霊感ってカッコ良いか?   作:天海つづみ

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第28話 フィギュア中

 

 

 

「実はよ、霊は見てねぇんだけどな?」

「?」

「あの市松人形な、麻理恵さんが触った時……笑った様に見えてな」

「は?あの顔って描いてあっただけだろ?」

 筆か何かで

 

「だから変だろ?」

 

 そんな事ある?

 そういや木村に触って見るの忘れてた、何か分かったかも知れないのに

「……俺も気になった事があったんだ」

 

「何だ?」

 

「妙にキレイじゃなかったか?」

「あれ?……あー?」

「あんな所にあるのに埃まみれになってないんだ」

 埃と蜘蛛の巣とかあっても不思議じゃないのに

 

「あー…そういやそうだ、キレイすぎる、誰か掃除してるみてぇだったな」

 不自然な事が二つあった訳だ

「婆さんに聞いてみっか?」

「明日から講義だぞ?今日はもう辞めよう」

 

「じゃあソレ使ってラーメン食おうぜw」

「ダメ、熱で塗装とか劣化しそう」

 スマホで通販の値段を見せる

「はぁっ?!マジかよ?!」

「なぜか高いんだよコレ、当時一回二百円のなのに」

 

 …………………………………………

 

 明日からの準備をしていると午後8時、突然千尋さんから着信

「はい、神崎です」

「神崎君?麻理恵そっち行ってない?」

「……え?二人で帰ったじゃないですか」

「麻理恵が帰ってないらしくて…スマホは音消してるみたい」

 麻理恵さん……まさかナンパされたとか?w

 千尋さんを駅まで送り帰ったそうだ、冬休み終わりだし男に着いていくにはタイミングが……

 

 まさかとは思うが…あの人形に取り憑かれた?こんな時に頼れる人は

「千尋さん、とりあえず待機して下さい、遅くなりそうですから俺と木村で探します」

 木村を呼び駅前へ

 

 ……………………………………

 

「バカ共が!」

 いつもの場所で尾形さんに怒られる、寒いせいか行列は少ない

「あの娘その市松人形に触ったんだな?!」

 咥えタバコで煙を吐く

 

「でもよ、坊さんに触るなって注意されたのに何で触ったのか」

「バカかお前!あの娘に触るなって言ったら触るだろ!」

 尾形さんが言うには俺と木村、そして千尋さんは大学生らしくない落ち着きがあると言う

 麻理恵さんはその場のノリと勢いで行動する事がある、大学生らしい『バカ』な陽キャの所があると言う、だから必ず余計なモノに触っている……その通りかも

 

「大体その坊さん本物か?」

「「え?」」

 考えてなかった

 

「やれやれ、お前等誘導されてないか?触る様に」

 タバコの煙を吐き睨む

 ???

 妙にキレイだった事を話すと

「ほら見ろ、やっぱり『触りたく』なるようにされてるだろ!」

 

 そうか、埃まみれだったら……蜘蛛の巣だらけだったら触らない

 ノリと勢いの人に『縁起が悪い』『触るな』と言い、そしてキレイなら……

 

「市松人形の顔を指で……撫でてたな」

「どんな市松人形だった?」

 妙にデカイ話をする、本物の子供の着物っぽい事、木村の話も

 

「あー、多分間違いないな」

 苦々しい顔になる

 

 尾形さんは語る、人形には所謂愛玩、つまり着せ替え人形や飾って置くための物、雛人形みたいな縁起物

 子供が生まれたお祝いの意味のある人形などがある

 

 もう一つは子供の病を穢れと考え、病気の子供に添い寝させ穢れを移す対象、つまり身代りとしての人形や、生贄の代わりとしての人形

 広い意味なら藁人形などもコレだ

「多分そっちのモノに触ったんだ、何かしらの呪物かもしれない、本来人形に籠もる念なんざ弱くて話にならないが…心当たりはそれだけなんだろ?」

「婆さん、どうしたら良いんだ?」

 

「行ってみろ、ただその坊主は怪しいぞ?アタシは店終いしてタクシーで追いかける、場所教えろ」

 

 ………………………………………………

 

