ブルーアーカイブ―連邦の活動記録―   作:一般連邦職員

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第一章「連邦捜査部の設立と、アビドスでの行動について」
先生が着任しました(1)


 

 

 

 

 

 

連邦生徒会規則第25条

1. 連邦生徒会長に事故のあるとき、又は連邦生徒会長が欠けたときは、その予め指定する代行者が、臨時に、連邦生徒会長の職務を行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【緊急速報】連邦生徒会長、職務執行できず 代行に七神リン主席行政官 理由の説明は「差し控える」

クロノススクール報道部 10:40 配信  364件

 

 連邦生徒会は今日、定例記者会見で連邦生徒会長が職務を執行できない状況になったとして、行政官会議の決議により連邦生徒会長代行を選出したと発表した。

 連邦生徒会長代行には統括室主席行政官の七神リン氏が就任し、今後代行として職務を遂行するとしているが、詳しい内容については説明を避けた。

 

記者会見を行う七神リン生徒会長代行(動画:KBCニュース)

 

【関連ニュース】連邦に衝撃 代行に七神行政官 連邦生徒会長の不在に「差し控える」と無回答

【報道映像】定例記者会見の様子(全文文字起こし)

 

 七神主席行政官は今日、統括室行政官定例記者会見を行い、その冒頭発言において「連邦生徒会長が執務を執行できない状態にある」として、会見前に開かれた行政官会議で連邦生徒会規則25条に基づく代行を選出したと発表した。代行は事前に指定された行政官である七神リン主席行政官が就任し、今後は連邦生徒会長代行として会長の一部の職務を除き代行する。

 

 連邦生徒会長代行は、連邦生徒会長が一時的に職務を執行できない状況になった場合に発令される職位で、事前に指定された行政官が代行することになっている。連邦生徒会では慣例で第一位を統括室主席行政官、第二位に財務室長、第三位に防衛室長を指定していた。

 

●突然のトップ交代、質問に「差し控える」

 

 会見では、冒頭発言に対し具体的な状況を尋ねる質問が相次いだ。しかし、七神代行は「現在関係各所との調整や調査の段階にあるため回答を差し控える」として一切の言及を避けた。連邦生徒会は一連の騒動や治安状況の悪化に対し具体的な説明を避け続けており、今回もその流れを引き継いだ形だ。また記者の質問に対し「簡潔に質問するように」「質問に移ってください」などと一時遮る場面もあり、会見は緊張した空気の中で行われた。

 ネット上では以前より”連邦生徒会長が失踪した”との噂が広まっており、今回の会見はそういった反応に一応の回答を示した形だ。しかし依然として連邦生徒会長は沈黙を貫いており、今回の会見を含め、今後の七神代行への説明追及の流れは激しくなるだろう。

 

●サンクトゥムタワーの行政権喪失「専門部署を設立し対応」

 

 七神代行は、会見で今回の代行権限の発令の影響として、職務の発令と連邦生徒会長が職務出来ない状態に間があったことで、サンクトゥムタワーの制御権を一時的に掌握できていないと説明。現在承認の迂回やセキュリティの解除に全力を尽くしているとしているが、これにより、現在システム障害を起こしている基幹事務システムや交通システムの復旧が遅れる可能性があると述べた。

 

 また、今回の一連の騒動に関連し、本日付けで連邦生徒会長の未執行の行政命令を執行し、連邦生徒会内にあらたな専従対策班「連邦捜査部」を設置すると発表。連邦捜査部は連邦生徒会長直轄で連邦の問題に対し機動的に対処する専門部隊として設立され、今後、サンクトゥムタワーの制御権や行政システムの復旧については連邦捜査部を運用して対処に当たり、解決を急ぐ姿勢を強調した。

 

