霊感ってカッコ良いか?   作:天海つづみ

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第36話 生贄

 

「神崎…あー、宗則だったね、アイツの部屋見せてもらえるかい?」

 茶を啜る占い師

 

「今2階は総一郎夫婦の部屋になってまして……」

「荷物は?」

「ほとんど向こう(アパート)に送りました」

 母親が答える

 喜一は黙ったまま

 

「そうかい……あー……」

 天井付近を見回すと

「神棚は……無いな、喜一さん、親から何か理由聞いてるか?」

 

「……いえ、家では特に信仰してる神社も無く、実家にもありませんでしたが?」

「実家ってどこだい?」

「群◯でしたが……もう残って無いです」

「ふぅん……なぁ?その前は?神崎家はどこから来た?」

「私も親と祖父に聞いた事があるんですが……ハッキリとは…西だとは言いました」

 ずっと俯いている

 

「……そうか……」

 考える尾形

 

 児島が手を挙げ

「……よろしいですか?確か現在の家族構成では神崎君…あぁ宗則君の弟夫婦と子供が居ますよね?」

 

「この家赤ん坊居るのかい?その割に……」

 家の雰囲気が落ち着いている、普通赤ん坊が居る家はもっと騒がしいモノだが

「呼んで貰えるかい?」

 

 呼ぶと2階から赤ん坊を抱いて降りて来る高校生位の女

「何ですか?お義母さん?」

「武蔵ちゃん見たいんだって」

 一歳と少しでヨチヨチ歩く、尾形達をチラッと見るが表情は変わらない、普通は泣きそうなモンだが……ボンヤリしているのか?

 

「おや!可愛いねぇ!」

 その声にも無反応、後藤と児島は少し違和感を持つ、普通知らない人が居たら逃げるか泣くか、または興味を持つかどれかだろう

 

 尾形はじっと武蔵を見た後

「紙とペン、後は封筒をくれないか?」

 受け取ると

「喜一さんと二人で話したい」

 

 ………………………………………………

 

 高速を戻る 

「尾形、長々何話してたんだ?」

「今後の対応だよ」

 考え続ける

 

「俺の予想……言って良いか?」

 電子タバコを出して吸うと

「神崎君って……いや神崎家は……」

 睨む

 

「いやぁ、まだ確証が無いね」

 目を閉じ腕組み

 

「婆さん、確証って何だよ」

 助手席から

 

「木村、今まで神崎とツルんでておかしな事無かったかい?」

「オカシイ?……って言われてもなぁ」

 首を傾げる、そもそもコノ生活自体が常人にはおかしい

 

「そうだな……じゃあ麻理恵ちゃんと千尋ちゃん聞きたいんだが?」

「じゃあライン入れてみるぜ?」

 

 送った途端

「神崎見付かった?!」

「麻理恵さん?!」

 二人共大学を休み、昨日バラした神崎のPCのパーツのデータを見ていたそうだ

「そんな事出来んのかよ?!」

「昨日千尋がハードディスクとSSD持って帰ったんだよw」

 

(千尋さんって怖えぇ……)

「まぁそれはいいや、それより神崎についてオカシイ所無かったか?って占い師の婆さんが聞いてんだ」

 

「尾形さんが?そうだなぁ……小太りでオタで……霊感あり?ねぇ千尋、何かある?」

 スピーカーにしてくれないだろうか

「あぁ、後は2次元好きだねぇw別のアイコンからエ◯ゲーっての?いくつも出て来たwそれにサルベージしたら画像が……何百枚あんのコレ?w」

 

 神崎?!…生きてるよな?!…何か連絡手段は無いのか?!……早く連絡しろ……お前の性癖全部暴露されんぞ…

「あ、あのそう言う事じゃなくて、れ、霊的な事がな……」

 

「もしもし、木村君?青井です」

「千尋さん」

「胸デカすぎだっつーの!!w」

 後ろで麻理恵の爆笑が聞こえる、画像を見ているのだろう

「霊的な事だよね、あのラブホテルで神崎君が独り言呟いたんだけどね?」

「何て?」

「子供がコソコソ話してるって」

 

「本当かい?!それ?!」

 尾形が身を乗り出す

「え?はい、そんな事言ってました」

 

 席に戻ると腕組みして仏頂面

「婆さん?」

 スマホを切る

「尾形?」

 

「ちっ!予想が確定した!やっぱり神崎は生贄の一族だ!」

「生贄?!どういう事だよ?!」

「あのホテルの隠形で隠されていたのはな」

 尾形は話す、あの忌地で隠されていたモノを

 あの忌地の本体とも言える存在

「そんなのが居たのかよ!子供の頭?!俺そんなの見えなかったぜ?!」

「当然だ、アタシだって見えて無かった」

「何で神崎は声聞こえたんだよ?」

「同じ人身御供……生贄だからだろうよ、前から違和感はあったんだ」

 山の女の子は神崎に、神崎だけにおいでおいでと言っていた、大西の話から察するに被害者は女が多かったはず

 なのに男二人で歩いていた神崎だけにツバを付けた

 あいつ最初から神の供物だったから馴染み安かったんだろ

 