 夜の真っ暗なお寺、そのすぐ横の納屋、こっそり閂を引き抜き中へ

 外に光が漏れないように慎重にライトを点けると昼と変わらない光景、だが当然不気味に見える

 デカイ市松人形の方へ行くが

「麻理恵さん居ねぇな?」

「尾形さんの予想外れたとか?」

 コソコソ話す

 教えて貰った番号にかけても着信しているが……

 

「木村、人形に霊が入ってて……麻理恵さんに取り憑いたって事か?」

「いや分かんねぇ、けど多分そうなんだろ?笑ったの気の所為だったか?」

 

「あれ?一体無いぞ?」

 デカイ市松人形が三体しかない

 

「坊さんがどっか移動させたか?」

 

 マジマジと見る、手描きの顔……小芥子みたいに見えるが……笑う?コレが?

 

「……麻理恵さんが触った人形が無ぇな…」

 

 木村の肩を触る、特に変なものは見え……!

「えっ?!」

 何だコレ?辺り一面ザワザワしてる!

 聞こえる!人の声!子供だ!

『キレイだねぇ』

『アンタになれたらなぁ』

『可愛い可愛い』

『アンタは美人だねぇ』

『母ちゃん』

 

「木村……ヤバいぞこの人形達……」

 背中に冷たい汗が走る

「何だ?変なモノ見えねぇぞ?」

「皆喋ってる!ココの人形全部何か取り憑いてるんじゃないか?」

 辺り一面から聞こえる

「!!……マジかよ…ダメだ出ようぜ…ココは婆さん来るまで放っておくぞ?」

 青ざめる木村

「うん、俺達じゃ何も出来ない、とにかく麻理恵さん探そう」

 こんなヤバそうな場所は無理だ

 

 外に出る、大声を出して麻理恵さんを呼んだら坊さんにバレそうでコソコソ動く

 あの坊さんは誘導した、あんな恐い人形達の場所に、俺達に対する悪意のある人間だ

 ……いや、坊さんでも霊感無い人って可能性も…あるんじゃないか?

 

「麻理恵さんどこだよ、婆さんの予想がハズレるとは思えねぇなぁ」

 辺りを照らし探すが真っ暗、足音をさせないように注意しながら歩く

「あの坊さんも居ないみたいだな?」

 ちょっと安心する、小さな寺は真っ暗で中には誰も居ないっぽい、裏の墓場に居るとは思えないし……残るは隣のデカイ家だが……

「勝手に入って良いのかな?」

「廃屋だよな?一応確認してみようぜ?」

 元は農家なのだろう、デカイ母屋に複数の作業場などの建物、雑草だらけの庭を進む

 玄関の引き戸に手を掛けると

「空いてんぜ?」

「入ってみるか?」

 

…………………………………………

  

「アンタになれたらなぁ……」

 

「へ?」

 真っ白な空間に声が響く

 ……アレ?駅に千尋送って……その後どうしたっけ?

「アンタキレイだねぇ」 

「アンタになれたらなぁ……」

「母ちゃん」

  

「え?」

 振り返る、と浴衣の女の子達、幼稚園児?小学生?が大勢いる

「アンタ達?ココどこ?」

 屈んで聞く麻理恵、不思議な空間だ、明るいのに太陽が無い、って言うか地面もはっきりしない

 

「アンタになれたらなぁ……」

「可愛い可愛い」

「美人だねぇ」

「アンタは可愛いねぇ」

 女の子達は繰り返す

 

 (あー、コレ夢だ、アタシ保母さんになりたいなんて思った事無いのに……それに……微妙に上から目線で話してない?生意気だなぁ)

 だけど変だな、駅で千尋……送って……

 電車乗って……アレ?

 お寺……の人形…アレ?……何で戻ったんだっけ……?

 アレ?

 

 

「アンタになれたらなぁ……」

 

「そう言われてもねー……っ!」

 一人の女の子の目が真っ黒な空洞になる!

「ひっ!」

「アンタになれたらなぁ……」

 しがみつく!

「やっ!やめて!離して!」

 

 

「アンタにぃぃ!なりたいいぃ!」

 顔を真上に向け、下から見上げて絶叫してくる!

