遊戯王new stage〜デュエル喫茶は忙しい〜   作:山姫

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初めまして、山姫(やまんば)と申します。
デュエル小説が増えないので自分で書くことにしました。
お気に召せば幸いです。


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 望んで不良になったわけではなかった。

 敵を圧倒し、言い訳もつかない程の敗北を刻み込む。そんな事ができてしまうデュエルの腕が周囲を変えてしまった。

 望んで相手をしてくれる人間は減り、自分のデュエルに憧れた者が周囲に集まり。そうしていつしか、デュエル「だけ」に情熱を燃やす不良学生達の長になっていたのだ。

 

 

 

 

 「──これで終わりだな。やれ、[エタニティ]」

 

 相手 LP 0

 

 今日もまた1人、叩き潰した。

 崩れ落ちる対戦相手。呆然とする相手の取り巻き。

 デッキが回り、相手のリソースを削り取り、後には何も残さず。いつもの光景だ。

 

 「嘘だろ…王城さんが負けた…??」

 

 「チーム[タイラント]、だったか。名前負けもいいところだな」

 

 暇つぶしにもならなかった、と進藤 新(しんどう あらた)はデュエルディスクを畳む。

 着崩した制服、炎のような赤い髪。そして何より不甲斐ない相手にぶつけたりなかった戦意の残る瞳が敵対する者達を威圧していた。

 

 

 新達──チーム[アッシュ]と同じようなデュエルチームが何処からか喧嘩を売りに来て、最終的にはリーダー同士が闘う。この街では珍しい事ではない。新がこの地域の不良をまとめあげる前から、野良試合もチーム同士のぶつかり合いも存在していたのだから。

 

 「リベンジがしたけりゃ俺が受けてやる。お前以外の奴は大人しくさせとけ。俺以外のチームメンバーやら関係ねえ奴に手を出したらテメェら全員叩き潰す。いいな?」

 

 「…人質をとるなってか。[アッシュ]のリーダーは随分甘ちゃんだなぁ?──自分の弱点晒したようなもんだぞマヌケが」

 

 項垂れていた敵のリーダーが鼻で笑う。

 

 「泣きつかれるのが面倒なだけだ。もっとも、「[タイラント]の頭は雑魚狩りしかできない玉無し」とでも噂されたいなら好きにすればいい」

 

 こんな負け惜しみを何度も受けた新に、その挑発は通用しなかった。

 デュエルチーム、それもそのリーダーは何より面目、プライドを重んじる。デュエルでしか己を証明できない者達にとって、デュエル以外の恐喝行為など自身の無価値さを周囲に見せつけるに等しい。

 

 「……クソが」

 

 [タイラント]のリーダー、王城と呼ばれていた男が立ち上がり、背を向ける。

 

 「次は絶対殺す。それまで好きなだけふんぞりかえってやがれ」

 

 「おう、せめて少しは強くなってこいよ」

 

 返す言葉には、新自身も気づかない期待が滲んでいた。

 

 

 

 

 新は一人、そのまま河原に佇んでいた。せめて少しでも、先の決闘において得られるものがなかったかと思い返していた。

 並ぶ者も競う者も、教える者すらも物足りない決闘の授業に失望し。群れる事にも興味がないのに祭り上げられ、[アッシュ](灰へ帰す)なんて大袈裟な名前のチームを作られ。腕に覚えのある者達がケンカを売りに来る環境に身を置いてなお、新の心は満たされなかった。

 いっそプロにでもなってしまえれば新しい世界が見えるかもしれない。だが大学卒業後にようやく試験を受けられるプロ業界において、学生がプロ入りなど特例中の特例。不良をまとめている事で素行に問題ありと見做される新に声がかかるわけもなかった。

 

 「プロ試験に挑戦できるまで5年。だがお行儀よく授業受けてるだけで満足できるわけねえ。…お山の大将も大して面白くなかったが」

 

 ただ只管に、強くなる事を楽しみながら進んできた道の果て。新はもう、自分の行く先を見失っていた。

 

 「俺はどこに行けば…誰と戦えば満たされる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あら?対戦相手が欲しいんですか?」

 

 声が、すぐ後ろから聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 ばっ、と振り返ると、そこには1人の女がいた。

 青いウルフカットの髪、眼鏡に透ける涼しげな琥珀色の瞳。執事服のようなジャケットとパンツ。この街にいて見た記憶がない、一度見たら忘れないであろう美貌がこちらを見て笑っていた。

 

 「…誰だ、アンタ」

 

 「んー…なんて言ったらドラマチックですかね。

 

 …私は扉、あるいはその先の景色そのもの。これでどうですか?」

 

 何を言っているのか、わからなかった。

 扉と言ったか。何が言いたい?その扉はどこへ繋がっている?

