ターボババアの知恵を持つもの   作:タオと桃は同じ

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ターボババア?

 オカルンこと高倉健は縄印学園高校の生徒である。

 そんな彼は学校が終わった放課後にとあるトンネルにいた。ここに来た理由はクラスメイトである太宰イチロウの動画撮影の手伝いだ。なんでも太宰曰くここは「化け物が出る」等の噂があるらしい。

 正史の世界と同じく宇宙人に興味のあった彼は「もしや化け物の招待は宇宙人なのでは?」と思い同行しているわけだ。

 

「取れてるかオカルン」

 

「うん、取れてるよ」

 

「じゃあ行くぜ。えー、我々は現在………化け物が出るというトンネルに来ております。中は暗いですね。何か出そうです」

 

 太宰は順調に実況しながらもトンネル内部を探索する。すると彼らの目線の向こう側にナニカがいた。

 そしてナニカは彼らの方を振り向く。

 

「オッパイ吸わせてやるからよォ、イチモツしゃぶらせろ」

 

「「で、出たぁぁぁ!!!」」

 

 ストレートの長い白髪に斑点柄の白い着物を着た四足歩行の老婆たがいた。そして彼女は非情に下品なことを言い放った。

 彼女の名前はターボばあちゃん、東京を爆走する近代妖怪だ。

 それを見た太宰とオカルンは悲鳴を上げて逃げ出す。

 

「あれはターボババアだ!間違いない!妖怪だ!」

 

「嘘だ!ありえない!あれはただのお婆ちゃんだ!たぶんそうだ!ただのエロいお婆ちゃんに遭遇しただけ!」

 

 彼らは逃げながら話し合う。だが時速100kmを誇るターボばあちゃんには敵わない。運動神経のないオカルンは太宰よりも先に追いつかれ呪われてしまう。

 

「ん?お前は………ちょうどいい、取り込んでやろう」

 

「あ”あ”あ”!!!」

 

「そこで何をしている!」

 

 トンネルの向こう側から1人の男の声が響き渡る。そこにはオカルンや太宰と同じ学校の制服を着た、意志の強そうな表情のメガネの男性生徒がいた。

 彼の名前は敦田ユヅル。ベテルに所属するデビルサマナーだ。

 オカルンが悪魔に襲われていることを認識すると彼はすぐさまCOMPを起動し仲魔を召喚する。

 

「グレムリン!『ブフ』だ!」

 

「あいよー!」

 

「チッ!デビルサマナーか。面倒じゃな」

 

 ターボばあちゃんが自慢の素早さで『ブフ』を躱してからクラウチングスタートの姿勢になり構える。まさしく場は一瞬即発だ。近くにいる太宰と真Ⅴの主人公は茫然とするしかできない。

 その瞬間、突如として大きな地震が起こる。

 

「なっ!」

 

「クソだらぁ!」

 

 そして何者かの意思か、トンネル内の全ての存在の意識が刈り取られる。

 

 ・・・

 ・・

 ・

 

「うう………ここは?」

 

 オカルンが目を覚ますと、彼は見渡す限りの砂漠で倒れていた。

 

「砂漠?鳥取ならまだしも東京にこんな場所が?」

 

 ここは魔界、文字通り悪魔が存在する異界である。

 その正体は20年前に神と悪魔王の決戦によって滅びた東京のなれの果て。今までオカルンが暮らしていた東京は神の奇跡によってつくられた偽りの東京なのであった。

 

「おい貴様」

 

「は、はい!?」

 

 茫然としているオカルンの鼓膜に何者かの声が響く。すると声の主は空から舞い降りてきた。

 彼の名前は天使エンジェル、神に仕える忠実な(しもべ)だ。

 

「まさか、このような地に人間が迷い込むとはな。安心しろ、元の場所まで私が送り返してやろう」

 

「えっと………貴方は」

 

「私はエンジェルだ。貴様は運が良かったな、混沌の悪魔ではなくベテルの天使に出会えたのだから。きっとこれも神の思し召しに違いない。感謝するがいい」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

「よろしい、では連れて行って………待て貴様、人間ではないな?」

 

「え!?なんのことですか?」

 

「混沌の悪魔め!」

 

 何かを感じ取ったエンジェルは突如としてオカルンに槍を向ける。

 まさしく問答無用といった様子だ。

 

【クソだらあがあああ!せっかく合一したってのによぉ!制御が効かねぇ!】

 

「わっ!何この声!?」

 

 オカルンの顔の右半分がしわがれた老婆の顔になる。それはまるでターボばあちゃんのようであった。

 

「人間が悪魔に!?貴様は『ナホビノ』!?バカな………主の禁を破るとは愚かな!ここで排除する!」

 

「うわあああ!」

 

 ナホビノ。

 それは世界を創造する知恵と永遠の生命を持った神の本来の姿。

 

