東京魔圏~この危険な東京で、僕はゴブリンを頼りに生き残る。最弱魔物かと思っていたけれど、実は最強でした   作:埴輪庭

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第24話 ちょっとした腹案

 ◆

 

「ちっ、やっぱり気付いてやがるな。おいお前ら! 準備しとけよ!」

 

 陣内が檄を入れた。

 

 屋上上空を舞う幾つもの影、その動きが変わったのを見て、陣内はマ・ヌが自分たちを捕捉した事に気付いた。

 

「なんで分かるの?」

 

 絵里香が尋ねる。

 

 いまだ口調が硬い事から、陣内と絵里香の関係にまだしこりがある事が分かるものの、この状況でつっかかる愚を犯すつもりはないようだ。

 

「うるせえな、分かるんだよ! そういうもんなんだ!」

 

 陣内は鬱陶しそうに答えた。

 

 この陣内という男は自他共に認める不良で、飲酒喫煙喧嘩は男の嗜み、補導されることは男の勲章くらいに思っている節がある。

 

 明らかに人生に対して大雑把に向かい合っている感があるのだが、それでいてこういう人種は案外に自身の危機に敏な部分を持っていたりする。

 

 要するに分かるのだ──相手が()()()かどうかが。

 

 雰囲気や所作の些細な変化から、こちらに敵意があるかどうかが何となく分かる──クラシックな不良とはそういうものなのだ。

 

「逃げられるかな?」

 

 三崎が尋ねると、陣内は首を振った。

 

「無理だな。連中は空を飛んでるってのに、俺らは地べたを這いずってる。それに塀までは200メートルって所だろ? たかが、だがされど、ってやつだ。バケモン共がそこら中をうろついていやがるし、とても逃げ切れねぇよ」

 

 それを聞いた三崎は「そっか」と首肯し、自身が召喚したゴブリンたちに目をやった。

 

 ゴブリンを二体合成すればタイガーゴブリンとなり、それを進化させればゴブリンジェネラルとなる…………強力な戦力だが、だからこそなるべく温存したいという思いもあった。

 

 ──僕はまだ、『これ』の仕組みを完全に理解したわけじゃない

 

 召喚、合成、進化とまるでゲームのような『これ』に付き合っているうちに、段々とシステムを理解してきてはいるが、ゲームのような仕組みだからこそどこかに落とし穴、裏技の様なものがあるかもしれない。

 

 例えば召喚時間に制限があったとしたら? 

 

 例えばそういうデメリットは、一度体験してからでないと明らかにならないとすれば? 

 

 明らかになったタイミングが、絶体絶命の状況だったとしたら? 

 

 三崎はそんなことをつらつら考え、マ・ヌたちが彼方の空からこちらへと飛来しつつあるのを見ていた。

 

 絵里香や陣内ら同級生たちはすでに召喚モンスターを傍に出し、マ・ヌたちとの戦闘に備えている。

 

 表情は硬く、余裕を感じさせないが無理もない。

 

 マ・ヌたちのレア度、レベルは高く、勝利の保証などどこにもない。

 

 或いは惨死を遂げるかもしれないという状況で、平然としていられるはずはなかった。

 

 ◆

 

 ──『あっち』は冷静そうだなぁ

 

 三崎は多数のマ・ヌたちが屋上の上空を旋回しているのを眺める。

 

 こちらを無力な餌だと舐め切って、少数で襲いかかってくるようなら付け入る隙もあろうというものだが、なかなかそう都合よくもいかないようだ。

 

 マ・ヌたちの動きには一種の秩序があり、数が集まるのを待っているように見える。

 

 三崎はさっと周囲に目を遣り、「ねえ陣内はこの場所はどう思う? 結構死角があるからここで戦うのは少し怖い気がするんだけど」と尋ねた。

 

 三崎の言う通りだった。

 

 体育館の裏口周辺は木立なども多く、特に体育館そのものが大きな遮蔽物となっている。

 

 例えば体育館を背にして戦っている時、屋根を伝って上方から奇襲されでもしたら目も当てられない。

 

 だが陣内には別の考えがあるようだ。

 

「いや、確かにそうだけどよ、それは奴らにとっても同じだ。それにどうしたって俺たちは数が少ないからな。見晴らしの良いところで戦ってもフクロにされて終いだぜ」

 終いだぜ」

 

 陣内はそう言って山本を、正確には山本が連れているイエロー・パイソンを見て、次いでリトル・ピクシー、ノッカー、ランサー・クロウに視線を移していく。

 

「何か考えがあるの?」

 

 三崎が尋ねると「考えってほどでもなんだけどな」と陣内が頷き、ちょっとした腹案の様なものを明かした。

 

 ・

 ・

 ・

 

「良いんじゃないかな」

 

 早紀の言だ。

 

 他の者たちも陣内の考えに賛同した。

 

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