M@STER OF HEROES   作:Crank

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 また伸びました。もっと短くまとめる練習をしたほうがいいかもしれません。


兄の形見のスーパーロボット(中篇)

 万国ロボット博覧会開催前日に俺達765プロのメンバーは会場にやってきた。下見の意味があるがそれ以上に誰もが巨大ロボットに興味をひかれていたことが最大の理由だ。俺だってこの目でじっくりとロボットを見上げたい。

 なので先方に許可を取って大挙して押しかけたのだ。残念ながら社長と音無さんはさすがに留守番だったが。

 関係者パスを提示してガードマンの横を通り過ぎる。既に亜美真美ははしゃいでいるが、他の面々も興奮を抑えきれない様子だ。通路を歩きながらもどんなロボットがあるのか、明日の来客はどれほどなのかを話題に盛り上がっている。

 そうこうしているうちに指定された部屋の前へと到着した。ドアをノックして入室の許可を得ると中へと静かに入る。小さな会議場のような部屋には執事服を着た初老の男性が一人立っていた。

 

「お待ちしておりました。765プロの皆様」

「お世話になっております。私――」

「あ、あれ? 新堂さん!」

 

 丁寧なお辞儀をしてくれる男性に挨拶をしようとした俺を遮ってやよいが驚きの声を上げる。思わず言葉を呑みこんでしまうとやよいは怒涛の如く喋り始めた。

 

「お久ぶりです新堂さん!」

「お久しぶりでございます高槻様」

「こんなところで会うなんて思ってなかったです!」

「万国ロボット博覧会は水瀬グループが最大出資者ですので、私も微力ながらお手伝いをさせていただいている次第でございます」

 

 親しげに会話を始める新堂さんとやよいの様子に俺以外は違和感を覚えていないようだ。むしろ当然のように二人の話が終わるのを待っている。

 

「あ、でも新堂さんがいるってことは……」

「当然私もいるわよ!」

 

 バーンと後ろの扉が開いた。登場する機会を窺っていたのかと疑うほどの見事なタイミングで一人の少女が姿を現す。人形を抱えた少女は仁王立ちで不敵な笑みを浮かべてこちらを見ていた。

 

「伊織ちゃん!」

『いおりん!』

 

 年少組が駆け寄っていきハイタッチをする。やよいのハイタッチに対応するということは知り合いなのだろうが、いったいどういう関係なのかが見えてこない。

 

「えっと…………」

「あんたが新しいプロデューサー? さえない顔してるわね」

 

 当惑していると伊織と呼ばれた少女が辛辣な言葉を投げかけてきた。となりでやよいがそんなこと言っちゃ駄目と注意しているが訂正をする気はないらしい。

 

「律子、本当にこいつで大丈夫なの?」

「あのね……。伊織が心配しなくてもちゃんとやってくれてるわよ」

 

 溜息混じりではあるが律子のフォローは嬉しい。結構迷惑かけてきたし相談にも乗って貰ったからな。しかし伊織はそれでもまだ納得しきれていない顔だ。

 ここまでの会話で俺はこの伊織という少女の立ち位置が少しだけ見えてきた気がした。

 

「な、なあ。もしかして彼女って……」

「ええ、765プロ所属アイドルの一人――」

「水瀬伊織よ」

 

 律子の説明を遮っての自己紹介は堂に入ったものだった。髪をかき上げる仕草なんて百回やっても同じようにできると思える。

 

「ていうか春香帰ってきてたのね」

「うん、ついこの間だけどね。戻ってきたら伊織だけじゃなくて千早ちゃんや真もどこかに行ってるんだもん、吃驚しちゃった」

「あんたが突然インドに行くとか言い出したときほどじゃないわよ」

 

 楽しげなやりとりを聞いていると伊織のスタンスも徐々に分かってきた。誰に対しても基本的にきつく当たる少女なのだろう。しかし会話の輪に雪歩が入っているのだから性根の真っ直ぐな良い子であることは疑いようがなかった。

 

「よろしく、水瀬さん」

「伊織で良いわよ。しっかり仕事しなさいよね」

 

 割って入った俺の握手をしっかりと受けてくれたことに安堵する。

 

「やあ、もういらしてたんですか」

「兄さん、どうしたの?」

 

 そのとき部屋に新たな来訪者が現れた。スーツをビシッと着ている俗に言うところのイケメンだ。それこそアイドルかと見紛うばかりの爽やかな笑顔だったが、俺はこの人がアイドルではないことを知っていた。今回のイベントの依頼人として既に何度か打ち合わせで顔を合わせているからだ。

 

「こんにちは水瀬さん。騒がしくして申し訳ありません」

「いやいや。伊織の友達に会うなんて初めてだから楽しみにしてたんですよ」

 

