仮面ライダーオーズ10thIF 大罪と欲望の輪唱 作:大島海峡
恐らく、実際に流れた時間はほんの数秒に満たなかったことだろう。
オーズの身体から、数多のセルとコアが、二つの塊に分かれて切り離された。
片方は、アンク。まず右手が顕現し、次いで人の姿を取り戻して地に捨て置かれた自身のベルトを拾い上げる。そして泥土の如く、映司から放たれたもう一方が、その中枢たる異色のメダルを剥き出しに戴いている。
「しめた! ヤツのコアだ!」
目敏くそれを認めたウヴァが、それを確保するべく飛び出す。
だが、伸ばしたその腕を、阻むモノがある。
それもまた、腕。メダルの山より伸び出た左腕である。
それはウヴァたち並み居るグリードを突き飛ばし、まだ起き切らぬ映司の身体よりベルトを奪い取るとそれに呼応し、塵芥の如く積もるメダルから、緑の三枚が浮かび上がり、ベルトに装着される。
『変身……!』
とメダルを震わせ鳴らし、言語としながらひとりでに浮き上がったスキャナがベルトをなぞる。
〈ガ~タガタガタキリッバ! ガタキリバ!〉
盛り上がったそのメダルの集合が人型の輪郭を帯び、やがては見慣れたオーズ――緑のコンボの姿となった。
そして同じ系統のウヴァを腕の鎌で斬り立てて押し返す。
「奴め……映司の
冷静に分析するアンクに、そのゴーダは紅き瞳に怒りを湛えたままに向け、
「アンク、よくもやってくれたな……!」
と屈辱と怒りに声と肩を震わせる。
「まぁ良い……再び映司を飲み込むまでだ! 貴様らと併せてなァ!」
そう叫ぶや、その姿が二つに分かれ、二つが四つに分かれ、無尽蔵に倍加していく。
そしてその中心にいる本体は、天へと掌を伸ばす。
すると、種々様々のコアメダルが、地面を突き破って沸き立ち、空より降り注ぐ。
そのメダルを掴み取ったゴーダの影たちは、思い思いに組み合わせ読み取っていく。
〈タ・ト・バ! タトバ、タトバ!〉
〈ガ~タガタガタキリッバ! ガタキリバ!〉
〈ラタラタ~ラトラーター!〉
〈サゴーゾ!! サゴーゾ!〉
〈シャ、シャ、シャウタ!! シャ、シャ、シャウタ!〉
〈タ~ジャ~ドル~!〉
〈ブラカ~ワニ!〉
〈プ・ト・ティラーノ、ザウルース!〉
〈シーガーゼシー! シーガゼシー!シーガーゼシー!〉
〈ムカチリー! チリッチリッ! ムカチリー! チリッチリッ!〉
〈サーラーミウオー! サ! ラ! ミーウオー!〉
〈ビーカーソ・ビカソ!〉
〈セイ、シロギン! セイ、シロギン!〉
そして新旧合わせての各色各種のコンボが、円陣を外向きに組むようにして揃い踏みする。
そして気圧されるグリード達に向かって、それぞれに猛攻に移る。そして蹂躙が始まろうとしていた。
「こうしちゃいられない……っ」
ワンテンポ遅れて、体勢を立て直した映司が歯噛みする。
いくらグリード達の同士討ちだとは言え、旧敵とは言え。
今回のウヴァ達は巻き込まれただけだ。そしてゴーダは己から生まれた、過ちだ。それは、己の手で正さねばならなかった。
「アンク! ベルト!」
ゴーダと、彼の生み出す惨状を睨みつつ凛と張った声で手をアンクへと差し出す。
ゆっくりと落ち着き払った、緩慢ささえ感じる所作で、王のベルトを握りしめたままのアンクは映司に首を向けた。
ただ、その眉間には皺が寄り、憮然とした面持ちで。
「――無い」
そして返答は、あまりにシンプル過ぎた。