イカロスの翼   作:クレナイハルハ

1 / 3






争いが無くならぬから、力が必要なのです。

ギルバート・デュランダル










願いに血を流す掌

雨が降り注ぐ、建物の影で膝を抱えて座り泣いている少女がいた。

少女は頭には、光輪が浮かんでいるが少女の済むその場所では光輪を持つ少女がいることが普通であった。

少女にとって、目の前に広がるその光景は信じられないもので目を背けたい物だった。

 

なんで、じゅうをもつの?

 

『それが"普通"だからよ、自分を守るために持ちなさい。』

 

いや、もちたくない、きずつけたくない。

 

少女の周りは、まるで日常のように銃を持ち会話をするときと同じように、簡単に引き金を引く者達ばかりだった。

 

なんで、うてるの?

 

『別に撃たれても死なないからいいじゃん』

 

『そうそう!痛いだけで傷にもならないしー?まぁ、ヘイロー持ってないやつは知らないけど』

 

いたいよ、くるしいよ、しんじゃうよ?

 

なんで?なんでそんなかんたんにうつの?

 

わたしがおかしいの?わたしがへんなの?

 

『あなたは優しい子なんだね、だからそう感じちゃうのかも』

 

一人だけ、少女の思いに真剣に答えた存在がいた。

 

『あなたみたいに、優しすぎると凄く苦しんじゃうと思う。特にここでは、銃を持つのも撃つのも簡単にやっちゃう子ばかりだから、余計にね』

 

その人物は、光輪が頭に存在しない犬だった。

だが、その言葉に少女は救われた。

自分が変ではないと、そう答えてくれたからその優しさに救われた。

でもある日、その犬は大怪我をして病院に搬送された。

答えは簡単だ、近くでの不良による戦闘での流れ弾を体に受けたのだ。

その事実に少女は悲しんだ、悲しんで悲しんでそして怒りがわいた。

なんで、なんでもっとはやくけんかしてたひとたちをとめられなかったの?

その思いから事故について調べていると、ある人たちの会話が聞こえた。

 

『もっと早く対応出来ていたら良かったのだけど……』

 

『仕方ないでしょ、あそこは他の自治区との境い目、下手に動けば相手地区の学園から苦情が入る』

 

そんな、そんなりゆうでたすけるのがおそくなったの?

 

ネットを探せば、同じような理由で出動が遅くなったり武力行使が遅くなったことが沢山あった。

 

みんなないてるのに、あたまのわかっかないひとが、みんながきずついてるのに、なんでだれもうごいてくれないの?

 

なんでたすけてくれないの?

 

あたまのわかっかがないひとがきずつかないように、するにはどうすればいいの?

 

少女の頭に浮かぶ様々な地域の治安を守る人たちの姿が浮かぶが、だれもヘイローのない存在を守るためにすぐにうごくことは出来ない。

その事実を少女は幼くして悟っていた、ゆえに考える。

どうすればいいのか、どうすればヘイローを持たない人たちが傷付かずに済むか、血を流さずに済むのか。

泣いていた少女はやがて、ゆっくりと立ち上がり歩き出す。

 

誰かがやらなきゃいけないんだ

 

だれか、だれかがやらなきゃいけないんだ。

 

誰かがやらないと…

 

少女の瞳から涙はもう流れていなかった、彼女はまるでこれから戦場へと向かうかのような覚悟を決めた顔をしていた。

 

気持ちだけで…一体何が守れるって言うんだ!!

 

おもいだけじゃ、なにもまもれない。

 

ねがうだけじゃ、なにもかわらない。

 

力なくば……それは叶わない

 

ちからがないと、すくえない。

 

思いだけでも…力だけでもダメなのです

 

どこにもしばられない、じゆうなちからがいる

 

みんながきずつくまえに、かなしむまえに

 

たすけるためにどこへでもとんでいく

 

つばさがほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キヴォトス、それは様々な学園が各地に存在しており学園が運営する自治区と、キヴォトス全体の行政を担う連邦生徒会が管理する地域D.U.で構成される超巨大学園都市だ。

日常に様々な銃器による銃撃戦と、神秘と呼ばれる不思議な力が混在している不思議な場所。

学校の備品に戦車や戦闘ヘリが、自動販売機やコンビニには銃弾や手榴弾が当たり前に販売される。

そのため銃を持っていない生徒より、裸で歩いている生徒の方が統計的にも実際にも多いと言われている。園児ですら手榴弾を投げ、不良集団が徒党を組んで武力を行使する程だ。

