ブルーアーカイブ―連邦の活動記録―   作:一般連邦職員

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Q. 投稿が遅かったですけど何かありましたか?
A. お仕事ですわ~!おファックですわ~~~!(お嬢様部)


もう一つの戦い

 

■ え お ●ライブ
た せ ろ れ だ■

緊急ライブ 連邦捜査部前の様子

○クロノススクール報道部公式そ

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65,302人が視聴中 12分前にライブ配信開始

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上位チャット▽
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○にとりる なんぞこれ?

○アヤカ クロノスジャーナルの生配信とは珍しいですね

○mimimi 音声無いですけど

○謹慎中なんかめっちゃ荒れてるけど何処のやつ?

○しゅわレモン まってあれワカモじゃね?

○haru 着物の改造制服にしては特徴的やけどがれきとかでみえない

○珈琲こねこ 今近くで爆発してなかった?カメラマン大丈夫?

○ru_na014 なんの配信かわからんがだいぶヤバそう

○お茶を海に流し込め 結構やばめの事件じゃないこれ

○うさぎ小屋 急に伸びだしたけど誰かミラーした?

○白い平原 つぶやいたーで広まってるっぽい

○さくら なになになにどうなってんの???

○maki. ワカモ?!?!?!

○furu_ita ホントだワカモがいる

○星空マリン☆彡 脱獄犯だ捕まえろ!

○うめちゃん えぇ…知らない、こんなD.U.知らない

○連邦の管理職犬 しれっとワカモ出てくるのは流石にレギュ違反だって

○スイーツたべたい いやまってビル倒壊してんじゃん、なんでクルセイダーがいるのよ

◯naka_chan 不良に戦車やら銃弾渡した馬鹿は何処のどいつだ!

◯那珂ちゃんのファンです 何かしらのロゴの部分を思いっきり黒で塗りつぶしてるから強奪したんやろ

◯梅干しカカオ あぁービルが倒壊していく、街が燃えていく

◯エラ姉さん 衝撃波でカメラだいぶ揺れたな、これ撮影者もだいぶダメージでかくないか

◯Vanilla_ice そもそもやってることの規模がおかしいんだよ

◯フライング・スパゲッティ教徒 破壊というよりか焦土

◯ファン一号です うおカメラマン近づくんかよ大丈夫か

◯佐々木こじろう うわああ火が

◯TS悪役令嬢 カメラマン無事?

◯ねこねこ丁督 うわなに、土煙でわからん

◯紅茶はミルクインファースト おいなんか人いたくね?

○KUZIRA ここ知ってる。D.Uの外殻あたりじゃない

○あ KBCでも中継始まってる。場所は外殻地区らしいけどここなんかあったっけ。ここら再開発指定地区だから過疎ってるイメージしかなかったけど

○田中ネコ おん? 何だあれ、誰か戦ってるっぽいけど

○パグおじ ファ⁉ なんでうちの会計が居るんや? セミナーやろなんで???

○鶏頭 でかいスリット入りの黒制服と黒い羽、うちの正実副委員長にめっちゃ見えるんですけど

○パンジャンドラム ミレニアムとトリニティの役員クラスが揃って何してんですかね……

○スギ花粉を燃やせ あの銀髪と馬鹿眩しい閃光は間違いなく彼女ですね。いや役員だけじゃなくて自警団がなぜそこにいるんだ

○アイスマン その後ろのでかいバックもった奴はゲヘナの風紀委員だぞ

○小麦 つまり三大学園の重要メンツ揃ってるってことだけど何事?

○M.T ワルキューレじゃなくて生徒会の役員連中がなにしてんだ

○のまネコ それならあのスーツの人だれ?

○カフェイン中毒 なんか居るな。民間人かな

○純米大吟醸 ヘイローないしキヴォトス外の人か? 流石にこの修羅場は死ぬんじゃないか

○エビフライ定食 キヴォトス生徒でも逃げ出すレベルの戦闘に身一つでいるのは自殺行為だって

○おもち 人質の救出作戦か?

○カカオ豆 たぶん違うと思うんだけどなんか妙な人選してるよね、生徒会の偉い人らばっかり

○真空 一応風紀委員がいるとはいえなんかめっちゃ強くね、ワカモ相手に押してるぞ

○りく 生徒会の会計がなんでタンク張れてんのかよくわかんない

○maru_maru は?いま戦車の装甲抜いたくね

○スミス なーんでボトルアクションライフルで戦車の装甲が抜けるんですか

○Zhangsa 張三 やっぱり生徒会はやばい連中の集まりじゃないか……

○ぽめらにあん 特記戦力とかいう連中はさらにその上を行きますが

○マキシマム あぁーやだ怖い!

