霊感ってカッコ良いか?   作:天海つづみ

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第31話 宗教ってヤツ 前

 

 

 あれ?そういえば今年、正月も結局俺は実家に帰ってないな、まぁ俺の事なんて両親は気にしないかもな、甥っ子居るし

 木村は年末に実家に住めと言われたがその気は無い様だ、二駅の距離で別居は変ではあるが、まぁ今までの事もある

 

 家族ってヤツは……なぁ

 

 歩きながら宮内の話になる

 

「あれと付き合うって出来ると思うか?w」

「無い、絶対無いw」

 宮内と付き合う?あの押しが強い性格で、ガタイの良い作業着の後ろ姿なんて『兄貴』って感じだしw

 

「見えてる『地雷』ってやつだなw」

 

ふっ…木村、分ってないな?地雷系とはピンクと黒でツインテール

 自己評価が低く人を寄せ付けない、かと思えばベッタリ依存してくる構ってちゃんでメンドクサイ

 そして可愛くなければ認めない

 これが俺の中の地雷系、あの女は地雷でさえないナニカだ

 

まぁ……自分の容姿は分っているつもりだ、地雷系メンヘラだろうが付き合って貰えたらありがたいが……そんな人は居ないし

「新しい推しキャラ探すか……」

「お?巴マ〇は吹っ切れたか?w」

「全然」

「だろうなw」

 

 夕方の駅前、そろそろバラした御歳暮の売れ残りが見切り品になる頃だ、

 目標は牛のしぐれ煮とカニの缶詰、貧乏学生には滅多に口に入らないが今日は喰えるかも知れない

 

 と

 

「あの娘まだ居るなぁ……」

「あの時の娘か?なぁ木村、成仏しないのか?」

 まだ横断歩道の辺りに居るらしい

「何か強い思いがあるんだろ、突然だっただろうし後悔とかな?」

「何とかしてやりたいな」

 今の生活始まったきっかけになった娘だし

 

「なぁ神崎?記憶は見たよな?」

「?、事故のだろ?」

「声とか聞いたか?」

 

「???」

 あれ?俺映像しか見てないな、声……?

「聞いて……みるか?」

 

 横断歩道に向かう

 肩を触るとどこかを見て……

「そうだ木村、霊って見る方向が固定……って言うか決まってるのか?」

「いや、割と向きは色々だぜ?なぜかこの娘あっちしか見てないんだ」

 指差す

 

 ちょっと人が多すぎるし

「時間ずらそう」

 

……………………………………

  

 カニ缶はバラ売りでも安く無かった(怒)

 結局安い弁当をブラ下げて戻ると

「ん?」

「お?」

 横断歩道の隅に花を供える人がいる

 

「関係者?」

「母親じゃね?」

 近付く

 

「話しかけても…良いのかな?」

 こういう場合って……どうなの?

『見える』なんて言ったら……

 

「あー……でも話してみねぇと分からねぇなよな」

 近付く

「あの、すみません」

「ここの事故の関係者ですか?」

 

「はい?えぇ、娘が事故に遭いまして……」

 立ち上がる、オバサンと言うにはまだまだ若い女性、会社員かな?

 ベージュの上下にコート……どこかの工場勤めっぽい

 

「丁度一年位前ですよね」

「はい……え?貴方達は……?」

「〇〇工大の学生でして、近くに住んでます」

「そうですか……」

 一礼すると立ち去ろうとする

 

「すみません!」

 木村が呼び止め

「?」

「あっちの方に何があるか分かる……かな?」

 指差す、あの娘がいつも見てる方向

 

「…………家がある方向ですが……何か?失礼します」

 訝しげな顔

 

 やっぱりコレ不審に思われたんじゃね?