そしてキヴォトスにいる生徒の殆どがヘイローと呼ばれる光輪を持ち、なんと銃撃や砲撃の直撃すら痛いで済む非常に頑丈、故にちょっとした揉め事で銃撃戦となる。

ヘイローを持たない住人や、キヴォトスの外から来た存在にとっては、どれ程その環境が可笑しく、生きにくいことかは想像しやすいだろう。

そんな学園都市キヴォトスの端に存在する1件の家がある、一階建てで1件は普通の家であり表札にはこの家に住む少女の苗字『運命乃』と記されている。その家にいる少女、彼女は自室と思われる場所でパソコンと向き合っており世話しなくキーボードを叩く音が部屋に響いていた。

暫くパソコンと睨み会っていた彼女は、タンっとエンターキーを押すと背伸びをしながら椅子の背もたれに体を預ける。

 

「ふぅ、こんな感じでいいかな。」

 

そう少し疲れた様子で、パソコンの設置されたデスクの近くに置かれたエナジードリンクを口許へ傾けた次の瞬間、危険を知らせるようなアラート音が部屋に響き渡った。

 

「ッ!」

 

そのアラート音に少女は、まるで怒りと悲しみ等の様々な感情が入り交じった表情を浮かばせながら手に持ったエナジードリンクの入った缶をデスクへと置くと椅子から立ち上がり、着ていた自身の所属する学園の制服を隠すように黒いゴシックパーカーを羽織る。

 

《キヴォトスアビドス地区での大々的な戦闘を確認。繰り返します、キヴォトスアビドス地区での大々的な戦闘を確認》

 

即座に部屋を出ると少女は家の一番奥の突き当たりとなる一見何もない場所へ向かうと、壁に触れる。次の瞬間、壁が少し後方へと下がり横へとスライドする。

少女は即座に壁がスライドして現れた人が二人入れるくらいの部屋へと入る、すると先程スライドした壁が元通りに閉まると少しの揺れと共に下へと動き出す。

 

《監視カメラの映像を解析した結果、戦闘はアビドス学園生徒とゲヘナ生徒がゲヘナ学園風紀委員会と戦闘していると思われます》

 

家の奥に隠されたエレベーターに乗る少女へと、エレベーター内に備え付けられたスピーカーから、先程のアラーム音の後に聞こえた声と同じまるで機会のような感情の感じられない言葉が放送される。

 

「またゲヘナ………トリィ、フリーダムユニットとライジングブラストユニットの準備を」

 

少女にトリィと呼ばれた存在は、少女が()()()()()のため学園の知人や友人に手伝ってもらい製作したAIを元に改造し少女のサポート専用カスタマイズされたAI『TORY』である。

 

《"FREEDOM UNIT"及び"RISINGBLAST UNIT"の起動シーケンスを開始します》

 

TORYの言葉と共に部屋の振動が停止して少女の目の前の扉が開き、少女は地下室へと早足で入る。

地下室には大量の書類が納められたファイルが並ぶデスクの他に、何かのケーブルが繋がれたパソコンといった様々な物が置かれていた。

そんな部屋の奥には、背中に大きな翼と思われるものが付けられた鎧らしきものと、両脇に何かしらの武装と思われるものが存在を主張するベルト、そして恐らくは頭部の両目を覆うバイザー。

そして壁に掛けられた、白を基調とし青や黒とあったカラーリングのライフルらしきものと黒と白、そして、赤の配色の楕円形の盾。

少女が真っ先に鎧へと向かう、すると胸部の鎧が中央から左右へと展開され即座に少女はその鎧へとその腕を通す。

 

「トリィ」

 

《アームロボットを起動、マスターへのユニット装着を開始します》

 

少女の声に答えるように、鎧の展開された部分が閉じ、鎧の近くに設置されたいくつものロボットアームが動き出し近くに置かれていた腕や足を覆う鎧らしきもの達を少女へと装着させていく。

両側面に武装のついたベルト、両手の肘から先を護るガントレット、少女の太ももから下の足を覆うブーツ兼補助ユニット、両目を覆う程の大きさのバイザーが装着される。

少女はバイザーが装着されたことを確認して閉じていた目蓋を開く。

 

「FREEDOM UNIT、RISINGBLAST UNIT装着完了。両ユニットのシステムをエンゲージ」

 

  FREEDOM UNIT,RISINGBLAST UNIT

     System Engage Complete.

    All weapons, no problem.

