霊感ってカッコ良いか?   作:天海つづみ

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第19話 忌地 前 オカルト

 

 

「まさかこの大学内部に居ないよな?」

「麻理恵さんに付き合ってた男聞いてみようぜ?」

「いや木村、その先が問題だろ?」

「ん?……あ!そうか!」

「その男が付き合ってる女答える訳無いぞ?w」

「そりゃそうだw何股してるか分からねぇしなw」

 話しながら歩くと

 

「なぁ良いだろ青井?」

「やだ、興味無い」

「お前付き合い悪いぜ?」

「私は忙しいの!」

 

 学食から出て来た千尋さんとブツかりそうになった

「あ!神崎君!木村君!」

 言うと同時に俺達の間をすり抜けて隠れる

「え?なんすか千尋さん?」

「あ、と、え?」

 何事?

 

「ちっ!」

 睨みながらどこかに行く先輩の男、いかにもって感じの金髪色黒

 

「助かったよwしつこくてさw」

 

「何があったんですか?」

 あれ?千尋さんこんなに可愛かったか?

 聞くと色々誘われて困っているそうだ

 

 実は俺の部屋を見た衝撃と言われた事のショック、あの事件の反省から少しは片付ける習慣ができ、鏡を見る機会が増えたらしい

 そしたら陰キャ貞子系だった容姿が ちょっと陰がある美人になった

 ぶっちゃけポケットなモンスターのオカルトでマニアがストレートな髪になった様なレベル

 

 そう、タダでさえ女子が少ない工業系で素材の良さが周囲に理解されてしまった、当然急に同期達から誘いが始まったらしい

 

「飲み会位なら行っても良いんじゃないですか?」

 誘う度胸があるって羨ましいな

 

「私お酒ダメだし中学から男の人と話した事無かったんだよw」

 

「ちょ千尋さん、色々ヤバいってw」

 苦笑いの木村

 

「何が?」

 首を傾げる不思議そうな千尋さん、この『分かっていない』感じ、このスキの多さ、今の言葉だけでどれだけの情報を提供しているか

 今迄男に縁が無かった(でしょうね)らしいし、本人もそっちの方に興味無かったようで

 手慣れた男なら簡単に持って行くだろう

 

 ガードを知らないタイプ……か

 

「あーいた!千尋!」

 麻理恵さんが来た

「また菅原のヤツに何か言われたみたいじゃん?!」

 

「大丈夫、丁度……」

 

えっ?!

ち!千尋さんが俺の腕を掴んだ!

「二人が来てくれたからw」

じっ!女子に触れられるなんて!何年、何年振りにっ!

 

 

 ほ!惚れてまうやろー!!!

 

 

 

 

 

 ……いや、あのゴミ屋敷思い出しただけでテンション戻るわ……

 

 

 ……………………………………

 

 数日後、夜

 何で来てしまったのだろうと少し後悔もしている

 

「この辺りなんだぜ!」

 

 運転する菅原とか言う先輩とその友人の車に俺と千尋さんが乗っている

 なんでも千尋さんが断りきれず

「神崎君が来るなら行く」

 と言ってしまったらしいのだ、仕方なく菅原とかいう先輩は俺も誘って来た

 さすがに千尋さん一人じゃ危なっかしいので守るつもりで来たが……

 二人とも陽キャの不良タイプ…苦手だ……守れるハズも無い

 

 向かっているのは菅原が心霊スポットと言う元ラブホ、飲みの誘いでは来ないが肝試しの話題を出したら千尋さんが食い付いついたらしい

「神崎君がいるなら安心だしさw」

 いや千尋さん?俺は見えもしない一般人ですよ?何を安心してるんだ?

 この人達下心ありありなのが分かりませんか?

 

 だが俺は慌てない、こんな状況で落ち着いていられる理由は

 

 ……………………………………

 

「多分お前だけどっかに置き去りにされるかボコられるぜw?」

 中庭でコソコソ話す

「やっぱりそう思うw?」

「見え透いてるぜ?だったらよwお前への傷害か……w」

「俺殴られる事前提?w」

「あの菅原とか言うヤツ、どう思うよ?」

「……千尋さんが……気分悪くしてるしなぁ」

 

 

 

 後を着いて来るバイクの聞き慣れたエンジン音、木村が追跡してるのだ、後藤さんに話を通したら警察官を四人も付けてくれた

 

 ……………………………………

 

「ここだ!降りようぜ」

 国道から少し離れた辺りに数件のフェンスに囲まれた廃墟、その中の一軒で昔はオシャレだった様な感じのホテル

 荒れた駐車場にはこの車の他に黒いワンボックスが二台、先客が居るようだ

 

 四人で降りた

 

「ふーん、雰囲気あるなぁ」

 街灯も無く車のライトで見えるのは開きっ放しの自動扉、捲れた内装も見える

 

「良し、二人一組で行くぞ?」

 菅原が千尋さんの腕を掴もうとすると

「ちょっと!やっ!」

 振り払う、そして俺の腕を掴む

「私神崎君と行く」

 なんすかコレ?幸せなんですが?