 水瀬さんは特にやよいを注視していた。さっきのやり取りで俺も気付いたが、伊織はやよいと殊更仲が良いようだ。春香や俺にぶつけたきつい物言いが全く顔を出さないのだから。

 

「高槻やよいです! よろしくお願いします!」

「うん、こちらこそよろしく。急な依頼で大変だったと思うけど、ロボットの説明はちゃんと覚えてくれたかい?」

「あうう…………実はまだちょっと不安で……」

「そう。他の子達も?」

 

 その水瀬さんの問いには沈黙が返された。特に春香と亜美真美は完全に目を逸らしていたな。あいつら……。絶対に覚えて来いって何度も言ってあったのに!

 だが俺はその怒りを呑みこむしかなかった。クライアントである水瀬さんの前ということもあるが、それ以上に俺より怒りに燃えて握り拳を震わせている律子を横目で確認してしまったら俺は宥め役に回らざるを得ない。

 しかし水瀬さんは全く気にしていないようで爽やかな笑い声を上げた。

 

「ははは。じゃあ今から実物を見ながら説明をしよう」

「え? ロボット見ていいの?」

「ああ勿論」

 

 亜美に微笑み返して水瀬さんは扉に手をかける。今にも駆け出しそうな双子を押さえつけて俺達は後に続いた。

 会場はドーム状の建物でそこにロボットがずらりと並んでいる。やはり全長四〇メートルを超えるロボット達の展示にはあまり細かい工夫はできなかったのかもしれない。だがそれが逆に威圧感を醸しだしていた。

 

「ここが会場だよ。君達にはここでいろんなロボットについての説明をしてほしいんだ」

 

 水瀬さんの説明を聞きながら一番近くのロボットに歩み寄る。

 ロボットの足元には説明用のパネルがあり簡単なプロフィールと説明が載っていた。全体像の写真もそこだ。

 

「このロボットはアメリカの〝ビッグバイソン〟だ。NASAの基地を防衛するために作られたロボットでICBMの直撃にも耐えられる装甲と一一〇万馬力ものパワーを持っているんだ」

「す、凄い……全部覚えてるんですか?」

 

 すらすらと説明を受けて雪歩が驚く。しかしその雪歩の問いに反応したのは伊織だった。

 

「あのねぇ。これぐらい覚えておいてくれないと、明日の仕事に差し支えるでしょ?」

「おお! ということは……」

「いおりんは、完璧のパーペキってこと?」

「当たり前でしょ? この伊織ちゃんがそんなヘマするわけないじゃない」

 

 双子の挑発に乗った伊織を皆が質問攻めにする。

 

「あれは?」

「あれはインドネシアの〝アグンガルーダ〟ね」

「じゃあそれは?」

「それはペルーの〝プロトアンデス〟よ」

 

 淀みなく答える伊織を見て俺は素直に感心した。思いだそうとする素振りさえ見せないのだから大したものだ。あの自信も頷ける。

 

「ところで伊織のプロデュースはあなたが?」

「いいえ、妹さんのプロデュースは私がさせていただきます」

 

 騒ぐアイドル連中を眺めながら投げかけられた水瀬さんからの俺に対する質問に律子が答えた。その話は俺も社長から聞いている。何でも伊織をリーダーにしたユニットを構想中らしい。だから俺の仕事は他のアイドルの世話がメインになっていた。

 

「そうですか。妹をよろしくお願いします」

「こちらこそ。でも意外でした。伊織が水瀬関係の仕事を受けるなんて」

「はは。我が妹ながら自立心の強い子ですからね」

 

 律子の言葉に水瀬さんは笑う。俺は水瀬さんの妹が765プロのアイドルだと分かった時点で、てっきりコネを使ったものだと思っていたがどうもそうではないらしい。少なくとも俺よりも付き合いのある律子は普通なら考え難いことだと思っているようだ。

 

「今回は私が無理を言ったんですよ。機密情報が多すぎて信頼できる一部の人間しか関わらせたくなかった。その点、妹の所属する事務所なら安心できる。社長は父とも知り合いのようだし」

「そうだったんですか」

 

 俺は水瀬さんの説明に納得し相槌を打つ。大きな事務所よりも身辺の洗い出しもしやすいだろうし結果としてこっちのメリットも大きい。文句を付ける理由なんてなかった。

 

「まあこれはアイドル活動の時間を私の研究を手伝わせるために無理やりアメリカに呼んだお詫びも兼ねてるんですがね」

 

 恥ずかしそうに頭を掻く水瀬さんだったが逆にそれが偽らざる本心であることを示しているように思えた。兄としてのプレゼントなのかもしれない。自立心の強い妹を支援する機会があったことが嬉しいのかもしれない。