 

 

 アパートに帰り木村の部屋、後藤さんに連絡する

「あー?ちょっと待て、その資料なら」

 ガサガサ音がすると

「電話代わりました、児島です、何をするつもりです?」

「あれ?児島さんコッチ来てんのかよ?」 

 

一応事件解決の要因になった娘だし、成仏させる為に何かしてやりたいと伝えると

「分かりました、資料を送りますがこれは警察のモノです、メモしたら即消去して下さい」

 児島さんの事だから一蹴されると思ったら、案外簡単に受け入れてくれた

 

 木村のスマホに資料が来た

「何だよ、住所駅前だぜ?」

 同時にPCで地図を見る

 

「すぐ近所だったのか…まだ中1?…だったのか……」

 かわいそうに

 名前は斉木真帆(まほ)ちゃん

 

「ん?アレ?」

 PCで地図を見ながら

「って事は?……あー?……そういう事か?」

 

「どうした?」

 

「いや、あの娘の向いてる方向な、少し上だと思ったら」

 地図の上でカーソルを動かす

「この辺りだろ……」

 スマホを見ると

「自宅が4階、間違い無ぇ、あの娘自分の家見てるんだ」

「?、何でだ?とにかく人の少ない時間に行ってみよう」

 

 …………………………

 

 次の日

「じゃ……」

「始めっか」

 横断歩道の端っこ、キモオタ二人が並ぶ

 木村は見る

 そして俺は聞く

 

 制服?を着た中1女子のシルエットから聞こえたのは

 ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイおとうさんおとうさんおとうさん

 

更に見えて来たのは自分に向かって怒り、怒鳴っているっぽいオッサン……これがお父さん?

「怒られてるなぁ…」

 

「どうした?」

 

「父親にゴメンナサイって言い続けてる…」

「?、まさかこっちも虐待とかかぁ?」

「どうする……?」

「児童なんとかの……あー、分かんね」

「資料に虐待とか無かったよな……このまま家に…」

「いきなり行っても不審者だぜ?何か良い方法…後藤さんに聞いてみようぜ?」

 遠慮なく電話して呼び出す木村

  

………………………………………………

 

「気が進まないがなぁ…」

 難しい顔の後藤さん

 大きめの古い賃貸マンションだろうか

 エントランスにインターホンが無い、普通に住人以外も入れそう

 

「前にも言ったろ?肩入れしすぎるなってな」

「でもよ、神崎が仲間になる切っ掛けになったしよ、成仏させてやりてぇんだ」

「あの、虐待の話とか無かったですよね?」

 

「児童相談所の記録なんか無かったと思うがなぁ?」

 薄い白髪を撫でる

 

「でも交通事故で家族の…アレ的な事まで書かないんじゃね?」

 

 困った、自宅まで分かったがどうする?

 いきなり『娘さん虐待してました?』なんて聞こうものなら通報されかねないし、二度と話も聞いてもらえないだろう

 

「なぁ神崎?あの娘家まで運べないか?」

「は?、何言ってんだ?」

「いやヘビとこの前の(トンネルの霊)取り憑かせて移動出来たろ?」

 

「神崎君!自分の意志で出来るのか!」

 期待に満ちた目

「出来ません!」

 やろうと思って無い!勝手に憑いただけです!

 

「それなら話は早いがなぁ、本当は辞めさせる為に来たんだが」

 薄い白髪を撫でる

「何でよ?」

 

「君等の能力はな、事件解決には良いんだ、それは認める…だがなぁ」

 電子タバコを出す

「キチンと線引はしておきたい」

 エントランスから出て歩道で吸い始める

「夏の植田家の件あったろ?」

 あれは俺が恩返しのつもりで付き合っただけだ、本来ならやらない

 

「それは分ってるぜ?」

 

「……果たしてそうか?」

 クリスマスの件は警察内部で俺の進退が絡んだだけ

「つまりだ、警察の力は君達の意志とは関係無いだろ?」

 煙を吐く

 

「確かにそうですね、何ていうか…勘違いしてるんですか俺達?」

 警察関係無いか……そうだ、人形の時も手柄は無いし…

 

「いや、それが子供の甘えってやつだ」

 君達は警察の依頼を『業務』として行うから『対価』が出ている

 勝手な意志でやる事に警察の力を『当てに』するな

「そこが学生気分と社会のルールの違いって事だよ」

 

 甘えか、やるなら自分で何とかしろって事か

 それが責任か……そこの線引か

 

「だが…まぁきっかけ位は作ってやろう、その代わり」

 真剣な声になる

「やるのは君達だ、分かるな?」 

 