 連邦生徒会の行政システムは、一月ほど前から基幹事務システムが断続的に停止し、物流に大きな影響を与えていた。自治区からは早期復旧の声が相次いでいる中、突然のトップ交代とサンクトゥムタワーの制御権喪失は、連邦の運営に大きな逆風となる。「超人」と名高い功績を残した連邦生徒会長の代理として、今後七神代行の政策は厳しい目で見られるだろう。

 

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BXC*****

代行半ギレで草。目の下の隈えぐいよな、寝かせてやれよ

 ↪KHb***** 

 明らかにすわった目して睨みつけてるのが怖すぎて記者ビビってるの笑うわwww

 ↪AZr*****

 不知火カヤSRT廃校半ギレ記者会見からの代行ブチ切れ就任挨拶、これは伝説になるな笑

 ↪MLx*****

 今回の連邦生徒会はカカシと脳筋ばかり集めたのか? まともな奴いねぇのかよ!

VNa*****

行政権ない連邦生徒会に存在する意味あります? いやない(反語表現)

 ↪gla*****

 本当にね……連邦生徒会長なんか急にいなくなるし

 ↪Lio*****

 あの人らまじで何してんだろうね。忙しそうではあるんだけど成果が出てないような……

Vbn*****

連邦捜査部とかいう謎の部活爆誕してて草

 ↪Fgd*****

 あれ何なの? 権限めっちゃあるらしいけど怪しいよな

 ↪STy*****

 連邦生徒会長が作ったらしいが肝心の本人がなぜか姿を現さずコメントすら出さない

 ↪Pol*****

 マジで生きてんのかなあの人。簡単には死ななさそうな感じの人ではあるけどさ

 

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「連邦捜査部」が発足 連邦生徒会長行政命令が発行

キヴォトス・タイムズ 13:34 配信  211件

 

 七神リン連邦生徒会長代行(以下七神代行)は、昼の臨時記者会見にて、本日付けでキヴォトスの混乱に対処する目的で行政命令第3045号を発行すると発表した。

 新たな行政命令では、連邦生徒会長直轄の専従対策班である「連邦捜査部S.C.H.A.L.E」を設立し、治安悪化などの事態の収拾にあたる。連邦捜査部は連邦の全ての機関から独立し、自治区に対し指揮権や捜査権を持つなど強力な権限を持つ。

 設立の目的について、七神代行は「連邦捜査部は、連邦生徒会とは別のアプローチで連邦の問題に対処することを目的に設立された。これは連邦生徒会長の意思に基づいて発行されたものであり、細則に関しては別の行政命令で指示される」と述べた。

 

 行政命令には自治区への指揮権のほか、連邦全ての生徒を対象に、連邦捜査部の部員として任命し、特別な権限を付与することができるとしている。また、連邦捜査部の顧問には、自治区や連邦の機関に対し超法規的な行動を可能にする権限が付与されるなど、各自治区や連邦の行政機関に大きな法的拘束力を持つ。

 

七神代行「連邦の複合的かつ個別法でカバーできない問題を解決する手段」

 

 七神代行は昼の記者会見で「現在の連邦には複数自治区にまたがる治安、物流の問題があり、それに対し調停室による紛争調停や自治法の想定をはるかに超えた事態が相次いでいる。今回の行政命令は生徒、住民の生活を守るため、個別法や規則で想定されていない事態に有効かつ機動的に対処するためのもの」と述べた。

 

 また、連邦捜査部の顧問が自治区に必要な命令や指導を行ったり、捜査を行える権限については「まず自治区と連邦生徒会でコミュニケーションをとることが前提にある。指示権や捜査権はあくまで緊急性や非代替性を総合的に考慮して発動されるものであり、自治区の独立を侵害するものではない」と述べた。

 しかし、どのような事態を想定しているかについては「連邦規則では想定できない事態に備えるもの。具体的な回答は差し控える」として具体的な発言を避けた。

 

自治区代表行政官組織「権限の執行にあたり、自治区の独立が蔑ろにされることがないよう強く求める」

 

