「何が気になってんだ?」
「んー、ちょっとな……」
日曜昼、木村がずっと気にしているのでバイクで向かいインカムで話す
案外遠くて県境だった
「人の集まる所はな?霊も多いんだけどよ」
「例えば?」
「テレビのスタジオとかだな」
木村にはテレビの生放送に霊が大勢映って見えるそうだ
タダで入れる、見られるしアイドルも間近で……なるほど、気持ちは分かる
「生放送じゃないと俺には見えないんだけどよ、多分アレ系のビデオも本当は大勢映ってると思うぜ?w」
バイクで国道から脇道に逸れて二人で駐車場に立つ
昼に見ると田んぼと畑の中で殺風景の中にフェンスに囲まれた……
いや、良く見ればフェンスの上に錆びた有刺鉄線
その中に廃墟が3つ並ぶ、
人が集まる所じゃないのに霊が大勢居るラブホ?違和感あるぞ?そんなに見たいのか?
……いや見たいかw
菅原達が壊したモノは部屋の扉や鍵、他には特に無く動かしたモノは不動産屋の看板だけだと言う、入り口にあって邪魔だったらしい
確かに色褪せて古い看板が横になってる、菅原が居ない時に仲間が何か壊してるかも知れないが
……木村の肩を触りながら……と
「うわ!……こんなに居たのか…」
入り口から数人の黒い影、木村に触れてると全然違う
「何だ?見えてなかったのかよ?w」
「千尋さんの霊感って弱いんだなぁ」
アンテナが無い俺が言う事ではないがな
ザワザワした気配がある
「多すぎる…異常だぜ?…」
キョロキョロする木村
「何かの封印でも解いたんじゃねぇかと思ったんだけどな……変だな……」
階段も廊下も影だらけ、例の部屋まで行くと警察のテープで入れないようにされている
「中見ても良いのかな?」
「開けたらマズそうだよな……もう撮影やってないのに多いのは何でだ?」
…………………………
霊が溜まる場所、ラブホの廃墟に溜まるか?そこにはどんな理由が?
尾形さんの行列に並ぶ、あの人の知識にはいつも助けられ……?
こっちを見た途端に尾形さんが驚いた様に立ち上がる、とこっちに来る
???
「おう…お前等」
睨んで歩いて来る
「あ、こんにちわ」
「婆さん、客放って……」
「靴ひも解けてるぞ……」
下を指差す
「「えっ?」」
二人で下を見た
「ほら良く見ろ、ほら」
屈んで靴を見る、と!
「こんのバカ共ぉ!!」
「ゴゴンッ!!」
「あだぁっ!!」
「いってぇっ!何すんだ!」
ゲンコツが落とされた
「うるせぇ!!何処で拾って来やがった!」
言うと紙袋を取り出し中身を投げ付ける!
「わぷっ!」
「ぺっ!何だコレ!しょっぱ!」
「清めの塩だよ!応急処置だ!正座ぁあ!」
鬼の形相、初めて見る
駅のシャッター街のアーケードで正座して、頭から塩をかけられるキモオタ二人
行列の女子達がクスクス笑う中で……罰ゲーム?
「ほう、どこだいそれは?」
「ちょっと遠くて……国道から少し入って……」
「まぁ良い」
小声になると
「今夜家に来い、祓ってやる、その娘と先輩とやらも連れて来い」
………………………………
午後6時
「うそ…ココなの?…」
固まる千尋さん
「重てぇな……」
ブルーシートを持っている菅原
「コレ経費請求できるかな」
四キロの塩を持つ俺
「怒りそうだよな児島さんw」
一升瓶二本を抱える木村
二人に『あのホテルは縁起が悪い場所だった、お祓いをしてくれる人がいる』と言って来て貰った
特に千尋さんに麻理恵さんの時の事を話したらアッサリ信用してくれた
着いたのは千尋さんが前に住んでいた部屋の隣、あの覗きのお爺さんの部屋、こんな所に尾形さんが入居していたのだ、何でも不動産屋に
「とにかく風呂トイレがあって一番安い所だ!」
と条件を出し、案内されると
「フン!殺人現場かい、隣の窓の所に埋めたのか」
と言い当て更に値切ってやったそうだ
「おう、持って来たな、入れ」
綺麗なワンルームになっているが、奥に……祭壇?
壺?いや花瓶に木の枝(榊の枝)、神主が持つヒラヒラ、御札が大量、そして鏡みたいな丸いヤツ
「神崎、木村、ソコに置け」
俺達は塩と日本酒を祭壇に置く、と四人並んで正座させられる
「いいか?お前等に浮遊霊が大量に着いてる、今からソレを祓う」
「ちょっと待ってくれ、何でおha」
菅原が口を挟むと
「黙れクソガキ!テメェのせいだろ!話は聞いてんだ!」
しゅんとする金髪
尾形さんってこんな恐い顔するのか、咥えタバコで睨むと
「始めるぞ!」
祭壇に念仏を唱え何かが書いてある御札を燃やしていく
……!、今……かしこみかしこみって言った? 尾形さんて寺系じゃなく神社系?
これ祝詞じゃないか?
20分位祈った後、あのヒラヒラを俺達の頭上でバサバサする、と、御札を燃やした灰を塩に混ぜて振り返る
「シート広げな」
ワンルームにブルーシートをガサガサ広げると
「良し、脱げ」
………………は?
「早くしな、あぁアンタは風呂場のが良いな」
千尋さんを風呂場に入れると
「早くしな!」
ワンルーム全体にブルーシート、その上にパンイチになった男三人が正座する
……なんすかこの絵面?
