遊戯王new stage〜デュエル喫茶は忙しい〜   作:山姫

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 大変です。更新ペースがどんどん落ちていきます。文を書き連ねるごとに疲労が重なっていきます。恐ろしやです。
 今回は予告通り新のデッキ構築と今後の改築案その他諸々、簡単な遊戯王のお勉強や設定公開がちょろちょろ。どうぞごゆるりと。


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「いやぁお恥ずかしいところを…」

 

 「確かにカッコ悪かったな。幻滅どころじゃねえ」

 

 がっくしとカウンターテーブルに突っ伏すのは、一昨日新と激闘を繰り広げ、心境を一変させた風鳥 菖蒲。シャッターを開けるのに苦戦していたところを見かけた時は、勝負の時の飄々とした姿とのギャップで眩暈がした。ちなみにシャッターは結局新が開けた。

 

 「しかしここ、喫茶店だったんだな。いつもシャッター閉まってたから気にした事もなかった」

 

 「祖父が道楽で昔開いたものでして。私が子供の頃はやっていたんですが、祖父が他所から別の仕事を頼まれて以来ずっとこのままだったんです。

 私が小さい頃気に入っていたからと残しておいてくれたのを、この度正式に譲ってもらった形になります」

 

 「道楽ねぇ…」

 

 内装を見回す。閉まっていたという割には埃なども目立たず、飾られている調度品や器具を見るにこまめに手入れされていたであろう事が伺えた。

 

 「大学生の間にはここで祖父から喫茶店に関する様々な事を教えてもらいました。お陰で卒業してからバリスタ関連の資格を取って店を持つ事を許されるまでスムーズに行きましたよ」

 

 「バリスタってあの珈琲淹れる人の事だよな?

 アンタ、プロデュエリストじゃなかったのか」

 

 菖蒲のデュエルにおける強さ、エンターテイナー気質などを見て『魅せる』デュエルに慣れているように感じただけに、この職業は意外だった。

 プロ同士の試合を知っている新が見ても、菖蒲の実力はそれらに引けをとる事はないと思えるのに。

 

 「確かにプロではありませんが、デュエルは好きですよ。

 ただこのお店を継ぐ事が夢でしたし、プロでなくてもデュエルは続けられますから」

 

 「へぇ…」

 

 「あなたも視野を広げてみればプロデュエリスト以外に興味を持てる進路が見つかるかもしれませんよ?デュエルが強い事はあくまで手札の1枚に過ぎないんですから」

 

 「成る程な。…まぁ、考えておく」

 

 少なくとも今はデュエルを続けていく事しか考えていないし、その為に最善の環境であるアカデミアへの進学が第一目標だ。将来を考えるのはその後でも問題ないだろう。

 

 「おっと、またお説教みたいになっちゃいました。大人になると年下に何か益のある話をせねば、と考えてしまうのはよくない癖ですね。

 折角手伝ってもらったんですし、何か飲み物でも──」

 

 「あぁ飲み物とかはいい。それより折角会えたんだ、頼みがある」

 

 自分のデッキと、下校前に香織からもらったカードをテーブルに置く。

 

 「デッキを見て欲しいんだ。アドバイスをくれないか?」

 

 その相談を受け、菖蒲は微笑んで──

 

 「えっ…飲み物、いらないですか…?折角のお客さん第一号なのに…?」

 

 くれなかった。お礼と言いながら、自分の腕を披露する機会だとワクワクしていたのかもしれない。少ししょぼんとした表情になっている。

 …どうも今日はこの女性の知らない一面がよく見える日だ。人間、初対面の印象だけではわからないものである。

 

 「…じゃあ珈琲も。ブレンドで」

 

 

 

 

 

 「で。デッキ相談といいましたね」

 

 「あぁ。折角俺より強い相手に会えたんだ、この機会に俺が強くなる余地があるなら教えて欲しい」

 

 機嫌を取り戻した菖蒲が淹れた珈琲を共に飲みながら雑談し、一区切りついた頃。

 本来の話題に戻り、新は先ほどの頼み事を正確に言い直す。

 