 疑問は残るが、どうせ適当な言葉遊びだと断じ、目的を聞きにかかる。

 

 「冷やかしか?それとも誰かの敵討ちか?

 どっちにしろ今は遊びに付き合ってやる気は」

 

 「さっきのデュエル見てたんですけどね?聞きたい事がありまして。

 ──あなた、何が楽しくてデュエルしてるんですか?」

 

 「…は?」

 

 突飛な質問に唖然とする新を他所に、「だってそうじゃないですか」と女は続ける。

 

 「相手が出してきたカードを取り敢えず潰して終わり。相手がどんなデッキか、どんな手札かなんて考えようともしない。ただデッキの力を押し付けているだけ。

 偶々対応できたから勝てているだけなのに、『余裕で勝ててつまらない』みたいな顔。…ね?つまらないでしょ?あなたも、そのデュエルも」

 

 話の内容が少しずつ頭に入ってくる。頭に血が上り、新の拳に力が入る。

 

 「言わせておけば好き勝手言ってくれるな。俺がまぐれ勝ちでイキってるとでも言いてえのかテメェ」

 

 「ええ。少なくとも、先ほどのお相手はあなたを超えようと必死に考えていましたよ。流れ作業をしていただけのあなたよりは見どころがありました」

 

 「…よぉくわかった。聞くだけ無駄だってな」

 

 先ほど畳んだデュエルディスクを再展開。

 敵と見定めた相手に拳を突き出す。

 

 「さっきテメェが絡んできた時点でさっさと相手してやりゃよかった。少なくともその知ったような戯言を聞かずに済んだんだからな」

 

 「ふふ。やっとその気になってくれたみたいですね。

 よかったです。これだけ煽ってシカトなんてされたら私ただのイタい人になってました」

 

 最初からその気だったらしい女も、懐からスマホ大の小型デュエルディスクを左手にセット。ソリッドヴィジョンによりフィールドが投影される。

 

 「闘う前から俺をあそこまでコケにする度胸があったのはテメェが初めてだ。名前を聞いておいてやる」

 

 「風鳥 菖蒲(かざとり あやめ)と申します。以後お見知り置きを。あなたは?」

 

 「進藤 新だ。…どうせコレが終わったらすぐ忘れたくなる」

 

 

 

 「デュエル!」

 「デュエル」

 

風鳥LP8000

進藤LP8000

 

 

 「先攻はお譲りします。お得意の流れをどうぞ?」

 

 「さっきのデュエルを見ててそれか。ハンデのつもりなら後悔することになるぜ?

 俺は[真炎王 ポニクス]を召喚。効果によりデッキから[炎王の聖域]を手札に加え、発動。効果を適用して[炎王の孤島]を配置する」

 

 1枚からカードが連鎖し、一気に3枚のカードが場に展開される。無論全てのカードが配置された時の効果以外でも役割を持っている、新の無敗を支えてきた必殺の布陣。

 

 「1体召喚しただけでこのアドバンテージ。やはり凄まじいですね、[炎王]は」

 

 「好きなだけ余裕こいてろ。

 [孤島]の効果により、場の[ポニクス]を破壊。デッキから[聖炎王 ガルドニクス]を手札に加え、一連の処理後に[聖炎王]の効果を発動する。──種火より芽吹け、不滅の業火![聖炎王 ガルドニクス]!!」

 

 

 場に降臨するは炎と鎧をその身に纏う不死の鳳凰。同胞の放つ散り際の炎より出で、臣下の命をもって相手を焼き尽くす炎の王。

 

 聖炎王 ガルドニクス 攻

 レベル8 2700/1700

 

 