「いやああああっ!」

 

 

……………………………………

  

「う、うー〜っ」

「もう一人の方が好みだったけどなぁ、まぁ良いやw」

 小さなランプ照明の座敷、魘される麻理恵さんの顔を覗き込む男

 傍らにはあの人形

 

「大学生はバカで良いなぁwすぐに引っ掛かるw」

 ニヤニヤしながら服を脱がして行く

「さて…と…」

  

 ……………………………………………………

 

 静かに玄関の引き戸を開ける

 小声で

「暗いな」

「バッテリー持つかな」

 入って行くが……何か臭い……玄関にはスニーカーが一組……埃被ってない

 正面の廊下……脇は埃があるが……真ん中は埃が無い……って事は

「誰か住んでるんじゃね?」

「だったら電気とか点くかな」

 壁のスイッチを触るが

「ダメだ、点かない」

 土足で失礼する、真っ暗な日本家屋、障子を開けると

「誰か住んでるな」

「臭いの原因はコレか?」

 大量のペットボトル

「……もう一回掛けてみる」

 スマホを使う……と!

 

「「!!」」

 どこかでバイブレーションの音!麻理恵さんはココに居る!

 二人で耳を澄ます

「どこだ?」

「この部屋じゃないな」

 廊下に出る、もう遠慮は要らない!

「麻理恵さん!!」

「どこですか!!」

 大声で叫び耳を澄ます……と

 

『ガン!』

 

「!、何だ!今の音!?」

「こっちだ!!」

 襖を開けると仏壇、上にはズラリと遺影、畳の床には乱雑な女性ものの服、そして……麻理恵さん!!

 ランプのオレンジの光りの中に素っ裸にされて寝てる!

 横にはあのデカイ人形!

 

「おい!麻理恵さん!」

 木村が上体を起こし揺さぶる

「起きろって!!」

 

「うーーーっ」

 眉間にシワを寄せ唸るだけ

 

「……木村、さっきの音、多分コレだ」

 ヒビの入ったスマホを見付けた、誰かが居る!麻理恵さんに何をした?!

 

「くっそ!出てこいオラァっ!!」

 天井に向かって叫ぶ

 

「木村!神崎!」

 呼ぶ声がする

「尾形さん!」

「婆さん!来てくれ!麻理恵さんがおかしい!」

 

「何があった?!」

 デカイライトを持って入ってくる

「婆さん!麻理恵さんが起きねぇ!」

 

「どれ!」

 尾形さんは長い数珠をジャラジャラ

「この人形の残留思念だね……こんなもんなら簡単だ……が…変だな」

 数珠を麻理恵さんの首に巻くと

「バチぃっ!」

 背中を叩く

 

「はひゅっ!」

 目が覚めた

「あー…変な夢みたぁ……!…きゃあああ!」

 色々隠す

 

 俺と木村は背中を向ける

「なん!な!何!?何で!?アンタら!アタシに何しようと!」

「落ち着け嬢ちゃん!!」

 尾形さんに一喝される

「だっ!だって!?え?何?!」

 そりゃあ混乱するだろう

 

「服着ろ!木村!神崎!何があった?」

 探しに来た事、人形の声が聞こえた事、スマホの振動音で気付いた事、見つけたら真っ裸だった事を話す

「アタシ危なかったの……か……」

「コイツらはアンタを探しに来たんだよ」

「何でこんな所に居るんだろ?」

 麻理恵さんは尾形さんを信用している、落ち着いて話を聞き始めた

 

「さぁて外はどうだかな、出るぞ」

 気を付けながら外に出る、と!パトランプが見える!

「後藤!首尾はどうだい?!」

「あー……確保した、今事情を聞いてる」

 真っ暗な雑草だらけの庭に後藤さんが照らし出された

「後藤さん!」

「来てくれたんですか!尾形さんが呼んでくれたんですか?」

「言ったろ?タクシー使うってなw」

 

「やれやれ…今回ばかりは君等にも所轄に来てもらうぞ?」

「なんでよ?」

 麻理恵さんを助け出したのに

 

「あのなぁ、夜に不法侵入、しかも被害者の誘拐の疑いも付きそうな状況だろ?」

 

「ちょっと待って!アタシ助けられたんですよ?!」

「俺達探しに来たんだぜ?!」

「何で誘拐なんですか!?」

 

