霊感ってカッコ良いか?   作:天海つづみ

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第25話 女王

 

 

「どうだったよw俺のサプライズw」

 志織ちゃんが帰って直ぐに着信、

 木村一家は駅前の居酒屋で晩御飯だったそうだ

 

「あぁ……ありがとう……」

「どうした?何か暗いぜ?」

「木村……志織ちゃんに彼氏が居るって知ってたか?」

 

「…あー……そういや昼に聞いた…か?……」

 (まさか志織のヤツ神崎に……)

 

 察した様だな……

 マジ魔法少女で天使がケーキと一緒に『爆弾』投下して行ったんだぞ…

「……ケーキ食って寝る」

 

「…お、おう」

 

 次の日 早朝

 机の上には某魔法少女のDVDbox

 小学生の頃に小遣いを貯めて中古で買った

 動画サイトからダウンロードなんて知恵は小学生には無くてわざわざ現品を買ったのだ

 当時コレを買うのは恥ずかしかった、しかし俺は持てる勇気を振り絞り、手に入れた達成感たるや……

 

 しかし少年は大人になった

 いつの間にか中3設定のマミ〇ソも年下になっていた

 

 さようなら……行こう、ハード〇フへ、俺の初恋は……終わったんだ……

 俺は……今日、魔法少女を卒業します!

 

「コンコン」

 インターホンを鳴らさないのは木村だ、開けると

 

「おうw昨日は……!!」

 急に顔が強張る木村

 

「?、どうした?」

「お前…何したっ?!」

「?」

「霊がくっついてる!!」

「は?!」

 背中に霊がしがみ付いているらしい

 

 

 ……………………………………

 

「婆さん!!開けてくれ!!」

 尾形さんのアパート、ドンドン扉を叩く

「ガチャ!」

「うるさいね!近所迷惑だ!大体お前……」

 見た途端に

「なるほど…上がれ!」

 表情が変わる

 

 座布団を出され座ると

「茶はないぞ、で?神崎、どこで拾った?」

「?」

 錯乱してトンネルに行った事を話すと

 

「悪いもんじゃない、が影響は出るかもな……どれ?そのアレ見せろ」

 スマホの事だ

 トンネルのページを見せると

 

「自殺ぅ?本当かいそれ?」

 咥えタバコで片眉が吊り上がる

「自殺…なぁ…そうは見えねぇな」

 木村も同じ顔

「何が?自殺じゃないの?」

 何で?

 

「お前その霊は」

「婆さん!!」

 尾形さんの言葉を遮る木村、こんな事は初めてだ

「とにかく婆さん、悪いモンじゃないんだな?」

「あ?そりゃタダの霊だしな」

 メガネを掛けてスマホの字を読む

 

「なるほどねぇ…助けた神崎を優しい人だと思ってくっついただけの霊だな、どうする?祓うか?」

  

祓うだけなら簡単だろう、でもせっかくなら自殺した経緯を知りたい

「憑いた理由調べて…それからでも遅くないですよね?」

 

「お人好しだねぇw」

「じゃあ後藤さんに連絡するぜ?」

 電話すると

「丁度暇でな、こっちでも調べておこう……〇〇トンネルだな?」

 

 

………………………………

 

 2日後

 

「おぉ!君は神崎君だったね!で、君が木村君だね?」

 あのトンネルの管轄、県内のとある市、その警察署

 あの時のビシッとした制服警官に出迎えられる

「後藤警部から自殺の噂になった事件の資料を用意してくれ、と言われてね、用意してあるよ」

 早速会議室へ、長テーブルには資料が並べられている、そしてモバイルPCも、最近(?)の事件は紙じゃないらしい

「後藤警部は後から来るそうだ、それと…大事な事だから先に伝えておくよ?」

「?」

「あの事件は『自殺』と発表されているが……」

 間を置いて

「被害者家族の希望でそう発表されたんだ」

 

………………………………………………

 

 二人で資料を読む、いつの間にか慣れた作業だ

 事件は今から十五年程前

 被害者は当時高校生で、例のトンネルで自殺したと発表、しかしこれは被害者家族からの希望、被害者の名誉の為の措置

 

 実際は同級生男子からの性的暴行の末に惨殺だった

 犯人の同級生の男達は特定されている、が、問題が一つ

 DNA鑑定もあり性犯罪までは間違い無い、しかしその後口止めしてトンネルに放置したと言う

 殺人に関する部分が何も見つからず三人別に聴取したが供述は同じ

 だから当時未成年だった事もあり軽い刑、しかも執行猶予付きなので実刑にはなっていない

 

 当時は防犯カメラも無くて未だに半分解決してないらしい

 

「普通の娘だな……」

 ペラペラ捲る

「木村?顔見えてるんだろ?」

「あ、あぁ……」

 チラッと俺を見る

 

「?」

 何か歯切れ悪いな?……!