 

視界には、バイザーに映る先程まで見ていた視界の他に端に幾つものゲージが浮かんでおり装備したユニットのエネルギー残量や武装について示していた。

 

「システム起動完了、ドローン付属シールドブーメランとヴィルシーナを」

 

少女の言葉にロボットアームが壁に掛けられていた白を基調とし青や黒とあったカラーリングのライフル、ヴィルシーナを私の右手へと差しだし、黒を基調とし白、そして赤の配色の楕円形の盾を左手へと差し出してくる。

私は差し出されたヴィルシーナを腰へと装着させ、左手でシールドを装備する。

 

「トリィ」

 

《出撃ハッチ解放、出撃ハッチ解放》

 

その言葉と共に少女の纏う鎧の様々な場所へと繋がれていたケーブルが外れていき、部屋の天井の扉が左右に開かれる。

見上げれば、天井扉からは空が広がっていた。

 

《出現ハッチ解放、進路クリア》

 

その言葉トリィの言葉と共に私の思考をバイザーが感じとり、纏う鎧がジワジワと変化していき、灰色から綺麗な白と青の配色へと変化していく。

そして背中の中央にあるバーニアが青白い光を灯し、少女の体を床から浮かび上がらせる少女は息を吸い、出撃の声を上げた。

 

運命乃(サダメノ)ツバサ、フリーダム……行きます!」

 

その声と共に少女は真上へと上昇し、出撃ハッチから飛び出すとトリィのナビを頼りにアビドスへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アビドス地区の一角にて、アビドス対策委員会と便利屋68と呼ばれる少女達がゲヘナ学園の風紀委員会を相手に戦闘を繰り広げていた。

そんな戦闘の引き金は、柴関ラーメンと呼ばれる店にて食事をしていた『便利屋68』の陸八魔アル、浅黄ムツキ、鬼方カヨコ、伊草ハルカをゲヘナ学園から追跡してきていた風紀委員会達が店ごと爆破した事である。

その襲撃により、柴関ラーメンの店は崩壊し店主である柴犬の大将はボロボロになっていた。

その事に怒ったアビドス対策委員会が風紀委員会へのアビドス高等学校の自治区内で他の学園の風紀委員会が活動することは越権行為だと訴えたがうまくいかず、風紀委員会行政官の天雨アコが指揮する風紀委員会との戦闘へとなってしまっている。

先生ならの指揮を頼りに、風紀委員会との戦闘を繰り広げるアビドス対策委員会の黒見セリカや奥空アヤネ、十六夜ノノミ、砂狼シロコ。

そして便利屋68だったが、状況はこのまま戦っていても勝てないと感じさせてくる程に決定打に掛けていた。

その時だった、アヤネのドローンが此方へと向かってくる何かを捉えた。

 

「この反応、先生!何かがこの場所へ向かってきます!!」

 

「"まさか風紀委員会の増援?!"」

 

「ん、援軍はキツイ」

 

「嘘でしょ!?ま、ままままさかッ………」

 

「社長、最悪委員長が来たことを考えるべきじゃ」

 

風紀委員会の増援に対して悲鳴を上げるアビドス対策委員会と、そんな風紀委員会の委員長。アビドスでも最初に強者に数えられるであろう白崎ヒナの姿が脳裏に過り焦りを見せる便利屋68。

だが、そんな予想を裏切る形で新たな情報がアヤネの口から飛び出した。

 

「青い、戦闘機?のような物が……でもこの小ささだと戦闘機じゃない……でもこの速度は──」

 

「あぁーもう!何なのよ!」

 

「"セリカ、落ち着いて!"」

 

アヤネの情報に困惑が広がるなか、風紀委員会にもその謎の存在の情報が渡っているのか天雨アコがピクリと眉を動かした。

 

「貰った!」

 

一人の風紀委員会が、怒った様子のセリカを好機と見たのか手にもった対戦車ライフルの照準をセリカへと向ける。

 

「セリカちゃん!」

 

「"セリカ!!"」

 

「あ……」

 

怒りで我を忘れたが故の油断、その隙を逃がさないほど風紀委員会の生徒は弱くはない。

セリカは咄嗟に頭を下げ遮蔽物で体を隠そうとしたが、それは引き金を引いた風紀委員会の対戦車ライフルの銃弾がセリカへと着弾する方が速い。

近くにいた生徒の誰もが間に合わない事に顔を青くさせ、先生は焦った様子で手を伸ばす。

身に迫る恐怖に、セリカは咄嗟に両目を瞑る。 そして自分の体に与えられるだろう痛みに身構える、だがいつまでたってもその痛みが襲ってこない。

恐る恐る目を開けたセリカの前には、まるで彼女を守るように浮く、黒を基調として中央に赤、縁を白く塗装された大きな盾があった。

 

