M@STER OF HEROES   作:Crank

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 次の話を投稿しました。今回も導入部です。


兄の形見のスーパーロボット(前篇)

 俺、そして春香と雪歩は社長室に呼び出されていた。特に何か会社に迷惑をかけたわけでもないので、いったい何故この三人が呼ばれたのか不思議がりながら社長室へと入るといつも通り社長が座っている。

 

「いや呼び出してすまないね」

「いえ。それより何か御用ですか?」

「うむ。まずは萩原君。この間の仕事見たよ。良くできていたね」

 

 女子プロレスでの対談記事の載ったタウン誌を持った社長が手放しに褒めた。雪歩は恥ずかしげに小さくなっている。

「流石は我が社のアイドルだ。私の目に狂いはなかった。君達ならトップアイドルになれる」

「…………あ、ありがとうございます」

 

 みるみる赤面していく雪歩の様子が可笑しくてついつい放置してしまう。俺も社長と同意見だということもある。今回の仕事で雪歩は十分すぎるほどの働きをしていた。出版社からお礼の電話を貰ったくらいだ。

 

「社長?」

「なんだい、天海君?」

「雪歩、困ってますからそれくらいで」

「ん? そうかね?」

 

 気付かなかったとばかりに目を見開く社長に少し呆れる。この人は結構鈍感なところがあるのだ。

 

「では本題に入ろう」

 

 社長が椅子に座りなおして場の空気が引き締まった。これからの話の重要性を誰もが察しているのだろう。

 

「萩原君、君はアステカイザーになったね?」

『…………!』

 

 俺と雪歩は息を呑む。アステカイザーの件は完全に秘密にしていたのにどうして社長が知っているのか。

 

「そんなに驚かなくても。君がファイティングスーツのケースを持ち歩いていなければ想像はつくさ」

 

 しまった……。そこまで気が回らなかった。社長の推測通りなのだ。社長だからまだ良いが、これが他の人間だったらどうなったか分からない。俺のミスとしか言いようがなかった。

 

「あ、あの私……」

「いや別にそれでどうこうという訳ではないんだ」

 

 立ち上がった社長はこちらに歩いてくると俺達の脇を通り過ぎてドアノブに手をかける。

 

「着いてきたまえ。見せたい物がある」

 

 そう言って部屋を出て行く社長を追いかける。俺達は事務所を出て階段を上り屋上へと向かった。屋上は思ったよりも風が強く涼しい。車の音が聞こえるくらいで比較的静かなものだ。双子が騒がしい事務所に比べればどこも静かと言えるのかもしれないが。

 

「これが萩原君――いやアステカイザー専用マシン〝マッハビート号〟だ」

 

 雑居ビルの屋上に何故か実用性を完全に無視したとしか思えない三輪のバギーカーが置いてあった。真っ赤な車体でこれが公道を走っていたら注目度一〇〇バーセントな代物だ。得意気な顔をしている社長との間で視線が何度も往復をする。見れば見るほど疑問が浮かぶ。どうやってここに運んだのであろうか。

 だが俺はそこで一つの問題点に気付いた。

 

「専用って社長……雪歩は免許が取れる年齢じゃ」

「だから特別に許可を取ってあるよ。これが許可証だ」

 

 社長が懐から免許証のようなものを取りだしたので受け取って記載されている内容を確認する。そこにははっきりとアステカイザーが公道でこの車を運転することを許可する内容が書かれていた。

 その文面を読んだ俺と春香と雪歩はお互いに顔を見合せた後、その視線は社長へと集中させる。

 

「わ、私、こんなの運転できません~……」

 

 弱々しく否定する雪歩に社長は真面目な顔で答えた。

 

「勿論、使わないならそれでも良い。マッハビート号だけでなくアステカイザーの力そのものもそうだ。力ある者の義務などと言われるがそんなものはないんだ。天海君もだよ。だが君達に力が与えられたことには意味がある。それはその力を正しく使えるということだ。君達がその力を必要とするとき、正義のために必要とする心こそが最も大切なものだからね」

 