「こいつは自軍の炎属性モンスターが破壊された場合に手札か墓地から特殊召喚できる。そして召喚、特殊召喚に成功した場合に手札・デッキ・フィールドの炎属性の獣・鳥獣・獣戦士族を破壊し、その攻撃力の半分をターン終了時まで得る。デッキより[炎王獣 バロン]を破壊し、攻撃力を吸収」

 

 聖炎王

 2700/1700→3600/1700

 

「カードを一枚セットしてターン終了。…さぁ、見えている妨害はないだろ?殺してみろよ、できるもんならな」

 

 新 LP8000

 

モンスター  [聖炎王] ATK3600→2700

魔法・罠 伏せ1 [炎王の聖域]

フィールド魔法 [炎王の孤島]

 

 

 「静かな立ち上がり。先程の方にはそう評されていましたね、この初動」

 

 「だがその舐めた口を利けたのも次のターンが終わるまでだった。…さぁ、アンタのターンだ」

 

 「では遠慮なく。私のターン、ドロー」

 

 ビッ、と鋭い音を放つドロー。慣れた手つきにどうやら相手も素人ではないと新も気付く。

 だが問題ない。こちらの仕込みは終わっている。

 

 「スタンバイフェイズ、墓地の[バロン]と[ポニクス]の効果が発動される。破壊されたターンの次のスタンバイフェイズ、[バロン]はデッキから[炎王]カードをサーチし、[ポニクス]は手札に戻る。[炎王神獣 キリン]をサーチして[ポニクス]をサルベージする」

 

 前のターンに消費した手札があっという間に5枚に戻る。

 無論、ただ手札が増えただけでは[聖炎王]以外に相手の攻め手を防ぐ手段はない。しかし、[キリン]は自身以外の炎属性を手札か場から破壊する事で特殊召喚できる。

 そして、[キリン]と[聖炎王]、更に[聖域]が場に揃った場合──

 

「─なぁ、アンタもうこの後何が起こるか分かりきってんだろ?なのにその余裕はなんだ?」

 

 ここから繰り出されるコンボは、必ず相手に消耗を強いる。相手は手札が6枚の状態からターンを始められるとはいえ、新の従える上級モンスターに対処するためには2.3枚の手札消費は避けられない。それに対して新は消費1枚からスタートした布陣で躱し切り、先のような回復するリソースによる物量差で敵を潰す。

 故に新は勝てる。勝ててしまう。それがこれまでずっと繰り返されてきた事だった。

 

 「わかりきっているから余裕なんですよ。見えてる地雷なんていくらでも備えができますし。

──ま、実際に見せた方が早いですね。私はカードを一枚セット、そしてセットしたカードを対象に[破械神 シャバラ]の効果を発動します。対象のカードを破壊し、特殊召喚」

 

 盤面に現れたのは紅のケダモノ。鋭い爪牙とその身に纏わりつく壊れた拘束具がこの獣の獰猛さを物語っている。

 大人しげな見た目の女に似合わないカードに、新は内心で警戒レベルを上げた。

 

 「セットされた[破械唱導]の効果。セットされているこのカードが破壊された場合、デッキから[破械]モンスターを特殊召喚します」

 

 「破壊されて展開するテーマか。面倒臭え…チェーンして手札の[キリン]の効果を発動。手札の[ポニクス]を破壊して自身を特殊召喚する」

 

 「構いませんよ。[破械神 シュヤーマ]、場へ」

 

 双方の場に二体のモンスターが揃う。それぞれレベルは8と6。

 先に動いたのは新だった。

 

 

 「[聖域]の効果だ。相手が特殊召喚に成功した場合、場の[炎王]のみを使って炎属性モンスターをエクシーズ召喚出来る。俺は[聖炎王]と[キリン]、二体のレベル8モンスターでオーバーレイ」

 

 二体の炎が激しく燃える。二つの炎はやがて一つに重なり、その中より現れるは──

 

 「永久の炎が天地を焼く。抗え、歯向かえ、立ち塞がれ!万象一切、灰へ帰す![炎王神 ガルドニクス・エタニティ]!」

 

 ──黄金が、爆ぜる──

 

 炎王神 ガルドニクス・エタニティ 攻

 ランク8 3000/2000

 

 「このカードがX召喚に成功した場合、フィールドに存在する他のモンスターを全て破壊する!!