「だからそれを警察で証言するんだよ」

 そうか、客観的に見たら

『俺達二人が女性を廃墟に連れ込んだ』

 とも解釈されかねない

 

「さて、ここまでは一般常識の範囲だ、ここからは君達や尾形の領域だ、何があった?」

 

「まぁアレが原因だよな」

「あのデカイ人形…」

「木村、神崎、持って来とくれ」

「触りたくねぇよ?」

「大丈夫だ、アレ自体はタダの人形だ」

 

…………………………………………

  

「良いか?アンタは触るなよ?」

「はい」

 麻理恵さんに言う尾形さん、例の納屋に入る

 

「おぉ!コレは凄いな!」

 ライトで照らす後藤さん

 

「なるほどねぇ、よくもコレだけ集めたもんだ、好事家に売れるだろうよw」

 人形達を品定めするように見て行く

 

「婆さん、この人形達が喋ってるって神崎が言ってんだ」

「あぁ、正確には人形の持ち主の思念だよ、可愛いだの美人だのは持ち主が人形に掛けた言葉や思いだよ」

 

「あ!夢の中で言われました!だから変だったんだ……」

「……言ってみな?」

「小さい娘達にアンタ可愛いっていわれました」

「……他には?」

「アンタになりたいって叫びながら、しがみつかれて」

「それを言ってるのは今神崎が持ってるアレだね、病死する時人形に『アンタになりたい』って言い続けたんだな、そして引っ張った」

 

 麻理恵さんに詳しく話を聞くと、なんとなく電車に乗り、ココに来た事を話す、そして

「あ!そうだ!この人形の前まで来て……あれ?寝ちゃったのかな?」

 

「間違いないね、引っ張られたんだ、だがね?人形に人を引っ張る力なんて無い、他に何かあるはずだ」

 

「尾形、どういう事だ?」

「力になってる……いや思念を増幅してるって所か、ソイツが原因だ、ソイツが居なけりゃ思念があった所で声なんてしないはずだ」

 見回すと、大きい市松人形の一番左、白無地の人形の前へ

 

「ほう……コイツだね?人形とは思えない力がある……呪物って所だね」

 手を翳し念仏を唱える

 

「婆さん、分かるのかよ?」

「神崎、声聞こえるか?」

 木村に触れながら耳を澄ますと

 

『母ちゃん』

 

「母ちゃん?って言ってます」

 何で?

 

「あ!夢で言ってる娘がいた!」

「間違いないね、人形に掛ける言葉じゃない」

 言われてみれば

「コイツが自分の母親の代わり、適齢期の女を引っ張ってる」

 

「じゃあ婆さん、この人形なんとかしたら」

 

「引っ張る力を無くす、コイツに何でそんな力があるのか分からないがね……」

 尾形さんは人形の頭に触れる

「!!!、なんてこった!こんな事あるのかい!」

 

「尾形、どうした?」

 

「そういう事かい!ふざけやがって!」

 頭を乱暴に掴み横に倒す、鬼の形相

 

「おい婆さん!」

「尾形さん?!」

 

 手に数珠を巻くと

「良く見ろ!左前の死に装束なんだよこの人形だけな!」

「「「「死に装束?!」」」」

 白無地の着物が?

 

 着物を脱がすと丸太?の本体に頭が着いてて、髪が無かったら本当に小芥子だ

「後藤、持ってみろ」

 

「あ?あぁ、え、縁起悪くならないか?」

 さすがに狼狽える

 

「大丈夫だ、そもそも男には何の影響も無い」

 後藤さんが持ち上げる、と、

「妙に軽いな、中は空洞……ん?」

 振るとガサガサ音がする

「何か入ってる、おっと!」

 頭が取れた、そして

 

「何か書いてありません?」

 頭が取れた胴体に

「達筆だなコレ」

「古そうだね、読めないや」

 

 タバコに火を点ける

「経文だ!コレ子供の棺桶だよ!それを人形に仕立てたんだ!」

 

「「「「は?!」」」」

 

 煙を吐く 

「悪趣味な事しやがって!初めて見たぞこんなモノ!」 

 

  

  

 

 

 

 

 

 

 

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