「ハジメに名前変えるのか?」
「あぁ、まだ一歳過ぎだし簡単らしい」
表向きは検査入院という形で昨日から一晩泊まっていた
一応心配してたらしいオヤジから着信
「お前偶には帰って来ないか?」
「俺の部屋もう無いんだろ?オヤジ、それより頼みたい事あるんだ」
「何だ?」
「神棚買ってどこかに付けといて欲しいんだ」
「……分かった」
「付けたら連絡してくれ、そしたら帰る」
電話を切った直後
「おう神崎」
病室の引き戸を開ける木村
「木村、早いな」
「どうよ?人生初の入院はw」
俺の肩を触って指差す
「スマホ使える部屋で良かったよ、暇すぎて」
向かいのベッドの天井付近にフラフラ浮いてる影……子供かな?
……って慣れたなぁw
一晩お世話になりました
「点滴ってどうだったよ?」
「案外恐くなかったw児島さんは?」
「退院手続きやってるぜ?下で待ってる、行こうぜ」
……………………………………
「今日は帰って休養しなさい、大学へ連絡入れておきます」
言うと児島さんはそのままどこかへ行ってしまった
「あ、千尋さんと麻理恵さんから何度もライン入ってたんだっけ」
心配してくれたらしい
「あー、お前の手ががり探す為に手伝って貰ったからなぁ、元気ですって返しとけよ?」
あー……これPCの事説明すっか?黙ってた方が面白そうだよなw
「何か色々な人に心配掛けて申し訳無いな」
どれだけの人が関わったのか分からない、どれほど世話になったか
「先ず尾形さんのアパート行こう、まだキチンとお礼言えてないし」
何か体が軽い
「お前眠りっぱなしだったからなw」
あの村から眠ったまま病院に直行した
……………………………………
「あの、ありがとうございました」
「児島も大袈裟だよなぁw若いんだから食って寝りゃ治るのに入院とはな」
煙を吐く占い師、尾形さんのアパート
「そう言えば死に近い所では飲み食い出来ない理由…分かりましたよ」
バックパックからレシートを取り出す
「暇でコレとか読んで…買ったモノも手で触ってたのに…」
「認識出来なかったんだな?」
ニヤリ
「はい、ペットボトルとか触ってるのに」
まじまじ手を見る
「はっはっは!良い体験したじゃないか、あー、それよりお前らな?シラヌシさんにお礼参り行っておけよ?」
「あ、それはそうなんですが……」
「婆さん、拝む場所がねぇんだぜ?」
「祠位あるんじゃないのか?今日休みなら早く行けよ?」
社も鳥居も見た覚えが無い
「木村、何かあったっけ?」
「一度頂上まで行ってみるか?」
「よし、ソレはソレとしてだ、お前ら去年村に行った時の事話せ、順番に詳しくな」
「今更なんでよ?」
「木村、何でお前に敵意持ってたのかが分からないんだよ」
真剣な顔で指差す
出来るだけ順番に思い出し話すと
「一番鶏ぃ!?はっはっはぁ!それだ!」
(覚えてるモンだねぇw一志はまだ2歳だったのにw)
バシバシテーブルを叩く
「「?」」
「そもそもお前らが出会った事も運命かもなw」
え?何かおかしい?
尾形さんは話す、そもそも俺はあの村に、あの山犬に引っ張られて向かったはず、そこにどういう訳か『オマケ』が付いて来た
何者か分からなくて観察していたら、突然魔除けとなる一番鶏の鳴き真似をした
神性を無くし魔に近いため、それで警戒した訳だ
そのまま帰ってしまったが、食いかけの魂は何時でもまた呼べる、と余裕でいたらシラヌシさんから加護を受けてしまい手を出しにくくなった
結果生贄を逃がした木村に敵意を向けていた、と言うことらしい
「まぁこんな所だろうな」
煙を吐き笑う
「それで『逃がした』って言われたのかよ、俺に巻いた数珠は犬から守るためか?」
「お前の気配消してたんだよ、声を出さなければバレないやつだ」
木村からその辺の話は聞いた、トンネルが水の中みたいだっ……あ!