「……盾?」

 

「ん、盾が翔んできた」

 

「へ?」

 

目の前の盾が翔んできたことを説明したシロコの言葉にセリカはポカンとした様子で目の前の盾を見つめる。

戦場に困惑の空気が広がるなか、セリカを守った盾は盾の側面から翼のように一対の羽根が展開され、盾が戦場の真上へと昇っていく。

 

『あれは……"また"彼女ですかッ!』

 

まるで何度も同じことがあった事を感じさせる言葉と共に、天雨アコの表情が先程までの余裕そうな表情から一変し、怒りを顕にしたものへ変わる。

その様子に先生やアビドス対策委員会そして便利屋68ですら困惑した様子で顔を見合わせた時だった。

空から、青い翼を持つ少女が降りてきた。

青と黒の機械で出来た鋭利な翼を広げて、先程セリカを守った大きな盾を持ち、キヴォトスでも見たことのない銃を所持したその少女の表情は目を隠す大きなバイザーからは想像できない。

 

「戦闘している全員に告ぐ、直ちに戦闘を停止せよ」

 

拡声器を使っているのか、その場所全体に彼女の声が響き渡る。

 

「繰り返します、直ちに戦闘を停止せよ!!」

 

突如として現れ戦闘の停止を呼び掛ける存在に風紀委員会だけではなく、アビドス対策委員会や便利屋68ですら困惑し今戦闘中ということを忘れ銃口を下に向ける。

 

「"彼女は一体……"」

 

「ドローンで彼女の映像を見ましたがあの鎧?を纏っているのでどの学園の生徒かもわかりません。羽を持ってるのでトリニティでしょうか?」

 

「あの風紀委員会の人たち、なにか知ってる感じでしたね?」

 

「アンタらは何か知ってる?」

 

「わ、私たちは知らないわよ!?少なくともゲヘナじゃみたことは無いし………」

 

「ミレニアムは?あの翼や盾の飛行機能はアソコの科学力なら作り出せそうだけど」

 

「ん、あのバイザーが邪魔で顔がわからない」

 

今も空に滞空している少女が何者か分からず、便利屋68のみんなも知らない存在に、先生は彼女を観察する。

ふと、彼女のバイザーが向けられている視線の先を見ると自分達の背後。先程の爆撃で怪我をした柴関ラーメンの大将を眺めていることに気付いた。

もしかして彼女は柴大将の知り合い?なのだろうか。

そんな時だった、滞空する少女の口が動いたのが見えたが何を言ったのかは聞こえなかった。

 

『また我々の邪魔をッ!何をしているのですか!撃つ手を止めないでください!』

 

天雨アコの言葉と共に、困惑にあったの渦にあった風紀委員会の生徒達が手に持った自信の武器を構え直す。

 

「"とにかく、今はこの場を乗り切ろう!いくよ、みんな!"」

 

先生の声に答えるように、アビドス対策委員会と便利屋68も武器を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒い制服と帽子を被った少女達、風紀委員会の人達が再び銃を握りしめる。そんな彼女達に対抗する為か、ヘイローを持たない大人の言葉に銃を構え直すアビドス学園と思われる制服を着た少女達とゲヘナ学園の生徒と思われる4人の少女。

そして、アビドス学園の生徒の方には恐らくは全員で守っていると思われるヘイローを持たない柴犬の姿が見えた。

柴犬の着ている服はボロボロで服に血が滲んでいるのが見える。

 

「またこんな事を……なんで、なんでわからないの」

 

風紀委員会のとった行動で彼の店は爆撃されたことはトリィが探しだしてくれた監視カメラの映像で既に分かっている。

何故、なぜよりにもよってヘイローを持っていない人達がいる場所を爆撃した?

周りの被害を考えなかったの?ヘイローを持たない人達は、私たちより弱いのに。

ヘイローを持たない大人は、撃たれたら痛いじゃすまない。体に穴は開く、傷が残る、もし撃たれ所が悪ければ死ぬ可能性だってあったというのに。

 

なんで、そんな()()に引き金を引ける?

