「良くやってくれました」
児島さんからお礼の電話、轢き逃げがスピード解決したからだ
「しかし君達の……」
小言が出る、いつもの格好で遺族に話を聞きに行ったら不審者に間違えられたからだ
「なぁ木村、一度キチンとした身なりしてみないか?」
俺もそれなりに見えるのかもしれない…デブはデブだが
「……俺は嫌なんだけどな」
木村は嫌そうな顔、コイツ素材は良いはずなのに何でだ?
ホントはイケメンだよな?
丁度夏休みが終わるし初日は実習が無い、髪を切りスーツで大学に行ってみる事に
「………………はぁー……」
予想はしていた、鏡の中の俺は体型が40代のベテラン営業
……で、
「ガチャ」
「おう、行くか」
隣の部屋から出て来た木村は若手ベンチャーのチャラ男社員、いつものクリクリ茶髪をスッキリ切り無精髭を剃ったようだ、少しタレ目に青い縁のメガネ
入学式に見たスタイルの良さ、ガリに細身のスーツは合うし、志織ちゃんの兄だから当然だがイケメンが出来上がった、しかもバリバリ仕事できそう
大学に行くと周囲の目が違う
「え!アンタ木村なの?!どうしたの?!」
「何?イメチェン?」
「アンタカッコ良かったんじゃん!」
木村の周りは女子が囲みワイワイする、俺は見えていないらしい、何この差?
女子のカラオケの誘いをヒラヒラ躱す、明らかに扱いに慣れている
ねぇ俺は?俺もスーツ着てますが?
…………………………
帰り道
「予想してたけど何この差」
「…」
「木村…ホントはモテるだろ?何でヲタやってんだ?」
腹立つんだが?
「……あー、俺な、女嫌いって言うか…」
「は?」
って事は俺目当て?!
「勘違いすんなよw」
BLではないらしい
木村の話によると女嫌いの理由は中学3年、成績が悪くて塾に行かされた時にこの辺りで一番有名な可愛い娘に告られたそうだ
「何それ自慢?」
「まぁ聞けよw」
夏休みの模試が終わったら付き合おうって話をしてたんだ、で、模試が終わる頃に気が付いた
「何に?」
「……思い出したくも無ぇけどな、その娘の後を…いつもビー玉が転がってた」
「?は?何?」
「…いや、最初ビー玉に見えたんだ」
「?ビー玉の霊?」
「……いや、良く見たらな……胎児だった」
「…!…うげぇ……」
それで付き合うの止めたんだ、で、高校入ってから噂聞いたら他に何人も付き合ってるヤツが居たらしい
「じゃあ襲われたとかじゃなくて…」
犯罪とかの結果じゃないのか…
男遊びかよ
「それから女が信用出来なくてな、あんま寄ってきて欲しくねぇんだ……別に女が本当に嫌いって訳じゃねぇんだぜ?w」
「その結果がヲタファッションか?」
森瀬ちゃん大好きでも女には裏があるって考えて…コイツはコイツでトラウマあったんだな
「楽だしな、それにアニメゲームプラモは好きだぜ?家でいつも一人だったしw 」
それでヲタ気質のイケメンが出来上がったのか
…………………………………………
アパートに帰りスーツを仕舞う
そんな生々しい現実にブチ当たったら女嫌いにもなるかぁ
もしも俺が胎児見たら……トラウマモノだよなぁ
…ふと思い出した事がある、ずっと疑問だった事、もやもやするから尾形さんに電話してみる
「おう、何だい?」
「あの、もしかしたら子供の霊の方が…ええと、悪霊になるっていうか…なりやすいとかありますか?」
「なぜそう思う?」
木村から聞いた話をする、もちろん木村の名前は出さない、それとエレベーターの子供の腕、更に山の女の子の話をすると
「神崎、子供の方が質が悪くなるのは当然さね」
「タチ?」
「あのな?子供は感情剥き出しだろ?常識も無いし自分の姿にも執着が無いんだよw」
「えーと……?」
「神崎、小さい子供がヒーローになりきってマネしたりするだろ?」
はい、近年では大きなお友達もコスプレします、俺もカメ◯メ波が出そうな気がしてやった事あります……先週…
「そもそも固定概念が無いから子供の方が変化しやすい、もしかしたら妖怪なんてのは元は子供かも知れないよ?w」
なるほど、なぜか納得出来る
「あの、胎児の霊って知ってますか?」
「水子だろ?常識だよ?」
「あれって」
「あれは払えるもんじゃない、ただただ母親を求めるだけでな、思考がそれだけだから……いや本能だな、だから念仏も通用しない」
そういうモノか…
「じゃあ一生着いてくる感じですか?」
「そうだが悪さ出来る知恵さえ無いよw」
なるほど
「じゃあ手が紐みたいに伸びてたのは」
「逃がしたく無かった、遊びたかっただけだ、休憩終わりだ、切るぞ」
あの子供は遊び相手を逃さないために手が変形した、山の女の子は複数の霊の集合した姿
子供は自分の姿形に拘らない……か
……あれ?……じゃあ木村家のオッサンは何なんだ?
服着て人間の形してる普通のオッサンだよな?固定概念も常識もありそうだし念仏も効くよな?