テメェが何をしようとしていようが関係ねえ!!爆ぜ散りやがれ!!」

 

 黄金の鳳凰が大きく羽ばたくと、ゴウッと音を立てて再び炎が燃え広がり、菖蒲の従える二体の獣を灰へと変えた。

 モンスターが一掃された場で生き残っているのは[エタニティ]のみ。それを従えた新は心底つまらなそうな顔で語りかける。

 

 

 「ほら、これでリセットだ。あと4枚の手札で何ができる?レベル6を2体揃えたんだ、そこそこの大型を出したかったんだろうが…まぁ無駄だったな」

 

 対する菖蒲は…笑顔だった。

 

 「成る程、『読み』ができないわけではないんですね。

 ご明察です。あなたがあのタイミングで[聖域]から[エタニティ]を出していなければ、私は[聖域]も[キリン]も攻略できるモンスターを出していました」

 

 「ほう?それがハッタリでなければアンタのデッキもそこそこ強いようだな。

 だがいくら強かろうが出せないんじゃ意味は無え。次のターン死なないように精々その手札4枚で足掻きやがれ」

 

 そこまで聞いて、菖蒲が目をぱちくりさせる。

 

 「…ちょっと待ってください。これで終わりですか?

[エタニティ]が強いのはわかりますけど、あなたさっきの私の展開に反応しなかったって事は[うらら]も[G]も握ってないでしょう?…なのにこれで私が守勢に回るしかないと?」

 

 「[灰流うらら]に[増殖するG]の事か?

偶に使ってくる奴がいるが、1つ手順が変わる程度のカードだろ?あんなもんよりリターンがデカいカードはいくらでもある」

 

 数秒、菖蒲が固まる。

 

 「…そう…ですか…そういう認識なんですね…確かに[炎王]は貫通力ありますけど…そっかぁ…これは相手に恵まれないというか…デッキに恵まれすぎたというか…」

 

 頭を抱えてブツブツ言い出す菖蒲。

 

 「おい、何独り言言ってやがる」

 

 「あぁ失礼しました、ちょっと考え事を。

 で、考えた末決めました。今回のデュエル、ちょっとだけ真面目にやります」

 

 「真面目?はっ、ふざけてたから負けましたとか言い訳するつもりだったのかよ?だが気分が変わろうが手札は変わらねえ。本気を出してどうにかなるのか?」

 

 「なりますよ?手札が4枚もあればいくらでも。

 それに、手札だけじゃありません。

──墓地へ送られた[破械神 シャバラ]の効果によりデッキから[破械]魔法・罠をセットします。[破械雙極]、セット」

 

 菖蒲が動く。先ほど見た[破械唱導]と同様、セット状態で破壊しても後続を残す効果に加えてフリーチェーンの蘇生効果も持ち合わせているテキストを確認し、新は顔を顰める。

 

 「さて、まずは[エタニティ]を退かさないとですね。手札より[暗黒の招来神]を召喚。召喚成功時効果で[七精の解門]をサーチし、発動。発動時の効果で[三幻魔]とその関連モンスターをサーチしたいです」

 

 繰り出されるカードのテキストをそれぞれ確認していた新の手が[七精の解門]を見て止まる。

 サーチに加え、場に残る限り手札1枚をコストに墓地の攻守0の悪魔族を1ターンに1度蘇生する永続魔法。場の[招来神]が墓地へ送られた場合、それが蘇生される恐れがある。2つの効果を見て、新は決断した。

 

 

 「それにチェーンだ、セットしていた[炎王神天焼]を発動。[エタニティ]と[解門]を破壊する」

 

 自身のエースと引き換えに、相手のリソース源を潰す。あのような毎ターン何かしら場を動かせるカードは最初に潰しておくに限る。[炎王の孤島]を利用してデッキを回している新はそれを身をもって知っていた。

 それに、新とて[エタニティ]を無駄死にさせたわけではない。

 

 「[エタニティ]の効果だ。このカードが破壊された場合、その時持っていたX素材の数まで墓地から[炎王]を特殊召喚できる。甦れ、[聖炎王]、[キリン]。そして[聖炎王]でデッキの[炎王妃 ウルカニクス]を破壊し、[ウルカニクス]の効果。デッキより[炎王神獣 ガルドニクス]を守備表示で特殊召喚」