 

『また我々の邪魔をッ!何をしているのですか!撃つ手を止めないでください!』

 

「ッ!」

 

再び銃声がその場に響き始める、そして風紀委員会の生徒の誰かが私へと銃口を向けてくる。即座に背中のバーニアを吹かしてその場から移動し此方へと飛んでくる銃弾を避けながら、私の思考を読み取ったAIが背中の翼に格納されている『ガンシュトゥルムスヴァーハーテーザー砲』と腰のベルト両側面に折り畳まれた『ヴァイパー・レール砲』が展開され合計4門の砲門が展開される。

 

覚悟ならある、私は戦う。

 

《"ハイマットモード"から"ハイマットフルバーストモード"への移行を完了、各武装展開、ターゲットのマルチロックを開始します》

 

そしてそれと同時に持っていた『ヴィルシーナ』を下で戦闘する人達に向ける、バイザー内にてターゲットをロックオンした事を知らせる音がなり続ける。

 

「フルバースト、当たれぇええええッ!」

 

その言葉共に私はヴィルシーナの引き金を引いた、それと共に四つの砲門から連続して放たれた銃弾はバチバチと雷を纏い、銃撃戦をする風紀委員会の生徒へと連続で着弾させていく。

 

「ギャっ!?」

 

「アババババッ!?」

 

「し、痺れて動けなっ!?」

 

弾が着弾した風紀委員会の生徒達が次々と膝をつき動けなくなったり、気絶して倒れ始める。倒れる生徒達の様子を確認した私は射撃を続ける。

 

「"え?キヴォトスの人は普通の銃弾でも痛いで済むはずじゃ……"」

 

「そのはずです!?一体あの銃は……」

 

「もしかして、スタンガンやテーザーガンの部類でしょうか?」

 

「あんなの、キヴォトスで使う人がいたの!?」

 

「珍しいよね、このキヴォトスでテーザーガンってッ!」

 

アビドス学園の生徒の話しているように、私の武器『ヴィルシーナ』『ガンシュトゥルムスヴァーハーテーザー砲』『ヴァイパー・レール砲』は、テーザーガンを元に設計、改造して産み出したものだ。

テーザーガンはスタンガンのように電源回路で高電圧を発生させ電極部分から放電光や放電音を発生させるものではなく、圧縮窒素によって電極を飛ばし電流を流し対象者に一時的な麻痺を起こさせることによって制圧するというものだ。

そんなテーザーガンやスタンガンはこのキヴォトスではあまり普及していない、何故なら近付くより先に銃で撃つ方が早いから。

銃弾を受けても痛いで済むほど頑丈なキヴォトス人の戦闘を止めるには、制圧するには普通の銃で応じていては時間がかかる。

なら撃った相手や当てた相手を行動できないようにするばいい、痺れさせればいい。

故に普通の銃ではなく相手を麻痺させたり、気絶させる特性を持つスタンガンやテーザーガンは最適だ。

故にこの銃なら一発でも当たれば気絶する程の電撃を打ち出せるテーザーガンやスタンガンを作ることが出来れば、戦闘部隊の鎮圧がより早く行える。

キヴォトス人が痺れて戦闘ができなくなり、気絶する程の強さの電気圧を調整して威力はは自身の体で実験し調整した。

当たれば確実に相手の動きを止められる事が分かっている。

 

『クッ何をしているんです!早くアイツを撃ち落としなさい!』

 

風紀委員会の行政官である天雨アコの言葉に、風紀委員会全員がアビドス学園やゲヘナ学園の生徒4人を他所に、私へと銃を向ける。

 

「ッ」

 

即座に私はハイマットモードの翼を畳み、横へと体を回転させバレルロールを行う。すると先程まで私がいた場所を幾つもの銃弾が通りすぎた。

バレルロールを止めた状態で、地上へと向かい降下しながら持っていた『ヴィルシーナ』を後ろ腰にあるライフルを格納させておける場所へ引っかける。

 

「落ちてきたッ!チャンスだ!」

 

『落ちた!フフフ、これまでの邪魔されてきた分の恨みを返す時は今です!奴を囲って近距離での攻撃にッ』

 

風紀委員会の生徒達がいる中央へと降下しながら、てに持ったブーメランシールドを振りかぶって正面へとつき出す。すると、左手に固定されていたブーメランシールドが左手の手甲から離れ、先程アビドス生徒から戻ってきたように羽根を広げ風紀委員会へと突撃していく。

その様子に驚いたのか、はたまた怯えたのかシールドブーメランが向かった先が開き誰にも着地を襲われない状態を作ることが出来た。

新兵器、ここで使えるようになってみせる……何度も見てきた、あのような動きで。

即座に両手を腰の両側面に装備された『ヴァイパー・レール砲』の更に横に装着されたホルダーのようなグリップのそれを両手で掴み、引き抜くと同時に両足にあるサブバーニアを吹かせて着地による脚へとダメージと着地時の痛みを防ぎ地面へと着地する。