 一方、各自治区からは不安の声が上がっている。ある行政官は「SRTが解体されることが決まったが、今回はそれを再び復活させるもの。特に顧問という存在に全権が委任されているところに大きな不安が残る」と述べ、その権力の行使と自治区への介入が不安視されている。行政命令では、連邦生徒会長の指揮下でその行動の全てを報告するように求めているが、これが何処まで適切に機能するかは疑問だ。

 各自治区の代表からなる代表行政官組織の佐倉主席は「介入権限や捜査権などが適切に運用され、効果的に事態に対処できるようにしてもらいたい。自治区の独立性が損なわれることが無いように強く求める」とコメントを出した。

 

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rtF*****

独裁政治の始まりかこれ

 ↪Wcv***** 

 今日だけでどんだけニュース速報流れるんだよ

 ↪QAZ*****

 マジでなにがなんだかわからねぇ。誰か後でまとめておいてくれ

Hye*****

うちらはいったい何を見せられてるんですか? これは本当に現実世界か? 

 ↪rBV*****

 戻ってこい、これが現実だぞ。

 ↪*****

 事実は小説よりも奇なりって言うがさすがに奇妙過ぎてコメ欄が混乱してる

 ↪*****

 コメ欄の方がまだ落ち着きあって草。外見てみなよ不良がヴァルキューレぶちのめしてるぞ

 ↪返信をもっと見る(12件)

Csm*****

顧問って誰が来るんかな? キヴォトスの中から選ぶの?

 ↪NMs*****

 噂だと先生って大人が来るとかなんとからしいですよ。何でも外から来るらしいって

 ↪Pox*****

 それ大丈夫なのかな? 銃弾受けたらやばいんじゃね?

 

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―――19時20分 ミレニアムタワー24階 セミナー事務局フロア

 

ユウカは激怒した。

 

「なによこれぇぇ!!」

 

 書類の山と段ボールが積み重なったフロアにユウカの叫び声が響く。それはもう怒髪冠を衝く勢いで立ち上がり叫ぶ程度にキレていた。さらに連日の激務、一向に進まない仕事のストレスがさらにその怒りや苛立ちを倍増させていた。

 

「ちょっとノア! どこにいるの!?」

「はい、ここに居ますよ」

 

 ユウカに呼ばれたノアは、段ボールの山から顔を出した。

 

「ユウカちゃん、どうしたんですか、そんなに慌てて」

「ちょっとこれ見てよ!」

 

 そう言ってユウカはタブレットをノアに突き出した。

 

「えっと、これは……連邦の行政命令ですか?」

 

 そこには一枚の紙に収まりそうなくらいの短さの行政命令が表示されていた。それ自体はよく見かける書式だ。ノアはタブレットを受け取り内容を読み始める。

 その周りには、騒ぎを聞きつけたセミナーの生徒がわらわらと集まりだす。

 

「あぁ、もう連邦生徒会もついにおかしくなっちゃったのかしら」

「……本当に、なぜこれをよしとしたのでしょうね?」

 

 命令を読んで、ノアは普通に困惑していた。

 それはまるで法の支配や法治国家の原則に全力で喧嘩を売りに行くような内容だった。ノアは本気で連邦生徒会の生徒は社会科を勉強してないのではと思ったほどだ。ノアはタブレットを周りの生徒へ渡した。

 

「なにこれ?」「うわー、めちゃくちゃな内容だね」「連邦の生徒は歴史を学ばなかったんか?」「私たち捕まるの?」「どうしよう、実験ノート隠した方がいいかな?」「うちやばいかも、ちょっと帰っていい? 証拠隠滅しないと」

 

 回し読みをしていく中でどよめきと動揺が広がっていく。

 

「自治区への指示権に捜査権、それに生徒の徴用できるかのような内容。ありえないほどに権力が与えられています。解釈次第では、本当に何でもできてしまいそうです」

 

 そう呟くノアに「そうよ、おかしいのよ!」とユウカは同意する。

 

