いつのまにか夜になった屋上で、アクアは夜空を眺める。
ルビー、君に復讐の相手が居ても、俺は君を応援し続ける。
でも君が復讐を果たせば、より高みに羽ばたいていく姿を見ることは、できなくなるんだろう。
アクア「ファンの意見てのは身勝手だよな。そう思うだろ、アイ」
扉の開く音が聞こえ、振り返ればそこには、かつて天童寺さりなちゃんで、いまや推しの子となった星野ルビーがそこにいる。
ルビー「やっほ、せんせ」
アクア「またきれいになったね」
ルビー「それはさりなちゃんに言ったの?それともルビー?」
アクア「どっちもって言ったら、うれしくない?」
ルビー「えへへ、うれしい〜」
そういってルビーはアクアを背中から抱きしめる。
ルビー「アクアいんちょーせんせ!結婚して!」
アクア「世界的に死んじゃうから勘弁して」
体を離して、ルビーは言った。
ルビー「せんせ見て?わたし結婚適齢期。さりなは今度こそ結婚できるよ?」
そこでふと、アクアは固まる。
ルビー「えへへ、せんせ、また悩んでる?」
アクア「条件がひとつある」
ルビー「どんな?」
アクア「俺と結婚したら、カミキヒカルへの復讐をやめる、とか」
ルビー「今更なにいってるの、やっとみつけた王子様……」
アクアは奥歯を噛みながら言った。
アクア「推しがいると世界が輝く。このクソッタレな世界丸ごと愛せる様になる。君はかつて、僕にそう言ってくれたはずだ」
ルビー「それでも、ママを殺して、せんせを殺したのはアイツなんだよ?」
優しい声色のまま、ルビーがそう言った。
振り返ればそこには、かつてここで出産を手伝ったあの星野アイと瓜二つな星野ルビーが笑顔のまま立っている。怒りに身を焼きながら。
ルビー「ママを殺して、お兄ちゃんがあいつからすべてを取り上げるまで私を何度も殺そうとしてきた。いろんな人を追い込んで他の人もたくさん殺して……そんなやつを、なんでゆるせるの?」
アクアは沈黙する。
アクア「君に復讐の相手が居ても、俺は君を応援し続ける」
ルビー「えっ」
アクア「でも君が復讐を果たせば、より高みに羽ばたいていく姿を見ることはできなくなるんだろう」
ルビー「復讐と、アイドル活動は関係ないよ。私は隠し通せる」
アクア「わかってるはずだ、さりなちゃん。君の友達も、君と仲良くなりたいと願っているファンのみんなも……そして俺も、そんな嘘を期待してないことなんか」
ルビー「……わかってる、でも、そうしたらママのことは、どうすればいいの」
涙をうかべるルビーを、アクアは抱きしめる。
アクア「ルビー、アイは、いまや君とひとつになって、その瞳を輝かせている。気づいていないのかい?」
ルビー「えっ」
アクア「ルビー、いまも君は、星野アイを求めながら、愛を歌っている。聞いたものが信じれば、救われる様な、アイの歌を」
ルビー「わたしの目は、人をだますためのものだよ。ママといっしょ」
アクア「君の瞳も、アイの瞳も、人を幻想に導いても、苦しめるためのものじゃない。会ったこともない誰かに、いま孤独でいる誰かに、愛を求める誰かに、愛を伝えるための、誰かを愛したいと願う者の愛の瞳だ」
ルビー「アクア、そんなふうに私を……」
涙声の彼女に、アクアは言った。
アクア「さりなちゃん、俺がまた医者になったのは、君みたいになりたかったからなんだ」
驚くルビーに、アクアは続ける。
アクア「病気だけで小さくつながった、会ったこともない誰かと、いま孤独でいる誰かと、愛を求める誰かと、一緒に肩を並べる」
ルビー「私の、ときみたいに……」
アクア「ああ」
ルビーは、アクアを抱きしめる。
ルビー「せんせ、芸能界が、私たちが、いやになったからじゃ、なかったんだね……」
泣き出すルビーに、アクアは頭を撫でる。
アクア「当たり前だろ。君の願いを、叶えるためだった」
ルビー「つまり、それって……」
目の前には、かつてゴローとさりなに奇跡をもたらした少女、ツクヨミがいる。
ツクヨミ「迎えに来たよ、恩人たち」