そして引き抜いたソレの持ち手、そのグリップ全体を掴むように引く、すると引き抜いたソレの裏拳辺りから折り畳まれていた鉄で出来た太めの警棒のような物が伸びて展開されその棒全体がバチバチと音を立てる。

無事、武装の展開を出来たことを確認しつつ背中のバーニアを吹かせて大地を蹴る。

バーニアの加速でシールドブーメランの突撃を避けた風紀委員会の生徒へと接近しながら手に持ったソレを横腹をぶつけ横凪に払う。

 

「速いっ!?ガハッぁぁぅぁ!?」

 

その攻撃を食らった生徒は、吹き飛ぶと先程の私の射撃を食らったように同時に体を震わせながら地面に倒れる。

『ヴェルシーナスタンロッド・ハンディ』、これはヴェルシーナの技術を転用し製作したもので、折り畳まれたバトン程の大きさの警棒にヴィルシーナと同じ調整の電撃を纏わせた武器だ。

グリップを握ることで引き金が引かれ、棒へと電気を伝わせる事ができるというもの。

一度当てればキヴォトス人でも気絶させる事が出来る程の威力で、射撃戦闘が主で近距離での戦闘に慣れてないであろう彼女たちの懐へ入り込んですぐに行動不能に追い込める。

即座にその場から横へとステップを踏めば私がいた場所を幾つもの銃弾が通りすぎる。

 

「避けられた!?ガハッ!?」

 

それと同時に私を撃った生徒へと私の回りを滞空していたシールドブーメランが腹部へと突撃して軽く吹き飛ばす。

 

「ありがとうトリィ」

 

《問題ありません》

 

即座にバックパックのバーニアを再度吹かせ、私を狙いアサルトライフルを撃ってくる生徒の銃弾を体をそらしたり、バーニアのブースト速度を上げたりして避けながら風紀委員へと迫り、通りすぎる瞬間に両手のヴィルシーナスタンロッド・ハンディで横腹を叩きつける。

 

「ガッーーーーーーーッ!??!?」

 

「グフッ!?アッ──────」

 

腹に叩きつけられたヴィルシーナスタンロッド・ハンディの衝撃に風紀委員会の生徒達は苦しそうな声を漏らすが、その次の瞬間には体を伝う電気の感覚に言葉にならない悲鳴を上げ倒れ体を震わせる。

 

「次ッ!」

 

体にかかるGを歯を食い縛り耐えながらも、背中のフリーダムユニットについたバーニアと両足の太もも裏についたサブスラスターが展開され青白い炎を吐き出す。バーニアとサブスラスターの推進力で地面を蹴って宙に浮くと同時に側転する。

そして展開させた腰の両側面に装備されたヴァイパー・レール砲を展開させた連続で発砲する。

一度、地面に脚を下ろして両手に持ったヴィルシーナスタンロッドを構えたまま銃を撃たずに構えたままの生徒を睨みつける。肩を動かして呼吸し体に酸素を取り込む、何度もこうして戦闘はしているが未だにこの急速な疲労感は消えない。

いかにこのライジングフリーダムのユニットとはいえ、体にかかる負担や衝撃を完全に絶つことはできない。

まだ続くであろうこの戦闘へそう考えながら、私は両手に持ったヴィルシーナスタンロッド・ハンディのグリップを握りしめた。

 

遠くから迫る何かの音が聞こえ、次の瞬間。

 

「くっ!」

 

ヴィルシーナスタンロッド・ハンディのグリップ先から伸びる警棒を何発もの銃弾が貫いた。貫通した場所からバチバチと電気が音を鳴らす、即座に貫かれたヴィルシーナスタンロッド・ハンディを手放す。私の手から放れた瞬間に大きく爆発し、その形状を残すことなく粉々になった。

即座に空いた左手にブーメランシールドを戻し装着しつつ、私は銃弾の飛んできた方向を見る。

漆黒の冠のような巨大な立体ヘイロー、紫色の瞳にボリュームのある銀髪ヘアーをハーフアップにしており後頭部には捻れた4本角が生え、腰には骨ばった翼を持つ少女。

 

「また邪魔をッ!」

 

「それは此方の台詞。言った筈よ、()は撃つって……」

 

ゲヘナ学園三年、風紀委員会委員長の空崎ヒナが、その手に彼女の愛銃である終幕:デストロイヤーを此方に構えたまま立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として現れた謎の少女と風紀委員会の戦闘が始まり、何故か先程まで狙われていた筈のアビドス対策委員会の生徒と便利屋68は呆然と目の前の戦闘を見ていた。

 

「"……すごい"」

 

