東京魔圏~この危険な東京で、僕はゴブリンを頼りに生き残る。最弱魔物かと思っていたけれど、実は最強でした   作:埴輪庭

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第2話 覚醒

 ◆

 

「逃げろ!」

 

 その言葉がどこからか飛んできたが、誰もその指示に従わない。

 

 逃げろといってもどこへ逃げればいいと言うのだ? 

 

 複数のゴブリン、コボルドが次々に生徒たちを手に掛けている。

 

 無作為にと言う訳ではなく、逃げ出そうとする者を優先して襲い掛かっているらしい。

 

 ゴブリンもコボルドも、その醜悪な顔には愉悦、嗜虐の笑みが揺蕩っている。

 

 三崎は焦っていた。

 

 絵里香が守ってくれた事は嬉しかったが、それも結局死を少し先に引き延ばしただけではないのか? 

 

 そんな思いがある。

 

 絵里香が呼び出した美女は小鬼相手に優勢に戦っていたが、そこまで大きな戦力差があるわけではないらしい。

 

 自分にも何か出来る事はないか、と思う三崎だが──

 

「や、やばっ……」

 

 獰猛な顔をしたコボルドの一体が、三崎ににじり寄ってきていた。

 

 爪や牙は如何にも鋭そうだ。

 

 三崎 "何とかしなければ、出来る事をしなければ" と妙に冷えた頭で考える。

 

 すると、三崎の手が不意に熱くなった。

 

「うわっ……!?」

 

 見下ろすと、手が緑色の光を帯びている。

 

 何かが体内から溢れ出してくる感覚。

 

(なる、ほど……これは多分、瀬戸や陣内みたいな "力" なのかな?)

 

 三崎はその光を、掌に湛えた水を零す様にぽたりと教室の床に落とした。

 

 すると緑色の光が形を成し──

 

「ゴブリン……?」

 

 三崎の目の前に立っていたのは、レア度1の緑色のゴブリンだった。

 

 ──『レア1/卑しき尖兵のゴブリン/レベル1/同時召喚限界数1/2』

 

 小柄で、武器も持っていない。

 

 頼りない姿に思わず顔を顰めてしまう。

 

「これじゃあ、流石に……」

 

 だが、今はそれしかない。

 

 三崎はゴブリンに向かって叫んだ。

 

「行け……! そいつを止めてくれ!」

 

 ゴブリンは何も答えないが、即座にコボルドに向かって突進していった。

 

 素早く接近し、拳を振り上げてコボルドと格闘を始めた。

 

 だが、それもほんの数秒だけ。

 

 コボルドは圧倒的な力でゴブリンを引き裂き、ゴブリンの体はすぐに緑色の光の粒子となって散っていった。

 

「くそ……!」

 

 三崎は歯噛みする。

 

 自分の召喚したゴブリンでは、あのコボルドに太刀打ちできない。

 

 絵里香のサキュバスもゴブリンとコボルドの連携攻撃を受けて打ち負かされ、桃色の粒子となって消えてしまった。

 

 絵里香は掌をしきりにゴブリンとコボルドへ向けて何か叫んでいるが、何も起こらない。

 

「召喚クールタイム:6時間……?」

 

 三崎は彼女の頭上に表示された数字を見て、彼女がすぐに新たな魔物を召喚できないことを悟った。

 

 つまり絵里香は今、完全に無防備だ。

 

 あのコボルドが再び襲いかかってくれば、絵里香は──

 

「だめだ……!」

 

 三崎は再び手をかざした。すると、また緑色の光が現れ新たなゴブリンが召喚された。

 

 先ほどと同じレア度1のゴブリンだが、そんなことはどうでも良い。

 

 三崎は無我夢中でそのゴブリンに命じた。

 

「もう一度行け! 絵里香を守るんだ!」

 

 ゴブリンは再び突進し、今度はコボルドと互いに組み合った。

 

 だが、力の差は歴然としている。

 

 三崎のゴブリンは一瞬で押し倒され、再びコボルドによって引き裂かれた。

 

 粒子へと戻る姿を見て、三崎は拳を握りしめた。

 

「なんで……なんでゴブリンなんて……!」

 

 絶望の暗雲が、胸の中で膨れ上がっていく。

 

 しかし次の瞬間、三崎はふと気づいた。

 

 自分はゴブリンを連続して召喚できていることに。

 

 これは、他の誰にもできていないことだ。

 

 絵里香は一度召喚したらしばらくは使えない様だ。

 

 なのに自分だけは──

 

「そうか……僕は何度でも……!」

 

 その時、三崎は自分の力にわずかながらも希望を感じた。

 

 繰り返し召喚できるのならば、やり様はあるのかもしれない。

 

 レア度1だろうと、数で勝負すれば──

 

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