仮面ライダーオーズ10thIF 大罪と欲望の輪唱   作:大島海峡

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4.ウヴァと想起と毒蟲の変身

「その欲望、解放しろ!」

 グリードたちが好んで用いるそのフレーズと共に、セルメダルを手に、虫のグリード、ウヴァはうろつき、暴れ回る。

 昨日の今日でインフラなどを復旧途中の現場。そこに踊り込んだ彼は、手当たり次第に近くの人間を捕まえながら、『苗床』を物色中だった。

 すなわち、より急速に、より大量にセルメダルを増産するヤミーを生み出すための。

 だが――

 

 作業員をわしづかみにしてヘルメットを剥ぐ。セルメダルをかざされた額には、その投入口が現れる。

 だが、それが己の手に持つ一枚が入るような大きさではないと知るや、舌打ちして地面に放り出す。

 

「こいつも外れか……! いったいどうなってる!?」

 苛立ちと肩透かし的な戸惑いで、ウヴァは巻き舌気味に呻いた。

 

 自分(グリード)たちが意識を無くしていたこの十年間、人間たちの欲望に何かしらの変質があったというのか。

 いや、そも変わったのは、人間の方なのか。

 

 ――器が小さく、力に抵抗するより屈する方が早い。

 ――暴走には打ってつけです。

 

 人間たちにメダルを投じようとする間際、その核より呼び起こされた言葉は誰のものだったか。

 

 もう要らない。何も求めないから、助けてくれ――!

 

 そう心の内で叫んだのは、何時ぞの記憶であったのか。

 

 まるで、これでは自分の方こそが……

 

(馬鹿な……! そんな訳があるか!)

 己の片隅に去来した念を、ウヴァは激しく拒絶する。

 

 噴水の枯れた広場に迷い出た彼。その段差の上に回り込んだ二台のバイク。そこから三人の男女が降り立った。

 

「来たかッ、オーズ!」

 先の懊悩を頭の内より消し飛ばし、ウヴァは勇躍し、彼らの前に立つ。

 

 〜〜〜

 

「後藤さん、みんなの救助をお願いします」

 オーズのベルトを自らの腰に定着させつつ、映司は並ぶ後藤に言った。

 対グリード戦では主力のオーズが彼らと対抗しつつ、バースはそのサポートに回る。それが常套の戦法である。

 

「悪いな、バースXがロールアップさえしていれば、病み上がりのお前を頼ることもないんだが」

 後藤は手ずからバースのベルトを巻きつつ、申し訳なさげに言った。

 新旧様々なコアメダルからエネルギーを抽出し、オーズに匹敵する出力を得た新型バース。それが完成出来ていれば、王に一蹴されることも、オーズにばかりグリードのような脅威を押し付けることも無くなるはずだった。

 だが、あと一歩というところで出力が安定せず、最終テストをパスしないらしい。そもそも、王との戦闘、最後の爆発を機として、紫を含めた大半のコアメダルの所在が分からなくなっている。

 

「大丈夫です、行けます……比奈ちゃんも、頼めるかな」

 映司の体調を案じ、強いて付いてきてくれた比奈に、映司はあらためて頼む。

 不安げだった彼女は、かすかに首を上下させると同時に動き出した。

 

「なんだ、タトバじゃないのか?」

 そんな映司を見ていた後藤が、ふと妙なことを口走った。

 一瞬、なんのことかと思った映司は、自身のベルトを見て言葉を失った。

 すでにそのその溝には、三枚のメダルが収まっていた。

 

 紫、黄、黒。ムカデ、ハチ、アリ。まるで色味の異なるそれらを、映司は挿入した覚えがない。

 そのことに、映司は少なからず動揺した。

「まぁ、虫には虫ってことか」

 特製のリストバンドよりセルメダルを抜き取った後藤は、そう呟いてバースのベルトにその一枚を放り込む。

「変身!」

 という掛け声と共に、右端のグリップを掌で一息に回す。

 

 カプセルに格納されていた装備(パワードスーツ)の一式が、後藤の身体を覆い包み、メタリックなバースの姿に変える。

 

「……変身ッ!」

 一瞬の躊躇の後、映司は未知のコアメダル達をスキャナーで読み取り、腕を交差させる。

 

〈ムカチリー! チリッチリッ! ムカチリー! チリッチリッ!〉

 色は違えど、ベルトが他と同じように、コンボを謳う。俯いた映司を、新たなるオーズの姿へと変える。

 コアメダルと同様の警告色に染まり、蜂の巣(ハニカム)模様の手盾とカタールが両手に備わる。

 

〈クレーンアーム〉

〈ショベルアーム〉

 セルメダルを連投した仮面ライダーバースの左腕に、重機のごときアタッチメントが組み上がる。

 それを大きく振るう。ワイヤーで伸び上がった巨大な腕が、瓦礫を掴み上げる。

 身を屈めた比奈がその下をくぐり抜けて、下敷きになっていたふたりの男性を「ふー……にゅっ!」という気合いの下に、それぞれの腕を掴んで一気に救い出す。

 

「――ふん」

 首筋に手をやり、頭を大きく左右に振ってから、後藤らを尻目に、『オーズ』はウヴァに向かってゆっくりと歩を進めていった。

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