみっか?」
「暑いよな……」
一階のホールへ階段を降りよう……と
「何だ?こっちに来る」
外を見る木村
「え?」
俺には何も…つまり霊?肩を触ると人影…しかし!このシルエットは!ツインテールの!まさか!まさかっ!?
「木村!!あれまさか!」
「…め……メイドさんだぜ……」
「ま…マジデスカ?」
俺達にとっての不動のカテゴリーの一つ!
コスプレの王道!!
長ったらしいタイトル、転生と並ぶ大好物じゃないですか!
「……やッべぇ、超可愛い…」
目を見張る木村
「……アンタバカぁ?とか言いそうだぜ……」
ちょっと待てずるい!!俺には真っ黒なんだよ!ソレ俺も見たい!
小学生の頃秋葉原で見た憧れのメイドさん!夏場の衣装はチビ目線で見るとそれはもう!
しかもあのキャラ!!
って違う違う!!冷静になれ!自重しろ俺!
影はそのまま入って来ると俺達の目の前で床に沈んで消えた
「木村?」
「あぁ……何なんだコレ?」
床……あの子供…
「地下室あるんじゃないか?」
「つってもどこから入るんだ?」
…………………………
一旦終わりにして泊まる事に、児島さんが予約してくれていた温泉宿…ではなく隣の市のスーパー銭湯…予算の問題って本当か?
スピーカーにして電話する
「そうですか」
「足跡はスゲェあったぜ?」
「一応地元警察に調べて貰いましたからね」
それで何も出なくて俺達に来た訳か…
晩飯は隣のファミレス…
「で?霊はそれだけなんですね……地下室か……」
「児島さん、今回は何なんですか?」
「ふむ」
実は例の家(大蛇)の企業グループの崩壊で残った資産を調べていた時です、あの一族や配偶者、その資産を調べて賠償や相続…について……?
既に会話について行けない俺達
「まぁ、一族の配偶者に怪しい人物が居る訳ですよ」
「何があったんですか?」
「コレは偶然なんですが、あの屋敷(大蛇)で鑑識の新人に指紋採取の練習をさせたらしいんです、その中に前科がある指紋が出ましてね」
「前科?」
「詐欺です」
「あー結婚詐欺ってヤツか?」
「いえ、それなら離婚して慰謝料を稼いだり別の方法です、あの一族に居たほうが色々良いでしょうし」
お金には一生不自由しなかったろう、封印さえ無事なら
「その配偶者、仮にA子さんとしましょう、その実家になっているのがそっちの洋館、植田家です、今はA子さんの実家家族は離散してバラバラなんですが…まぁ調べるほど怪しい訳ですよ」
「あの洋館は今は誰のモノなんですか?」
「施設に入っている父親のモノなんですが…こちらの指紋も密かに調べてみたんです、やはり詐欺の前科がありました」
「どういう事ですか?」
「まだ何とも、とにかく地下に手掛かりがありそうなんですね?明日は後藤さんもそちらに入ります、相談してみて下さい」
……………………………………
次の日
階段の一番下に腰掛けて玄関を見る、椅子がないから仕方ない、ホコリを払ってみたが…まだ尻が汚れそう
「窓開けると涼しいな」
「山の上だからか?」
霊を見るために熱中症なんて字面だけでも訳が分からない、と
「うおっ!出てきた!」
下を見る木村、ほとんど真下から出たらしい
「木村」
肩を触るとメイドさんのシルエット
「出て行くぜ」
二人でついていく、元はキレイな庭だったろう場所を横切り森の中へ
「何で森?」
「いや、森になったんだろコレ?」
「何処に行くんだ?」
森の中に狭い石段がある、手摺りは錆びてボロボロ、急な階段だ、そこをメイドさんは降りていく、付いて歩きながら記憶を見ると
「……何で?」
「神崎?何が見えた?」
「リンゴバナナブドウ…」
「はぁん?」
いやそんな顔すんな、俺にも分からないんだよ
下まで降りると住宅街の壁に挟まれた狭い路地、古い家が何軒も、って近道だったのか
「後藤さん!?」
「お?君達かw」
路地を抜けたら後藤さんともう一人の警官、そして古い家の前に
「あらぁ、随分若い…刑事さん?」
何だろうこのオバサン
……………………
「吉川君、ちょっとタバコ買ってきてくれんか?」
「了解しました、あれ?先程買っ……」
制服の若い警官、多分地元の警察
「良いから良いからw」
追い払ったな…
後藤さんは洋館の関係者を探しているそうだ
で、このオバサンは嫁に行ったが実家が心配でしょっちゅう帰って来てるらしい
話を聞くとこっちが明治から続く本来の温泉街、高度経済成長の時に大きな道路が近くに出来て、そちらに新しい温泉街が…しかしバブルが弾けて現在の姿に
メイドさんの話をすると
「何でリッちゃんの事知ってるの?」
今ソコに居ますなんて言えないがな?