○akane43 まって急に音くんな

○HOS うお眩し

○だらだら 耳が逝かれた

○けもみみもふり隊 急に音声復活せんでくれよ

 

 

 

 

 

 

 

―――8時49分 D.U.外殻地区 オオナミ街道

 

 

 

 大通りを戦車の隊列が通り過ぎていく。

 ところどころ何かを隠すかのように黒塗りにしているそれらの後ろを、さらにバイクやピックアップトラック、そしてなぜか大型のダンプなどが数台ほど続いていく。

 

 人気のない街に唸りを上げるエンジン音が響き渡る。時々歩道や路側帯を無視しながら突き進むその横を、一台の自転車を必死に漕ぐ生徒がいた。

 

 その手には取材用に借りてきた小型カメラが握り締められ、走りながらも撮影を継続するという器用な技を用いながら追跡していた。

 

「はぁ、はぁ、ちょっとはえぇよ!」 

 

 山田ナオは日課の散歩(取材)で偶然遭遇した車列を追っていた。

 

 この山田とかいう記者、時折こうして職務を放棄し街を徘徊する悪癖がある。

 彼女は編集部の中でも一目置かれる存在ではあるが、それはこの放浪癖と天才的な第六感によって支えられている。

 つまるところ、彼女は直感でシャーレを襲撃する不良集団、その本隊を引き当てたのだ。

 

「何処までッ! いくんだこれ!」

 

 そんなことはつゆ知らず、彼女はブレーキもチェーンもキーキーと音を鳴らすぼろぼろの自転車で戦車隊を追いかける。

 

 健脚であることは記者の必須条件だ。出来事の全ては現場で起きており、事実は必ず痕跡を残す。それが少しでもあるのなら跡を辿り、見つけ出してそしてその全貌を明らかにするのが彼女の矜持であり、報道部員として譲れない精神だ。

 

 通りを突き進むその車列の向こう側で、何かが起きる。

 

 そんな予感を感じた彼女はさらに自転車を加速させ―――

 

「あ、やべ、あ待って待ってやばいやばいやばいッ!」

 

 戦車が目の前を通過していく。歩道を削り、街路樹をなぎ倒しながら突き進むそれを避けようとブレーキを握る。渾身の力で握りしめるそれに、自転車が悲鳴を上げながら地面に倒れ込んだ。

 体が地面に叩きつけられた。全身に痛みが走る。

 

「いッつ……」

 

 視界を地面が覆いつくす。一瞬の出来事だ、三半規管や脳の理解が追いつく前に体は地面に激しく投げ出され、関節が軋みを上げる。いくら頑丈なキヴォトスの人間でもこれは痛い。

 

 追い打ちをかけるように世界が震えた。

 重たい砲弾の音と、激しい発砲音。聞き慣れている筈のそれは、ナオの心臓の鼓動を早くする。

 

「なんだよなんだよ、一体何があるんだ」

 

 それもそうだ、幾ら頑丈なキヴォトスの生徒でも一発弾を受ければ相当痛い。

 そんなのわかっている。本能的に避けようとする体を、理性で抑えるなんて無茶が押し通るほど大人でも、強くもなかったのだ。

 

 逃げろ、と体は訴える。だけどそれを己の意思で押し通す。

 

 記者である事を選んだのは成り行きだったし、好きなように選んだ結果だけれども。それでも選んだ道に恥じるような生き方はしたくなかった。

 山田ナオは再び駆け抜けていた。

 次から次に押し寄せてくるその集団やよくわからない低空飛行をするヘリに姿を隠しながら必死に自らの拠点へと足を向ける。

 

「はぁ、はぁ、とりあえずついッ」

 

 角を曲がり、戦車の横をくぐり抜けるように走るが、近づけば近づくほど状況はカオスになっていく。

 

 そこは既に瓦礫の山だった。

 

「―――ッ」

 

 声にならない叫びが漏れる。ナナミは、リオンは何処にいる?

 ビルの跡地は既に瓦礫の山と化し、風に煽られ舞い上がった土煙に消され何も見えなくなった。

 

「ナナミ!リオン!」

 

 その叫ぶ声は、轟音の中に消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

―――9時30分 D.U.外殻地区 ライオン第二ビル跡地

 

 

 目が覚めた。

 その瞬間に感じたのは、全身が何か重いもので覆いかぶされていることだった。

 そして次に鳴り響く、キーンと耳鳴りを繰り返す聴覚と、乱れて霞んだ視界と、車酔いのような気持ち悪さ。次第に全身から鈍く伝わる痛みや刺激が、まだ自分が現世にとどまっていることを教えてくれた。

 

「いっ……」

 

 意識が覚醒していくにつれて、復活してきた全身からの感覚が伝わってくる。

 痛みと、熱。おおよそ普段は感じることのない異常な感覚に、全身から一気に嫌な汗が滲み出てくる。どうにか動くようになった腕で、自分の上に覆いかぶさっている何か重いものを必死にどかそうとする。

 

「おー、い。リオン、いる……のか」

 

 自分の声がうまく出せているのかもよくわからないままに、直前までいた同僚の名前を叫ぶ。いまだに耳鳴りが酷く、聞こえずらいが、くぐもった声が自分の中で反響していたのを感覚した。

 

「リオン、おーい、リオン!」

 

