キヴォトス、ゲヘナ地区の東部にある市街地を飛び温泉開発部の生徒達を見つけた私は片手にヴィルシーナを持ち、もう片方の手でヴィルシーナスタンロッド・ハンディを掴んで温泉開発部相手に対峙していた。
温泉開発部は、彼女たちはそこに温泉があるなら何処でも関係なく、それこそ市街地であっても他校自治区でも大規模な破壊活動を行う部活だ。
キヴォトス、ゲヘナに存在する相手をするのが面倒な部活動の1つで、風紀委員会もそんな温泉開発部の存在には手を焼いている。
両手に持つ武器を握る力が強くなるのを自覚しつつ、右足に走る痛みを堪えて温泉開発部の生徒達と対峙する。
「なんで爆弾まで持ち出す!この市街地にはヘイローを持たない人だって住んでるっ!もしそんなものを爆発させたら、その人達は怪我どころじゃ済まない!」
「それがどうした!」
「そこに温泉があるなら、開発せずにいて何が温泉開発部か!」
「そうだ!温泉より優先するような物なぞ存在しない!」
温泉開発部のマークが記されたヘルメットを被った少女達の言葉に、自身の心の奥から暗い感情が沸き上がるのを感じる。
やっぱり、言葉での解決は不可能だ。
やるしかない、制圧するしかこの市街地を守る方法はない!
爆弾を爆発させる前に、相手を制圧しなければならない。
バイザーの端に記されたこの体を纏う両ユニットのエネルギー量を確認しつつ、相手の持つ爆弾を起爆させぬようヴィルシーナを持った手を生徒へと向け即座に引き金を引く。
ロケットランチャーやグレネードランチャーを持つ温泉開発部に、もしそれを避けた結果他の建物が破壊されヘイローを持たない人達や破壊された建物に人がいたらどうなるかを考えるだけで、背筋が凍るようだ。
《マスター、この近辺に存在する拡声器へ接続する準備が整いました。》
「今すぐ繋いで!」
バックパックのバーニアで飛び上がることを想定して、左足でバックステップを行う。それと同時に空中へと滞空し、此方へと向かってくるロケット弾やグレネードランチャーから放たれた手榴弾へと即座に腰の左側面に装備されたヴァイパー・レール砲を展開させ、ヴィルシーナと共にそれぞれを空中で撃ち抜き爆発させる。
「ゲヘナ東部市街地にいる全員に伝えます!今、温泉開発部は爆弾を使いこの場所一帯を破壊しようとしています!近辺にいる人達は、今すぐこの場から離れて下さい!」
私の話す声が、そのまま近くに建てられた拡声器から放送される。
これで、この場所の一帯にいる人達への勧告が行えた。あとは極力回りを壊さないよう立ち回り温泉開発部を制圧することだけ。
「繰り返します!温泉開発部は爆弾を使いゲヘナ東部市街地一帯を破壊しようとしています!近辺にいる人達は、今すぐこの場から離れて下さい!!」
その最後の言葉と共にトリィが拡声器とバイザーについているマイクとの通信が切断される、それと同時に近くの建物や、バイザーで近くの防犯カメラからヘイローを持たない人達やゲヘナ学園の制服を着た生徒達が逃げ出す映像を確認する。
確認していると、温泉開発部の生徒達が此方へとロケットランチャーやグレネードランチャーを構えるのが見えた。
バイザーには正にいま引き金が引かれる姿を拡大して見せてきた。
連続で打ち出される広範囲を爆発させる兵器、もし当たったら?市街地に当たったなら?
その家も建物も全部がその人の大切なモノ。
壊されたなら住む場所も、思い出も、生活する場所も、その家にある大切な物全てを失い涙を流す人が出てしまう。
そんなの絶対に許したら、逃したらいけない。
即座に背中のユニットをハイマットフルバーストモードへ展開させる。
「市街地には当たらせないっ!」
即座にバックパックの翼から展開された『ガンシュトゥルムスヴァーハーテーザー砲』と腰のベルト左側面に折り畳まれた『ヴァイパー・レール砲』が展開され合計3つの砲門が解放される。
普段より1つ足りない砲門に、一抹の不安を感じる。
バイザー内のカメラが温泉開発部の放ったグレネード、ロケット弾をターゲットに設定しマルチロックシステムにより、此方へ向かってくる手榴弾やロケット弾へと背部、腰部による三門のビーム砲撃と、手に持ったヴィルシーナから放たれたテーザー砲が高速で向かい、無事ロケット弾やグレネードを貫き爆発した。
轟音と共に目の前が爆煙が登る、高熱の爆風が此方へ向かって吹き、その熱さと爆発から恐らくはすべての手榴弾とロケット弾を破壊できたのだろう。
そう思った次の瞬間、爆煙の中から二つのロケットランチャーの弾が向かってきた。
恐らくバイザーのマルチロックシステムが、RISINGBLAST UNITの武装が全てが稼働していることを前提とした状態だったのだろう。
ゆえに二発をうち漏らした、だがそのロケットランチャーの弾は私の橫を過ぎ去る。
その事に安堵しつつ、撃ち抜こうとヴィルシーナを向けた時だ。
バイザーにロケット弾が向かう先の映像が表示される、そこには漁った様子で車を走らせる黒髪でツインテールの少女が見えた。
「っ!」
気がつけば私は、即座に背部ユニットをハイマットモードへと移行させ飛んでいた。