 社長の言葉が胸に沁みる。俺の気持ちと全く同じことを口にしてくれた社長に感謝した。

 そう。ブラック・ミストのサイボーグ格闘士を見た俺は〝力〟の恐ろしさと大切さを刻み込まれたのだ。強大な悪に対して力がなければ対抗できない。それをほんの十代の少女達に担わせてしまうことに歯噛みはするが、同時に彼女達で良かったと思う自分がいた。その理由が分からずにずっと引っかかっていたけれども社長の言葉で解消したのだ。

 俺は彼女達を信じている。彼女達なら人を幸せにできる。その思いが安心感を与えてくれていた。

 

「あ、あの…………私、戦うなんてできません……」

 

 雪歩が小さい声でそう言う。当然だろうと俺は納得していた。むしろこの間のような緊急事態によくぞ戦ってくれたと思う。社長も俺と同じ考えのようで雪歩の発言に異を唱えることはなかった。

 

「うん。それで良い、萩原君。だがファイティングスーツもマッハビート号も君に預けておくよ。もし必要だと思ったら使えば良い」

「………………はい」

 

 暴力を前提にした物への忌避感か、力あっても戦えない自分への卑下か。どちらとも取れる表情で雪歩は視線を外していた。

 俺は何も言えずにその様子を見ているしかなかった。何と声をかけても雪歩に圧力をかけてしまうような気がしたのだ。これは雪歩が自分の心と語り合って決断すること。俺はどんな答えでもそれを全力でサポートするのみと覚悟を新たにする。

 

「では話は以上だ」

「え……? あれ? 社長、私には?」

「何のことだね、天海君?」

「いやいや、私にも専用マシンとか……」

「はっはっはっはっはっ! 君は空を飛べるじゃないか」

 

 自分には話だけだったことに露骨に春香は凹んだ。まあ空が飛べるなら交通手段はそれが一番手っ取り早いからない。ハイウェイもジェットもなしでそれこそノンストップだ。……というかレインボーマンって飛べるんだ。何でもありだな。

 まだ春香は抗議を続けているが用事も終わったようなので俺は雪歩を連れて屋上を後にした。マッハビート号を地上に下ろす手伝いをしろとか言われたら堪らないかな。

 事務所の階の踊り場まで来ると扉の向こうから騒がしい声が響いてきた。どうやら亜美と真美が来たらしい。分かりやすい点ではありがたい二人だが無茶ぶりを回避する方法がないのが難点だ。襟を正して気合いを入れ直すと俺はドアを開けた。

 

「あ、ゆきぴょんが帰ってきた!」

「ねぇねぇゆきぴょん! これ見て見て!」

 

 亜美と真美が手に雑誌を持って駆け寄ってくる。さっき社長も持っていた雪歩と女子レスラー志望の子の対談が掲載されているタウン誌だ。そのページにある雪歩が相手と握手する写真に何かあるらしい。

 じっと目を凝らしてみるが変わったところは見当たらない。強いて挙げるなら外で写真を取っていることか。こういう話なら普通はリングの傍とかが良かったんだがブラック・ミストに滅茶苦茶にされて仕方がなく屋外での撮影になったのだ。

 

「ほら、これこれ!」

 

 亜美が指差した部分をじっと見つめる。遠くぼやけているが何か白い物が空に浮いていた。雲か何かだろう。

 

「これUFOっしょ!」

「いや真美、それはない」

『えーっ! 絶対UFOだって!』

「ハモるなって。UFOなんてあるわけないだろ?」

「プププププ、プロデューサーさん!」

 

 双海姉妹をあしらいながら事務所の中に入っていくと、スケジュール表を見ながら音無さんが震えていた。律子も石像のように固まっている。

 

「どうしました?」

「お、おお、おおおおお大きい、大きい……」

「お、落ち着いてください。はい深呼吸して~」

 

 ひ~ふ~と必死で呼吸をする音無さんを見て何事かと思う。普段からちょくちょくテンションの上がる人ではあるが、ここまで動揺するのは珍しい。それにいつもなら注意をするはずの律子もまるでロボットのようにギクシャクした手付きでテレビのリモコンを操作している。スケジュールボードに正対するテレビに明かりが灯った。

 音無さんが落ち着くまで時間がかかりそうなので俺は何となしにテレビを見る。夕方のニュースが流れており今日の出来事を一覧で振り返っていた。アステカイザーとブラック・ミストの戦いもニュースになったんだよな。正体ばれてたらアイドル活動は危うかったかもしれない。