 滲む視界が徐々にクリアになってくる。耳が次第に感覚を復活させてくる。

 そんな体で周りを見渡せば部屋は散々な有様だった。窓ガラスは割れ、周りの機材は散乱し、部屋の半分は既にぼろぼろに崩れていた。破壊された部屋の中はもうもうと埃や煙が立ち込め、瓦礫と破片の中に、自分がいた。

 

「なぁって、どこにいるんだよ」

 

 感覚が戻ってきた。手が動く。腕も大丈夫だ。足も、たぶん大丈夫。運(・)よ(・)く(・)五(・)体(・)満(・)足(・)で(・)助(・)か(・)っ(・)た(・)。

 でもリオンは? 同じ部屋にいたはずだからきっと何処か近くにいるはずだ。探さなくては。だ(・)か(・)ら(・)体(・)の(・)上(・)に(・)乗(・)っ(・)か(・)て(・)い(・)た(・)も(・)の(・)を(・)押(・)し(・)の(・)け(・)よ(・)う(・)と(・)し(・)た(・)。

 手で押したものが、柔らかく動いたのを感じた。

 

「なんだよ、これ」

 

 手に何かが付いたのを感じた。それはどす黒く、ほんのり暖かい何かだった。

 視界が徐々に晴れていく。

 偶然なんかじゃない。きっとそれは必然だった。手が震えた。怪我をしているわけじゃないはずだ。でもなんだか、とても怖い。

 瓦礫を払った。ガラス片や瓦礫に引き裂かれた見覚えのあるジャケットがそこに在った。

 

「……あ、なん、で」

 

 そこにはヘイローが消えたその体が力なく横たわっていた。目を閉じ、瓦礫や埃にまみれたリオンの姿があった。

 

 血の気が引いた。体の奥底から熱が引いていく感覚があった。

 何かが飛んできた音がして、そして何かに突き飛ばされたのが、最後の記憶だ。

 

「リオン、なぁ、リオン!!!」

 

 思考が回る。状況が一気に視界から脳へと伝わっていく。導き出される答えは一つだ。

 己の為に、自分自身を犠牲にして、リオンはここに倒れていた。

 いくつもの現場を駆け回った、辛いことも、苦しいこともこいつとバディを組んで這いずり回ってきた。それなのに。

 ぐったりとして動かないその体が、思いのほか軽く細い体躯に、何をすればいいのかもわからない。だから、何もできなかった。

 

 突如、ぴくりとその体が動いた。

 

「……なんだ、うっさい……わめかないでくれ、頭が揺れる」

「あぁ! よかった、リオン!」

 

 その体にヘイローが浮かび上がった。

 だけど彼女が生きているそれだけで、ほかには何もいらないと思った。その安堵も喜びも、ヘリの音と、何処かでなり続ける砲撃によってかき消される。

 

「何、また何かくるの」

「……ナナミ、カメラだ」

「え?」

「カメラを持て、それとマイクもどっかにあったろ、車にも積んでいたはずだよ」

 

 いまだ晴れきれない視界の中を、リオンは瓦礫から這い上がり、覚束ない足取りで、でも何かを探すように立ちあがる。

 そばに落ちていたカバンからカメラを取り出した。耐衝撃性のバッグはカメラを無事に保護していた。電源を入れ、使用が可能であることを確認して、リオンはカメラをナナミに押し付ける。

 血濡れになった手を乱暴に服で拭い取り、頭から今なお血を流しながらも、その目はナナミを射抜くかの如くに輝いていた。

 

「まって、何をするの?」

「取材だよ。今の状況、報道しなくてどうする? 私らのやることは何だ?」

「でも血がッ!」

「それがどうした? 動けるなら、シャッターを押せるのなら問題ない」

 

 ぎこちなくも出血部位をハンドタオルで縛り付けながらリオンは現(・)場(・)を見据えた。

 

「なんで」

 

 ナナミはそう問いかけた。いまだ腰が抜けて立てない彼女が縋り付くようにリオン手をつかんだ。リオンはその手を、うまく力が入らないその手を振り払うことはなかった。

 

「……それは」

「リオン! ナナミ! 大丈夫か?!」

 

 声のする方を見た。

 瓦礫と砂埃の中、ジャケットを翻し、いたるところをぼろぼろにしながら走る姿が見えた。

 

「二人とも、無事やったんやな! ……リオン、血が」

「ナオ、私たちはやれるよ」

 

 駆けてくる山田の声に、リオンは被せるように言葉を返した。ナナミとナオが驚いた顔をしてリオンを見つめた。

 

「チーフ、これを逃せない。私たちの任務、今が果たすときだ。違うか?」

「それなら私一人で行く。ナナミ、リオンを連れて……!」

 

 砲弾が近くに落ちた。地面が揺れ、空気の震えて体が倒された。

 土埃が舞い上がる。街はその姿を変えてしまっている。

 

「ナナミ、リオンを連れて行って、私でもやれるから。早く!」

「大丈夫だ、私はこうして立てている! ナナミの方こそ―――」

 

 リオンはそう言って、膝を地面につく。

 

「クソッ! なんでだ……なんで、足が!」

「バカッ! 無理するんじゃないよ! もういいんだ、カメラを貸して!」 

 