「はい、先程から常に囲われた状態での戦闘なのに全く引けをとらない所かどんどん制圧していきます……あの人、まるで何度も風紀委員会を相手取った事があるような動きに見えます」

 

「ん……ホシノ先輩の方が強い」

 

「そりぁそうだろうけど、私たちなにもしてないけどいいのこれ?さっきまで私たちアイツらと撃ち合ってた筈なんだけど」

 

「う~ん、でも完全に此方が蚊帳の外になってしまってますね☆」

 

目の前での戦闘に思わずそう溢す先生、少女の戦闘は一斉掃射や近接武装による戦闘。

その戦い方にただの男の子に戻りそうだった先生だが、いつ自分達への攻撃が始まるかわからない状況のため深呼吸し溢すようにその光景の感想を溢す。

そんな先生に同意しつつ戦況を分析する奥空アヤネ、自分達の先輩であり"暁のホルス"という異名がつく小鳥遊ホシノの方が強いと主張する砂狼シロコと、完全に戦闘から外れ全く狙われない状況に呆れ銃口を下に下げる十六夜ノノミと黒見セリカ。

 

「風紀委員会に対して一歩も引かないどころか射撃戦だけじゃなくて近距離戦闘までこなすなんてッ!なんてッアウトローなのかしら!」

 

「あーあ、またアルちゃんの瞳がキラキラし始めたよー?でも、あれってアウトロー関係あるの?」

 

「本当にどうするの社長?このままだと委員長が来るのも時間の問題だよ」 

 

「に、逃げますか?」

 

そして便利屋68の陸八魔アルは謎の少女の行動に目を輝かせる、浅黄ムツキはアルの様子に笑いながら疑問を呟き鬼方カヨコは現状から次の行動を思案し伊草ハルカはそんなカヨコの言葉に恐る恐るといった様子で逃走を提案する。

そう、これだけ戦闘が長引けば必然的に風紀委員会でも一番の戦力を有する風紀委員会委員長、空崎ヒナが対応に来るのは明らかだ。

便利屋68として活動する中、なんどもゲヘナ学園風紀委員会とは銃を向けあってきた。だけど、そんな便利屋68でも委員長である空崎ヒナと対峙すれば、全員で逃げ出すのは難しいだろう。

 

その時だった。

 

機械で出来た翼を持った少女の両手に握られたいる近接武器の内、片方が何者かから放たれた銃弾によって爆発した。

 

「まさかっ!?」

 

戦闘中で的確に翼を持った少女の武器を貫く程の狙撃能力と威力、それを持つ少女の心当たりに陸八魔アルは即座に便利屋68の仲間と共に逃走を指示する。

彼女が来たら自分達が捕まる可能性も高い、それゆえの陸八魔アルの判断は的確だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空崎ヒナの登場に、その場にいた風紀委員会全員が安堵した様子を見せ手にもった銃を下げる。

その様子に私は、少しだけ苛立つ。

あの人がいるから安心だ、あの人が来たから大丈夫だ、あの人が来るまで時間稼ぎをすればいい。

そんな考えでは、いつまで立っても彼女たちは成長しない。

いざ便りにする人物が倒れたら行動出来なくなると考えることが簡単だ。

 

「アコ、これはどういうこと」

 

『ヒ、ヒナ委員長!?こ、これには深い訳が……』

 

空中に浮かぶホログラムに映る天雨アコは、怯えたような、焦って様子の声を漏らす。

空崎ヒナはそれを一瞥すると、私へと向き直りその銃を私へと向ける。

 

「詳しい話は後で聞くわ、だいたい分かってるし。まずは彼女を捕まえるのが優先」

 

即座に左手にもったシールドブーメランを正面に構え、ここからどう動くかを考察する。

 

「降伏、してくれるかしら」

 

「降伏はしない、キヴォトスが平和になるまで私は飛び続ける」

 

このキヴォトスでヘイローを持たない人達が傷付かず、死なない平和を作るまで私は捕まるわけには行かない。

 

「その度に、こうして武力介入するつもり?そんなことじゃ平和なんて永遠に不可能。平和を守りたいなら私たちのように風紀委員会に所属すれば」

 

「少なくとも、今の方が生徒同士の銃撃戦に巻き込まれるヘイローを持たない人達を守れる。学園に縛られて自治区の境界で動けない貴方達とは違う!」

 

彼女の言葉にそう言葉を返す。

結局、風紀委員会も正義実現委員会も自由に動くことが出きるのは学園の範囲だけだ。

学園同士の境界や学園での権力者に命じられれば、動くのは遅くなる。

助けられた筈なのに助けられなくなる。

 