 遥か昔、世界には多くのナホビノがいた。だがエンジェルの主人である法の神は自分以外のナホビノから知恵を奪い、ナホビノを「神」から「悪魔」へと貶めた。そして奪われた知恵は「知恵の実」として楽園で管理されていた。それを人間達が食べてしまい魂と一体化して以来、ナホビノの知恵は人間達の魂に受け継がれていくことになった。

 

 そしてターボばあちゃんはオカルンという知恵と合一し「悪魔」から「神」となった。

 エンジェルはそれが許せず敵対行動を始めたというわけである。もちろんオカルンは全力で逃げる。

 

【おい、よく聞け。テメェは合一を果たした。そしてそのせいで命を狙われている。だが何故かアタシに体の主導権がない。だからテメェでなんとかしやがれ】

 

「倒すってどうやってですか!」

 

【『ウィンドブレス』だ!口から風の刃を放て!天使どもは衝撃に弱い!】

 

「なにそれ!無理です!」

 

【クソだらぁ!じゃあ『突撃』だ!ぶっ飛ばせ】

 

「ぶっ飛ばすってどうやればいいんですか!まともに人をぶっ飛ばした事が無いんです!」

 

【気持ちを込めて言葉に出せ!言霊の力は不可能だと思うことだって現実にしちまうんだ!】

 

 そうこう話していると回避するにも限界が来る。オカルンの方にエンジェルの槍が突き刺さる。

 制服に赤い血が滲む。

 

「クソッ!『突撃』!」

 

 そう言い放った瞬間、オカルンの姿が変わった。

 髪が白髪化して逆立ち、眼が赤くなり、口にむき出しの歯茎のマスクのようなものが生成される。

 これがナホビノとしての真の姿だ。

 そして彼はその形態のまま、頭突きという名の『突撃』を決めてエンジェルを吹き飛ばす。

 

「スゲェ…!力が溢れてくるぜぇ…!でもすげぇ鬱………」

 

【んだぁ?人格変わってねぇか】

 

「意識ははっきりしてるんだけどよぉ、気分が落ち込んでよぉ…」

 

(チッ!ナホビノの姿になっても体は乗っ取れねぇか)

 

 ターボばあちゃんは内心でそう悪態をつく。

 彼女も立派な悪魔、隙あらば体を乗っ取ろうと試みるくらいの邪悪さはある。

 

「クッ………不覚。流石は主と同じナホビノといったところでしょうか。私では敵いませんね。ここは徹底するしか………」

 

「おっ!敵は撤退するぜ。じゃあ勝ちってことかぁ?」

 

【クソだらぁ!アイツはベテルの天使だ!援軍を呼ばれるとマズい!さっさと倒せ!】

 

「萎えるぜ。それでアイツは空を飛んで逃げてるわけだがどうやって倒すんだぁ?ジブンは飛べないぜ」

 

【『ウィンドブレス』だ!遠距離攻撃なら当たるだろ】

 

「じゃあちょっと言ってくるぜぇ、どーせダメだろうけどよぉ」

 

 オカルンは口を「ガパリ」と開けて「『ウィンドブレス』」と叫んだ。すると真空の刃が口から飛び出してきた。その刃はエンジェルの体を真っ二つに両断する。

 天使エンジェルは衝撃属性が弱点なのでよく効いた。

 

「なんか強くなったような気がするぜ」

 

 エンジェルの保有する生体マグネタイトは合一神オカルンの体へと取り込まれて、霊格を研磨していく。つまりレベルアップだ。

 そしてオカルンは周囲に悪魔がいないことを確認してから変身を解いた。

 

「それで貴方は一体、声からしてトンネルで僕を襲った人ですよね」

 

【ああ、アタシゃあは外道ターボばあちゃん。今後ともヨロシクねぇぇぇ!】

 

 そうしてターボばあちゃんはナホビノのこと、東京のこと、悪魔のこと、法の神のことなどを説明する。

 もちろんオカルンは情報の濁流を前にしてショートする。そして数分後。

 

「つまりジブンは旧東京に迷い込んで、ターボババアと合体したことで命を狙われる存在になったと」

 

【誰がババアじゃ!ターボばあちゃんと呼べい!】

 

「ババアで十分ですよ。貴方がいなかったらさっきの天使さんに救われるはずだったんですし」

 

【気に入らねぇなぁ!年上に対するリスペクトが無え!】

 

「とりあえずどうすれば元の東京に戻れるんですか」

 

「知らねぇよクソだらぁ!」

 

「仕方ない。とりあえず辺りを散策するか」

 

 そうしてオカルンはターボババアモードになって砂漠を疾走する。

 その途中で………

 

「お前は悪魔!?いやその制服はもしかして縄印学園の生徒か!」

 

「君は敦田くん!」

 

 

 

 〈オマケ 合一神オカルンのスキル〉

『突撃』『ザン』『ウィンドブレス』

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