 既に血液が大量に零れ落ちている彼女は既に限界だった。いまだ止まらぬ血液と共に力が抜け落ちていくようだった。

 

「すまない、ナオ……」

「いいんだリオン……ナナミ、立てるか?」

「もう大丈夫、このまま行ける」

 

 彼女たちの腕には「報道(PRESS)」と書かれた腕章が巻かれていた。

 逃げることは出来る。むしろ推奨される。それでも彼女たちはカメラを手放さなかった。

 それがカメラマンの、報道部の意地であり、何をかけてでも守りたい矜持だった。

 

「ナオ、気を付けて」

「あぁ、ナナミ、リオンを頼む」

 

 そう言って、晴れない視界の中をナオは走った。

 

 事件は現場で起きている。だから彼女たちは立ち上がる。

 現場の中で、その嵐の中を進むために。

 

 

 

 

 

―――9時43分 D.U.外殻地区 防衛室消防局 東部広域防災センター

 

 

「情報は?! ヴァルキューレの動き確認して!」

「業務地区全体のガス、電力供給は全て停止しました! 国道の通行状況はどうなってるの!」

「被害状況の把握は? 崩壊した建物も多いから消防団は近隣自治区にも声かけて応援出してもらって!」

 

 連邦生徒会の出先機関の一つである防災センターは、普段の閑古鳥ぶりが鳴りを潜め、周囲の状況からは考えられないほどに厳重な警備と支援体制が敷かれていた。集まった行政官はあちらこちらで忙しなく動き始めている。喧騒は収まる事なく、伝えられる情報を処理するだけで手一杯だ。

 建物の中の一際大きな会議室はテーブルを真ん中に集め、周りにはいくつものテーブルでスペースが作られており、簡易の指揮所のような様相を呈していた。

 

 中央に置かれたテーブルの周りには、白い制服を纏う人物が地図を睨みつけていた。

 

「リン代行、状況が出ました。連邦捜査部は四号交差点まで前進、シャーレのビルまで300m地点です。それと、西側からヴァルキューレ警察学校の第二機動隊が、後ずめで首都警が特機隊を一個中隊を出して支援にあたるそうです」

 

 リンの横に控えた行政官がテーブルに広げられたオーバーレイと呼ばれる透明なフィルムに書き込みながら説明する。

 

「無理言って近隣自治区の治安部隊も出動を要請しましたが、これらも到着は早くても午後、主力は夕方近くになると思われます」

 

 そうして部隊を示す駒が地図に置かれる。そうして最新の状況が書き込まれた地図は混沌としていた。

 敵であるヘルメット団の戦車や武装勢力の破壊範囲は時間を追うごとに広がっていき、それを抑えるヴァルキューレ警察学校や治安部隊は押され気味だ。

 

「相手は戦車で武装しており、我々の火力は不足気味です。何せ急なことでしたので、部隊も即応出来るものは少なく、招集も交通混乱により戸惑っています。相手はあ(・)の(・)ワ(・)カ(・)モ(・)ですし、同時多発的なテロも警戒する必要があります。我々もそれなりの勢力で当たらなければ壊走するしかなくなるでしょう」

 

 リンは鋭く地図を眺めた。赤く埋め尽くされた範囲は都度更新され、その範囲は大きくなっていく。最悪、戦線を後退させ、半ば潰れた状態でワカモたちを迎え撃つしかなくなる可能性もある。

 

「指揮はいま誰が?」

「連邦捜査部は先生が直接。ヴァルキューレ警察学校と首都警は共同警備を敷いているとのことですが、足並みは乱れています」

「負傷者の状況は?」

「市民を含め多数、消防本部の救急車では搬送が足りず、広域応援を保健室で調整かけてます。受け入れは出来るとのことですが、搬送に手間取っており、近隣消防の到着も夕方以降になるかと。やはり人員が足りません」

 

 状況は最悪に近い。そして打てる手は少ない。今のD.U.は限りなく追い詰められていた。

 リンは軽く頭痛を訴える頭を軽く振り、そして目を閉じる。今は少しでも余計な情報はカットしたい。

 

「会長なら……いえ」

 

 無意識のうちに呟いてしまったそれを、意識的に飲み込んだ。代行という重責の代償からか、時折リンは会長ならどうしていただろうかと自問自答する。

 キヴォトス数千の学園、その代表者であり、舵取りを行う責任者としての地位をなんの準備もなく受け取った彼女は、その職責と重圧に潰れることはなかったものの、確実に彼女の何かを削り取っていた。

 

「……はぁ、まったく儘ならないもの、ですね」

 

 リンは優秀な行政官だ。だが行政官として優秀であることと、トップとして優秀ということはイコールにはならない。豊富な知識と経験があっても、それを活用しうまく使うのは並大抵のことではない。さらに時局を読み、各学園のトップの意向や外交、調整となれば選択肢だけで無数の答えが導き出される中、常に最適解を探り出し、決断し具体的に行動にすることが出来るのはほんの一握りだ。

 故に、失踪した連邦生徒会長は超人と呼ばれたのだ。恐らく不可能を可能にしてしまったという点において、あの人物は歴史上に名を刻む傑物だったといえるだろう。

 