「あのトンネルの上の霊達、何で成仏して無かったのか……分かりますか?」
「そうだねぇ、枯れ木も山の賑わい……って所かねぇ……」
「?」
「あの山犬、曲がりなりにも約束を果たそうとしてたのかもな」
「それって?」
「昭和の途中から村で亡くなった霊を引き留めてたんだろうよ、自分が大きくしてきた村が無くなるのは納得出来なかった……とかな?」
「あの山犬…」
本当は捨てられ、忘れられるのが寂しかっただけ……かもしれない
「結局悪いのは人間かよ?」
「探せば日本中に転がってる話だよ?だからアタシ等祓い師が食って行けるんだ」
なんだろう、本当に人間ってやつは
「昔から『自然』と上手く付き合ってたのが文明と共に廃れる……って色々な作品でテーマになってるしなぁ」
「アニメも小説もあるな?」
「もう行け、あぁ神崎」
「?」
「あのトンネルの前に石碑を置く様に頼んでおいた、盆には行って拝めよ?」
「……尾形さん、凄い金額使いましたよね」
申し訳ない
「子供が気にすんじゃないよ、さぁ行った行った」
手を振る
………………………………………………
シラヌシさんの所へ行くため、バイクを取りにアパートへ帰る、鍵を差すと
「あれ?開いてる?」
「あ?児島さん戸締まり忘れたのかよ?」
俺が消えた時部屋を調べた話してたしな
開けると
「あぁ!神崎君!すまないが外で待っててくれ」
立ち塞がる後藤さん
「後藤さん?」
「あれ?どうしたんだよ?」
と、
「やば!!もう帰って来た!」
「麻理恵、コレどうやって付けるの?」
「慌てなくて良いですよ」
麻理恵さんと千尋さん、児島さんの声が聞こえる
ドアを閉めて廊下へ
「何してたんだ?」
「あー…コレ言って良いか迷ったんだけどよ、今PC直してるかも」
外を見ながら
「お前が自分から失踪した可能性でな?」
…………………………………………
「PCバラして調べたぁ?!」
男の聖域を?!
「…中のアニメもゲームも…消したファイルまでサルベージしたってよw」
目を逸らし笑いを堪える木村
「木村……何で止めなかった……止めてくれよぉ……」
膝から崩れ情けない顔になる、泣きそう!
千尋さんてPCに詳しいなんてもんじゃないんだぞ?!全部バレた?!
絶対見せてはならない、知られてはならないモノを…
「フッ……俺は今回で理解したぜ……うっかり行方不明になろうモノなら……地獄見るって事にな……」
遠い目で白々しいセリフの様に
「木村ぁー……」
身近に刑事とPCに詳しい人がいるリスク、この怖さよ
ガチャ
「神崎君、準備出来たそうだ、おいで」
疲れた顔の後藤さんが手招きしている
入ると
「お、おかえりなさい、あ、ませ、ご主人様」
タドタドしいセリフでメイド服のオカル◯マニアに出迎えられる
白いニーソが眩しい
間
「……………………はい?」
何だろう?この状況?
何で千尋さんがコスプレしてんの?
やたら◯乳になってるし
「俺はなぁ、こんな方法はどうかと思ったんだがなぁ……」
困り顔の後藤さん
「後藤さん……何事よコレ?」
木村も固まる
「あっはっは!やっぱりベタすぎた?w」
入れ替わる様に
「神崎、どうよこれ?w」
茶髪のツインテールになった麻理恵さんがブレザーの制服を着ている
何だ?……何だ?……この状況?俺は夢でも見てるのか?
熱があるのか?
実はまだ病院で意識不明で寝てるのか?!