「そうか!惨殺だからケガしてる姿なんだな?それで俺に言わないんだな?」

 

「……あぁ、血だらけなんだ…」

 なるほど、それで尾形さんの言葉遮ったんだ、二人共自殺じゃない事気付いてたんだ

 俺がグロいのダメだからか……

 

 クリップで付いてる写真はカワイイ娘、……勿体ない

 

「おう、早かったな」

「「後藤さん!」」

 

当時本庁はこの警察署に捜査本部を設置、非公開で捜査したらしい

「なんでよ?」

「あのなぁ木村、全部の事件がマスコミに出るわけないだろ?俺達警察は国民の知らない所で働いてるんだよw」

 

 

 死体検案書というファイルを見る木村

「木村、そっち見せてくれ」

「……あー、大したこと書かれてないぜ?婦女暴行、傷害だな、頭殴られてる」

 ファイルを閉じると資料の下へ

「そういや児島さんはコッチ来ないのかよ?」

 

「立場がある人間になるとな、色々あるんだよ」

 犯人達の顔写真を見る

「なぁ君達、この男の顔見て犯罪者に見えるか?」

 画面に犯人達の写真

 

「……見えません…ね」

 制服の写真

「だよな、人を惨殺出来る様に見えるか?」

「どっちかっつーと俺達寄り……ってかヲタだよな」

 1人は俺と同じく色白デブ

 1人は真面目そうなメガネ

 1人は自信無さそうなガリ

 どうみても「犯罪」と縁が無さそう、クラスの陰キャグループだ

 

……まぁ俺が言う事ではないがなw

 

腕組みしたままの後藤さん

「ふーん……こりゃ面白いかもなぁw」

 

「?」

「何がよ?」

「初動捜査で大失敗してるかも知れん…」

 

 

「初動…最初ですか?」

 それの何処が面白い?

 

「あぁ…この犯人は多分女だ」

「女っ?!」

「コレは暴いた所で普通は誰も得をしないが……」

 ニンマリ笑う

「神崎君は出来れば解決したいんだよな?w」

 

何か含みがあるな……

  

 頷くと

 

「うん、児島にも良い勉強になるw」

 

  

…………………………………………

 

 更に2日後

 

 後藤さんは調べ続けた様だ、三人の犯人の1人が結婚して市内に住んでいる事を知り、四人で行ってみる事に

 

 インターホンを鳴らそうと……

「どなたですか?」

 痩せこけた自信の無さそうな顔が庭から

 あの時の1人だ、すっかり老け込んでいる

 大きな一戸建てに広い庭、

 軍手を着けて庭木を剪定していた様だ

「こんにちは、大木さんですね?」

「はい……もしかして警察の方ですか?」

「えぇ、と言っても今日付けで定年ですわw」

 ニコニコ笑う

 

小声で

 (神崎)

 (?)

 (肩触れ、見てみ?)

 木村の肩を触り見ると、大木の顔を下から覗き込む様な影

 

「いやぁ、大きな家に立派な車、稼いでらっしゃるんですねぇw」

 白々しく言う後藤さん

 調べたらこの大木、多重債務者なのだ

 しかも買っているモノが奥さんの服、靴、バックなどなど

「ちょっと中で話を聞きたいんですが良いですかね?」

「……妻に聞いてみないと……」

 引っ込んでいく……なんだろうこの違和感

「あー、奥さんにも話を聞きたいんですよ」

 一緒に玄関に向かう、扉が開くと

 

「うわぁ……」

「すっげ!」

 玄関からして世界が違う、良い匂い、キレイに掃除された床、窓にはステンドグラス

「少し待って下さい」

 大木は奥へ

 

 (オカシイ!霊が中に飛んでった!)