 リンはあくまで一介の行政官であり、その本質はあるべきところにあるべき人員を配置し、マネジメントすることだ。リーダーとして求められるスキルとは全く異にするもの。

 だが、なんの因果か代行に収まってしまった今、キヴォトスの舵取りを決めることが出来るのは自分だけだ。その責任を背負い、導かなければならないのは、この私だけなのだ。

 周りでは行政官が走り回っている。己の職責に従い戦っている。そして出来る事をしている。行政官という仕事は、足りなかった、あと一つ及ばなかったという言い訳が通用する仕事ではない。

 その思考を切り裂くように声が響く。

 

「東部方面隊より入電、その、どうも、連邦生徒会本部に集結していた有志学生が、連邦捜査部付近で戦闘を開始した模様です!」

「何ですって?」

 

 もたらされた状況に周囲の行政官は一気に顔を青くする。そんな気持ちを代弁するかのように無線はがなり立てている。

 

「情報は現地の消防から、どうやら我々の後を付いてきたようです。装甲車や戦車もいるようで、烏合の衆ながらも勢力は大きく、北側のヘルメット団をせん滅しつつあると」

 

 戦力としては申し分ない。有志学生たちも戦力として考えるなら、まさに今の状況は好機といえるだろう。それが指揮下にある部隊であったのなら。

 リンを含めた周囲の行政官の表情は硬い。

 

「しかしながら、武装集団と乱戦に陥っているようで、戦況はまったくコントロールできていません」

「……最悪の想定ですね」

 

 指揮下にない戦闘集団は、こうした複雑な状況においては同士討ちや更なる混乱、そして被害を拡大することにもなりかねない。慌てたように飛び出していく行政官を尻目に補佐官の青山が小声で近づく。

 

「代行、動画サイトで現地の映像が流れているようです。こちらを」

 

 そうしてテーブルに置かれたスマホの画面から、激しい爆発音や銃声が響きわたる。土煙や砂埃、衝撃により画面が揺れ見やすくはないその配信には複数の生徒の姿が映っていた。

 その生徒はミレニアム、トリニティ、そしてゲヘナの行政官や生徒会の生徒たち。先ほどの連邦生徒会本部で抗議に駆けつけていた者たちだ。人手不足故に、先生と共に連邦捜査部へ向かってもらったのだが、本来であれば違っても最前線で戦闘をするような人物たちじゃない。

 下手にやる気を出してもらっても、この状況は非常にまずい。

 そしてさらにその場に居てはいけない、スーツ姿の先生を見かけリンは血の気が一気に引くのを感じた。

 

「まってください、まさか、今連邦捜査部の目の前にいるのですか?!」

 

 思わずといった様子で、リンは訊ねる。

 

「……恐らく。映像を見る限り、周囲は壊されていますが、あのガラス張りのビルはシャーレと思われます」

「……まさか、こうなるとは」

 

 本当かよ、マジか、どうするんだ、と周りの行政官が思わずと言ったようにざわつき出す。

 絶句、驚嘆の声、或いは呆れたような溜息。さもありなん、先生は銃弾が飛び交う中を何(・)一(・)つ(・)防(・)ぐ(・)物(・)な(・)く(・)突(・)っ(・)込(・)ん(・)で(・)い(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)の(・)だ(・)か(・)ら(・)。恐怖を感じないのか、あるいは余程こういった状況に慣れているのか、我々の心配をよそにその中継配信は淡々と情報を伝えていく。

 だが、そうしているうちに、画面は再び衝撃を映し出した。

 

「まさか、そんな」

 

 誰かがそう呟いて、画面に視線が集まる。

 爆発の砂埃が晴れると同時に現れる、特徴的な狐面と、改造された着物を基調とした制服。息を飲むのが聞こえた。騒めきも、声も今だけは皆がそれを飲み込んだ。

 忘れもしない、昨年散々暴れまわった挙げ句、SRTによって逮捕された凶悪犯。

 

 曰く、略奪と破壊が趣味。

 曰く、一人で街をワンブロック破壊し更地に戻した。

 狂気としか思えないそのあり方は、神秘ではなく恐怖を集めるその姿は―――

 

「狐坂、ワカモ……」

 

 誰かが思わずといった様子で呟いた。

 溢れんばかりの神秘で満たされたヘイローが怪しく輝く。禍々しい光を放つそれに画面越しにもその圧力を感じ取る。

 

「これは……もう、撤退するしか道はないのでは」

「リン代行、ワカモ相手に我々が勝つことは難しい、今すぐ増援を」

「カヤ室長につないでくれ! 今すぐ主力を集めろ!」

「無理だ、SRTも廃校にしてしまった以上ワカモを捕まえるなんてそんなこと出来ない!」

「リン代行! 我々はどうすれば……リン代行?」

 

 軽く混乱が引き起こされた中でも、リンはただ一人、地図を冷静に見つめていた。

 その視線の先には、赤く塗りつぶされた範囲に一筋の光が入る様に一本の線が引かれていた。それはまさに連邦捜査部の先生が突き進んだ道筋だった。

 