 「わかりました。[炎王]は知らないデッキではないですし、私にできる範囲でしたら」

 

 「感謝する。これが俺の現状のデッキだ」

 

 

 新 [炎王] 40枚

 

 モンスター 21

 真竜皇アグニマズドV×1

 聖炎王 ガルドニクス×3

 炎王神獣 キリン×2

 炎王神獣 ガルドニクス×1

 ブラック・ホール・ドラゴン×1

 九尾の狐×1

 アーティファクト・モラルタ×1

 アーティファクト・デスサイズ×1

 炎王妃 ウルカニクス×3

 炎王獣 ガネーシャ×2

 炎王獣 バロン×2

 真炎王 ポニクス×3

 

 魔法 15

 炎王の孤島×3

 炎王の聖域×2

 炎王神天焼×2

 炎王炎環×1

 真炎の爆発×1

 墓穴の指名者×2

 ブラック・ホール×1

 ツインツイスター×1

 ハーピィの羽根帚×1

 ワン・フォー・ワン×1

 

 罠 4

 激流葬×2

 天龍雪獄×1

 魔砲戦機ダルマ・カルマ×1

 

 

 EX 15

 炎王神 ガルドニクス・エタニティ×2

 天霆號アーゼウス×1

 宵星の機神ディンギルス×1

 No.23 冥界の霊騎士ランスロット×1

 世海龍ジーランティス×1

 揚陸群艦アンブロエール×1

 賜炎の咎姫×1

 灼熱の火霊使いヒータ×2

 ドリトル・キメラ×1

 転生炎獣サンライトウルフ×1

 アーティファクト・ダグザ×1

 S:Pリトルナイト×1

 I:Pマスカレーナ×1

 

 

 「一応[ヒータ]を1枚にして[レイジングフェニックス]に入れ替える予定だが、だいたいこんな感じだ」

 

 「…成程。一発勝負での勝ちに拘ったチューンと見ました。[炎王]や[孤島]のコンボも考えつつ、独立した破壊以外の除去札がその穴を埋めている」

 

 「一発勝負…そうだな。チームを背負ってる以上負けは許されねえ。メインギミックを安定させつつ、そこで狩れなかった相手を別の札で潰す。

 リソースが循環する[炎王]と違って大抵の相手は破壊対策をするのにリカバリーを無視した消耗を強いられるからな」

 

 「[炎王]の強みを理解した上で、詰まない為の構築。そういう事でしたか」

 

 正直なところ、[炎王]を使う上で新は不満を感じた事はない。1枚初動である[ポニクス]、エンジンである[孤島]へのアクセス手段、[ウルカニクス][キリン]等による妨害の貫通。

 [炎王]はテーマとして少ないスロットで必須パーツが纏まっているゆえに完成度が高い。

 

 「アンタならこのデッキをどう組む?アンタが知っている[炎王]はどんな形だった?」

 

 ふむ、と考えてから菖蒲はポケットからUSB状のデータ端末を差し出す。

 

 「数年前のデータになりますが、一応構築はありますよ」

 

 新はメモリーを受け取り、自身のディスクに差し込む。

 

 [蛇眼炎王] データ

 

モンスター 23

 聖炎王 ガルドニクス×2

 炎王神獣 キリン×3

 蛇眼の炎龍×1

 黒魔女ディアベルスター×3

 炎王獣 ガネーシャ×1

 炎王獣 バロン×1

 灰流うらら×3

 増殖するG×3

 真炎王 ポニクス×3

 蛇眼の炎鱗×2

 スネークアイ・エクセル×1

 

 魔法 14

 炎王の孤島×2

 炎王の聖域×1

 炎王神天焼×1

 篝火×3

 罪宝狩りの悪魔×1

 原罪宝-スネークアイ×1

 反逆の罪宝-スネークアイ×1

 墓穴の指名者×2

 抹殺の指名者×1

 ハーピィの羽根帚×1

 

 罠 3

 無限泡影×3

 

 