「そう、話し合いで決着は無理ね………」

 

彼女の言葉に私は手にもったブーメランシールドを正面へ構え、ヴィルシーナスタンロッド・ハンディの棒先を下へ向けて構える。

そんな時だった。

バイザーにゲヘナの市街地で物資を運ぶ様子の動画が表示され、トリィからの報告が表示される。

 

《マスター、ゲヘナ市街地東部にて温泉開発部による爆破準備が行われている映像が確認されました。このままでは近隣の住民に被害が発生可能性があります。》

 

「またアイツらッ!」

 

思わずそんな声が出る、そんな言葉に目の前空崎ヒナは不思議そうな表情を浮かべるも直ぐに先ほどと同じように此方を見つめてくる。

 

「?」

 

アビドスに何故風紀委員会が来ているのかは分からないけど、あの柴犬の人以外にこの場所でヘイローを持つ人はいない。ならこの場を離れてゲヘナの方へ向かった方がいい。

 

「すぐ行く、ゲヘナ市街地東部の監視カメラから温泉開発部がいる場所を探して。その場所への最短距離のナビゲーションを、爆発が起こる前に叩く!」

 

《ナビゲーションを開始します、ライジングフリーダムを"ハイマットモード"へ移行》

 

即座に右手に持っていたヴィルシーナスタンロッド・ハンディをヴァイパー・レール砲の側面へと納めて両脚と背中のバーニアを起動し宙に浮く。

それと同時に背中で折り畳まれていた翼が展開され、バイザー内の画面にはゲヘナ市街地東部への最短距離と監視カメラから捉えた現状が小さなモニターとなり表示される。

 

「ゲヘナ?それに温泉開発部って、一体どういう!?」

 

空崎ヒナの困惑と驚愕の混ざった表情を横目に私は、その場から高度を上げながらトリィの示してくれた方向へと向かって私は飛ぶ。

この場所にもう守るべきヘイローを持たない存在がいない、それに彼女が来たのなら風紀委員会の動きも変わるだろう。

なら、私はより早くゲヘナ市街地へ向かわないと。

そう考えているとバイザーが此方へと向かってくる攻撃の接近警報を鳴らす。即座に左へとバレルロールする、だが。

 

「うぐッ!?」

 

バレルロールした際に恐らくは空崎ヒナの撃った銃弾が当たったのだろう。右側のヴァイパー・レール砲に少し雷が走り、すぐに爆発した。

当然、レール砲が近くにあった右足に焼けるような痛みが走る、痛みに声が漏れそうになるのを歯を食い縛り耐えながら左右へ動き、時にはバレルロールを挟みながら、どうにか彼女の狙撃範囲から外れることが出来た。

フルバーストの要である武装の1つが壊され、近接武器も片方が壊されている。でも、今行かないと温泉開発部の爆弾で多くの被害者が出てしまう。

 

「やるしかない、この状態でも……やるしかッ」

 

誰かがやらないといけないんだ、そうじゃないとまた傷付いて血を流す人や涙を流す人が出てしまう。

 

私がやるしかないんだ……私が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分達へと背を向けて飛んでいく彼女の姿を見て、私はあの頃とはかけ放れてしまった今の彼女の姿に少しだけ悲しさを感じた。

幼い頃に聞いたあの優しい声も、何処か浮世離れした雰囲気も、その無邪気な笑みも……全部が変わってしまった。

 

『その、ヒナ委員長?』

 

「…アコ、今の状況を話してくれるかしら?」

 

『そ、その便利屋68が……』

 

「彼女たちの姿は、これっぽっちも見つからないけど?」

 

『そ、それは!?』

 

「それに、いま彼女がゲヘナの市街地東部に向かったわ。温泉開発部と言ってていたし、近くにいる風紀委員を送らせて。私もすぐ行く……アコ、あなたの処遇は後で伝えるわ。今はとにかくゲヘナ市街地東部に風紀委員を」

 

『わ、分かりました……』

 

脳裏に、あの頃の記憶が過る。

 

私がまだ風紀委員長ではなく、ただの空崎ヒナで彼女がまだ変わってしまう前の日常。

もう見えなくなってしまったが、彼女の飛んでいった先を見つめる。

 

あなたが、このまま無理して飛び続けるなら私が……私が貴方を墜とす。

 

貴方の心が、壊れてしまう前に。

 

 

 





ブルーアーカイブとガンダムのクロスオーバー作品を中々見ないので書きました。
お楽しみ頂けたなら嬉しいです

ご愛読ありがとうございました。

感想、お気に入り登録、高評価 
お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。