「会長が特別に指名した人とのことでしたが、まさかここまでとは」

 

 リンは静かに嘆息する。連邦生徒会長も大概に常識の枠を超えた人だったが、その指名した人物もなかなかの傑物なようだ。

 人一人が携行できる弾薬に制限がある中、あの勢力相手に戦い続けたのは驚嘆を通り越して奇跡に近い。映像を撮り続け、配信し続ける人物が誰だか知らないが、その同時視聴者数はどんどん増え続けている。

 

「もしかしたら、先生なら……」

 

 リンは小さく呟いた。もしかしたら、先生ならワカモを倒すことが出来るかもしれない。そんな、淡い期待のような、それでも現状ほぼ最善手のような選択。

 だが、青山補佐官は思考に沈むリンをじっと見つめていた。彼女だって行政官だ。その最善手が恐らく一番、正解なことに気づいている。だからこそ、青山は静かに告げる。

 

「代行、先(・)生(・)は(・)生(・)身(・)の(・)人(・)間(・)で(・)す(・)。(・)私(・)た(・)ち(・)と(・)は(・)わ(・)け(・)が(・)違(・)い(・)ま(・)す(・)よ(・)」

「……わかってます」

 

 先生という存在はまさにワイルドカード。その効果は凄まじい

 だが、それはあくまで生(・)き(・)て(・)い(・)れ(・)ば(・)の(・)話(・)。先生は生身の人間であり、銃弾を少しでも受ければ、その命は消えていく。

 命のやり取りを前に、先生を頼り切るわけにはいかないのだ。

 

「わかっていますよ、青山さん」

 

 覚悟も、能力も、何もかも足りない。そして手腕も足りず味方もゼロに近い。だとしても。

 それでもリンは、前に進むために、この状況を何とかするために決めなければならない。

 例えそれが己の力量を超えるような、不可解な問題でも。

 生きるために、皆を生かすために。連邦生徒会長代行は、このキヴォトス一の巨大組織の舵取りをしなければならない。それはリンに課せられた義務であり、そして曲がりなりにも代行と言う立場を受け入れたリンに対して与えられた試練でもあった。

 

 リンは目を開く。それと同時にコンバットブーツが床を叩く音を認識した。数々の足音を聞きながらも、細長い耳はその特徴的な足音を捉える。

 リンが顔を上げると、人波をかき分けるかのように、或いは人がその人物を避けるかのように、一人の行政官が足を進めてくる姿を見つけた。

 

「リン代行」

 

 中央の、幹部が揃ったテーブルを前に立ち止まったその人物は抜き身の神秘を隠すことなく剥き出しにして、そこに立っていた。

 リンはそこに荒々しい感情を感じ取った。ワカモとはどこか異なる神秘の圧力に、彼女の経歴を脳裏に思い出した。

 

「扇喜財務室長より命を受け、財務室通商貿易産業局より風越上席専門官、及び係員14名只今現着しました」

 

 そういって敬礼を行うその姿は、白い標準的な連邦行政官の服装であるが、それを纏う彼女は一介の行政官とは異なっていた。

 抜き身の刃のような鋭い雰囲気。その感覚に、リンは身の覚えがあった。

 キヴォトスの生徒には皆ヘイローと呼ばれる神秘が浮かんでいるが、時折特にその神秘がとても強い生徒が生まれることがある。

 例えば、ゲヘナ学園風紀委員長の空崎ヒナ。

 或いは、トリニティ総合学園正義実現委員長の剣先ツルギ。

 ミレニアムサイエンススクールC&C、エージェント00(ダブルオー)、美甘ネル。

 それは彼女、風越ミユキも同様だった。

 

「貴官が己の職務を十全に発揮することを期待します。……思いのほか、早く来ましたね。風越さん」

「たまたまです。補給がちょうど終わったタイミングでしたから」

 

 風越ミユキ。財務室の行政官にして、先生と共に今回リンが用意した切り札の一つ。

 財務室 通商貿易産業局 火器爆発物・火薬管理部 強行捜査班―――通称公安6課。

 その役割は、不審な武器や火薬類の流通を監視し、要すれば摘発する連邦生徒会が持つ執行部隊。SRTが表にある武力装置であるのなら、彼女たち、公安と呼ばれるそれぞれは影の秘匿された暴力装置。

 連邦生徒会が広大なキヴォトスにおいて、法や規則、そういった正規の手段を用いることが困難とされるとき、或いは力が必要な時。SRTとは異なる形で正義を、世界を動かす特殊部隊、通称公安部の一セクション。強行捜査班はその中でも武闘派であり、現場に臨場し戦う執行部隊だ。練度はSRTのFOX小隊に迫るほどに高い。

 連邦直轄であり、リンが動かせる中でも最大の戦力が、風越ミユキという行政官だ。

 

「状況は聞いていますね」

「ええ、把握しています。連邦捜査部も、有志連合の件も」

 