いや、それとも地下で死んで、あの世で都合の良い夢見てるのか?!
「あれぇ?コレも違う感じ?猫耳系の方だった?」
麻理恵さんも胸がパンパンに膨らんでいる
どうなってんだ?
すると奥から出る児島さん
「どうです?現実の女性だって良いモノでしょう?」
「……あの……すいません、何がどうなってるのか説明して下さい」
何が起こってますか?
………………………………………………
「俺は反対したんだよ、警察は地元の風俗店を把握してるし顔も利く、だから連れて行ってやれば良いってな?だけど児島が反対してなぁ」
椅子に座り薄い白髪を撫でる
「警察官が青少年をそんな店に連れて行く訳にも行かないでしょう?ですから協力願いましたが?」
窓際で正座して二人に手を向ける
児島さんは俺が現実の女性に興味が無いと思ったそうで、馴れさせる為になんとかならないか二人に相談した、
すると千尋さんがPCのデータから俺の好みを予測して報告した、
そしたら二人にその格好をして欲しいと頼んで来たそうだ
「それでね?ゲームとアニメ、サルベージした画像全部の約1割にメイドさんが登場してて……私が着る事に」
ベッドに座る千尋さん
1割もあったんかい!
違うんですよ千尋さん!石を投げればメイドに当たるような世の中です、本当に多いだけなんですよ
「……全部見たんですか?」
恥ずかし過ぎて床しか見れない
「4倍速……とかで……」
俯き真っ赤
「あっはっは!アタシは児島さんの勘違いに乗っただけ!楽しそうじゃん!」
同じくベッドに座る麻理恵さん
「勘違いですか?」
不思議そうな児島さん
「そうなの?」
同じく千尋さん
「神崎はアレよ、現実の女に相手にされないと思い込んでるだけだよ!w」
爆笑
「じゃあ私達何でコスプレしたの?」
「アタシが千尋のメイド見たかっただけw」
「そうなの?!私だけ?!ヒドイぃ!」
麻理恵さんの肩をポカポカ
「その割にノリノリだったじゃん!」
何だこの光景……俺のベッドの上が幸せ空間になっている
「麻理恵さんだってそれコスプレじゃねぇの?」
スマホで写真を撮る木村
「アタシの制服自前だよ?一昨年まで着てたヤツだもん」
「マジっすか!」
「だからアタシはギリセーフ!w」
「麻理恵ぇー!」
「……あの、ありがとうございます、心配してくれたんですよね」
俺の為にどれほど……心配してくれたのか……気を遣ってくれてるか
ラインに二人から何度も……
暑くないか、寒くないか、腹減ってないか、児島さんより頻繁に
恵まれてたんだなぁ……
同時にエ◯アニメとエ◯ゲーと消した画像から統計取られるとは思わなかったがな
「まぁ無事に帰って来たし、変なことあったらまた頼むからねw」
手をヒラヒラする麻理恵さん
「あぁ、それと神崎、一つ説教しとくよ?」
声が低くなる
「神崎、胸の谷間なんてね、天然で出来ると思うなよ?、女に夢見てんじゃないよ?」
睨む
「え?じゃあ今は……」
「パット7枚ずつ入れて寄せて上げてるだけw」
ガラスが割れる様な音が頭から聞こえる、俺の価値観は崩壊した
夢見る位良いじゃない……ねぇ?