 

「ちょっと待って下さい」

 路肩に車を停めるとタブレットを取り出す児島、事件の資料を見る

「確かにそうですね、被害者に男は居ますが父親や恋人、女性だけのグループが主に被害に遭ってます」

 

「年末の水神の時は、客からヘビを剥がした途端に神崎に取り憑いただろ?」

 煙を吐く

 

「あれ大変だったな」

 水買って運んで

 

「俺の知らない所でそんな事あったのか?」

 そういや二人は知らない

 

「生贄だからこっちも馴染み安かったんだろうよ、終いにゃ神崎の身体乗っ取ってたからな、弱ってるはずなのに」

 チッと舌打ちすると

「この前の坊さんに言われたらしい『半分死んでる』も納得だ、アイツ最初から半分向う側に行ってんだ」

  

「そう言う事か……」

 納得した木村、今思えばそうかも知れない

 

「そしてさっきの子供だよ」

「あの武蔵って赤ん坊だな?やっぱり……変だよな?」

「ボーッとしていると言うか、落ち着いている感じでしたよね」

  

「……今まさに魂喰われてるんだろうさ」

 煙を吐く

「婆さん!何だソレ?!」

 見てない木村には分からない

 

「尾形!何で言わなかった!」

「なるほど、あの反応…感情が希薄なんですね、教えるべきでは?」

 

「ガタガタ煩いね、あの場で何かしたら神崎が危険かも知れないからね、黙ってたんだよ」

 次のタバコを取り出すと

「長男に『一』を付けない事、多分これが最初の儀式だ、そして魂を半分喰われる」

 火を点け

「そして成長した後は身体ごと喰うんだろうよ、それで生贄として完成するんだ、これがアタシが予想する神崎家の呪縛だ」

 煙を吐く

「問題は神崎が何処に居るかだろ?」

 結局そこになるのだ、しかし手掛かりが……

 

 木村のスマホが鳴る

「なんすか麻理恵さん?」

「あぁ木村君?千尋です、廃村が何とかって言ってなかった?」

「そうなんすよ、神崎が調べてて」

「たしか廃村の中で一番古いログに、〇〇県の〇〇村ってあったんだけど……去年の5月位に」

 

 !!!

「あ!」

 思い出した木村

「まさか?!」

「あの時のか?!」

 二人も

「何だい?何の話だい?」

 

 ………………………………………………

 

 地元に到着、コンビニの駐車場に入る 

「こういうのが合点が行くってのか?」

 頭をガリガリする木村

「アイツ最近になって廃村探してたんじゃねぇわ、最初が廃村だったぜ」

 

「コレがその時の資料です」

 児島がタブレットを後ろの席に見せる

 

「ほう……ダムの予定地……で、候補から外れたか……」

 目を細めて見る尾形

「アンタらは現地に行ってないんだね?」

 

「あぁ、俺達は木村の事後処理しただけだからな」

 

「婆さん、何か分かるか?」

「ちょっと待て……」

 ページを送る、古い写真、昭和五年、揃いの半纏、鉢巻、ズラリと並ぶ村人、そして神輿

「……なるほどねぇ、コレ最初に見てれば早かった」

 尾形が手招きすると後ろの席に集まる

「お前等、この神輿良く見ろ」

「?、何だ婆さん?」

「コレが何か?」

「ドコか変か?」

 

「お前等に神輿の形なんて分からないか」

 神輿ってのは依代……まぁ神様を乗せて土地を練り歩く神様の乗り物だ

 だから神社の奥殿と同じ正方形の箱、四方に鳥居、装飾に大屋根を付けたモノになる

「まぁ角を落とした八角形もあるがな」

 

「あぁ、屋根を取って上から見た形ですね?」

 写真を拡大する児島

「……コレは……屋根と鳥居を取ったら……円筒形ですか?」

 目を細めて白黒写真を見る

「……しかも上が……太くなっている?」

 

「昔話によくあるだろ?」

 年に一度、または決められた年になると若い娘が山の神様へ生贄に捧げられる、その時娘が乗り、村人が担いで運ぶ

「コレは本来その『輿』だよ、神輿に仕立ててあるが本体は昔の『輿』で載ってるのは『棺桶』だ」

 

「って事は!」

「間違い無いね、神崎はこの村に居る」

 

 ………………………………………………

 

 もうすぐ48時間、暇すぎる、やる事が無い

 バックパックの中を探るとレシートとか紙くずが出てくるが……不思議なモンだ、何もやる事が無いとこんなモノまで読みたくなる

 お茶とかジュース、ポテチのレシート、消費税って何であるんだろ?

 

 スマホの光を限界まで落としバッテリーに気を使うが、もう半分も無い

 何度もバックパックの中を探るが……後は何も……ん?