 EX 15

 炎王神 ガルドニクス・エタニティ×2

 天霆號アーゼウス×1

 世海龍ジーランティス×1

 転生炎獣レイジング・フェニックス×1

 揚陸群艦アンブロエール×1

 賜炎の咎姫×2

 灼熱の火霊使いヒータ×1

 トロイメア・フェニックス×1

 暗影の闇霊使いダルク×1

 転生炎獣サンライトウルフ×1

 S:Pリトルナイト×1

 I:Pマスカレーナ×1

 リンクリボー×1

 

 「俺の構築とは随分違う…[スネークアイ]やら[ディアベルスター]ってのはなんだ?[篝火]が入ってるって事は炎族って事になるよな?」

 

 「当時暴れたので今は規制されちゃってますけどね〜。新君だっていつから[炎王]使ってるかわからないけど、[キリン]準制限なの少し不満に思った事ありませんか?」

 

 「それは確かに。…え、待てよつまり」

 

 「[炎王]は一度プロリーグで結果を残した事もあるデッキですよ。そのレシピもその時の選手が一部に公開したものです。新君のとは違う、[炎王スネークアイ]というデッキという型になりますが」

 

 新は自分以外に[炎王]を使う者がいるなど考えた事もなかった。それもプロで、人目に触れる形で。自分が気付かなかっただけで、知れる範囲に参考があったのだ。

 

 「[スネークアイ]は[炎王]とそんなに相性良いのか?」

 

 「[スネークアイ]は炎属性・炎族のテーマです。その中で炎属性・レベル1をサポートする部分を切り出して[炎王]に出張させたのが[炎王スネークアイ]です。

 ほら、[ポニクス]出しながらモンスターを増やして相手ターンに[マスカレーナ]から[リトルナイト]出せたらもっと妨害数増えるでしょう?」

 

 確かにそう聞くと[炎王]の強化案として最適に聞こえる。

 例えば[聖域]と[孤島]を合わせて初手に引いてしまったとしよう。[孤島]は実質死に札となり、手札の質が相手に劣ってしまう場合もある。その点、[聖域][孤島]を減らして[スネークアイ]から[ポニクス]初動を確実に行えるようにすれば合わせ引きによる手札の質の悪化というリスクを避けられる。

 [スネークアイ]のテキストを知らない新の考えの及ぶ範囲でさえそこまでのメリットがあるのだ。実際にやれる事は更に多いだろう。

 

 「しかし[炎王]の使い手ねえ…言われてみりゃ他にもどっかにはいるだろうがプロにいたとは」

 

 「新君の周りにはいないんですか?憧れてる子達も沢山いるんなら1人2人くらい真似る子もいそうじゃないですか」

 

 「アンタも知ってんだろ?テーマデッキをシングル買いで1から組めるほど親が裕福だったら不良なんてやってねえよ」

 

 「あ〜そうでしたね…学生にはちょっとお高いですものね、テーマ所属の汎用カード」

 

 この世界においてデュエルの強さがもたらす恩恵はあまりにも多い。故にカードの単価も相応に高く、学生が1年アルバイトしてようやく1デッキ組める場合もあれば社会人でも組むのに苦労するデッキもある。

 新は幼い内からパックでキーカードが揃い、テーマの新規が出た時には親にプレゼントとして貰い受け、運良く[炎王]を組む事ができた。

 

 「シングル買いを普通にするようになってから久しいので忘れてました。そもそも大規模な大会で結果を残したとかでもない限り、自分の見かけたカードしか知りませんよね皆さん」

 

 「そうだな。俺も対戦した相手以外のカードはあまり知らん。プロの試合も見るが、覚えたところでどうせ使い手にはそうそう会えねえしな。

 ショップのショーケースで高値がついてるカードくらいは把握しているが」

 

 「カードやデッキの情報源は自身と周囲の観測範囲のみ。強いカードは元々高値なのがプロで使われて更に値が上がる。もどかしいでしょうね」

 

 私も[招来神]やら[解門]は見つけるのも買うのも苦労しました、としみじみ振り返る菖蒲。

 新は新で香織の使っていた[サンライトウルフ]の効果を知った日にはいてもたってもいられずショップを駆け回った経験があるので深く頷く。

 [転生炎獣]も比較的新しく強いデッキのため今はどのパーツも値が張る。それを考えると香織がサラッと[レイジングフェニックス]をくれたのは気前の良すぎる話である。

 