「待って下さい、直接聞きたいんですが」
既に切れていた
……………………………………
気になって聞きに来ると平日の夜に行列が出来ている占い、列で待つのは面倒で見える距離で電話すると
「おう、今日は一人か?キチンと並べよ?w」
えぇ…女子の列にデブオタ一人、めっちゃ目立つし恥ずかしいんですが?
(何コイツ?)
(暑苦しい)
(は?男一人で占い?w)
(ちょウケるんだけどw)
コソコソ話が……
聞こえない聞こえないあーあーあー聞こえなーい
やっと順番が来た
「木村の家のオッサンですが」
「あぁ、それがどうした?」
「あれは人の形してるのに悪霊になってません?」
後ろの客に聞こえないようにコソコソ話す
「それがどう……あぁ、子供の方が」
「そうです、アレは人の形してますしオッサンらしいし、白い着物着てるそうで」
「…蝿の時を覚えてるか?」
腕組みすると
あれの作り方は話したろ?
恨む人間が呪物にするモノを置き生き物を殺す、それ系の強いヤツだ
「つまり木村家を恨む人間が人を呪物にしたんだよ」
「人をっ?!呪物っ?!」
何それ!漫画みたい!
「じゃあ見つけて…燃やせば…」
「見つからないよ?」
「?」
「最強レベルの呪いだからね、呪物は近くには無いんだよ」
「どういう…」
「こんな説明はしたくないがな」
木村家を恨んだヤツは複数、恐らく家族単位だ、
あの霊自身はな、多分家族に協力させて自分を呪物にしたんだ
「自分を呪物に……そんな方法があるんですか?」
「はぁ?お前即身仏って聞いた事無いか?」
確か祈りながらミイラになるアレ?
「アレは平和だか仏教の拡散だか祈って自分を呪物にしたモノだろ?w」
そうか!アレ自体が呪物なのか!
「じゃあ即身仏に…」
「なってるだろうね、この世のどこかで、強力だから距離は関係無いし何時まで続くかも分からない」
「じゃあ祓えない訳か」
「だから防御策しか無い訳だよ、ホレ、時間だw」
追い払われる
帰りながら考える
子供ほど変化しやすい
そして尾形さんは詳し過ぎる、間違いなく木村に関わる人だ
あれ?もしかしたら…尾形さんが木村の家に関わってるとすれば、呪ってる奴らの事知ってたりして
…いや、それならとっくに対処してるよな…それが掛け軸?
疑問だけが残るなぁ
…………………………
「ちょっと木村、付き合い悪くない?」
いつものヲタファッションに戻ったのに同期のボス女(宮内)が木村に絡んでしつこい、
今までオタと見下して(いや実際そうだけど)一度も遊びに誘った事など無いくせに
この手の女は工業系に必ず一人は居るらしい
高校の機械科や工業高校は女子が1割も居ない所が多い、つまり美人じゃなくてもモテるのだ
『私って可愛い!モテる!』と勘違いしてそのままの価値観で大学に来てるので、やたら強気で自身過剰だし武道もやっていたらしくガタイも良い
「見た目だけで俺を判断してんなよ、それにな」
溜息混じりで
「ウゼェんだよ、鏡見ろ」
木村っ!今ソレはコンプライアンス的にどうよ!?
セクハラだぞ炎上するぞ?
女子全員的に回すぞ?!
世論が黙っちゃあいないぞ?!
「何よ!私が誘ってあげてんのよ?!」
うっわ自爆発言!!
『誘ってあげてる』??
その言葉は全員を敵に回した!
オーディエンスは木村の味方になる!
さぁ盛り上がって参りました!
木村のライフが回復…あぁ
いつの間にか頭の中で裁判ゲームが始まってた
「俺は自分から声掛けたヤツしか興味ねぇんだ」
「何よ!」
ズイッと寄る、木村が物理的に力負けしそう
「異議あり」
俺は手を挙げる
オーディエンスも静まり返る、盛り上がってる所に水を差して悪いけど
「木村は片思い中だから無理だよ」
「誰よ!」
「神崎!何言ってんだお前!」
「いやホラ、教授も面白そうに見てるし」
こっそり来た繁さんがニヤニヤ見ている
「何だよ終わりか?若くて良いなw」
全員座ると授業を始めるが
「あぁ、木村は森瀬に気があるよなぁ」
「繁さん!?何で知ってんだよ!?」
立ち上がり俺を見る木村
「言ってない言ってない!」
首を振る俺
「見りゃ分かるwあいつ人気あるからライバル多いぞ木村?、で次の係数の……」
………………………………………………
帰り道
「俺がこんな事いうのもアレだけど女子とカラオケ位は付き合ってやれば?」
「はぁ?女とどう接して良いか分かんねぇんだぜ?」
同意しながら木村の肩を触る、駅近の大通りの女の子はまだ向こうを見て立っている
この娘はいつ成仏出来るのか
「イケメンなら何言っても許されるだろ?w」
「そうじゃなくてな……宮内の周りに蝿がいる」
「えっ?!……いや、あの性格だと男絡みと言うより」
「多分ウザがられて嫌われた結果だろうよ」
……そりゃアレじゃ恨まれるよなぁ
「なぁ、何で宮内体調おかしくならないんだ?」
「分かんねぇけど気になるのはソコじゃねぇよ」
「?」
「気づかねぇか?アレ作ってるヤツ近くにいるんじゃね?」
!!!