「こんなデカイの丸呑みするのかよ」
「無理じゃね?」
「呑んで大丈夫なのか?」
「理由が分かりません」
捜査員から不安の声、塩と灰だらけの丸めた御札と日本酒、直径が4cm位ある
「尾形、大丈夫なんだろうな?」
後藤さんも
地元警察署の会議室、巫女衣装の占い師
「アタシの力が必要になったんだろ?だからこうして呼んだんだろうが」
あの連中は証拠不十分で解放となったが自宅を捜索するため準備していた
被害届けは出ていないが余罪がボロボロ出ると期待していたからだ
そしたら昨日、現場検証中にその中の一人があのホテルの前に現れた、
証拠隠滅の為かと思い確保して問い質したら、ハッとした表情になり
「何で俺ココに来たんだ?」となり、聞けばどうしてこの場所に来たか分からないと言う
最初尾形さんからお祓いの申し出があっても当然断った……が……
これはもう法律の領域ではない
尾形さんの話だと『引っ張られた』と言う、現状を考えたらこのままでは捜査員もあの連中も危険と後藤さんは考え直した
「引っ張られたくなかったら飲みな!」
睨む婆さん
「ぶえっ!」
「マッズっ!!」
「げっほ!」
「モゴッ!」
丸めた紙を丸呑みするのに一苦労
「吐き出したらもう一度だ!」
「尾形!デカすぎるぞ!これ体に悪ku」
「黙って飲め!」
後藤さんも渋々飲み込む
「次だ!」
警察署には必ず神棚がある、案外験を担ぐ商売だからだ、そこに御札を納め例のヒラヒラをバサバサ、御神酒などを供える
「良し、これでその建物入っても大丈夫だ」
……………………………………
「お祓いもしてあそこの捜索したんですか?」
後日、尾形さんの部屋に集合
「そりゃ行っただろうよ、現場の捜査だからね、そのバカ連中にも呑ませないと危ないんだけどね」
「そんな方法もあんのかw」
「体内から浄化し続ける方法だ、数日は効果があるが……」
煙を吐き出す
「厄介なモン見付けたかもな、まさか忌地なんて残ってるとは思いたくないねぇ」
「イミチ?」
「そうだね……分かりやすく言えば無縁仏の掃き溜めだよ」
「縁起の悪い土地って事か?」
「お前等昼に行って違和感無かったかい?」
確かに不思議な感じだった、他に建物が無い畑と田んぼの中に、フェンスに囲まれた廃墟が3つだけ
「後藤の話だと電柱や電線さえ無いんだぞ?建物はあるのに」
!!!
「え?!ちょっと気が付かなかった」
「どうなってんだ?あの場所、おかしくね?」
「意識の外にされた場所……いや……どう説明したもんだ?」
煙を吐くと
「お前等は不良と付き合いあるようには見えないからなぁ」
???
例えばだ、今迄生きてきて『なんとなく近付かない場所』とか、知ってる場所なのに『こんな場所あったか?』って所無かったか?
「……ありますね、なんとなく近付かない道とか」
「高校にあったぜ?こんな所に宿直室って事」
人には誰でも防衛本能がある、それは霊感も含める、それらが無意識下で避けてるんだ
「あそこはそういう場所なんですか?」
「多分な、とにかく行って直に見てみるしかない」
「まぁ児島さんが食い付いたからには何か分かるだろw」
拉致監禁、婦女暴行、傷害、不法侵入、恐喝、などなどの犯人
しかもネット配信までやっている
そんな連中を捕まえたら警察の株も上がるし大手柄
やる気になってる児島さんが目に浮かぶ
「コンコン」
ドアの音
「おう、今行く」
立ち上がる尾形さんと俺達、迎えが来た
…………………………………………
警察署の会議室、長テーブルの上には地図がいっぱい
「児島に頼んだ資料も来たが……どうしたもんだろうなぁ」
数枚の地図を眺める後藤さん
「何があったんですか?」
「何だ?古地図か後藤さん?」
「児島に言ったら掻き集めてくれたんだが……」
困り顔の後藤さん、国交省、農水省、国土地理院の地図に河川図
「……やっぱりどっちでもないのかい?」
ツカツカ歩き後藤さんの向かいに立つ
頷く後藤さん
「尾形……お前の予想通りだよ……ビックリだ、東〇都にも埼〇県にも住所が無い」
あの土地は県境にある、確かにあるのに番地が無いという
「そんな事あるんですか?」
「婆さん、あそこ何なんだよ?」
「今更出てきたかい……やっぱり忌地だ、後藤、遡って調べたんだろ?」
「あぁ、昭和20年代まであの辺りも町で埼〇県に入ってる、あそこは学校だったらしい、全部記録が残ってる」
別の資料を見ると
「学校が移転した後の……バブル辺りからの資料が無いんだ」
ピンと来た
「もしかしてその前は寺とか?」
「あぁ、そう言う事かw」
「何だ?何で分かる?二人共何か知ってるのか?」
古い学校の創立の話をすると
「なるほどなぁ、それで墓場を潰すことがある訳か」
「どうやらそれだけじゃないな」
地図を見ながら苦い顔の尾形さん
「なんですか?」
「見ろ、この古い地図」
???