 

明らかに態度が悪くなる菅原

「お前はさ?青井の何なんだよ?あ?」

 ズイッと寄って来る、なるほどココで俺を殴って置き去りにするのか?

 暗いけど木村と警察官に見えてるだろうか

 

「全員で入れば良くない?」

 何気なく千尋さんが言うと収まる

 

 助かった……けど……今千尋さんは何処まで考えてんだ?

 まさか俺を庇った?

 

四人で入ってみるが

「神崎君が前歩いてくれるなら安心だよw」

 肘を掴んだまま楽しそうに……

俺はライトを持って先頭で入って行く

 

 お決まりのゴミと空き缶、ペットボトル……が無い……?何で?埃は積もってるのに?

 心配は病院の時の様に『別の施設』だったら恐い事だが……?

 あれ?

 

「なぁ青井、何でこの1年信頼してんだ?」

「あれ?知らない?私の住んでた部屋の死体見付けてくれたんだよ?」

「はぁっ?!死体っ?!」

 後で明らかに雰囲気が変わった

「おい!神崎だったな!マジかよ!」

 

「あ、まぁ……」

 振り返り愛想笑い、歩きながら事の経緯を説明する

「お前警察の関係者なのかよ?」

「たまに手伝ってるだけですよ?」

 

後でコソコソ話だした、『警察』の印籠はもうちょい後に出す予定なのに

 と、

『ゴスッ!』

『ゲフッ!』

 後ろで変な音、そして菅原の友人はどこかへ電話し始めた

 

「……菅原さん、ココにはどんな噂あるんですか?」

「つっ……先輩から聞いた話だとな、あー、女の霊が居るんだとよ」

 

「?、居るだけですか?」

「えーと、連れ込まれて襲われて殺されたって話だ」

 ふーん、取って付けた様な話だね、実際今考えたんだろうけど

 

 俺はあっちこっちライトで照らす、なんだか妙に綺麗で変だ、しかし菅原達は前だけ照らす

 この時点で理解出来る、人は真っ暗の廃墟に入ると色々な方向を見る、しかし慣れている者はそうならない

 

 菅原は肝試しなんてしていない、少なくとも一度はココに誰か連れ込んでいる、犯罪の匂いだ

 

 ……まぁ不安は無い、スマホをずっと木村と通話中にしてある、俺が落ち着いているのはそれが理由なのだが……

 

 二階に上がる……別の意味で俺は冷や汗が止まらない

「神崎君、大丈夫?」

「だ、大丈夫ですよ、俺汗っかきで……」

 さっきから声が……聞こえてる

 

「……でねでね……」

「……でしょでしょ……」

 

子供だ、コソコソ話してる声が俺だけ聞こえてる

 背中が引きつる、冷たい汗

 

 尾形さんの話もあるし…子供の方が怖いんだよ……

 

 すると上の階から数人の話声と足音、階段をドカドカ降りて来る

「おう」

 男が5人荷物を持って上から降りて来た、とても肝試しをやってた感じでは無い

 

「あ…ども」

 菅原が軽く頭を下げる

「?」

 知り合いか?

 

「俺達は引き揚げる、後は適当にやっとけ」

 菅原の友人とかいうヤツも一緒に一階に向かって行く

 

 

「ウス…」

 菅原は答えると

「青井、神崎、俺も帰るわ、適当に帰ってくれ」

 

「……そうですか」

 帰りの足が無くなるのは仕方ないがこれで『人間の』危険は無くなった、千尋さんを襲う気だったんだろう

 

「え?何で帰るんだろ?」

 千尋さんは鈍感なのか?この状況でまだ理解してないのか?

 

「上の階へ行ってみます?」

 ちょっと霊の方が気になる

 

「うん、せっかく来たんだし」

 これがデートなら幸せだがな?二階から三階へ、次々部屋を見て回る、と、

 

「何?この部屋?」

「……やっぱり……」

 その部屋だけ妙に綺麗で電気も点けっぱなし、ベッドや椅子があり壁紙も綺麗

 

車載用みたいなバッテリーから照明が繋がっている

 ……それに色々小道具まで……

「撮影用に使ってたんだな」

「何映すの?」

 本当にどこまで知らないんだ?危機感無いのかこの人は?

 しかしそれ以上に

 

「でねでね」

「でしょでしょ」

「きたきた」

「まだまだ」

 なんて数だよ……コソコソ話がザワザワしてる……

 視界の隅にチラチラ薄い影が……

 って言うか何で俺見えてんだ?