どうする?ヴィルシーナで射撃したら、彼女の車を傷付ける可能性だってある、シールドブーメランを投げようにも、片方を爆発させられても残り1つの弾頭が彼女に当たる。
なら残された手段は、1つだけだ。
私はハイマットモードの背部ユニットスラスターを限界まで加速させる、体にかかる重力が身体中を襲うが気合いでどうにか耐える。
《マスター、保護対象とロケット弾の距離残り100メートルです》
「行ってッ!」
トリィの言葉と同時に私は二つのロケット弾を追い抜き、即座に体を反転させながら逃げる少女の車とロケットランチャー弾頭の間に体を入り込ませる。
そして、左手に持ったシールドブーメランを私の正面に向かって飛んでくるロケットランチャーの弾頭ではなく、そこから少し離れた場所を飛ぶ二発目のロケットランチャー弾頭へと飛ばす。
「トリィ!ヴァリアブルフェイズシフト最大展開!」
《ヴァリアブルフェイズシフト最大展開します》
ヴァリアブルフェイズシフト装甲、〈RISINGBLAST UNIT〉と〈FREEDOM UNIT〉に採用している私が研究の末に作り出した装甲板で、電気を通すことで、キヴォトスで多くの人が使用する実弾銃、実弾を使用した物理攻撃を無効化する効果を発揮する事が出来る特殊な装甲だ。
例え剣で斬りつけられようと、この装甲はアクティブモード、今の体に纏うUNITの状態だがこの状態なら例え対戦車ライフルや戦車の砲撃でも傷付けられることはないだろう。
一件、無敵に見えるがこの装甲には弱点がある。
ディアクティブモード、つまりはこの装甲が通電していない状態なら装甲にダメージが通る。
実弾を食らえば装甲は貫通するだろうし破損もあり得る、そして例えアクティブモードだったとしても、ビームのような攻撃には弱く一発でも当たれば装甲が破壊されるだろう。
まだキヴォトスではエネルギーライフルの存在は見られないため、少なくとも今は改良する必要はない。
目の前に迫るロケットランチャーの弾頭、顔の前で両手をクロスさせる目を瞑る。
私の知る物なら本来は腕にはビームシールドを発生させる装置があるが、私の技術ではビームシールドの製作は出来なった。
このヴァリアブルフェイズシフトを最大展開した状態なら、ロケット弾一発くらい耐えきる事が出来る筈だ。
私の耳に少し離れた場所から金属のカンという音が聞こえると同時に私の顔の前に構えた腕にも何かがぶつかる音と何かが当たったような小さな衝撃が伝った。
「っ!?」
次の瞬間、ロケットランチャーから放たれたロケット弾の爆発による熱、衝撃が身体中を痛め付け爆発したときの轟音が私の耳を襲う。
恐らくはロケット弾のぶつかった方の手が熱い、熱くて痛い。もしロケット弾が爆発したときのロケット弾の破片が刺さったのだろうか?それとも強い衝撃が与えられたことによる痛みだろうか。
とにかく痛くて、熱くて爆発したときの煙で息苦しくて…キーンという耳鳴りが聞こえて周囲の音が遠く聞こえる。正面に構えた手でも前の方に構えていた左手がダラリと下がる、恐らくは動かせるが熱いし痛いし可能なら動かしたくない。
自分がいま、どのように立っているのかが分からず少しだけ朦朧とする意識の中で近くに落ちている大きく破損しもう使うことが出来ないであろうシールドブーメランが確認できた。
背後を見れば先程の車が遠くへと向かっているのが見える、もう片方のロケット弾からも背後の車を守りぬく事が出来たようだ。
シールドブーメランの強度に問題はない、そもそもあれは生徒からの銃撃を防ぐものとして開発したものだ。
爆発やグレネードランチャーは防ぐことができても二発、そして少し前の風紀委員会との戦闘でアビドスの生徒を守ったこともあり恐らくはダメージが蓄積していたのだろう。
『マスター〈RISINGBLAST UNIT〉戦闘ダメージ75%を経過、温泉開発部は逃走……マスターのダメージをスキャンしました。ひどい怪我です、撤退を提案します』
「わかった、トリィ……〈FREEDOM UNIT〉、〈RISINGBLAST UNIT〉の一部をパージしてバード形態に移行」
『了解』
私の背負っていた青い翼が特徴的な飛行ユニットが外れ、同じようにして身に纏っていたアーマーから外れた一部のパーツと合体し鳥のような形状へと変化する。
地面から離れ私の近くを滞空するユニットの上に乗り、落ちないよう溶接しておいたハッチハンドルを握りその状態でスーツの動きを固定させる。
上昇するバード形態となったユニットの上から下を見下ろせば、爆風によって破損した建物が少し見えた。
『いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす…』
脳裏に過る、復讐に取り憑かれた1人の少年の瞳。
これを繰り返していけば、いつかは誰も銃を向け会わなくて済む世界になるのかな……。
ご愛読ありがとうございました。
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