「分からないかい?〇〇藩と〇〇藩の境目だ」
「婆さん?それが何だ?」
「この後ろの農業用水路、これは元々利〇川の支流のひとつだ」
バサッと古地図を隣に持って来ると
「これは間違いなさそうだね……」
???
「……鈍いね、水路になる前あそこは河原、そして江戸時代は多分……刑場だ」
古地図をつつく
罪人をハリツケにするアレ?
江戸時代は刑場、更にそこに寺を建てて多くの死体を供養した……って事?
「尾形、それなら供養したんだろ?」
「いや……多分違う……当時は『投げ込み寺』ってのがあったらしくてな?墓も建てられない貧乏人は家族が死ぬと寺に丸投げだったんだ」
タバコを取り出すが止める
「ついでに行き倒れ、乞食もな、罪人をボランティアがまともに供養してると思うか?」
「失礼します、本庁の児島警部補が到着されました」
……………………………………
国道から側道へ、おそらく旧道に入り住宅街……を抜けると田畑が広がる場所に来た
児島さんの運転で例のキャンピングカー
「大量殺人の現場である可能性がある訳ですね?」
やたら霊が多い話=手柄になってるらしいよこの人
駐車場に入るが
「ここまでだ!」
降りると尾形さんが建物を睨む
「間違いない、忌地だ、人が意識できない様にしてある」
全員で降りる
「?、意識……ですか?私は見えてますが?」
眺める児島さん
「廃墟になって20年ってとこか?」
早速タバコ吸い始める後藤さん
「あの看板の番号に電話すりゃ何か分かるんじゃね?」
「色褪せてて良く分からないな」
「……今お前等ホテルしか見てないだろ?」
3階建てのラブホ
「????」
「奥の廃ビルが見えてるか?」
もちろん見えてる、同じ年代くらいの廃墟
「ほら、良く見ろ、そして気づけ、あの高さなのになぜ国道から見え難いのか……木村、お前なら見えて来るだろ?」
「何か変なのか?」
木村が眺める
古い壁……打ちっ放しのコンクリート
「何で存在が忘れられてると思う?」
窓枠……が……アレ?無い?
窓ガラスどこ行った?
「どうして意識の話をしたか分かるか?何で手前のホテルよりデカイ建物が見えてないんだ?」
壁が黒い……あれ?黒かったか?……煤か?……いや
「なんだコレ?!」
木村が声を上げる
「どうなってんだ?!」
「木村?どうした?」
「神崎!触れ!」
肩を触るが……?
「え?分からないぞ?」
何か変か?
「神崎、アタシの肩掴め、そして良く見なw」
尾形さんの肩に触れながら見る……とジワジワ視界が変化する
「……ナニコレ?廃ビル……え?黒い……火事の跡?……え?焼けた後?!」
咄嗟に手を離すと古いビル、窓も着いてるし……
「え?!何で?!」
「分かるか?コレが『意識出来ない様にする』って事だw」
「どういう事です?」
「何が見えてるんだ?」
「行って見るのが早い、呑むぞ」
取り出したのは御札と灰と塩、そして日本酒
「こんなモノを丸呑みですか?私にはどうにも……」
丸めた御札を疑いの目で見る児島
「話は聞いてんだろ?死にたく無かったら呑みな」
「児島、何か掴めるかも知れないぞ?」
後藤さんの言葉に渋々呑む
俺達も呑み
「良し、行くぞ」
占い師を先頭に入る、と
「婆さん!何でそっちなんだよ?!」
「尾形さん?!」
「何言ってんだ?こんなホテルなんかどうでも良いだろ?」
ホテルの壁とフェンスの間、雑草の中を歩いて行く
「ホテルを調べるんじゃないんですか?」
「尾形!現場はこっちだ!」
「鈍いね!そっちはオマケ程度だよ!」
どんどん奥へ、仕方なく着いて行くと
「何ですかコレは?!」
「どうなってる?!」
目の前には火事で焼け落ちた様な鉄筋コンクリートのビル
見えていた廃ビルではない
「相当な術者の隠形だよ……アタシだって出来ないね」
「尾形……これは火事なのか?」
後藤さんの言葉を無視して
「かしこみかしこみ……」
尾形さんはそのままビルの中へ
「来て見ろ!!」
中は天井も落ちて階段も崩れていた、そして
「うおっ!マジかっ!」
「何で?!!」
「コレはどういう事ですかっ?!」
「尾形!何人居るんだ?!」
瓦礫の中に数え切れない程の白骨が転がっている、真っ黒になっているのもあれば緑の苔が付いてるもの、
まだ新しい今時の服を着ているモノも
「これだけデカイ忌地だ……穢れを祓えなかったんだな……」
