斉木さんの部屋の扉、開くと
「何だい?この家変なモンあるね?ちょっと持ってきとくれ」
奥を睨む占い師
小声で
(?、木村、何か見えるのか?)
(見えねぇ…婆さん何がしたいんだ?)
「あっ!もしかしたら!」
奥さんだけ入って行く、戻ると
「まさかコレでしょうか?」
壺を持って来た
手を翳すと
「ふん!これどうした?」
真帆ちゃんが亡くなった後、とある宗教から旦那さんが買ってしまった壺だと言う
「まぁだそんな商売してる連中が居るのかい」
苦々しい顔
俺達は黙って見ていると、尾形さんは受け取り手を突っ込み探る……と
「やっぱりあるね」
手こずりながら内側の何かをカリカリ剥がしているらしい
「よっ!っと、取れた取れたw」
小さな紙に何かが書かれている
「何ですか?ソレ?」
不審な顔の奥さん
「これがこの家を不幸にしてたモンさ、これでその娘も家に入れるよw」
クシャッと丸める
俺は旦那さんの方を見る、もちろん真帆ちゃんは居ないはず
まだ変化らしい変化は無いが
「変なモン買うんじゃないよ?弱り目に祟り目ってね、弱った人を狙うヤツがいるんだ」
旦那さんの方を向くと
「いいかい?アンタは一応事故現場にも毎日行って手を合わせな?こういうのは気持ちが大事だよ?」
「……………………あの、何かお礼と言うか……」
俯く奥さん、見れば分かる、金など無い、尾形さんの事だから凄い金額…って真帆ちゃんはまだ現場に居るのに!
コレ詐欺じゃん!その宗教と同じじゃん!
「要らないよwその代わりコイツを貰っておく、木村、持て」
壺を持つ木村
二人に向くと
「さぁ!コレで悪いモンは無くなった、後はアンタ等次第だよ?娘に恥ずかしくないように生きな?心配で成仏できないだろ?」
……あれ?金取ると思ったのに
…………………………………………
「後藤、アンタがやらせたのかい?」
睨む
「どうしても助けたいらしくてなぁ」
「フン!」
駅の反対側、いつもの場所
「婆さん、あの娘どうなるんだ?」
「あ?その内消えるだろ?手を合わせに行くからな」
「コレ騙してません?」
「コレで良いんだよ、後藤、やらせたかったのはこういう事だろ?」
タバコに火を点ける
「いやぁ、『人助け』ってヤツがどれだけ難しいか知って貰いたかった」
笑う
「何か分かるぜ、けどよ…騙しただろ?」
俺も木村に同意だ、納得出来ない
「…あのな?お前等のやりたかった事って成仏なのか?」
煙を吐く
「?」
「あの夫婦を救う気持ちは無かったのかい?」
……いや…真帆ちゃんがあの場所に居るのが可哀想で…そうか
「霊の方しか…考えて無かったかも」
「あーそうか、俺達真帆ちゃんを成仏させれば……全部上手く行くんじゃねぇかなって…」
苦い顔
「ふん!そこが違うんだよ、大事なのは残された家族のケジメだろ?どう見てもあの旦那は立ち直ってないからな」
骨壺を抱えた旦那さんを思い出す、その通りだ
……でも、いつの間にか俺も旦那さんを助けたい気持ちはあったな……
「死んだ者より生きてる人が前を向ける様にするのが『救う』って事だよ、例えばソレだ」
木村の持った壺を指差す
「変な宗教に目ぇ付けられてたのを助けた…って事か?」
「中に変なお札ありましたよね」
「見たいかい?w」
折り畳みの机に出すと…クシャクシャのスーパーのレシート
「は?!」
「何ですかコレ?!」
「はっははは!やったな尾形!」
「コレを剥がしたフリしただけだよw」
持ってみる、確かにレシート、スーパーのお惣菜の値段…って俺達が弁当買った所だ!
「手品みたいな事したんですか?」
「偶々壺で良かったよw何が出るか掛けだったからなw」
大笑い
「は?!じゃあ分ってた訳じゃないんですか?!」
「はぁ?!マジかよ婆さん!」
「そうだよw」
家に何か良くないモノがある、と言われたらほとんどの人は思い当たるモノがある
ソレは何だって良い、ソレを更に悪い意味に変えてやれば持ち主にとっては間違いなく『厄』となる
「それを祓ってやった訳だ、これだけでも人は救われるんだw」
「……でも、なんか……」
詐欺じゃないか?