二人で頷く

  

403とある部屋の番号、インターホンを押そうと……

「ガチャ」

 出てきたのはあのオバサン、と言うかお姉さん、この前と同じ格好

 

「おお丁度良かった!斉木さんだね?私こういう者だがね」

 警察手帳を見せる

「お宅の娘さんの交通事故n」

 

「…娘は帰って来ませんから」

 素っ気無くドアを閉めようとするが、後藤さんは手で抑え

「ちょっと待って!この子達の話を聞いてやって欲しいんだ」

 

「はぁ?何言ってるんです?」

 怪訝な顔

 

「少しで良い、話を聞いてやって貰えないかい?」

 ニッコリ笑う好々爺

 

「あの……」

「すいません」

 後藤さんの後から出ると

 

「あ……」

 忘れて無い様だ、ダサダサオタクの二人組を

 

「あの、どうしてもお聞きしたい事があります」

「俺達いつも見えてんだ、多分娘さんだと思うんだ」

 交差点の方を指差す

 

「……何言ってるんです?宗教ですか?」

 睨む

 

「まぁまぁwお気持ちは分かりますよ?しかしコチラとしても困ってるんですわ、あの横断歩道に制服の女子が立ってるって警察に来てね」

 間を置くと声を一段下げる

「気になるのは特徴を正確に言う事なんですわ、コチラの神崎君など事故当時は〇〇工大に入学してなくて、まだ地元の千葉に居たのにですよ?」

 

「気になってんだよ俺達、あの娘ずっとこの部屋の方見てんだよ」

「…何かずっと謝ってます」

 

「!、謝ってる?」

 驚いた顔になる

 

「おとうさんゴメンナサイって言ってるんですよ」

 

「!!!、と!とにかく上がって下さい」

 ドアを開けるオバサン、信じてくれた?

 

 上がると何か臭い、奥の部屋を開ける……と

 先ず視界に飛び込んだのは遺影、これが真帆ちゃんだな、そして位牌、線香立て、花瓶が祭壇にある

 その前に痩せたオッサンが何かを抱えて…骨壺だ…

 

コレ……多分葬儀の時のままだ、そこから一年近く時間が止まってるんだ

 真帆ちゃんは大事に思われてたんだ

 

 コレ……虐待じゃ……ない?……

 

「ねぇ、聞きたい事があるんだって」

 奥さんは肩を揺するとゆっくり振り返る

「……うぅ」

 布団に座り頭はボサボサ、ヒゲだらけの痩せたオッサン、服も汚れて風呂にも毎日入っていないだろう

 ずっと泣いているんだろう、垢で汚れた顔に涙の線の跡がある

 一人娘を亡くして立ち直れない親の姿だ、虐待じゃない

 

 俺達はちょっと引くが

「ほら、後は君達で話せ」

 後藤さんに前に出される、そうだ『覚悟』だ

 勇気を持って前に出る

「あ、あぁ……、えーと名前は真帆ちゃんですよね」

「この娘がずっと横断歩道に立っててよ」

 遺影を指差す

 

「……」

 ぼんやりと見ている

 

「ずっと『おとうさんゴメンナサイ』って言ってるんです」

 

 表情が変わる 

「……!…やっぱり…俺のせいだ……うぅぅぅ……」

 また泣き出す

 

奥さんの話によると真帆ちゃんは門限を初めて破り、夜にお父さんに怒られ外に飛び出したそうだ

 

 誰にでもある、そんな時期が……

 もうすぐ中2の反抗期

 

 運が悪かったのはその夜にあの交通事故に遭ってしまった

 虐待ではないんだ、普通に大事にされてた一人娘だ…となると……

 何で成仏しない?何が原因だ?

 葬式だってキチンとやってる訳だし……

 なぜ現場で謝ってる?…門限を破った事?