 

 

 聖炎王 ガルドニクス 攻

2700/1700→3100/1700

 炎王神獣 キリン 攻

2400/200

 炎王神獣 ガルドニクス 守

2700/1700

 

 

 再び並び立つ3体の神獣。

 これが[炎王]。力尽きてもまた燃え上がる、消えない炎。

 

 「これで私は召喚権を消費し、サーチも空振り。[招来神]の追加召喚以外でモンスターを展開する事が難しくなりました。いやぁ困りましたね」

 

 「その上から目線、いつまで続けるつもりだ?

 確かに[エタニティ]を喰らってなお[幻魔]だかリンクだかを展開する算段が付いてたのは褒めてやる。それに召喚権を使わないまま[エタニティ][キリン]を止める下準備を済ませていたのもな。

 だが[神天焼]でその希望も潰えた。そして俺の場には破壊された場合に後続を残す[ガルドニクス]と[キリン]、そして簡単に墓地から蘇生できる[聖炎王]がいる。破壊されてもただでは死なないのは[破械]ってのも同じようだが…コイツらの前でいつまで粘れる?」

 

 ここまで応酬を重ねれば、新にも菖蒲の実力の高さは理解できる。1、2枚からの展開を繰り返しこちらの妨害を無理矢理使い切らせるデッキ、使う順番を誤らないプレイング。間違いなくこれまで新が戦ってきた中でも上澄みに入る強さだ。

 故に理解できない。ここまで絶望的な状況で、なお笑みを崩さない敵の余裕が。妨害を使い切ってなお残るこのリソースの差を覆すのはほぼ不可能に近い。2度も展開の起点を潰された後なら尚更。それが彼女ほどの強者に理解できない筈はないのに。

 

 「粘るつもりなんて最初からないですよ。私が打つ手は全て、勝つ為の一手。このデッキの全てが、相手を狩る牙です。

 [雙王の械]、発動」

 

 バキン、と何かが砕け散る音がする。

 鎖を砕き、見えない『何か』が首をもたげる気配がする。

 

 「このカードにより、私は[破械]カードをデッキから手札に加えます。加えるのは[破械童子 アルハ]。そして、[アルハ]の効果を場にセットされた[破械雙極]を対象に発動。[アルハ]も[シャバラ]同様、場のカードを破壊して特殊召喚出来ます」

 

 場のカードを地面から突き出した手が砕く。

 顔や手足を拘束具に覆われた赤い鬼が一匹、地面からずるりと這い出した。

 

 破械童子 アルハ 攻

レベル3 1500/1500

 

 「破壊された[破械雙極]の効果により、[破械童子 サラマ]をリクルート。[サラマ]の効果により、墓地から[破械雙極]を再びセットし、デメリットとして場の[アルハ]を破壊。

 [破械童子]の共通効果により、戦闘もしくは自身以外の効果で破壊された場合同名以外の[破械]を手札、デッキから特殊召喚できます。狩れ、[破械神の禍霊]」

 

 ぼうっ、と青い炎が灯る。

 吹けば飛びそうな霊体の獣が、音もなくフィールドに降り立ち敵を睨んだ。

 

 破械神の禍霊 守

レベル8 0/3000→900/3000

 

 一貫して静かなままの菖蒲のプレイングが不気味だが、出てきたのは打点の足りない壁1体。

 ──そう思えるほど、新は楽観的ではない。

 相手の意図を探るため、[禍霊]のテキストを読む。

 

 「…!!この、効果は!!!」

 

 「ふふ、ようやくご自分の立場が理解できましたか?打てる手が尽きた時点で、あなたは最早狩る側ではなくなったのだと。

[禍霊]は相手のモンスターを対象に取り、そのモンスターと[禍霊]のみで闇属性リンクモンスターを召喚できます。対象は…そうですね、[キリン]にしましょうか」

 

 崩れる。相手への失望が、自分が蹂躙する側だという驕りが、勝利の確信が、全て崩れ去っていく。

 主の姿をよそに、[キリン]は[禍霊]に噛みつかれ、抵抗するも無慈悲に貪り食われていく。

獰猛に、残酷に。その血肉を散らし、身に纏う炎も徐々に小さくなり、やがて消える。

 [キリン]を食い尽くすと同時に[禍霊]の姿が変化する。霊体が実体を持ち、逞しい脚や獰猛な顔が形を成す。鬣を靡かせる、青い毛並みの獣の名は──

 