聞けばメイドさんの同級生で同じ高校だったそうだ
「そうだ、写真が……」
奥へ行ってアルバムを持って来ると
「ほら、これが私、この娘がリッちゃん」
うおおおおお!!なんすかコレ!!あのキャラがコスプレしてる!!これが何十年も前?!冗談でしょ?!
現在でも十分通用しますよ!?
鼻息が荒くなる俺
二人でこの路地で撮った写真、一人はメイド服の可愛い娘、もう一人がこのオバサンになった訳だ
「まだメイドさんなんて流行らない時に御屋敷で働いててね?wあのカッコが可愛くてさw」
話を聞くと三上律子と言う名前、親は居らずお婆さんと二人暮らしで、両親の残した借金返済のため苦労していた、祖母を助ける為に高校の時にバイトで仲居をやった(当時女子は大概やったらしい)が
見た目が良すぎて宿泊客、酔っ払いが絡みやすく、トラブルを起こされ(気持ちは分かる)ホテルのオーナーだった洋館の主人が不憫に思いメイドとして雇い入れた
学校が終われば家事に追われる毎日、そして夕飯が終わるとデザートを買いに行かされ、毎日あの石段を降りて来たそうだ
「ほら、ウチのお向かい、今は空き家だけど八百屋だったのよ」
今霊が立っているのはその空き家の前
「毎日わざわざ果物買いに出させてさ、ヒドイ主人だって思ってたけどさ」
空き家を見る
「今なら分かるわ、遊ぶ時間が無いあの娘に息抜きさせてたんだよね」
楽しそうに笑う写真を懐かしそうに眺める、その時に撮ったんだろう、そして少しの時間でも友人とのお喋りを楽しんだ…
だが…律子さんは写真の時のまま霊になっている…それは…そういう事だ
その頃に時間は止まってるんだ、多分地下に居るんだ…そして毎日お使いに出て…空き家を見て……
「木村…何とかしたいよな…」
シャツの胸を掴む
「切ねぇってこんな感じか?」
顔を覆う木村
何も買えず…毎日そんな事を何十年も繰り返してるのか…?
記憶を見ると
なんでなんでなんでだんなさまだんなさまだんなさま……
律子さん、もう少し何かないか?もっと何か?俺に見せてくれよ!!
初めて霊の記憶をもっと見たいと思えた
「もうすぐ高校卒業って時に行方不明になっちゃったのよ?お婆さんも探してたわ」
「…なぁオバサン、あの洋館って地下室無いか?」
「地下室?知らないよ?」
すると家の奥へからお婆さんの声
「ちょっと待って、聞いてくる」
「………………」
戻って来ると
「防空壕があるって噂聞いたことがあるってさ」
「ボウクウゴウ?」
「木村、マンガ日本の歴史で見た、戦争してる時の…避難するヤツだ」
「ちょっと待ってて、お母さん来るから」
家の奥から杖を突いたお婆さん
「ごめんねぇ、膝が悪くてねぇ、どうせ調べるなら」
ついでに調べて欲しい事があるそうだ、実は三十年程前にオカシな事があったそうだ
あの洋館…植田家が今では廃墟のホテルを数軒経営していた、バブル景気で大儲けしていた筈が突然ホテルを売却、クビにされたと言う
「私昔は仲居やっててねぇ」
しかしオーナーが変わっただけで仕事は同じ、雇われ女将などスタッフも変わらないし安心してた、が、バブルが弾けて今度は本当に倒産した
「よくある話だと思うがな」
老人の前で気を使う後藤さん、電子タバコを仕舞う
話を聞く限りバブル崩壊を察知してリスクを減らしたようだ、有能な経営者、資産家って事だよな
そのゴタゴタの辺りからあの植田家の人達は一切人前に現れ無かった、ホテルの売却も電話一本で知らされ雇われ社長や女将も大慌て、そんな時に仲居の代表が直接直談判に洋館に行った
「代表?誰だい?」
「リっちゃんのお婆さんだよ、私達仲居の先輩だった、だけどねぇ」
その直後オーナーに遠くの老人ホームに入れられた、まだまだしっかりしてたのにボケが始まってるらしいって
「……その時の年齢は?」
「今の私位の歳だねぇ」
「あれ?お母さん、もう一つ変な事あったって言ってなかった?」
「はぁ?…………あぁ絵の話だねぇ」
その頃植田家の辺りで煙が見えて石段を登ったら知らない男が焚き火をしていた、絵を燃やしていたと言う
聞いたら新しく入った下働きだと言った
「不審な点だらけだが……バブル崩壊の時は全国でゴタゴタしてたしな」
電子タバコをまた吸い始めると
「木村、神崎君、行ってみよう」