 

「なぁオジサン?奥さんは現場に来たけど、もしかして現場に行って無いんじゃないか?」

 木村の言葉に

 

「この人あの事故以来……外にさえ出なくなりました、だから今は私が勤めに…変な壺まで買って…」

 幸せな家族だったんだ、あの事故さえ無ければ幸せな普通の家庭だった筈だ

 

「お願いします!現場に来て下さい!」

 俺は頭を下げるが…オジサンは反応が薄い

 

「なぁオジサン!真帆ちゃんはココに居ねぇの!あっちに居るんだ!」

 木村は骨壺を指差すと立ち上がる

「ココに来させる為に来てくれって言ってんだよ!」

 窓を開けると駅前を指差す

「あそこからこっちずっと見てんだよ!」

 

 その木村をボンヤリ眺める

 大事なモノを失うと人はこうも無気力になるのか

 

「やれやれ…」

 頭を掻くと

「なぁ斉木さんよ、あんた一度でも現場で手を合わせたかい?」

 見ていた後藤さんも部屋に入る

 

「ショックでずっとこの状態なんですよ……偶に窓から見て…」

 

「奥さん、旦那さんを着替えさせてくれないか?とにかく一度手を合わせさせるんだ」

 俺達は外に出て待つ

 

 何とか外に出たが……グレーのスウェット上下に緑の上着、顔は洗った様だがボサボサだ

 

 ………………………………………………

 

 横断歩道、その隅、この前の花が少し萎れている

「さぁ、手を合わせるんだ」

 後藤さんに促され手を合わせる旦那さん

 これで何も変わらなくとも…前に進めるかも知れない

 後藤さんなりの解決の仕方なんだろう、メイドさんの時に俺達も言われたもんな

 

「二人共、どうだい?何か分かるか?」

 

 木村の肩を触ると

 ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイオトウサンオトウサンオトウサン

「御免なさいお父さん、です……え?」

 

 黒いシルエットが……ゆっくり目線を下げて…向きを変える

 

「お?おぉ!ちゃんとオジサンを見てるぜ?」

 

「俺のせいだ…俺のせいだ」

 道に跪き泣き出す、目立つけど止めてくれとも言えない

 

「真帆はどこに居るんですか?」

「旦那さんの目の前、立ってるぜ?」

 

「ここに……居るのね?」

 奥さんは手を伸ばす、触ろうとしているが……もちろん触れるはずもない

「帰って…おいで……ここ…寒いでしょ?」

 くしゃくしゃの顔で、嗚咽混じり

 

 俺は集中する、もっと!もっと何か見せてくれ!頼む!!

 この二人を救えるのは真帆ちゃんだけなんだ!

 

 と

 

「………………ゴメンナサイ……カエレナクナッテ……カナシマセテゴメンナサイ…」

 旦那さんの前で屈むシルエット

 

「あ!!!」

「どうした?神崎?」

「聞こえた!真帆ちゃんは後悔してたんだ!」

「神崎君……説明してやってくれ」

 

「事故で帰れなくなって、悲しませた事を謝ってたんです!」

 オジサンの横に屈んで

「帰りが遅くなって怒られた事じゃ無かったんですよ!」

 

 しかし旦那さんは顔を上げようとさえしない

 

「真帆ちゃんはココで死んでしまった事、帰れなくなった事、二人を悲しませた事をずっと謝ってたんです」

 

「うぅうあう!……うおおぅ!!……」

 人目も気にせず嗚咽……いや、慟哭とか言うのだろうか

 家族を、真帆ちゃんを突然奪われた悲しさ、悔しさ、後悔、色んな思いを吐き出す様に

 

 通行人達が不審な目で見るが、その中に

「何やってんだい?」

 ジャラジャラの占い師

「尾形さん!」

「婆さん!」

「……尾形、見ての通りだ」

 

「………………ほう……」

 尾形さんはオジサンの横に屈むと

「事情は良く知らないけどね、娘かい?この娘」

 オジサンの背中に手を当てて念仏を唱える

「さぁ、アンタにくっついた、連れて帰ってやりな」

 

「「えっ?」」

 俺と木村は声を上げる、真帆ちゃんは動いていない

 と、後藤さんが俺達を目で制する

 

「さぁもう立ちな、連れて帰ってやるんだ、親がメソメソしてたらこの娘が不安になるだろ?」

 

 尾形さん?どういう事? 

 

 

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