 

「じゃあ伊織、あれは?」

 

 春香が指差したのは今まさに完成しようとしているロボットだった。銀色のボディに頭部には三つのランプ、そして右手には漢のロマンのドリルが付いている。工事か発掘のためのロボットだろうか。

 

「え……えっと、あれは……」

『あるぇ~? いおりん忘れちゃったの?』

「そ、そんなわけないでしょ! えっと……」

 

 亜美と真美の冷やかしに額に汗を浮かべて伊織が唸る。まあこれだけたくさんのロボットを全部覚えておくのは難しいのかもしれない。……俺も後で確認しておこう。

 

「……新堂」

「いえ。私の記憶にもございません」

「そうか」

 

 水瀬さんはそう呟くと作業中の男性に声を歩み寄った。その表情の緊迫感に不安を感じて、俺は慌てて後を追いかけた。

 ロボットの足元からは組み立てを終えた作業員達が撤収作業に入っておりその指示出しをしている人物に水瀬さんは声をかける。

 

「君、このロボットは?」

「え? 出品されたロボットの一体ですが?」

「どこのロボットだ?」

「ええと…………鉄面党、ですね」

 

 手に持った資料をめくって作業員が答えた。

 

「鉄面党……だと?」

〔ふはははは、その通りだ水瀬博士〕

 

 水瀬さんに答えた老人の声が響く。しかしその姿はどこにもない。誰もが声の主を探して四方を見回す中、目の前のロボットが動きだした。作業用の足場を薙ぎ倒してこちらに右手のドリルを突きつける。

 

〔我ら鉄面党もこの〝トロイホース〟を出品したのだ。尤も、愚民共に見せるためではないがね〕

「では…………まさか!」

〔そう! この展示されたロボットは全て頂いて行く! やれメカロボ!〕

 

 トロイホースから人間大の人型ロボットが多数飛び降りてきた。数十メートルを落下しても全く影響のないロボットを多数送り込むなんて、鉄面党とはどれほどの技術力を有する組織なんだ。

 

「皆逃げるんだ! 水瀬さんも早く!」

 

 俺は他の皆を庇い前に出る。メカロボは他の整備員達には目もくれずこちらに襲い掛かってきた。やつらの狙いは水瀬さんなのだろう。

 

「うわぁああああああ!」

 

 拳を握って力の限りメカロボの胸を殴りつけた。最近いろいろあったので毎日腕立て伏せをして鍛えていたが相手はビクともしない。むしろこちらの手が痛くなる始末。情けないことこの上ない。

 絶体絶命のピンチに春香が俺とメカロボの間に割って入った。

 

「プロデューさん、ここは私に任せてください!」

「でも――」

「他に方法がありません! その間に逃げて!」

「ば、馬鹿言わないの! 春香が相手になるわけないでしょ!」

 

 律子も必死に止めるが春香の決意は変わらない。こちらに顔だけを向けて微笑みかける。

 

「みんな、私のインドでの修業の成果、今見せるからね!」

『はるるん!』

 

 泣き出しそうな表情で呼び掛ける亜美と真美に満面の笑顔を向けて春香は印を結んだ。

 

「阿耨多羅三藐三菩提阿耨多羅三藐三菩提阿耨多羅三藐三菩提。レインボー・ダッシュ7!」

 

 空中に飛び上がり回転すると春香の衣装が変わりレインボーマンへと化身した。

 迫りくるメカロボ達。

 

「遠当ての術、たあっ!」

 

 レインボーマンが両手を振り下ろすとメカロボ達が吹っ飛ばされた。皆が信じられないものを見たという顔で呆然とする中戦いは続く。

 

「皆逃げるんだ!」

「こ、こっちも囲まれてますよ!」

 

 あずささんの言葉通り既に包囲は完成していた。俺達の周りはメカロボに覆われている。レインボーマンの奮闘で取り押さえられてはいないが、このままではじり貧だった。

 

「新堂!」

「かしこまりました」

 

 対策を練っていたとき伊織の呼び声を受けて新堂さんがメカロボの前に飛び出した。そのあまりに無茶な行動に思わず声も出なかったが、真の驚愕はその後に訪れた。

 

「ふん!」

 

 襲い来るメカロボの手首を掴んみそのまま足を引っ掛け投げ飛ばしたのだ。

 

「し、新堂さん凄いです~!」

「いえいえ。この程度執事の嗜みでございます」

 

 やよいに謙遜する新堂さんだが一番最初に殴り掛かってあえなく返り討ちにあった俺にはそれがどれほどの事態なのか分かる。とてもじゃないが部活で柔道や合気道を学んだ程度ではそんなことができるはずがない。それほどメカロボの力は人間離れしていたのだから。