「何を捜査するのか、生徒をどうやって部員にするのかも全部連邦捜査部の裁量次第よ。これでミレニアムの機密とか特許技術全部差し出せって言われたらなにもかもおしまいよ!」

 

 ユウカは頭を抱え、どうしようと嘆いていた。

 キヴォトスの最新技術や特許が集まるミレニアムでは部外秘の研究がいくつもある。その中には、悪意を持った組織や企業に技術が渡れば、キヴォトスが崩壊するような危険な代物だって大量にあるのだ。

 

「本当におかしいわよこんな命令、抗議よ抗議! だいたい連邦生徒会長は何をしてるのよ! 何も言わず黙ったままかと思えば代行に変わってるし、システムもいつまでも復旧しないし、そのくせ何もできてないし! あぁ、もう何もかもめちゃくちゃ!!!」

「ユウカちゃんちょっと落ち着いて」

 

 ハイライトの消えた目で叫ぶユウカには既に何も聞こえていない。怒りがヒートアップして暴走したユウカを止めるのは一苦労だ。ノアや周りの生徒は静かに距離をとった。

 

「あぁ、もう無理我慢の限界! ノア、悪いけど明日連邦生徒会に行くから」

「抗議ですか? D.U.周辺は危ないと聞きますけど」

「関係ないわ! 全部蹴散らしてでも行くから」

「明日の昼からの会議は」

「欠席よ! 会長には言っておくから後で議事録送っておいて」

 

「じゃあ後よろしく!」と言い残しユウカは部屋を飛び出した。

 一番騒がしかったユウカがいなくなったとは言え、周りの動揺しており、どよめきは簡単には収まらない。ノアは手を叩いて解散を促す。

 

「はい、これが気になるのは分かりますが、これはユウカちゃんが対応します。直ぐにどうこうできる話でもないですし、仕事に戻りましょう」

 

 こんな状況だが、やらないといけないことは山のようにある。皆も三々五々散り始め、仕事に戻った。

 その中でも、ノアは比較的冷静に事態を見つめていた。ユウカは今回の命令を抗議して撤回させようとしているようだ。確かにあの通りに読めば、確かに横暴な命令が下されたようにも感じるだろうが、ノアは逆にこれを利用しようと考えていた。

 

「……ふむ。これは連邦の力関係も変わってきそうですね」

 

 キヴォトス中が混乱する中、ノアのような一部の強かな生徒は密かに準備を始めていた。来るべき連邦捜査部の始動に向けて。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――20時39分 風紀委員会本部 行政官執務室

 

 

 常夜灯が薄暗く照らす廊下を一人生徒が歩いていく。その生徒は風紀委員会と書かれた扉を見つけ、控えめにノックした。

 扉越しにどうぞ、と疲れた声で返事が聞こえたので、彼女は地味に重たいドアを開けた。

 

「どうも、こんばんは、アコ行政官」

 

 部屋に入ると、そこには大量の書類の山に囲まれた一人の生徒が仕事をしていた。声をかけると、彼女は虚ろな目を向けるが、その目の下にはかなり濃い隈が出来ていた。

 

「……あぁ、誰かと思えばイロハ議員でしたか。いったいこんなところに何の御用でしょうか? 書類でしたら今やってますし、不備があれば明日以降に回して下さいと」

「あ、そういうのではありませんから」

 

 天雨アコは不機嫌な表情を隠そうともせず、来客であるイロハに少々きつめにあたる。だがイロハは特に怒ったりもせず、淡々と要件を述べた。

 普段の万魔殿の行いをみれば、むしろ追い出されたり罵声を浴びせられないだけ、まだイロハは許されている分類だろう。

 

「連邦生徒会から緊急で通達です。連邦生徒会長代行が就任したのはご存じだと思いますが、新たに行政命令も発行されました」

「はぁ、そうですか。新たな嫌が……仕事、ではないようですね。で、それが何か?」

「はい、ただの行政命令ですが、内容がちょっとあれなので。一応風紀委員会にも横通しを、と思いまして」

 

