お墓で出会った鬼軍曹 作:不死身の鬼軍曹
ある日の事だった。
いつものように高校が終わった放課後の帰り道。部活も何も無い俺はただただ平々凡々な日常の一幕のように帰路についていた。
家に帰ったら何をするか、なんてそんなことを考えていたりなんかしてた時だ。とある墓地を通り過ぎようとした。
俺は俗に言う霊感がある。
見えちゃいけないものが見えたり、変な気配を感じたり。でもそれは昔からだったから気になったりもしないし、下手に関わろうとも思わなかった。
けどこの時はいつもと何かが違った。
爺ちゃんや婆ちゃん曰く、俺の呪いの耐性とか幽霊に対しての抗体的なものが人の数十倍にも強いらしい。
だから見かけたり気配を感じても俺から離れていくような感覚があった。
でも、この日墓地からは身体中にまとわりつくような気持ち悪さを感じた。
これでも華の高校生。育ち盛りの好奇心旺盛な好青年だ。いつもと違う何かがあるなら気になる性分で嫌な気配の元へと足を進めた。
他人の墓しかない墓地に入るのは居心地が悪かったが、手を合わせつつお邪魔しますと一言。
そして、目的の場所に来ると……驚いた。
墓を背にして座り込む軍帽を被った兵士のような見た目の男にまとわりつくいくつもの悪霊。
そんな悪霊たちは俺の方を振り向くなり、目を見開いた表情を浮かべ、そのまま一目散に辺りへと散っていく。
へっ、びびってやんの。なんてことを考えながらこの場には俺と軍帽のお兄さんだけ。
『……凄いな君は』
「凄いのかはよくわかんないけど、助けになれたなら何より」
『どうせまた戻ってくる』
「死んでも悪霊に取り憑かれるとか難儀だね。生前なんか悪いことした?」
『……俺は兵士だった。人は殺した』
「なるほど。ま、しゃーない話ではあるか」
話して見た感じ、悪い幽霊じゃなさそうだ。
周りにいたゾンビみたいな悪霊達に取り憑かれてしまっただけの善霊。そんな印象を抱いた。
『君なら俺を殺せるか?』
「無理でしょ。戦う術とかないよ俺。お化けに対してハッタリかませられるだけの高校生さ」
『そうか』
成仏したくても出来ない理由があるのか。
……このまま放っといたらまたゾンビ兵に群がられるんだろうな。
「……よし、あんた俺に取り憑け」
『何を言ってる?』
「ほっといたらゾンビ達集まるんだろ?俺に取り憑けば少なくともそういうことなくなるし、成仏出来る方法も一緒に探してやる」
『………』
「このままさよならは居心地悪いし、ぶっちゃけ俺となんか顔似てんだよね。もしかして御先祖だったりする?」
『……さあな。だがいいのか?』
「良いも悪いも俺から言い出したことだ。気にする必要ないって」
『……正直言うとありがたい。俺に取り憑いた悪霊たちが周りの罪なき霊や人を襲うのは見るに絶えなかった』
「でしょうね。あんた優しそうだもん」
『……俺が優しい、か……世話になる。名前は?』
「俺は杉本、"
手を差し出し、握手を求める。
それに足して軍帽のお兄さんは少しだけ口元に笑みを浮かべ俺の手を取った。
瞬間、重くのしかかる得体の知れない何か。
驚きはしたが、少し時間が経てば体に不調も何も無い。
ただ、誰かに見られてる感覚を感じる。
兎にも角にも、こうして俺は軍帽のお兄さん、もとい"軍曹"に取り憑かれたのだった。
▼▽▼▽▼▽
──結論を言えば、成仏させられなかった。
させられなかったと言うよりも正確にはさせられていないだ。
色んな霊能力者やお寺に行ってお祓いという形で出来ないかとも思ったがことごとくが失敗に終わる。
「……不死身すぎない?」
『すまない』
「責めては無いけどさ。にしたってよ」
しかも、欲を言うなら戦い抜いた果てに死にたいなんて言うもんで、どないせっちゅうねん。
現代社会でドンパチやることなんてまず無いぞ。なに?不良どもに喧嘩売りに行く?
「くそぅ、何かドデカいこと起きてくんないかなー」
そんな呟きをする代わり映えのない日々。
これから先、この代わり映えのない日々が恋しくなるほどの激闘に巻き込まれることになるとはこの時はまだ想像していなかった。
続くかな。続けたいなあ。
……鬼軍曹と杉元佐一(金カム)って似てるよなって。