 

「阿耨多羅三藐三菩提阿耨多羅三藐三菩提、ダッシュ・1!」

 

 飛び上がったレインボーマンは再び姿を変える。黄色い体に大きなサングラスをかけたような姿は……たしか月の力を宿した化身だったはずだ。春香からそう聞いている。

 

「伸腕の術!」

 

 その掛け声で腕が伸び、離れた場所のメカロボを叩き伏せた。お陰で逃走の道ができた。

 

「さあお早く。私が殿を務めますので」

「分かりました。行くぞ、皆!」

 

 新堂さんに頭を下げて、俺達はその場から駆け出す。今は一刻も早くここから離れることが最優先だ。

 

〔ええい! 逃がすなトロイホース!〕

 

 その言葉が響くとトロイホースは天井を崩し始めた。崩落した天井の破片が道を塞ぐ。もうこのルートは使えない。

 

「こっちよ!」

 

 伊織が先導して別の道を示してくれた。俺達は全力で駆ける。体力のないやよいは息が切れ始めているが今は構ってあげられない。少しでも早く外に……。

 

「駄目です! こっちにも!」

 

 再び俺達の前に立ち塞がるメカロボに律子が気付いた。しかしレインボーマンも新堂さんも後ろで戦ってくれている。前に余剰の戦力はない。

 

「くそ!」

 

 一か八かで体当たりを仕掛けた俺だったが、呆気なく抑え込まれて投げ返された。背中から落ちたため怪我はなかったが衝撃で肺が圧迫されてむせ込む。とてもじゃないが抜けられそうにない。

 

「プ、プロデューサー……」

「雪歩……?」

「わ、私がやりますぅ!」

 

 俺を立ち上がらせて雪歩が叫んだ。春香のとき以上に皆の顔に驚愕の表情が張り付いた。

 

『ええ! ゆきぴょんも変身できんの!』

 

 双子の半信半疑の言葉が実は端的に真実を示している。勿論俺は知っていたが、雪歩がそれを嫌がっていたのも知っている。無理やり戦うことになってもし万が一のことがあったらと考えるとぞっとした。

 

「……仕方ないと思ってなら、止めた方が良いんじゃないか?」

「…………そうかもしれません。でも、きっと、ここで何もしなかった後悔します。それだけは…………嫌です」

 

 弱々しくもはっきりと告げた雪歩。

 俺はどう応えるべきか……。

 

「……分かった。頼むぞ!」

「はい!」

 

 そして雪歩はメカロボに仁王立ちになる。深く息を吸い込みゆっくりと力強く吐き出してジャンプした。空中で回転するとアステカイザーの像が雪歩に重なり、着地したときにはアステカイザーに完全に変わっていた。

 メカロボの手が鎌に変わりアステカイザーに襲い掛かる。

 それをアステカイザーは腕で受け止めた。あの程度の鎌ではファイティングスーツは切り裂けない。

 

「カイザースライサー!」

 

 腕の部分についてあった刃物が展開しアステカイザーは斬り掛かる。一振り一殺とばかりに次々とメカロボが倒れていった。

 

『やれやれ、ゆきびょん!』

「馬鹿なこと言ってないで今のうちに行くわよ!」

 

 ヒーローの活躍に興奮する亜美と真美の頭を叩いて律子が引っ張っていく。俺達もその後に続いた。出口はもうすぐそこだ。

 

〔逃げられると思っているのかね? さあ、大人しく〝ブレイン〟を渡してもらおう〕

「……! どうして〝ブレイン〟を知ってるの! あれは超極秘に開発されたのに!」

 

 出口を目前にしてトロイホースから流れる音声に反応した伊織が立ち止ってしまった。俺は慌てて駆け戻る。

 

「伊織! 止まるな!」

「答えなさい! どこからブレインの情報を手に入れたの!」

「伊織!」

〔五月蝿い小娘だ。貴様に用はない、死ね!〕

 

 トロイホースの頭部から赤色の光線が発射された。走って距離を取っていたためもう直接攻撃はされないだろうという油断があったのかもしれない。伊織は咄嗟のことで反応できずにその場に立ち尽くしてしまった。

 

「くそ!」

 

 俺は伊織の許まで駆け寄ったがとてもではないが崩落する天井から逃げきれそうにない。せめて壁になればと思い伊織を抱きこみ衝撃に備えて目を閉じた。

 暗い世界に低く轟音が響く。




 伸腕の術はオリジナルです。ヨガなんで現在の技術でリメイクしたら入るかなと思って作りました。名前は幻肢の術と迷いましたが意味が変わっちゃうし何よりレインボーマンらしくないので止めました。ちなみに名前の元ネタはるろうに剣心の般若です。
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