霊感ってカッコ良いか?   作:天海つづみ

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第十七話 流行り

 

 

 

律子さんへの思いは消えないが物理的に遠いのは良かったかも知れない、近所だったら通ってしまっただろう、

 遺骨はあの辺りの寺の共同供養塔に納められ、同級生のオバサンに伝えたと後藤さんから聞いた…

 ……まぁ俺達を納得させるための嘘だとしても、ソレはソレで後藤さんの優しさだ

 それに今更反省もしている、もしも被害者があのキャラのメイドさんではなかったら…俺達はあんな感情的になっただろうか

 

 夏休みの課題も終わり木村の部屋でゲーム、何だか俺の部屋は勉強部屋で木村の部屋は遊び用になってきた

 そこに

「よっ!」

 突然現れた麻理恵さん、二学期からのテストの過去問題とレポートを持って

「ちょ!どうしたんすか?!」

「はぁ?優しい先輩が後輩のために持って来てやったのにその態度?」

 何でも二学期からは実習が多くなり座学は減る、だが基礎理論は難しくなるそうで

「お礼位はさせてよね?」

 あぁ、蝿の件か

「で?アレ何だった?直ぐに体調戻ってビックリしたよ?」

 考えてみればあれっきりだったし……けど全部説明しても…なぁ……

 

「木村さ……多分幽霊とか見えてんだよね?」

「えっ?!」

 麻理恵さんってもしかしてソッチ方面に抵抗無いのか?

 

「あれは……」

 仕方ない…説明すると

「別れて良かったわ、そんな女が居たんだw」

 麻理恵さんってすんなり受け入れるタイプだ

「じゃあ見てみない?!実習棟!出るって噂あるんだ!」

 ……いや、トラブル持って来るタイプかもしんない…

 

 ……………………………………

 

「麻理恵さんにバラしたの失敗だったんじゃね?w」

「俺達の事ゴーストバスターとか思ってるかもw」

 バスターしてないよ?出来ないよ?

 

 時間は昼、築五十年近い実習棟の一つ、夏休みなのに上級生は課題で使ってるし、国家試験の模試で点数が足らない人は補習を受けていて結構人が出入りしている、一階、一番奥の階段下の物置、そこに幽霊が出ると言う

 一番奥まで行くと人気が無い、隣にあるトイレも掃除されてなくて埃だらけ

「明らかに人が来てないな」

 床を靴でなぞる、埃に線が出来る

「薄暗れぇ…」

 ライト持って来て良かった

 階段下の古い木の扉、開けるとガラクタ……そして

「……何でだ?」

「どうした?」

 肩を触ると影が…寝てる?

「…婆さんが寝てる……何でだ?」

「???」

 大学の施設内部で婆さん?

 え?なにそれ?

「うお!起きた!」

「えっ?!」

 慌てて肩を触ると人影が……手を出してる…?記憶を見ると

 何かくれ何かくれ何かくれ何かくれ何かくれ腹減った腹減った腹減った

「木村、何かくれだってさ」

「何かって…何だ?」

「腹減ったって、食べ物?」

「持ってねぇし」

 

 

 ……………………

 

「実習棟の奥の幽霊?」

 首を傾げる森瀬ちゃん

 大学の事務局で聞いてみた

「知ってる?wこの噂?w」

 鼻息荒いぞ木村

「お婆さん?変だなぁ、私が学生の時は鎧武者って話だったような?」

 鎧武者?麻理恵さんは言って無かったな?

 あれ?お婆さんって話も聞いてないぞ?ただ幽霊としか

「ねぇ?私も聞いて良いかなぁ?」

「え?!良いよ?!何でも聞いて?!w」

 落ち着け木村w

「児島さんの連絡先教えて?w」

 ニッコリ笑って……

 

 …………………………

 

「ああああ!!(濁点を付けてお読み下さい)腹立つ!!」

「木村落ち着けw」

 いくつか噂を教えて貰った、学校の七不思議的なヤツだがその中に「寝てる婆さん」なんてヤツは無かった

「もうちょっと古い人に聞いてみよう」

「居るか?あのヒト」

 

 …………………………

 

「エゴだよそれは!」

「地球が保たん時が来ているのだ!ア◯ロ!」

 教授室のモニターに某アニメが流れている、何で大学で見てるんだろうこのヒト

「おっ?夏休みも終わりだぞ?課題出来てるのか?」

 団扇を持ち冷えピタを額に貼った50歳半ばの小太り、森繁教授、ソファーに寝転がっているが……自宅ですか?

「教授室って自分の巣にして良いのかよ?w」

「繁さん、聞きたい事があって」

 一通り話すと

「お前等何処で聞いた?婆さんの話?」

「?」

 何か聞いてはいけない事なのか?