「お前等若いから気にならないだろうがな?厄年には神社で厄払いしてもらったり神頼みする事があるんだ、それで自分の気持ちに区切りを着けて前を向く、誰でもやってる事だよw」
「騙して…るのは真帆ちゃんが『くっついた』だけですか…?」
「あの夫婦の為になるだろ?その上料金さえ取らないんだぞ?アタシって善人で清廉潔白で聖人君子みたいだろ?w」
金にガメつい怪しい婆さんがタバコ吸いながら笑ってる様にしか見えないが?
「なぁ婆さん、この壺どうすんだ?」
ずっと持たされてる、価値の分からない黒い壺
「捨てりゃ良い、なんなら花瓶にするかい?」
「縁起の悪いモノじゃないんですか?」
「何の意味も無いよ?多分どこかで買い叩いたモンだ、100円位だろ」
!!!
そんなモノをあの夫婦はいくらで…
『嘘も方便』って言葉があるが、これがそうか?良い嘘?
「さぁて、ここまでは上々、だろ後藤?」
「いや、本当は失敗させて肩入れするのを抑えたかったんだよ」
そうか、俺達が肩入れしすぎる事を心配してたもんな
「もう一つ……問題はまだあるぞ?」
煙を吐き睨む
え?全部おわっ……あ!
「真帆ちゃんですね?」
やっぱり成仏させないと
「違う、あの夫婦にとって新しい宗教が出来ちまった事だ」
「婆さん、意味分からねぇよ?」
「?」
「……あー、そうなるか…」
後藤さんは顔を覆う
「鈍いヤツラだねぇ…」
煙を吐く
「アタシとお前等があの夫婦の宗教に成りかねないって事だ」
?、え?どういう事?
そんな俺達の顔を見ると
「……お前等はアタシのカッコ見てどう思うんだ?」
インドだかアジアだか分からない衣装に、アクセサリーがジャラジャラ、そこにダウンジャケット
「怪しいと思わないか?」
まさか自覚があるとは…
俺達は並んで頷く
「これはね、『信用させ過ぎないため』なんだよ?」
「何言ってんだ婆さん?」
「尾形さん、意味分かりません」
占い師って当たる方が人気あるに決まってる、なんで信用させないの?
「ホンモノなんだよ、アタシ等は」
そもそも霊が見える、聞こえるなんて常人の域では無いんだ、だから占いが当たりすぎる、怪しいカッコしてないと客が信用し過ぎて何でも聞きに来る
「信用させなくする…?」
「なんでだ?」
「水神の時の人覚えてるかい?あのタイプは一番分かりやすい」
大体運なんてモノは放っておいてもいつかは良くなる、それをアタシの占いのお陰と思う人が出る
占いに依存するって事は『思考の放棄』だと気付けない訳だ
そう言えばあのオバサン、運気を良くしたいって御朱印集めてたなぁ……あのタイプか、
何かにハマりやすいのか……
「やろうと思えば簡単にこっちの意のままになる、『奇跡』をちょっと見せれば直ぐに『尾形千鶴子教』信者になるんだw」
「奇跡?」
「あー、俺達は奇跡起こしてる様なもんだ、って事だな?」
「そうだよ、見える聞こえるなんて十分奇跡なんだよ」
「だけどな尾形、俺が見る限り木村も神崎君も大丈夫だろ?」
こっちも電子タバコ吸い始める
煙を吐くと
「お前が言う『大丈夫』ってのは、コイツらが悪人じゃないからカルト宗教起こす心配が無い事だろ?」
「そうだか?」
「その通りコイツらは善人だ、だがね?善人だからこそ人の苦悩を背負おうとして余計な悩みを増やす、そしていつか限界が来るのをお前は分ってる、割り切れてないんだ、肩入れするなって言ってるのはそれだろうが?」
呆れ気味
顔に手を当て
「あー……そうだ…俺もまだまだだなぁ、自分で言ってたのに何だか曖昧になってたな…」
人の苦悩を背負う?そんなつもり無いけど…やってるのか?俺達……
それよりも気になるのは
「俺達も…宗教起こせるってかぁ…?」
「尾形さん、そもそも怪しい宗教って何なんですか?」
「アタシも興せる身だ、面倒だが簡単に言うとな」
人間は悩みが尽きない、そして悩みで苦しむ、それを無くすのが宗教でもある
「あー、教会とかで告白する…アレとかか?」
「懺悔だろ木村?」
「カルトは違う、信じ込ませて言いなりにする、人の命令だけで動くヤツは思考しない、結果『悩み』は無くなる、それは幸せではある」
「幸せですかソレ?」
「言いなりになんてなるか普通?」
「奇跡を起こすとな、常人には『憧れ』の感情が出る、憧れの人が言う事なら思考せずに聞いちまうヤツが居るんだ」
そういうモノか?