 緩くウェーブがかかったウルフカットの髪が肩口で揺れる。物腰の柔らかな口調は淑女然としており、まるで良家のお嬢様にも見える。だがその鋭い目つきだけが、行政官という文民の地位にありながらも、実働部隊に引けを取らない執行官であるという彼女の特異性を端的に表しているようだった。

 一瞬視線が交わった後に、リンは地図に目を落としながら口を開く。

 

「あなた方も知っている通り、SRTは動かせず、ヴァルキューレの機動隊や各自治区の風紀委員では騒動を抑えきれない。連邦捜査部へ先生が着任したものの、戦力は足りず未だ混乱が続いている。このままでは、恐らく数時間もしないうちに我々は負けてしまうでしょう」

 

 リンは地図を指さしつつ、素早く頭の中で戦略を組み立てる。

 いまだにイレギュラーの有志連合、押されつつある生徒学生たち。

 一つだけ、この場で取れる選択肢がある。

 

「だとすれば、我々がとりうるべきはただ一つ。我々が自ら動くしかない。最早行政官であることや、文民であることも関係がありません」

「……それで、荒事専門の私たちの出番ですか」

「状況を見ても、相手が連邦火器管理規定に違反しているのは明白です。違法に流通している武器を回収し、検挙することは貴方たち公安6課の分掌する事案です。行動に問題はありません」

「そこはいいのです、代行。問題はそれがどう捉えられるかです」

 

 ミユキは鋭くリンを睨みつけた。

 

「諸刃の剣ですよ。濫用した力はいずれ我が身を削る……連邦生徒会公安部そのものがなぜ世間から秘匿されていたのか、貴方ならよくご存じのはずだ」

「それでも、やらなければならないのです。状況は切迫し一片の猶予もない。それは貴方もわかっているでしょう」

 

 ここで引いてはならない。既に分水嶺は超えてる。それはあの日、連邦生徒会長が失踪した日からそうだった。

 

「力のない正義に、無力な理想に意味はありません。だから、我々は勝たなければならない。それは実務的な問題です。理想などその後に好きなだけ語ればいい」

「その実務的な問題は、失敗すれば代行と私の首だけでは済まないですよ。私は良い、だが貴方はダメだ。その後のキヴォトスは、連邦は混乱に陥る。その責任と肩書の意味をわかっているのですか」

「……そんなの、わかっていますよ。だからこそ貴方が居て、私がいる」

 

 リンが俯いた先に、地図に乗せられた手があった。

 その手は小刻みに震えていた。ミユキはそれを見て溜息をつく。失望、或いは諦めか。二人の間には冷たい空気が流れている。

 

「代行は、あの超人と比べれば随分と弱いようだ」

 

 ミユキは冷たい目線を宿しながらリンを見つめる。その無味乾燥な視線の意味を、リンは視線の奥の感情をはかりかねた。

 

「トップとしてどうかは知らないが、私はまだ貴方がいい。少なくとも、無自覚な天才よりも、自(・)覚(・)を(・)持(・)っ(・)て(・)な(・)お(・)そ(・)れ(・)を(・)為(・)す(・)選択をする秀才ほうが、まだやりやすい……だから、仕事の話をしましょう、為すべきことをしましょう」

「……察しが良いようで助かります」

 

 視線が再び交差する。

 背負った肩書がリンを押さえつけている。だけどリンはそれを最大限に利用することを選択した。逃げれるものなら逃げてしまいたい。本当なら、もっと平和に過ごせたはずなのだ。だけどそれは叶わない。

 

「……代行、大丈夫ですか」

「えぇ、問題ありません」

 

 震える手を見て、補佐官が声を掛けた。だけどそれでも待ってはくれないのだ。選択するのは自分自身なのだから。

 顔を上げれば、ミユキは変わらず此方を見つめて指示を待っていた。だったらリンも、そうするのみだ。それがリンの、連邦生徒会長代行が為すべきことだから。

 だからリンは顔を上げる。後に鉄面皮と呼ばれる、その鋭い目と表情を顔に張り付けた。

 

「風越ミユキ上席専門官に、連邦生徒会長代行が継承する指揮権を持って命じます。財務室、強行捜査班は、各地に散らばる有志連合を統制し、北の武装集団のせん滅、及び連邦捜査部の支援を実施してください。あなた方への命令は最優先で処理されます。任務を遂行することを期待します。鬼(・)の(・)風(・)越(・)なら、ワカモも敗れるかもしれません」

 

 リンがそういえば、嫌そうに彼女は顔を歪めた。

 風越ミユキ。連邦生徒会の問題児、鬼の風越、トリニティの猟犬。泥濘の狼。

 物騒な二つ名が示すのは彼女の過去と、揺るぎない実績故だ。本人がそれを嫌がっていることも、消したがっているのも知っていた。だから、敢えてその名を口にした。この手の人間は、その程度では全く動じないものだと知っていたから。

 

「ご存じでしたか……ですがその名は捨てました。それに今はトリニティ生じゃない」

「構いません。所属や二つ名など些細なことです。ただ、我々はあなたの非凡な能力を必要としている」

 