 

「ベッドに……うわぁ……こんなのホントにあるんだぁ……」

「ちょっと千尋さん(汗)」

「ネットで見た事あるよ」

 あの連中が忘れて行った電動のアレを平気で持つなwこの人度胸があるんだか鈍感なんだかw

 

 

「おう神崎、千尋さん」

 ライトを持った木村が来た

「連中外で話聞かれてるぜ?」

 

 木村も中を見ると

「やっぱりなw」

 

「……ねぇ、もしかしてここって大人のビデオの撮影してた場所?」

「……多分そうです、千尋さん気を付けて下さい、本当は襲われる所だったんですよ?警察呼んであったから良いですが」

 さすがに察したか、少しは警戒って気持ちを持って下さい……

 

「いや、それよりタチ悪いみたいだぜ?w」

「……どういう事だ?」

 

「ネット配信っぽいぜw」

 連中は大量のメモリーカードやカメラ、機材、PCを持っていたそうだ

 

「?」

 ポカンとする千尋さん

 

「いやだから、えーと……」

 木村は頭をボリボリ掻く、千尋さんに理解出来るか?

 木村の話では有料会員向けのネット配信をしている連中かもしれない、空き家や廃墟を使い場所の特定を困難にしている奴等の可能性があるそうだ

 中継して視聴者のリクエストに答えるっぽいヤツ

 

「?別に何処かのスタジオで撮れば良いんじゃないのか?」

 何でこんな所で

 

「神崎、瞳に映った風景だけで場所特定出来る化け物みたいなヤツがネットには居るんだぜ?

 それにスタジオ代って安くはないらしいぜ?」

 つまりプロではない、あの世界の女優はその道のプロであって当然の対価がある、

 そして女優をきちんと女優として扱うそうだ、その辺りを蔑ろにすれば訴えられかねない、

 なんせ証拠になる犯行シーンを売っているような物だからだ

 だからキチンと法令遵守してるらしい

 

 が、ココで撮影していた連中は素人の集団で金儲けを思い付き、素人をタダで使い捨てているらしい

 

「うわぁ……ヒドイな」

何人被害者いるんだろ

  

「私はソレにされそうだったの?」

 

 やっぱり分かってなさそう

「そうッスよ?男の誘いにホイホイ付いて行っちゃダメですよw動画撮られて食い物にされる話位はネットにいくらでもあるでしょw」

 

 

「……で木村……ココの……」

「あぁそっちな」

 木村の話によると銭湯とかこういう場所は霊が集まり安いそうだ

「何で?」

「あのな?霊って元は人間だろ?自分が透明人間になったらまずどうする?w」

 

 ……うん、それは…色々見たいよねw

 ……………男の夢だわぁw

 

「で?何で今俺見えてんだろ?」

「ソレだろ?w」

 指差す、千尋さんが俺の肘をずっと掴んでいたのだ

 

 アンテナ……

 

「え?幽霊いっぱい居るの?」

 最早天然ボケかこの人は、蝿の時に何も疑問に思わなかったのか?

 

 

「……にしても……多すぎんな……何でだ?」

 

 ……………………

 

「すまん!」

 2日後、俺達の前で土下座する菅原、

 普通に廊下なので目立つ目立つ

 

「もう解放されたんですか?」

 厳重注意だけで解放されたそうだ

 

「早くね?w」

「あの後藤って刑事に言われてよ」

 

 ……………………

 

「やれやれバカなのか君は?二言目には『先輩に言われたから』?自分の頭で少しはモノを考えろよ」

 取調室で呆れる後藤さん

 

「すいません……」

 

「で?連れて行ったのはあの娘で二人目なんだな?」

「はい……」

「まったくバカな事したもんだな、もう大学生だろ?仲間の同調圧力より善悪の方が社会じゃあ大事だろ?いつまで高校の中の価値観引き摺ってんだ」

 

…………………………………… 

 

 菅原は高校時代の関係が続いていて先輩の要求に逆らえず、上納に金が無理なら女を連れて来いと言われたそうだ

 

「もう良いから立ってくれ、目立つってw」

 立ち上がる菅原

「後藤さん他に何か言ってたか?w」

 

「お前等二人は警察に顔が利く、手出ししたなら書類送検して前科が付くって」

 なるほどしっかり脅された訳だ、陽キャの空気は無くなったし、生殺与奪は俺達の手にあるらしい

 

「千尋さんには謝りましたか?」

「あぁ、もちろんだ」

 本当は菅原自身、千尋さんに少し気があったらしい、だったら巻き込むなよ……

 

「あー菅原さん、それとは別に聞きたい事あるんだけどさ?」

 真面目な顔になる木村

 

「あそこで何か壊さなかったか?神棚とか?」

 

 

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