木村が家の奥を指差す

 俺は肩を触り集中する、と

 

ミツケタミツケタミツケタ……

  

「……やっぱりか」

 頷く後藤さん

「どういう事ですか?」

 

「児島…現場指揮で見落とし安いモノを見せてやる」

 俺達三人を見てニヤリと笑うと

「更に女が嫌いになるかもしれんがなw」

 

「上がって下さい」

 力無く言う大木

 上がってリビングの扉が開く、と、

 

 凄まじい違和感

 

「あら、いらっしゃいw」

 太ったオバサンがソファーに座っている

「刑事さんですってね?」

 

 先ず匂い、甘ったるいお香、ピンクのレースのカーテン、意味の無さそうなガラスの置物、高そうな家具、花瓶に造花

 その中に居るのは箱入りのお嬢様……だったらまだ分かる

 どうみてもオバサン、家の中で派手な服、ネイル、厚化粧

 ハッキリ言えば不気味だ、更に

 

 (やべぇ、コイツだ)

 木村が顎で示す

 (首絞めてる)

 このオバサンが惨殺犯か

 

 (良し、間違い無いなw)

 ニンマリ笑う

 

 

「……どうぞ座って下さい」

 言いながら大木がトレイにティーカップを……

「遅い!」

 まるで旦那が奴隷だ

 

「……で?ご要件は?大人数で来たのはなぜ?」

 笑い顔もどこか不気味だ、整形した顔?

 

「あー、私今日で定年でね、やり残した仕事を片付けてスッキリしたくてね、この三人は監視だよ」

「監視?」

「そう、今の私は怖いモン無しだ、無茶させないタメだよw」

 薄い白髪を撫でながら笑う

 

「ふうん、無茶?…ねぇ」

 首を傾げる

 

「まぁ……そうだな、ちょっと私の独白を聞いて貰いたいんだよ」

「何だか知らないけど、ヒマだし聞いてあげる」

 

先ずは……まぁコレが核心たが十五年前の〇〇トンネル惨殺事件、犯人はアンタだ

 固まる大木

 

「フフッ、何をバカな、証拠でもあるの?」

 

「無いんだなぁコレがw遺体も無いし初動捜査でミスしてるから調べようとしなかった、アンタの旦那達三人が犯人だと決め付けちまった」

 出された紅茶を飲むと

「どう見ても犯人は女なのになぁw」

 

「あら?どうして?」

 実は俺達もソコが分からない

 

「まぁ私みたいに街を歩き人と話して来た現場の人間じゃないと分からないんだがね?」

 

 遺体にキズを付けるのは意味がある

 

 殺人に慣れていない者は遺体の目を閉じさせる、または目を潰すヤツもいる

 コレは『見られてる』という恐怖心から来る

 だが顔中切り裂く犯人の心理とは何か?

 男は襲った女の顔を殴る事はあっても切りはしない

 なぜその必要があるのか

 

 

「これは嫉妬だよwアンタは被害者がカワイイのが許せなかったんだw」

「………………」

 

 そうか、これは女の心理なのか

 いや、そうか!顔がズタズタだから木村と尾形さんは自殺じゃ無いこと分かったのか!

 ……木村が写真見た時……

 死体検案書……

 見なくて良かった、吐いたかも知れない、顔が分からない程…酷い

 

「そもそもだ、十五年前の旦那の犯行も無理があるんだよ」

 同級生に話を聞いた所、クラスの中のグループ構成におかしな部分があった

 当時美術部の旦那達三人とアンタの四人でいつも一緒だったそうだな?

 これが分かると全く別の絵が見えてくる

「そして大木、アンタがなぜそうしてるのかもな」

奥さんの横に正座している

 

 

「なぁ大木、当時女に縁が無かったろ?そんな三人だけの美術部でこの女に……誘惑されたか?」

 大木は無反応

「じゃあ……三人で襲ったのが始まりだな?そこから言いなりになったんだな?」

 顔を上げる大木

 

「ふうん、そんな証拠あるの?」

 余裕…何だコノ余裕は?

 

「自分を襲わせた動画でも撮ったか?w」

  

「えっ?!」

「んなバカな?!」

「………………」

 

 俺達を見ると 

「あるんだよ、こんな事が、こういう女は少なからず居るんだ、体で支配するんだよ」

 オバサンに向き直ると

「そうして奴隷にした訳だ」

 

「想像力豊かねぇw」

 眉が不自然

 

「だろう?だが困った事に私の想像は当たるんだよw」

 ニコニコしながら向かい合い茶を飲む

 

「そんな時…三人の内の誰かが被害者に助け……いや違うなぁ」

 後藤さんは上を見る

「うん、カワイイ被害者を好きになったかしたな」

 またオバサンを見ると

「アンタはそれが許せなかったんだなw自分が支配してるモノを奪われたと感じたんだ」

 

 そんな身勝手な人間が居るのか……

 自分の身体使って奴隷にして……

 それが動機かよ

 

 何だか既視感があると思ってた、それが何だか漸く分かった

 まるで不思議の国のアリスに出てきた女王だ

 小さい頃に実写版を親に連れられて見に行った

 幼い俺には頭がデカイ女王が酷く不気味に見えた

 ……そしてこの家は……城なんだ

 

 

 

 ……おぞましいって……コレか……

 

「大体男三人の車に女は被害者一人ってのが無理がある、警戒されるからな、アンタも乗ってたんだよ、女二人居るなら形になるw」

 

「あら?それは無理じゃない?私は居なかったわよ?」

 余裕の笑み

 

「車も無いしなw確かめようもない…」

 ただね?