 そう言ってイロハはアコに封筒を手渡す。白と青を基調とした連邦生徒会の行政文書はついさっき届いたばかりのものだ。普段は眠くなるような表現や言い回しに見るのも嫌になる代物だが、今回ばかりは少々趣が違った。

 アコが封筒から数枚の紙を取り出して内容を確認していく。が、その途中からアコは顔を顰めだす。

 

「……一応聞くのですが、この連邦捜査部とかいう部活は、自治区に何でもできる権限が与えられているように読み取れますが」

「はぁ、まあ言いたいことはわかります。全て書かれてる通り、事実ですよ」

「……捜査権を持って自由に戦闘も出来て、自治区に介入できるし、挙句指示には従えって、これは本当に行政命令なんですか?」

「既に確認済みです。本物ですよ、サインも内容も全部」

「…………これを、連邦は正式に発表したのですか?」

「はい、数時間前に」

 

 それを聞いて、アコは壊れたブリキのように書類を握りしめた。そして

 

「フッ!!!!」

「ッうわ、びっくりした」

 

 ダァァァンッ゙!! と机に行政命令を叩きつけた。いきなりの行動に、イロハはびっくりして肩を強張らせる。衝撃で机の書類の山が何個か倒壊した。

 

「イロハ議員、一応聞くのですが、あのクソ狸は、なんと?」

「……マコト議長からは特に何も。まぁあの人的には組織よりも新たに来る人物の方に興味があるそうですが」

「はぁぁぁぁぁ、本ッ当にッ! 使えない連中ばかりですね!」

 

 アコはブチ切れた。急に沸点に達したのでイロハが若干引くくらいには。

 そんなイロハをよそに、日ごろのストレスと過労と寝不足で、アコの怒りはどんどん上がっていく。

 

「普段からトップ(万魔殿)の無能ぶりには苦しめられていましたが……今回の連邦はさらに上を行く愚かさですね! 馬鹿が馬鹿に権力を持たせても碌な結果にはならないというのに! ついに連邦にも万魔殿の馬鹿が移りましたかね!?」

 

 それはイロハも少し思った。連中もついに頭がおかしくなったのかと本気で思ったほどだ。

 

「あの阿保共め……一度徹甲弾か何かでぶち抜いた方がいいんじゃないですか」

「やめてくださいよ。……待ってください、急に黙らないでください。本当にやらないですよね?」

 

 だが怒りに飲まれたアコには何も聞こえていない。虚ろな目でぶつぶつ呟くアコを前に、イロハは帰ってもいいかなと思い始めていた。

 

「あー、だるいことになりましたね……お?」

 

 そう思っていたら、ドアを破る勢いの激しいノックの後、入ってくる生徒が一人。ドアぐらい丁寧に開けなよと思っていたら、まさかの人物、火宮チナツが書類の束を持って部屋に入ってきた。

 そこには普段の規律を順守する姿は欠片もなく、乱暴にドアを開けて入る姿は何処かぼろぼろで、同じく目の下に濃い隈を携えていた。

 あぁ、疲れてんだなとイロハは納得した。

 

「失礼しますアコ行政官。報告書をお持ちしました……アコ行政官?」

「チナツさん、今はやめた方がいいですよ」

「……あの、イロハさん、いったい何が?」

「詳しくは行政官に聞いてください。私は疲れたんでもう帰ります」

 

 イロハは思考を放棄し、チナツを身代わりにして逃げることにした。もう知らない。みんな激務と睡眠不足で頭が回らないのだ、解決するには帰るしかない。

 しかし、こそこそと立ち去ろうとするイロハをアコは見逃さなかった。ぎろりと、ハイライトの消えた目が向けられる。イロハは運悪く目線があってしまい、まるでメデューサに見られたかのように体が一瞬固まった。そしてそのままチナツの方へ視線を移す。

 

「あぁ、誰か来たかと思えば、チナツさんでしたか。ちょうど良いところに来ましたね」

 