「姿勢良くして目ぇ瞑って手を合わせろ!パンツも脱げ!」
「は?!おい婆さんマジで?!」
「早くしろバカ共!」
恥ずかしい……けどやるしか無い、そうだ、銭湯だと思えば……
言われた通りにすると頭から大量の塩をかけてくる、祝詞?を唱えている
日曜の夜、国民的アニメを見ながら一家団欒の時間帯
俺は正座マッパで婆さんに塩を頭から……何の罰ゲーム?
金髪色黒、ガリイケメン、色白デブが並んで?
何だよこのイベント?
「よし、次はこっちだな」
「カチャ」
「何してんだ!早く脱げ!」
「ホントに脱ぐんですかぁっ?!」
「当たり前だろ!」
風呂場に入って行く婆さん、扉を閉めると
「ホラ下着も全部だ!恥ずかしがんじゃないよ!」
「ええっ?!」
声が漏れてバサバサ音が聞こえる
(うわぁ脱がされてる……)
「ホラもたもたすんな!アタシも女だ、平気だろ?」
「ちょっ!やだぁぁぁ」
(ゴメンナサイ千尋さん、我慢して下さいw)
「お前妊娠してないだろうね?」
「えっ?何で?」
「浮遊霊はね、胎児に取り憑く事あるんだよ」
「私何もした事無いです!」
「見せてみな!」
(何を!?)
「ひゃっ!やあぁっ!んっ!ああっ!ダメッ!〇〇〇〇〇〇〜ッ!」
(ナニしてますかっ?!オカルトマ〇アの二次創作の世界になってませんかっ?!
けしからんご褒美でございましゅ!
ありがとうございます!ありがとうございますっ!!
色っぽい声に妄想が止まりません!どんな姿でどんな格好にっ!?
すぐそこの薄い扉の向こう側で千尋さんが…あんな格好やこんな……)
「カチャッ」
「ふぅ、面倒くさいね……次は……おい男共!姿勢良くしろって言ったろ!」
(ナレーション、全員前屈みです、体の一部が変形して背中真っ直ぐに出来ません)
次は
「冷てぇ!」
「マジかよ!これも頭からか?!」
「木村!これ常温買ったか!?」
日本酒をどばどばかけられ塩と混ざり全身べしょべしょ、何のプレイ? 最後に口に含んで
「ブフゥーッ!!」
吹き掛けられた……
「良し、次はアンタだ」
風呂場に入る
「ひゃっ!冷た!」
「ブフゥーッ!」
「ひゃひいぃっ!」
「ほら全身に掛からないだろ!こっち向けな!」
(何を?)
「よし、シャワー浴びて着替えな」
俺達は放置ですか?
暫くして
「カチャッ」
「いやぁっ!」
直ぐ後で悲鳴、出て来た所にマッパ正座で塩と日本酒浸けの男三人……変態かよ……
「喚くんじゃないよ、ホラ男共!順番に風呂行け!」
立ち上がりチラッと千尋さんを見ると壁を向いて俯いている
……………………………………
全員シャワーを浴びて着替えたが……
千尋さんは部屋の角で小さくなり顔を覆う……
精神的ショックが大きいんだろう、他人の婆さんに全裸を見られて塩と日本酒漬け、最後は口で吹き掛けられる……
何をされたのやら
俺達も婆さんに裸を見られ日本酒をかけられる、ナニコレ罰ゲーム?バッドエンド?
千尋さん「こんな時どんな顔すれば良いかわからないの」
俺「笑えば良いと思うよ」
いやムリ!ムリだから!名台詞でもフォローにならない!
「これなら掃除も楽だな……さて菅原だっけか?お前はシート持って帰れ、もう大丈夫だ」
「あ、あぁ」
「ありがとうございますだろ!本当は一人10万取るお祓いだ!二度とコイツら巻き込むな!」
咥えタバコで腕組みして睨む
「……」
頭だけ下げて出て行く、全部納得は出来ないだろう、恥かいてる訳だし
「さて……本題だ、お前等ドコで拾った?」
誰も正確には答えられない
「とにかくだ、お前等に着いていたのは浮遊霊なんかじゃない」
「……違うんですか?」
「山の時の集合体覚えてるか?あれの時唾付けられたろ?同じ様なもんだ」
「!、婆さん!俺等ヤバかったのかよ?」
「気配があったから祓ったんだ、あの時とは比べ物にならないくらいのヤツだよ」
そんなのが居たのか?
「お前等も帰りな、あぁアンタは後でアタシが送って行くよ?夜の営業始めるついでだ」
千尋さんはまだ顔を上げられない、
湿った髪が広がり実写版オカルトなアレになっている
「あぁそうだ木村、警察関係のお祓いもするからな、後藤の番号教えろ」
………………………………………………
「千尋に何したのよ!?」
次の日、中庭で麻理恵さんに怒られる、千尋さんが塞ぎ込んでしまったらしい
斯々然々理由を話す
「あの占い師がお祓いしてくれたんだ?」
お祓いの内容も話すと
「ぶっ!!wマジで!w……それはっ!w……キャハハハ!!」
爆笑すると周りが注目する
「あー、笑ったw」
涙目
「そりゃああなるわw分かったw励ましとくww」
いやその笑いフォローする気ある?イジる気でしょ?
「お願いします」
「このままじゃ千尋さんと顔合わせられねぇもんなw」
後からとはいえ正座マッパを見られ俺達だって恥ずかしいしな
「あんたらの裸の感想聞いとくよw」
「止めて下さい!」
それから数日、千尋さんは俺達や菅原を見ると顔を真っ赤にして避けるようになった
この関係性を修復してくれるはずの麻理恵さんは何をしているのか
絶対面白がってイジってるよ……
そして更に数日、俺達はあのホテルへ向かう事になる