 多くの犯罪を見てくるとな?

 現場に『居なかった人間を居る事にする』はムリでも

『居た人間を居なかった事にする』のは簡単だ

 口裏合わせるだけで良いからな、そうやって反社なんぞは上役を逃がすし組織を守る

 

「そして大木達の見てないトンネル横の林に被害者を連れて行き、顔を切り刻んで、近くにあった石で殴ったんだな、暫くは意識があったらしいよ、這いずった跡があったそうだ」

 

 大木のを見ると

「被害者を殺したか?と聞かずに『悲鳴をきいたか?』と聞けば分かったのになぁw」

 

「面白いお話だったわ、貴方の想像、証拠も無いのにw」

 まだ気持ち悪い笑み

 

後藤さんは児島さんに目配せすると

「おや?話が終わったと思ってるのかい?」

「?」

「木村、どんな様子だ?」

 

「首絞めてるぜ?ズタズタで目がわかんねぇけど睨んでんじゃね?」

 オバサンを見ながら言う木村

 

「何を言っているの?」

 

「……あー、信じるも信じないも勝手だがね、あのトンネルから連れてきてやったんだw」

 立ち上がると

「帰ろう、これで終わりだ」

 

「……私は捕まらないのよね?」

 見上げる

「だから証拠が無いんだw」

 

 

 

 玄関から外に出ると

「あのう、私はこれから……」

 自信無さそうな大木

 

「あー……コレは一人言だが……」

 十五年、刑務所の中の方がマシな生活してきたんだ、あの女に搾取されながら…

 十分に罪は償ったさ

 今更昔の動画が出た所であんたに不利な事は何もない、消えちまった二人にもな

 もし不利になるようなら

「有利な証言してやるさ、アンタは自由だw」

 小声になると

「あの性格だ、証拠は常に見える所に置いてるはずだ、アンタ次第だろw」

 

大木の目に光が差す 

 

 ……………………………………

  

 帰り道

「あの、手柄にならないのにどうして児島さんも来てるんですか?」

 逮捕できる訳もない

 

 メガネを直すと

「君は私を何だと思ってるんですか?」

  

「まぁ…俺自身の為……なんだなぁw」

 笑う後藤さん

 

「後藤さんのためになったのか?」

 

児島さんの話によると、今日付けで後藤さんは定年

 しかし警察内部では何かの名誉職で残すべき派と、

 キャリアでもない人間は辞めさせるべき派に分かれた

 その辞めさせるべき派の一人が

「この事件、十五年前に本庁から現場指揮に来た管理官、須田という男でしてね、今は高い地位に居ます」

 メガネが光る

 

「これで俺の定年が先延ばしに出来るかも知れんw」

「そんな事出来んのかよ?!」

 

 さっきの会話、全部録音してあるw

 もしも俺が一般人になったらネットに経緯全部公開するのも自由wだったら

「組織の中に置いて置きたくなるだろうよw」

  

 !!!

 そうか弱みを握る為!……だから面白いって言ったのか!

 やけに協力的だと思った

 

 連絡して…本庁の資料調べた時から……

 まさかこうなる事を……

 

 

 

「なぁ後藤さん、あのオバサンみてぇな気持ち悪いヤツってよく居るのか?」

  

「蝶よ花よで周りの大人が世話を焼くとな、いつしか大人が自分の言いなりになると思い込む子供が出来上がる」

 電子タバコを出すと

「そのまま年取っただけの女だ」

 煙を吐く

「だが自分はオバサンになってると認めたくない、だから歳相応の化粧も服装もしない……老いを認めないから只々不気味になる」

 薄い白髪を撫でると

「益々女がキライになったか?w」

 

「いや、恐ろしくなったぜ……神崎」

「?」 

 俺も……女の本性が恐くなった…こんな生々しい現実が恐い

 

「帰ってアニメ見ようや」

 

賛成だ、2次元の女性キャラに癒されたい気分だ

 

 

 

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