 

 少し考えると

「…お前等口外すんなよ?ホームレスの婆さんがあそこで餓死したらしいんだ」

 

「…はい?餓死?」

「どうやって入り込んだんだ?」

 

 

「……そうだよなぁ、世代が違い過ぎるわなぁ……」

少し考え起き上がると 

「…なぁ、校門って分かるよな?」

 ボリボリ腹の辺りを掻くオッサン

 

「学校の?」

「当たり前だろ?」

「じゃあアレが何で普段閉まってるか知ってるか?」

 

 は?何言ってんだ?当たり前だろ?防犯のためだろ?

 

「少し社会の価値観ってヤツを教えてやろう、俺が子供の頃は校門ってヤツはな、休みしか閉めなかった」

  

「…?」

「不審者とかあるだろ?」

 いい加減だな

 

「そこが今とは価値観が違うんだ」

 昔……つっても40年位前までは学校ってのは『神聖な学び舎』って考えがあった、誰でも気軽に入って良い場所じゃない価値観が確かにあったんだ

 

 ネットが一般化した辺り…調べると分かるがその辺りで小学校への侵入、殺人が起きたし、大学へ元学生が侵入して教授を殺すなんて事件も起きた

 それからは学校が対策する様になったんだ、大学もID付ける様になったし、私立なんかは警備会社が入る様な時代に変わった

「学食に近所の人が来るなんて事あったんだぞw」

 

「そんな緩い時代があったのかよ」

 

「何か治安が悪くなっ……」

 ピンと来た

「じゃあお婆さんの話って」

 

「そう、昔ならともかく今の時代にホームレスが入った話なんて、大学の警備が甘いって言ってる様なもんだ、誰かが上書きしてるんだよw」

 なるほど、それはそれで治安維持のためになってる訳か

「だからな?お前らの気分で波風立てちゃあいけないんだ、見ろ」

 モニターを指差す

「これも価値観の変化だ、一方は腐敗した地球人類をまだ信じたいヤツ、もう一方は一度粛清したいヤツの終わらない……」

 

俺達は黙って部屋を出る、長くなるから

「って事は他の噂も裏がありそうだな」

「理由が裏にあるってか」

「麻理恵さんにはどう伝えよう」

「……あれが良いぜ!」

 

…………………………………………

 

 律子さんの時の教訓が生きる、俺達は麻理恵さんに

 『あの物置には鎧武者がいて、食べ物を欲しがっている』と伝えた

 匂いは感じ取れかもしれないからだ、これで少しはお婆さんの供養になれば良いだろう

 

 

 

「って事があってよ?もっと古い人に聞きたい訳よw」

「古い人って失礼だねこのガキは」

 ついでに駅前に来てみると行列が出来ている尾形さんの占い

 わざわざ並んで聞いてみた、日陰とはいえ夏に並ぶのは俺には地獄

「まぁ価値観なんてのは日々変わるもんだしな」

 

「そんな早いモンなのか?」

 

「流行りなんて最たるモンだろ?」

 タバコを点ける、そういえば他の客の前では吸わない、てか女子しか並んでいない列にオタ二人って目立つな…

「こうやって行列見てるとな?流行りの服、アクセサリーなんかが分かる、ちょっと前は全員がタピオカ持ってたりなw」

 

 そうか、このヒトは流行りの最先端を常に見ている様なもんだ

「大らかな時代から…厳しい?時代になった…とか?そういう感じですよね」

 

「大体学校の七不思議にも流行りがある、アタシ等の頃はトイレの花子さんなんてないからね?」

「?」

 え?全国的なヤツじゃないの?

 

「学校に心霊現象や噂は付き物だ、その最初が分かってりゃ上書きされた嘘だって分かるがな?」

 

「最初?」

「学校の最初ですか?」

「お前らの知らない日本史だよ」

 人口密集地、昔で言う江戸には寺子屋ってのがあった、そこから明治に変わり段々と『教育』ってヤツが一般化してきた

「日本ほど識字率が高い国はないからね」

 さて、今より兄弟が多い時代に学校を作らなきゃならなくなった、手っ取り早く広い平地が欲しい時、寺に集まって教育を受けた世代はどう考える?

 煙を吐く

 

「まさか墓場か?」

「墓の上に学校?」

「そうだよ?創立が古い学校は墓場の上が多かったんだよ、怪談も生まれるはずさね、今でも寺と幼稚園が隣なんて所もあるらしいぞ?w」

 

「じゃあ今でも……」

「埋まってたりすんのか?」

「何言ってんだ?昭和に全部コンクリに改築されたろ?その時に全部うやむやだw」

「うやむや…」

「なんかヒデェ…」

「昔は学校の隅の方掘ると人骨とか六文銭なんかが出たそうでなw子供が近付かない様に噂作ったんだろうよw」

 そうか上書き!俺達は上書きされた世界に居るのか!!

「さぁて休憩終わりだ、帰りな」 

 

「考えてみりゃコレなんかも上書きだしなw」

 アスファルトを蹴る木村

 

「今まで死んだ人数考えると、俺達は墓の上に居るようなモノか…」

 

 

…………………………

 

その後噂が更新された、実習棟の奥にお菓子を持って行って食べると香りが消えるという噂が出た、怪談はこうやって上書きされて事実が消えて行くのだろう

 

 

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