 そしてテレビは近日日本で開かれる一大イベントの話題になった。〝万国ロボット博覧会〟と呼ばれるそのイベントは世界中の国々が建造した巨大ロボットを集めた催しだ。日本の巨大ロボットアニメに影響を受けた人々が多かったことから日本での開催が決まったらしい。当然俺も小さい頃はよく見ていて武器の名前を叫んだりしていた記憶があるだけに是非時間があれば行きたいと思っている。巨大ロボットは男のロマンだ。テレビでは展示される日本製のロボットについての話題をしていた。〝飛龍〟というロボットらしい。

 

「巨大ロボットってどれぐらい大きいのかしら~? 十メートルくらい?」

「うっうー! 凄いです! 踏みつぶされちゃうかもですね!」

 

 あずささんとやよいもそれなりに興味があるらしい。まあ女性だから男のロマンである巨大ロボットについて詳しいということはないのだろう。俺は一応ツッコミを入れてみた。

 

「いやいや四〇~五〇メートルはありますから

「まあ~。私よりずっと、大きいんですね」

 

 人間と比べたら十メートルでも十分大きいですから。そこはビルとか山とかと比較してください。そう思うが大人の対応で延々と答えのでない会話を続けるのもどうかと考えたからだ。

 

「でもこの目で実物を確かめてみたいですね」

「プロデューサーもロボット好きなんですか? 長介もカッコいいって言ってました」

 

 長介とはやよいの一番上の弟だ。そうか、俺は長介君と同じレベルか。まあ男はいくつになってもロボットとかヒーローって言葉に弱いものだ。だから俺は素直に返事をした。

 

「俺も格好良いと思う。機会があれば是非見てみたいさ」

「……………………見れますよ」

 

 リモコンをかざしたままで固まっていた律子から答えが返ってきた。メデューサに遭遇でもしたかのように微動だにしない律子は瞬きすら停止している。

 あまりの様子に俺は若干引きながらも(他の面々も息を呑む雰囲気はあった)スケジュールを脳内で確認した。

 

「え……休みあったけ?」

「いいえ」

 

 機械的に即答しつつ首を横に振る律子。

 しかし休みでもないのにどうやって身に行くんだ。仕事があるならそんな暇はないはずだが……て……。

 

「ま、まさか…………」

「そうです…………万国ロボット博覧会の……イベントコンパニオンの仕事が…………我が765プロに……」

『………………………………』

 

 沈黙が、事務所を支配した。

 

『えぇえええええええええええええええええええ!』

 

 驚愕の悲鳴が上がる。

 

「まままままま待ってください! この! 世界中が注目する! 世界規模の一大イベントに! …………765プロが?」

「…………はい」

 

 あまりのことに噛みまくった俺に真剣な表情で音無さんが頷いた。洒落や冗談じゃないらしい。

 いやいや。こんな弱小のプロダクションにコンパニオンとはいえ世界中が注目するイベントの仕事がくるなんて信じられない。もしここで話題になったらアイドルとして一気にステップアップすることも夢じゃないのだ。普通なら大手がこんな仕事を持っていくはずだ。

 

「な、何で765プロなんです?」

「さあ……先方からの指名です…………」

 

 音無さんの声のトーンがまた下がる。本当の本当に本当のようだ。

 

「は、恥ずかしいです~」

「ねぇねぇ、亜美達超セクチーな格好すんの?」

「うっふ~ん、みたいな?」

「あらあら、水着の用意が必要かしら?」

「お仕事ですよ、お仕事!」

「うっうー! これで給食費が払えますー!」

 

 各人が勝手気ままに騒ぐ中、俺の血の気は脳天から一気に引いて行った。顔面が蒼白になっているのが鏡を見なくても分かる。

 世界規模のイベント……。失敗したら、765プロは全滅する……!




 まあこの話は分かる人にはもうバレバレですね。あの特撮とのクロス回ですよ。最近もカラオケに行って主題歌を歌ってきました。阿久悠さんの歌詞は歌っていて気持ちが良いです。続編の主題歌は難しすぎて苦戦中です。

 マニアックな作品ですがこれからもお付き合いください。
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