「ふむ、神崎君に必要なのは自信ですか…先ずはダイエットから始めては?やはり見た目は重要です」
モデル体型イケメンなら楽だろうよ、こっちは人生Very Hardなんだよ
「やっぱり風俗で良いだろう?神崎君、メイドの衣装が好きならそういう店もあるぞ?行くか?」
………………お供致します
「ちょっと後藤さん、女の前でセクハラだよソレw」
「ねぇ麻理恵、この衣装どうすれば良いの?」
今更恥ずかしいのかモジモジする、白いニーソが眩しいです
「あ!じゃあパッドの分は?!児島さん?」
「差し上げますよ?雑費で計上します、勿論協力してくれましたからバイト料も支払います」
「さっすが!」
……俺は今、凄く幸せなのかも知れない
幸せな時間に居るんだろう
…………………………………………………………
「ここが頂上か?」
「やっぱり何も無いな」
シラヌシさんの山、道があるだけで何も見当たらない、と、
「おや、君達確か……」
ジャージにスニーカーの散歩老人
「あ!白里さん」
「こんにちは!」
敬礼して山の全体を聞くと、古い道があるという
「行ってみるかい?案内しよう、整備されてないから気を付けてな」
70歳過ぎた老人に気を使われるとは
しかしその理由が分かる、俺達より歩くのが早い、
下ると途中に黒と黄色のロープが張られた雑草だらけの場所がある
「ここだよ、行ってみるかい?」
「え?良いんですかココ?」
立ち入り禁止の札がブラ下がっているが?
「地元の町会の人だけ知ってる道でな、私も最近知ったんだよ」
白里さんに続いて急な斜面と雑草の中を進む、すると左の斜面に狭い石段が現れた、苔だらけで20段程ある、登ると
「これか!?」
「こんな所にあったのかよ!」
「古くから『主さん』と呼ばれてるそうだが……君達知ってるのかい?」
石の小さな社、緑の苔に覆われている、これがシラヌシさん?
「コレお稲荷さんなんです」
「ご利益あるんですよ」
「……そうなのかい、じゃあ大事にしたらあの芸者に会えるかもなぁw」
三人で手を合わせる
(ありがとうございました)
目を開けると無音……
「あれ?」
「何だ?」
辺りを見回すと、止まったままの白里さん、と、
「良く来て下さいましたね」
後ろに立っている花魁
「「シラヌシさん!!」」
……………………………………
「そうですか、神棚を置く事に」
「はい、そこでシラヌシさんを祀りたいんですが……」
「あー、俺ん家にも何か置きたいけど……」
御札も御守りも無い、そもそも神社でさえない
「でしたら」
シラヌシさんは小さなモミジの新芽にフッと息を掛ける、すると葉が成長してよく知る形になる
「コレを納めてくださいな」
靭やかな動きで三枚手に取りニコリと笑う
「1枚はこの方へ、どうやらわたくしに会うために毎日登ってきますからw」
「分かりました、それともう一つ許して貰いたい事がありまして……」
………………………………
「とりあえず付けてみたがどうだ?」
「うん、十分だと思う」
リビングに付けられた神棚
「あらぁ?踏み台どこにやったかなぁ」
収納を開ける母親
「え?オヤジ自分で付けたんじゃないのか?」
「いや、佛具店が取り付けまでやってくれてな、で?どうするんだ?」
「コレを納めるから毎日手を合わせてくれ」
1枚のモミジを見せる
「何で今の季節にこんな立派な葉があるんだ?」
「この家…いや神崎家の呪いを消してくれたお稲荷さんから貰ったんだ」
「?……まぁその辺りはお前に任せるか」
「あったあった、ほら踏み台」
「じゃあ」
踏み台に登り半紙に包んだモミジを置く
「後は……」
横に小さな白い犬のフィギュアを置く
「宗則、何でそんなオモチャ置くんだ?」
「許可は貰ってる、いつか…いつかまた…」
降りて柏手を叩き礼をする
「あぁ、家で初詣に行く場所と墓参りの場所が決まった」
免許証を見せる
「これ!兄貴のだ!!」
「何?行方不明のお兄さんの?」
「話しておく、この家のルーツの事」
「先祖の話か?」
「うん、◯◯県にあった村の話だ」
これで思い付いた話は終わります、読んで下さった方々、ありがとうございました、
ネタ探して引き延ばすとダレますのでw
後は本編に入れると無駄に長くなるため、切った話とボツキャラ供養を兼ねた話を次回投稿します