あぁ、前は俺も『見える人ってスゲェ』とか思ってた
「神崎、お前憧れてるアイドルとかが現実に頼み事してきたら、無条件で動くだろ?w」
マミ◯ソ…いや志織ちゃんに頼まれたら……そりゃあ断れませんよw
「まぁ……そうですね」
二次元キャラに課金したくなるのもコレか?
「会社や組織は指示通りにするから対価があるんだ、カルトは指示通りにしてるのに金とるんだよ、この考え方があればカルトに引っ掛かるヤツなんて居ないだろうにな」
タバコを潰す
「婆さん、結局金なのか?」
「アナタの金が不浄です、私が預かって清めましょう、なんて決まり文句言ったり」
タバコの本数を見ながら
「信者が貧乏なのに教祖が贅沢三昧してる所は怪しいんだよ」
残りの本数が少ないらしい、不満そうな顔をすると
「奇跡起こせるアタシらはやる気になったら宗教興せるんだ、アタシは御免だがね、そんな面倒くさい事」
「人騙すなんて……何か嫌だし…なんだろ」
「疲れそうだぜ?なんかな」
精神的に無理そう
「うん、やっぱり君達は悪人じゃない、そっちに向いていないタイプだよw」
電子タバコを仕舞うと
「悪人はトラブルを飯の種にする連中だからなw」
「そんなの面倒くさいですよ」
「トラブルなんて関わりたくねぇよ」
「だからお前等は『いいヤツ』なんだ、前にアタシが言った事覚えてるかい?」
「??」
覚えてない
「もう少し図太く生きな?って言ったろ?霊感あること周りに知られない様にして、余計な事に関わるなよ?」
「今の所知ってるの麻理恵さんと千尋さんだよな?」
「そもそも信じて貰えないし」
「良し、これからあの夫婦に会っても『あの娘』しか見てない聞こえない、ほかの霊なんて見た事無いって言うんだ、じゃないと『木村と神崎教』になるからな?余計なトラブルになるぞ?」
…………………………………………
「スーパーの弁当より自炊した方が安いよな」
「だからってよ、お前料理出来んのか?」
レンチンしかやった事無い、バイトで培ったのは盛り付けだけ
駅近くのスーパーに向かう
「あ、あの二人だ」
横断歩道の隅に立ち、二人で手を合わせている
「木村、どうなんだ?」
「少し薄くなったぜ?成仏し始めたって事かもな」
二人共コチラに気が付くと軽く会釈する、旦那さんはスーツで見違える様に変わった……って言うか本来の姿かな
奥さんはまだ工場勤めみたいな感じ
コチラに来る気配は無い、だからこっちも軽く頭を下げるだけ
お互い言葉は無い
もちろん報酬も無い
手柄を主張する気もサラサラ無い
ただ夫婦は日常に戻るだけだ、真帆ちゃんが居ないけど平凡な日常に
これが救うって事か…
通り過ぎてから一瞬、振り返ろうとしたが……止めた
もう他人だ、関わりすぎちゃダメだ、余計なトラブルの元、肩入れ…したら俺達が限界に……
あぁ、これが前に後藤さんに言われた『自分がキズだらけになる』って事かもな
「……コレで間違ってないよな?」
「あぁ、コレで良いんじゃね?」
余計な事を背負わない、終わった事には区切りを着ける、それがケジメだ
「……よし」
「……?、どうした?」
「巴◯ミは終わりにする、それがケジメだ」
俺も前に進む、だから忘れよう、さようならマミ◯ソ
「おお!神崎も遂に成長する時が来たか!」
「でも最近の多様性は広がり過ぎてなぁ、メイドキャラにサメの尻尾生えてたり…」
誰の性癖に刺さるんだ?
「おい待て……二次元から……三次元に行く話じゃねぇの?」
「何で?」
真顔
「いや立体の方向にな」
「3DCGは何か合わないんだ」
「そうじゃねぇよw」