 過去を捨て、或いは捨てることを強要された彼女にとって、二つ名は、自身を縛る鎖のようなものだろうか。リンには分からないが、ただ今だけはその鎖を利用させてもらう。狂犬のような獰猛さは見えないが、不気味な、底の見えない神秘が圧を強めたのを横目に、リンは補佐官が用意したインカムとタブレット、無線機をミユキに手渡す。

 

「先生との回線は繋がっています。現地での指揮は任せます。それと、あなたが必要と判断した場合、あらゆる措置を連邦生徒会代行のものとして執行することが出来ます。うまく使ってください」

「……いいんですかね、それ。烏合の衆に成功体験を与えては、勘違いしてさらにエスカレートすることにもなりかねないですよ。それは過去に証明済みでしょう」

「起きてしまったことは仕方ありません。しかし、それを看過して今を投げ捨てる愚を犯す必要もないでしょう。コントロールも得意なものに任せればいい。未来を創る前提を、今は掴むのが先です」

 

 リンは超人にはなれない。だが、幸か不幸か、リンには最善手を打ち出すだけの能力が備わっていた。それだけの知識があった。

 

「全力を尽くさなければならないのです。やらねばならないことを、しなければならない」

「……まぁ、私だって白制服を着ている身だ。代行の言いたいことも、やりたいことも理解している。だが保証はできませんよ。うまく立ち回るなんてこれまでできた試しがない」

「構いません。責(・)任(・)は(・)全(・)て(・)、(・)私(・)が(・)負(・)い(・)ま(・)す(・)。その為の連邦生徒会長であり、代行という職位なのです」

 

 そういえば、ミユキは観念したようにリンの目をまっすぐに見つめる。

 

「復唱します。強行捜査班は会長代行の命により、有志連合を統制し、北の武装集団のせん滅、及び連邦捜査部の支援を実施。必要な場合は会長代行の権限を持って必要な措置を行います」

「その通りです。退出して結構。それと後で話があります。全てが終わったらサンクトゥムタワーまで来てください」

 

 そう伝えると、ミユキは若干面倒そうに、しかし綺麗な敬礼をして去っていった。

 リンは震える手を握り締めた。

 例え、これで恨まれようとも、後ろ指をさされる状況になろうとも、キヴォトスのためなら何度でもその悪役になろう。幾らでもその咎を背負っていこう。それが行政官であり、この職務である。そのことを、リンは今初めて理解した。

 だから、代(・)行(・)として選(・)択(・)するのだ。それが引き受けた者の責(・)任(・)なのだから。

 

「誰でも構いません、防衛室と首都警に連絡してください。非常事態です、指揮権を整理、一時的に代行権限で自治区警察を統制します。直ちに、早く!」

 

 リンの声に、一瞬遅れて弾かれるように何人かの行政官が走る。

 

「それと人材資源室長も呼び出して。資源管理局長は青山さんの同期でしたね?」

「え、えぇ」

「給水車と燃料車、あと重機も借りれるだけ借りて来てください。それと防災備蓄倉庫も解放します」

「は、あの、えっと。それは?」

「緊急用の弾薬、及び予備銃器を使います」

 

 だがその咎を背負い、その精算をするのは全てが終わってからだ。それまでは、どんな手を使っても生き延び、この街を守らねばならない。

 

「統一された銃と弾薬で一時的にですが火力を増加させます。相手は数が多いです、とにかく数を揃え配布して。管理はこの際考えなくて構いません。皆さんは指示に従って。今すぐ動いて」

 

 連邦生徒会長、超人と謳われたあの人にはなれない。だが、それでもやらねばならないことがある。やれることはある。暗く、淀んだ空気に風が吹き荒れる。

 

「防衛部員は? いるのならすぐに呼んで! 交通室の人間も!」

 

 リンにはおおよそ、戦闘部隊を適切に配置し、運用する能力はない。知識として知っていたとしても、リンにそれを応用する能力があったとしても、この状況は余りにも複雑化しすぎた。

 

 だから、リンは頼った。

 出来ないことは、できる人材へ。人を適切に配置し、そして託すために。

 リンは託された。だから、再びリンはそのリレーを繋げる。

 

「頼みますよ、風越さん」

 

 そう呟く声は、会議室の中に消えていった。

 

 

 




指揮監督権
連邦生徒会長に付される、行政各部への指揮監督権。
法務大臣には検察官への指揮権を持つが、その法務大臣は内閣総理大臣の指揮監督を受けるので、実質内閣総理大臣が指揮権を持っているのと同じです。

公安6課(財務室 通商貿易・火器産業局 火器爆発物・火薬管理部 強行捜査班)
攻殻機動隊のあれ。だがここでは条約審議部ではないし中村部長はいない。人形使いもいない。メガテク・ボディ社はたぶんある。ロリになった素子はミレニアムあたりに居そうだな……
荒巻理凰は百鬼夜行あたりで青春満喫してほしい。

風越ミユキ
名前は官僚たちの夏「ミスター通産省」こと風越信吾から。
ブルアカを透き通った美少女青春物語とするなら、官僚たちの夏は暑苦しいインテリおっさんたちの汗と涙の物語。ひたすらに暑いです。
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