上を見る
「最悪地主も死んでるかもな……引っ張られたか……」
…………………………………………
車に戻ると
「どう報告すれば良いんだ……」
「児島、これは話が大き過ぎる、こんな所に死体の山がありましたなんて言ってみろ、周辺住民が大混乱だ」
間違いなく大手柄だ、しかし表沙汰には出来ないと話し合う二人
考えてみれば犯行に使っていたホテルと同じ敷地の廃ビルなのだ、
普通なら怪しく思い確認するはず……が、警察官の誰一人違和感に気付ける者が居ない、居なかった
そして俺達も『あ〜、廃ビルがあるなぁ』程度にしか認識出来ていなかった
尾形さん以外の人間には見えていなかった
「……尾形さん、何なんですか?あの骨……」
「ここに近付いた連中だよ、お前等もいずれああなる所だったから祓ったんだ」
疲れた顔
「何でよ?」
「不良ってやつはな?隠れて悪さをする、だから人から見られたくない、隠れたいって感情と反動で目立ちたいって気持ちを持ってる」
何となく分かる
「人の目から隠れたい気持ちがあるとこういう場所が見えるんだ、普通に生きてたら『気にならない』様にされてるのにさ」
「そうかw体育館裏とかに集まるアレかw」
「人が近付かない場所に行く訳か……そう言えば廃墟を選んでた連中だもんな」
「引っ張られたヤツラ……行方不明の不良や犯罪者だよ、隠れたいヤツラさ、……学校ってやつは墓の上って話はしたな?」
二人で頷く
「明治に学校になった後、学校自体が……死体置き場になる事件が2回あってな……無縁仏だらけになった事がある」
「そんな事件?」
「一つ分かったぜ婆さん、戦争だろ?」
「そう、空襲、もう一つは関東大震災だ」
「!!」
「分かるかい?それもあって忌地になってんだ、山ほど居る無縁仏達が引っ張るんだよ、寂しい、苦しい、仲間になれってな」
タバコに火を点ける
「最初の罪人達も今の不良みたいなモンだろ?人の足引っ張る性質があるから馴染み安い」
煙を吐く
「アタシの師匠辺りは地鎮祭で都内のお祓いをやってな、
国の依頼で忌地を潰して周ったそうだ、
昭和40年代にほとんど終わって番地も有耶無耶にして人の記憶から消して来たんだよ
……まだあったんだねぇ……」
「ふむ、なるほど……意識出来ない、気にならないから役所も気付けないですね、更にデジタル化される時に漏れた可能性も……こんな場合……どうしましょう」
出世と手柄が大好きな児島さんも今回ばかりは
「このままにも出来んよな、尾形、どうすれば良い?」
「どうもこうも……関わりたく無いがねぇ…… 」
全部取り壊し、小さな社を建てて法要なり大祭をやった後社を燃やして送霊すれば良い、が、
これだけ穢れがあると全国から100人単位の神主なり坊さんを集めなきゃならない、
それに取り壊し業者など全員にお祓い、御札を呑ませないとならない……
「……これはいくら掛かるんだ……」
「警察だけじゃあ無理だぞ児島」
考え込む二人
そんな大イベント目立たない筈が無い、情報統制が難しい
「尾形さん、前に火は浄化の意味があるって言いませんでした?今の話ってソレですよね?」
「あ、燃やして浄化したのに無縁仏がまだ居るのかよ?」
「木村……アタシの肩掴んで見てみるかい?」
木村が掴んで見る、と、
「ガチャッ!!」
「うげぇっ!!」
突然ドアを開けて木村が吐いた
「どうしたっ!」
「ひっ……ヒック……」
涙目で嗚咽
「……見えたか?これが今アタシが見えてるビルだ……アタシでも手に負えないよ」
「木村?」
「顔だ……っく、壁一面顔がビッシリ見えた」
泣いている
苦しみ呻き苦悶の表情が見えた、山の時が可愛く見えると言う
「木造なら燃やして不動明王真言唱えりゃ良かったろうが……鉄筋コンクリなんぞ建てやがって……だから浄化出来ないんだよ!」
タバコを潰して消すと
「地主……いや土地守を探してみるしか無いね」
………………………………………………
次の日曜、バイクで国道を走って見ると住宅街の上にラブホが少し出て見える、
その直ぐ後ろに六階建て位の廃ビルが2つ
「あんなデカかったっけ?」
「神崎、あんまり見るな」
普段何気なく見える景色が実際は違う……事がある訳だ
「気づかねぇ方が幸せって事もあるんだな……あんなもんまだあるなんて思いたくねぇよ」
「普通に生きて、何も知らないって一番安全って事か」