 それはとてもいい笑みだ。絶対ろくでもないことだぞとイロハは思った。

 

「確か今回、家宅捜索の押収品にトカレフ弾がかなりの数ありましたよね」

「あ、えぇ、4000発ほど回収してますが」

 

 ぎゅるんと、首が回りこちらを見つめる。やばいと思ったが、イロハはその場から動けない。

 

「イロハ議員」

「……なんでしょう?」

「押収品は、風紀委員会の管理下で、その処分や活用は万魔殿は一切かかわりを持たない、でしたよね」

「まぁ、はい、マコト先輩は以前そう言ってましたが」

「ふふ、フフフッ!!! そうですかそうですか、ハハ」

 

 マジで怖い。イロハだけじゃなくて、チナツも初めて見る行政官の姿にかなり本気でビビっていた。

 

「チナツさん」

「はい」

「それを持って明日、連邦生徒会に行ってください」

「ちょ、ちょっとまってください行政官!」

「どうしました?」

「こちらのセリフです、いったい何をするつもりですか?」

 

 イロハは焦っていた。急に物騒なことを言い始めるのだからたまったものではない。

 ろくでもないのはわかっていたが、さすがに連邦生徒会に喧嘩を売るのはただひたすらに面倒が増えるのでやめてほしい。面倒というかマコト議長がそれに乗じて何をするかわからないのもあるが。とにかく、風紀委員がトラブルを増やすのだけは避けていただきたいところだ。

 

「ご安心ください、押収した犯罪者共の弾丸で連邦の馬鹿な連中を一掃するだけですよ」

「何も良くありませんね」

「なるほど、連邦生徒会の襲撃ですか。それなら問題ないですね、予算も一切使いませんし、馬鹿は治療不可能ですから」

「チナツさん賛成しないでください、問題しかないです」

「えぇ、その通りですチナツさん。どうです、一個中隊連れて行っては?」

「聞こえないのですか? やめてくださいと言っているのですが」

「トカレフ弾だと私の銃では銃身が摩耗してしまいます。戦闘を想定するのなら別の銃が欲しいところですが」

待てって言ってるでしょうが!

 

 イロハは疲労困憊だった。アコは言うまでもなく、チナツも激務により普段の丁寧さが剥がれ落ち、狂暴なゲヘナ生らしさが顔を出していた。そうでなければ襲撃しようとは思わないし誘いにものらない。

 

「ですがイロハ議員、これは悪い話ではないですよ」

「どこがですか……次変なこといったら虎丸で撃ちますからね」

「真面目な話です。連邦捜査部は、うまく使えばゲヘナに有利に使えるかもしれません」

 

 アコは真剣な表情で語りだす。

 

「連邦捜査部の権限こそ連邦生徒会長直轄ですが、実際にはかなり独立性が高い部活だそうじゃないですか。そして、その権限を実質的に握るのはこれから来るであろう顧問です。その顧問をうまく取り込んでしまえば、その権力は実質我々の指揮下に入ったということになる。そう思いませんか?」

「……顧問を取り込む、ですか。いったいどうやって?」

「それを考えるためにもまずは情報が必要です。人となりや連邦の動きを含め精査する必要がある。どちらにせよ、まずはチナツさんに接触してもらいましょう。万魔殿の議員や他の風紀委員ならともかく、チナツさんなら穏やかに関係を作れるでしょうからね」

 

 まぁ、確かにマコトや美食研や温泉開発部(倫理観が抜け落ちた連中)に比べればチナツはかなり、いや大分一般寄りの感性を持っている。彼女は戦闘職でもないから、ある程度は穏やかに接触が出来るという考えだろう。今は少し、ゲヘナに寄っているが、まぁ一晩寝れば元に戻るだろうか。

 

「チナツさん、あなたには明日朝一で連邦生徒会に向かって、連邦捜査部の調査をするように。もし顧問を確認できたら、可能な限り情報を集めてください」

「はい、わかりました」

「……はぁ、どうなっても知りませんよ」

「大丈夫ですよイロハ議員。私に全てお任せください」

 