 [破械神 ラギア]攻

 リンク2 1800

 

「まず一体。相性が悪いと文句の一つも言いたいでしょうけど、その辺は後でまとめて聞きますよ。[ラギア]と[招来神]で[破械神 アルバ]をリンク召喚し、効果を発動します。このカードは[禍霊]同様、自分のターン中相手のモンスター1体と自身のみを素材に闇属性モンスターをリンク召喚する起動効果を持っています。

次は[炎王神獣]の方の[ガルドニクス]をいただきましょうか」

 

 奪い去られていく。新の従えていたモンスター達が。破壊されたとて新たな炎を残す[炎王]の獣達が、何も為せずに。

 

「我が行く覇道は紅く飾られ、仇なす全ては糧に過ぎず。首を垂れろ、慈悲を乞え。万象一切、食い尽くす。…[破械雙王神 ライゴウ]」

 

 [ガルドニクス]を食い尽くした[アルバ]の毛並みは、糧にした敵の色など関係なく漆黒に染まっていく。拘束具はそのままに、牙は鋭く、鬣は猛々しく。棘や角などを一層増やし、その形状は触れる事はおろか近付く事すら許さないほどに攻撃的に。

 破壊をその名に持つ[王]が、産声をあげる。

 

 

 破械雙王神 ライゴウ  攻

リンク4 3000

 

 「俺のモンスターを素材に、リンク召喚だと…!?それが2回も!!

 テメェ、ハナからそのつもりで…!!」

 

 激昂する新。対する菖蒲は穏やかな笑顔を崩さない。

 

 「どうですか?あなたの知らない、『扉』の向こう側の景色は。

 相手の事を考えず、ただ一番強い手順を繰り返すだけ。それだけで通用するほどデュエリストは甘い生き物じゃない。その程度の人間に見えるほど、世界の果ては近くない」

 

 表情は変わらない。だと言うのに、違って見える。自分の盤石な備えを食い破った敵の言葉が、笑顔が、全てが捕食者の迫力を伴っている。

 

 「まぁ平たく言えば現状を招いた原因はデッキ相性とあなたの尚早なプレイングですよ?

 [シャバラ][シュヤーマ]からの展開を止めたのは正解。でも、[解門]は放っておいてもよかったでしょう?少なくとも発動時ではなく蘇生効果使用時に[神天焼]をチェーンしていれば、[招来神]から呼び出される『何か』を見てから私の手札コストを無駄遣いさせられたんですから。

 その結果。あなたは情報アドバンテージを得られなかった上に、こうして盤面の崩壊を眺めているしかなかった。強いて言えば、あなたがいらないと断じた[灰流うらら]があれば、私の最後の一手も止められたでしょうね」

 

 でも、と一度言葉を切り。

 

 「カードを採用する基準は人それぞれです。[灰流うらら]だって使い所を見極められる人間とそれによって生じる隙に勝機を見出せるデッキでなくては使いこなせませんから。

 全部結果論です。これだけ言ってもあなたが私に勝てば敗者の戯言。この言葉を否定したいのなら、私に勝てばいい。

 

 

 

 

 だから、続けましょう?最後まで何が起きるかわからない、全身全霊をかけた本気のデュエルを」

 

 

 新の目の前にいる存在は『扉』なんて小さなものではない。

 覗き見ることを拒み、資格なき者が通る事は許されない、『門』。

 

 世界が、変わる。

 新の知らない、『門』の向こう側の世界が牙を剥く。

 

 

 

 

 

 

 




デュエル完結まで書く予定が、ちょうどよく引きっぽいシーンができたので一旦ここまでにしました。
書き溜めなしなので気長にお待ちいただけるととても助かります。
「あ、ここの表現気に入らない!」と感じたら修正入るかもしれませんが、基本ストーリーに関しては変更する予定はありません。
喫茶店開店までは…何話かかるかわかりません。なんとな〜く、気になった時に見にきてください。話が進んでるかもしれません。
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