 「で、新君のデッキの強化案の話でしたね。[スネークアイ]も悪くないと思いますが、あれは[G]を受けた時相手に与えるアドバンテージが大きくなってしまいます。新君の純構築であってもリンク展開は可能ですし、無理に入れずとも回りはするでしょう。

 [スネークアイ]全てではなく[ディアベルスター][罪宝狩り][原罪宝]だけでも入れておくと[ポニクス]へのアクセスは良くなりますよ。制限の関係で枠も3枚程度で済みますし、規制済みの関係でそこまで高くはないと思います」

 

 ディスクでそれぞれの効果を確認し、新も「成程これなら」と納得がいった。

 

 「入れ替えるなら…[九尾]、[アーティファクト]、[激流葬]あたりだな」

 

 「[九尾]と[孤島]のコンボ、切るには惜しいですけどね…

 あとは手札誘発3種8枚はどうですか?どのデッキ相手でも腐る場面が少ないと思いますし、自分の動きを通すのにも使えます」

 

 「あそこらへんは安くねえが…今のとこ使えるカードが増えそうな気配もねえしな。そこに注ぎ込んでも問題ない」

 

 「新君が前に言っていた通り、純構築の[炎王]は手札誘発を貫通できる地力があります。しかし他のデッキも全てそうというわけではない。

 大学生以降では『誘発ケア』『妨害貫通』という概念として学ぶほどに、デュエリストとして大切な部分に関わってきます」

 

 何やら難しい話になってきた。汎用として使用されているのはたった数種類なのに、わざわざ運用について学ぶ事があるほど使用タイミングの良し悪しが分かれるとは。

 

 「まぁその辺りは使う・使われるデッキによりますし、実践で学ぶのが一番でしょう。デッキの調整には特定の相手ではなく、様々な相手とデッキに挑む事をオススメします、

 …あぁ、ショップへ行くのであれば今日のところはここまでにしておきましょうか。また来てくださればいくらでも力になりますよ」

 

 席を立つ菖蒲。

 短い時間だが、自分のいる環境とは違う次元のデュエルへの考えを見る事ができた。恐らく次の一年間とアカデミアでは、そこに至るのを前提とした者達との戦いが常になるのだろう。そこでは力技でねじ伏せるこれまでのやり方だけでは通用しないかもしれない。

 そう考えると、俄然デッキやプレイングを見直すモチベーションが湧いて来る。

 

 「助かった。また相談させてもらう…が、そう何度も来たら仕事の邪魔じゃないか?今のところ他に店員もいないんだろ?」

 

 「あら?デュエルについて教えるのもお仕事の内ですから構いませんよ。つきっきり、とはいきませんけど」

 

 喫茶店でデュエルを教えるのが仕事?

 どうもあべこべな事を言っているように思える。ここは学習塾でもフリースペースでもない、ただの喫茶店だろうに。

 

 「…ここ、喫茶店だよな?」

 

 「…あ。詳しく言ってませんでしたね」

 

 菖蒲は近くのテーブルに置いてあるパンフレットを手に取り、渡してくる。

 受け取るとその表面には『デュエル喫茶 アヤメ』の文字。

 

 「当店はただの喫茶店ではないんです。

 デュエリストの憩いの場、あるいは癒しどころ。

 『デュエル喫茶」となっております。

 今後ともご贔屓に、お客様?」

 

 風鳥菖蒲は薄く微笑み、ウィンクをしてみせた。




 今回もデュエルはなく、喫茶店の正式オープンもまだです。
 店名は捻りなく、菖蒲の祖父が娘の名前をつけた『アヤメ』となります。
 次の話どうしよっかな〜と考えつつ年末ムードに浸る予定です。年末年始、どこも特番とか店休みとかでつまらね〜って方々のために少しは更新してお見せできたらいいな〜と思いつつ。今回はここまでとさせていただきます。
 メリークリスマス。
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