東京魔圏~この危険な東京で、僕はゴブリンを頼りに生き残る。最弱魔物かと思っていたけれど、実は最強でした   作:埴輪庭

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第13話 猛り狂うオーク・ロード

「先生、これを!」

 

 三崎は手元にある魔石を女教師・九条誠子に投げ渡した。

 

 誠子は淡く白く輝く石を握り締め──心の中で何かが弾けた。

 

 誠子の手が厄を孕む様な不吉な紫色の光を帯びる。

 

「これを、どうすればいいの……?」

 

 誠子は困惑するが、すぐに頭の中に "どうすればいいか" という情報が流れ込んできた。

 

「そういう事ね。本当にゲームみたい」

 

 誠子は言いながら、掌をオークに向けた。

 

 光が収束し、弾け──

 

 ──『レア度4/魔眼令嬢メデューサ/レベル1』

 

 妖艶な姿をした女、"魔眼令嬢メデューサ" が召喚される。

 

 見た目は可憐な若い乙女だ。

 

 ただ、瞳は蛇の様に縦に割れ、頭部には無数の蛇がひしめき合っているが。

 

 呼び出されたメデューサは誠子を小馬鹿にする様に見て、肩を竦めている。

 

 まるで「さっさと指示しなさいよ」と言っているかの様だ。

 

「メデューサ、あの豚を殺して!」

 

 誠子の命令に応じて、メデューサはオークを睨みつけた。

 

 神話に於いて、メデューサは石化の邪視の力を持つという。

 

 このメデューサのそれも神話に準じているのか、オークの動きを僅かに止めた。

 

 その隙にタイガー・ゴブリンが猛然と攻撃を仕掛ける。

 

 メデューサの能力はほんの僅かしかオークの動きを止められないようだったが、要所要所で使われるその力によって、オークは思う様に動けずに面白い様にタイガー・ゴブリンの攻撃を受けてしまっている。

 

 そうしてついにタイガー・ゴブリンの牙がオークの喉笛を食いちぎって、オークは一度巨体を震わせて仰向けに斃れた。

 

「やった!」

 

 だが、喜んでばかりもいられなかった。

 

「皆!」

 

 戸田 杏子の『レア度1/微風のリトル・ピクシー/レベル1』も山本 信二の『レア度1/痺れ牙のイエロー・パイソン/レベル1』も、小林 カンナの『レア度2/石砕く小人ウッド・ノッカー/レベル1』も、鷹野 早紀の『レア度1/貫き喚くランサー・クロウ/レベル1』も。

 

 全ての召喚モンスターが粒子へと還り、一際大柄なオークは邪悪な笑みを浮かべている。

 

 残されたのは、メデューサとタイガー・ゴブリンだけだ。

 

 ──まだ、まだ

 

 三崎の意気は挫けない。

 

「タイガー・ゴブリンもメデューサも無傷だし、相手は多少大柄なだけです。先生、さっきの作戦でいきましょう」

 

 三崎の言葉に誠子は頷いた。

 

 ・

 ・

 

 メデューサとタイガー・ゴブリンが協力して残るオークに猛攻を仕掛ける。

 

 タイガー・ゴブリンの鋭い爪が敵の皮膚を切り裂き、メデューサの邪視がその動きを制御する。

 

 この連携は、大柄なオークにも通用した。

 

 だがあと一歩、もう少しという所で──

 

「な、なんなの?」

 

 誠子が困惑した様な声を漏らす。

 

 ◆

 

 人間が意思、覚悟で "覚醒"するように、モンスターたちにもその機会はある。

 

 人間が魔石を取り込む事で一つ上の階梯へ存在のレベルを高める様に、モンスターたちも人を喰らう事で存在の階梯を高める事がある。

 

 ただ、普通の人間を幾ら喰らっても存在の階梯はそこまで大きくは上がらない。

 

 三崎たちにとって不幸だったのは、この大柄なオークが喰らった人間というのは三崎たちと同じ覚醒者だったという点だ。

 

 ・

 ・

 ・

 

 死の寸前、オークは死を悟った。

 

 だが、自身が死してもせめて一人は道連れにしてやるという肚も決めた。

 

 その覚悟がオークを変えた。

 

 死にかけていた筈のオークが突然金色の光を放ち始める。

 

 ややあって光が収まった時、オークの体は更に一回り大きくなっていた。

 

 ──『レア度5/猛り狂うオーク・ロード/レベル3』

 

 オークは分厚い鎧をまとっており、タイガー・ゴブリンの牙も爪も大部分が通用しなさそうだ。

 

 ──さて、どうするか……

 

 この期に及んで三崎の表情にはそう目立った焦りは見られない。

 

 なぜなら理解していたからだ。

 

 ここで絶望したり、慌てている姿を仲間たちに見せれば、それこそ助かるものも助からないと。

 

 しかし、その背はぐっしょりと冷や汗で濡れていた。

 

 

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