仮面ライダーオーズ10thIF 大罪と欲望の輪唱   作:大島海峡

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11.追跡と妨害と新たなる誕生

 火野映司が、消えた。そう比奈から連絡が入ったのは、後藤が財団を後にした直後だった。

 ついにはゴーダに乗っ取られたのか。あるいはそうなってしまう前に自ら離れたのか。

 それは問題ではない。

 あの男は必ず救う。それを奴自身が望んでいなくとも。如何なる罪咎があろうとも。

 

「……分かった。だが君も無理はするな。火野の、火野たちの帰る場所は、君の許だからな」

 狼狽える比奈を宥めすかし、後藤はライドベンダーを駆る。

 途上、里中より借り受けている新型デバイス、タカウォッチロイドを起動させて

「また火野を捜してくれ」

 と、端的に命じる。

 翼を広げて大空を舞い上がるそれは、程なくして何かを察知したようだった。迷いなく進路を取るそれに、後藤は地上から追従した。

 

 間に合ってくれ。そう念じながら、自身のビークルの後部座席に一瞥を呉れる。そこには、トランクケースが括られていた。

 

 だが、頭上を覆う影に気づき、慌ててブレーキを踏む。一個の怪人が大地に降り立ち、進路を塞がれた後藤はバイクを傾斜させて急停止した。

 眼前を、黒い皮翼が覆う。恐竜の頭部を模したマスクの下、人出会った頃の名残に当たる口元が、険しく引き結ばれている。

 

「それが、君たちの切り札という訳ですか」

 静かな物腰で問い掛けるその声は、間違いなく後藤の知るものだった。

「真木博士……伊達さんの言うとおり、本当に蘇ったんだな……」

 恐竜グリード。その人間であった頃の名を、奇妙な感慨と共に呟く。

 だが、今このタイミングでは会いたくない相手ではあった。

 

(いや、だからこそか)

 バイクを降りつつ、後藤は察した。

 だからこそ、彼は今ここに現れた。

 

「会長ならば、火野君の件でも何かしら対抗措置を備えているとは思っていましたが……やはり」

「……あんたには関わりのないことだ。どけ」

「火野君から生まれたグリードが全てを喰らう。それもまた、彼にとっても世界にとっても良き終わりの一つかと思いまして」

「ふざけるな! あんたまだそんな世迷言をっ」

 声を張りながら、後藤はバースのベルトを手にする。

 

「待った待った待ったァ!」

 そこに、割って入るように飛び込んできたのは、一人の男。

 両者もよく知る伊達明であった。

 

「伊達さん……」

「後藤ちゃん、こんなところで油売ってる場合じゃないでしょ? 火野のこと、さっさと救いに行かないと」

 首を後藤の方へと振り向け、屈託なく笑いかける。

 

「でも、大丈夫ですか?」

「心配ご無用! 俺も、会長に切り札、借りてきたから」

 そう言って彼は、また別のバースのベルトを抜き出した。

 それを見て、後藤は彼の自信の所以を知った。

 

 だが――正直不安は残る。

 ()()をもってしても、果たして恐竜のグリード相手にどこまで渡り合えるか。

 この人は、平然と虚勢を張る。堂々と嘘をつく。自分の言ったことを都合よく忘れる。今だって、へらへらと笑ってはいるものの、必ず太刀打ちできるとは思っていないだろう。勢い任せの見切り発車といったところだ。

(それでも)

 きっとうまくいく。なんとかする。不信と同等以上に、それだけは確信できる。

 

「……分かりました。じゃあ、この場は任せますっ」

 そう言い切って、ライドベンダーに跨り直した後藤は、タカウォッチロイドの追走を再開したのだった。

 

 ~~~

 

(何故)

 真木は無言で視線のみで問う。

 何故、今更立ち塞がるのか、と。

 

「――俺なりに、責任感じちゃいたんだよね」

 その問いに、伊達は自ら答えた。

 

「俺がドクターをちゃんと見てやってれば、繋ぎ止めていられたなら、あんたもそうならずに済んだんじゃないかってね」

「何を馬鹿な」

 一切の揺らぎなく、真木は伊達の懸念を否定した。

 

「私は、元よりこうなのです。誰のせいでもなく」

「……まぁ、あんたはそう言うだろうね」

 苦笑と共に、伊達は頷く。

 

「でもこれは、俺なりのケジメだ。ケリ、つけさせてもらうぜ――ドクター」

 そう言い切って、彼は会長より委ねられた、そのベルトを一息に腰に巻いた。

 

「その志は評価したいところですが、相変わらず人の忠告を聞くのは苦手なようですね、伊達君。バースのシステムはグリードに対抗できるようには出来ていません」

 セルメダルおよびヤミーの専門という設計思想上、何よりグリードと内通していた真木の思惑のため。

「いいや、ちゃんと分かってるさ」

 ――だが、それは十年前のことだ。

「技術ってのは進歩させてナンボだろ。だから、あんたの作ったモンも、残された人らの力によって、変わっていったんだ」

 そう言ってのけた伊達のベルトには、既存のそれの左端には、存在しなかったユニットが取り付けられていた。上下三枚のメダルが入るようになっているそれに、真木は軽い当惑の呼気を漏らす。

 

 そして伊達が取ったのは、セルではなく、コアの新型メダル。

 それらをまとめて宙へと弾き飛ばすと、その大きな手で握り込み、一息にそのユニットへと挿入する。

 

「変身」

〈エビ・カニ・サソリ!〉

 そしてグリップをゆっくりと回し、起動させる。

〈ババババース! バ・バ・バ・バースX! ソカビ!〉

 バースが謳う。その新生を謳う。

 青白い力場の中で、コアの輝きが閃く。伊達の姿を、物質化された鎧が覆う。

 さらなる増強が施された装甲に、濃淡入り交じる紫や水色のラインを奔らせた、新たなバース。

 それこそが、バースX。

 

「さぁ、十年越しの……お仕事開始だ!」

 重みを感じさせない軽妙な所作と共に、伊達はかつての友に突撃した。

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