 いろいろ考えはありますから。そう言って獰猛な笑みを浮かべてアコは微笑んだ。イロハはそれを前に押し黙るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――22時19分 正義実現委員会本部 委員長応接室

 

 

「ゲヘナは風紀委員会から人員を派遣するとのことです」

「そうですか……ミレニアムは?」

「セミナーの会計が現地へ」

 

 行政部の生徒から報告を受けた剣先ツルギは静かに椅子に身を沈める。 その隣の椅子で、ハスミは手元の書類を眺めていた。

 委員長の椅子に座るツルギには、普段の凶暴さは微塵もなかった。そこには奇声を上げ、先陣を突っ切る姿ではない、一組織の長としての姿があった。

 

 今のトリニティはテロで大きく揺れているが、概ね落ち着きつつある。しかし突然発表された行政命令に、首脳陣は再び混乱の渦中に放り込まれた。トリニティ以外の各学園生徒会はそれに即座に反応し、三大学園の内二つは生徒を派遣すると決めたとの情報は、キヴォトス中のスパイからの報告でかなり早い段階で掴んでいた。

 トリニティ行政部とティーパーティーはその情報をもとに直ちに検討を始めた。状況的に人員を派遣をするのは確定事項だ。ここでの問題は一体誰を派遣するのかと言うこと。平時であれば良かったものの、今のトリニティはテロで大きく混乱している。はっきり言って行政部には、人員を差し向ける余裕はない。

 

 かといって人を出さない場合、情報や今後の対応に遅れをとる形になる、それだけは避けたい。そしてここでも更に問題になるのが、今の治安の悪化状況だ。D.U.へ行くにしても、ある程度腕の立つ人選をしなければ、道中不良共にぶちのめされるというトリニティの恥を晒すことになりかねない。だが腕だけではなく、政治もある程度できる人間でないと話にならない。腕がたち、頭もよく回る人間と言うのはそもそも貴重なのだ。ティーパーティーと行政部は大いに困惑することになる。

 だがここは三大学園の一つ、トリニティ総合学園。生徒数が多い分、分厚い組織体制を敷いているこの学校には、一つだけその条件を満たす組織がある。

 

「行政部の意見はわかりました。ですがなぜ我々が連邦生徒会へ? 正義実現委員会は武を司る機関です。行政部のように政は得意とは言い難いですが」

「武を司るからこそ、です」

 

 故に行政部は、正義実現委員会に白羽の矢を立てた。

 ハスミの問いかけに、行政部の生徒はそう説明した。

 

 だがトリニティ生徒はこの程度では()()()()()。そこから何かを搾り取れるように策を練るのがトリニティ流(ブリカス)である。

 もちろん例にもれず、行政官はしっかりその案を練り上げていた。行政部の生徒は、そのことをハスミたちへ説明するために、この前トリニティで起きたテロの現場写真と被害報告書をツルギたちへ手渡した。

 

「先日のテロはご存じですよね? あの時かなり大きな範囲で爆発があったのを覚えてますか?」

「えぇ、もちろん。現場に私たちも臨場してましたから」

「あの爆発で、多くの生徒が内蔵に損傷を受け、さらに気道のやけどが見られるなどしていたのを覚えていますよね。あの不自然な爆発に、我々も詳細に調査したのですが……状況から見て、おそらく()()()()()()()()()が使われたと判断しました」

「ッ、サーモバリック? 条約で禁止されてるはずでは」

 

 サーモバリック爆弾は、爆発により瞬間的な圧力差や瞬間的な酸素の燃焼でダメージを与える爆弾で、ヘイローがあろうとも条件が悪ければ死に至ることもある。それゆえ、連邦の条約で製造が禁止され、キヴォトスには存在しないはずだ。

 