 俺の足元に何かある、拾ってみる……カード?

 よく見ると黄色く変色した免許証だ、指で擦り…名前は……神崎勇(いさみ)

 へぇ、同じ苗字だ、有効期限が平成7年ねぇ、家のオヤジのちょっと上位の年か?

 生年月日……昭和49年…住所は群◯か

 

 何でこんなモノがあるんだ?もしかしてこの人もシラヌシさんと関係が?

 シラヌシさんの加護を試して今の俺と同じくオシオキされたのか?

 

 思い切ってスマホのライトを最大へ

 

 ようやく全体が分かる、8畳程の面積に高さは150cm程の……全体が石の空間だ

 

 思ってたより狭い

 

 そして散らばる布の切れ端、朽ちた草履……

 スマホを消す、今更ガタガタ震える

 

 コレ本当にシラヌシさんの仕業か?

 何か違う感じがするぞ?

 

 瞼に残る残像、石の空間……その隅の方に白いモノ

 

 骨だ……何かがここで人を喰ったんだ

 散らばってるのはその残骸……

 シラヌシさん人喰い止めたはず……

 俺達そこまで怒らせたのか……?

 

 ………………………………………………

 

 水曜 早朝 山道を走るキャンピングカー

 後ろでは木村と後藤が寝ている

「児島だったな?アンタはなぜ神崎を助けたい?」

 

「そうですね…木村君は霊が見えます、そして霊の反応で犯人を特定できます」

 カーブを曲がりながら坂道を下る

「神崎君はその先、動機や事件背景を読むキッカケが見えます」

 霧が濃い

「それは早期の事件解決になります」

 

「正義感からかい?違うだろ?」

 

「出世欲、まぁ私の我欲ですね、手柄が最短最速で手に入ります」

 

「アンタは分かり安くて良いな……一志が寝てるから話すけどね……誰も口に出さないようにしてるが……」

 

 

「最悪亡くなってますよね?」

 何の感情も籠もらない口調

 

「あぁ……それでもアンタが協力するのは何故だい?」

 

「?、今回は最初から出世の糧になってませんよ?有給使ってますし」

「……それが?」

 

「出来の悪い弟二人、その一人が困っているなら権力でも何でも、使えるものは使います」

 

「……なるほどねぇwアンタは利害だけで動くヤツじゃあないんだなw」

 

「業務ならば情など不要ですがね」

 キッパリ

 

「弟か……」

 

「人生の先輩として、神崎君には現実の女性に興味を持つ様、矯正しなければなりません、ソレが今の私の神崎君に対する感情です」

  

……………………………………………… 

  

「着きましたが…あれは…誰が手配したんでしょうか?」

「起きろ木村!後藤!」

 後ろに怒鳴る

「……うぉ、あれ?何だよあの車?」

「あぁ……着いたか?」

「アタシが京都から呼んだんだ」

 トンネル前に軽トラックなどが数台、小型のパワーショベルまである、尾形が先に降りると

 

「滉大(こうた)!!良く来てくれた!」

 

「千鶴子姉ちゃん!高く付くぞ!本宮の祓い師総出だ!」

 真剣な顔の小柄なジャージの爺さん、後藤さんと変わらない歳位、白髪の頭髪、天辺は無い

「神封じなんて誰もやった事無いぞ、俺だって子供の時見た以来だ」

 四十代位の男女が20人程居る、ジャージやスウェット

 

「なぁに、囲みさえ作れりゃ何とかなる」

「囲み?」

「アタシがトドメ刺す訳じゃないんでね」

 タバコを咥えると

「始めてくれ!!」

 

 まだ霧が残る山中に重機の音を響かせトンネルへ進む

 立ち入り禁止の看板と金網をバケットのツメで引っ掛け薙ぎ倒す

 

「良し、行くぞ」

 尾形を先頭に入るが

「…………ほう……」

「姉ちゃん、何か感じるか?」

「敵意だね……」

「俺は何も感じないな」

 ゾロゾロ入るが

 

「婆さん!!」

 一番後ろの木村が叫ぶ

「入れねぇ!何だコレ?!水の中みてぇだ!!」

 入り口でオロオロすると尾形が戻る

「……感じ取れてるね、コレはアンタに対する敵意だよ」

 煙を吐くと

「本音を言えばお前を来させたく無かった、だがお前には大事な役目があるんでね」

「役目?俺に?」

「そうだ」

 尾形は何枚も御札が付いた、いつもの長い数珠を出すと

「だからお前は何があっても狼狽えるなよ?」

 木村の体に巻き付ける

「良し、入ってみろ」

 

 木村は一歩進むと

「お?普通に歩けるぜ?」

 

「おいおい姉ちゃん!何でこの子にこんな厳重な結界掛けたんだ?」

 滉大と呼ばれたリーダーっぽい爺さん

 

「トドメ刺すのはアタシじゃない、コイツなんだよ」

 煙を吐く

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