仮面ライダーオーズ10thIF 大罪と欲望の輪唱 作:大島海峡
「その欲望、解放しろ!」
グリードたちが好んで用いるそのフレーズと共に、セルメダルを手に、虫のグリード、ウヴァはうろつき、暴れ回る。
昨日の今日でインフラなどを復旧途中の現場。そこに踊り込んだ彼は、手当たり次第に近くの人間を捕まえながら、『苗床』を物色中だった。
すなわち、より急速に、より大量にセルメダルを増産するヤミーを生み出すための。
だが――
作業員をわしづかみにしてヘルメットを剥ぐ。セルメダルをかざされた額には、その投入口が現れる。
だが、それが己の手に持つ一枚が入るような大きさではないと知るや、舌打ちして地面に放り出す。
「こいつも外れか……! いったいどうなってる!?」
苛立ちと肩透かし的な戸惑いで、ウヴァは巻き舌気味に呻いた。
いや、そも変わったのは、人間の方なのか。
――器が小さく、力に抵抗するより屈する方が早い。
――暴走には打ってつけです。
人間たちにメダルを投じようとする間際、その核より呼び起こされた言葉は誰のものだったか。
もう要らない。何も求めないから、助けてくれ――!
そう心の内で叫んだのは、何時ぞの記憶であったのか。
まるで、これでは自分の方こそが……
(馬鹿な……! そんな訳があるか!)
己の片隅に去来した念を、ウヴァは激しく拒絶する。
噴水の枯れた広場に迷い出た彼。その段差の上に回り込んだ二台のバイク。そこから三人の男女が降り立った。
「来たかッ、オーズ!」
先の懊悩を頭の内より消し飛ばし、ウヴァは勇躍し、彼らの前に立つ。
〜〜〜
「後藤さん、みんなの救助をお願いします」
オーズのベルトを自らの腰に定着させつつ、映司は並ぶ後藤に言った。
対グリード戦では主力のオーズが彼らと対抗しつつ、バースはそのサポートに回る。それが常套の戦法である。
「悪いな、バースXがロールアップさえしていれば、病み上がりのお前を頼ることもないんだが」
後藤は手ずからバースのベルトを巻きつつ、申し訳なさげに言った。
新旧様々なコアメダルからエネルギーを抽出し、オーズに匹敵する出力を得た新型バース。それが完成出来ていれば、王に一蹴されることも、オーズにばかりグリードのような脅威を押し付けることも無くなるはずだった。
だが、あと一歩というところで出力が安定せず、最終テストをパスしないらしい。そもそも、王との戦闘、最後の爆発を機として、紫を含めた大半のコアメダルの所在が分からなくなっている。
「大丈夫です、行けます……比奈ちゃんも、頼めるかな」
映司の体調を案じ、強いて付いてきてくれた比奈に、映司はあらためて頼む。
不安げだった彼女は、かすかに首を上下させると同時に動き出した。
「なんだ、タトバじゃないのか?」
そんな映司を見ていた後藤が、ふと妙なことを口走った。
一瞬、なんのことかと思った映司は、自身のベルトを見て言葉を失った。
すでにそのその溝には、三枚のメダルが収まっていた。
紫、黄、黒。ムカデ、ハチ、アリ。まるで色味の異なるそれらを、映司は挿入した覚えがない。
そのことに、映司は少なからず動揺した。
「まぁ、虫には虫ってことか」
特製のリストバンドよりセルメダルを抜き取った後藤は、そう呟いてバースのベルトにその一枚を放り込む。
「変身!」
という掛け声と共に、右端のグリップを掌で一息に回す。
カプセルに格納されていた
「……変身ッ!」
一瞬の躊躇の後、映司は未知のコアメダル達をスキャナーで読み取り、腕を交差させる。
〈ムカチリー! チリッチリッ! ムカチリー! チリッチリッ!〉
色は違えど、ベルトが他と同じように、コンボを謳う。俯いた映司を、新たなるオーズの姿へと変える。
コアメダルと同様の警告色に染まり、
〈クレーンアーム〉
〈ショベルアーム〉
セルメダルを連投した仮面ライダーバースの左腕に、重機のごときアタッチメントが組み上がる。
それを大きく振るう。ワイヤーで伸び上がった巨大な腕が、瓦礫を掴み上げる。
身を屈めた比奈がその下をくぐり抜けて、下敷きになっていたふたりの男性を「ふー……にゅっ!」という気合いの下に、それぞれの腕を掴んで一気に救い出す。
「――ふん」
首筋に手をやり、頭を大きく左右に振ってから、後藤らを尻目に、『オーズ』はウヴァに向かってゆっくりと歩を進めていった。