「ハスミさんの言う通り、今の連邦では禁止されているものです。ですが今回、明らかにそれが使われた形跡がある」

「そんな……」

「カヒャァ……違法武器が出回って治安の悪化を招いている、か。これを、連邦には報告したのか?」

 

 ツルギ、ハスミ両名はその報告にすぐにでも捜査に乗り出したかった。このトリニティで、違法武器を製造している集団がいるのだ、これから第二第三の事件があってからではもう遅い。治安を守り、正義を実現すると誓った二人にとって、違法な非人道兵器であるその存在を許せるわけがなかった。

 だが、行政部は違った。

 

「この件についてなのですが、ナギサ様より、この件で連邦に揺さぶりをかけるように、と指示がありました」

「キヒャァ……揺さぶりをかけるだと、この状況で?」

「あぁ、剣先委員長、勘違いされたら申し訳ないのですが」

 

 行政部の生徒は慌てて発言を訂正し、資料を示しながら説明する。

 

「連邦捜査部の権限は強力ですが、それはあくまで連邦規則に基づくもの。行政命令だけではわかりませんが、恐らく権限の行使には様々な条件が掛けられているはずです。ですが、それが違法武器や治安の改善であれば、恐らく連邦生徒会も動かざるを得ない話になります。ナギサ様は、そこを利用せよとのことです」

「……条約違反の兵器を共同で捜査する、その関係を作りに行けということですか?」

 

 ハスミは行政部と、そのトップであるナギサの意図を違えることなく把握した。それは声にも出さないが、ツルギも同様に理解していた。

 

「最終的には、そうなります。ですが最初からそのような関係を作るのは無理でしょう。ですが何らかの形で接触はしておきたい。ゆくゆくは捜査、そして連邦捜査部の部員として繋がりを作りたいのです。それに、まだ詳細が出てない以上、情報は早めに欲しい」

 

 二人はそれに押し黙る。

 

「行政部、及びティーパーティーはこれが最善だと判断してます。故に、お二人にこうして相談させていただいた次第です」

「……委細承知した」

 

 ツルギはしばらく考え込んだ後、静かに了承の意を示す。

 

「行政部が判断したのなら、それに従う。今回はハスミに行ってもらおう。交渉事なら向いているし、副委員長なら肩書も申し分ないはずだ。私は暴れるのは得意だが、話すのは苦手だ」

 

 ツルギは静かに言葉を発する。普段の狂気はひそめ、そこには委員長としてのツルギがいた。彼女は狂暴な一面もあるが、こうして冷静に判断するだけの理性や判断力も持っていた。

 ツルギはトリニティを取り巻く状況を正しく理解していた。確かに連邦捜査部は怪しいが、それ故に見極める必要がある。テロの件も心配ではあるが、トリニティの今後の未来を守るのも、また自分たちの役目だとわかっていた。

 

「頼むぞ、ハスミ」

「わかりました。ツルギが決めたのなら、我々は従うまで」

「ありがとうございます。必要なものがあれば、いつでも行政部に」

 

 そうして3人は席を立ちあがった。明日に備え準備をするために。

 

 

 

 

 

 

 こうして準備は整う。着実に、世界は動きを変えようとしている。

 

 あるものは言葉で、あるものは知略で、あるものは力尽くで。

 様々な思惑と想いが一つの部活を巡りまわっていた。

 学園都市はまだ沈黙を保つ。だがすぐそこに臨界点は迫っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願いします、先生。キヴォトスを、皆さんの未来を」




「先生が登場するといったな」
「そうだ作者、早く先生をだs」
「あれは嘘だ」
「うわあぁぁぁぁぁ!!!!」

ということで次回登場です。



現在の状況
●連邦生徒会
早く先生来て!!サンクトゥムタワー取り戻して!!!!

●各学園生徒会
連邦生徒会何にも言わねぇし何にもしないじゃん! 連邦捜査部?そんなのいいから早く事態を収拾しろよ!
でもあの権力は欲しいな……取り込むか。
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