東京魔圏~この危険な東京で、僕はゴブリンを頼りに生き残る。最弱魔物かと思っていたけれど、実は最強でした   作:埴輪庭

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第64話 作戦

 ◆

 

 三崎たちは、大森の案内で管理施設の一角へ通された。

 

 そこで待っていたのは、腕に包帯を巻いた吉村と数名の自衛隊幹部たちだった。

 

「ここで作戦の詰めを行う。少し狭いが、座ってくれ」

 

 大森が簡潔にそう告げる。

 

 三崎は麗奈と共に壁際の椅子へ腰掛ける。

 

 周囲には、自衛隊と合流した覚醒者たちが十数名ほど集まっていた。

 

「私は大森二佐だ。指揮の最終決定権を任されている」

 

 大森は立ち上がり、場を一瞥する。

 

「皆も知っての通り、A公園の中心部には巨大な魔樹が確認されている。既存の火器で破壊できない以上、覚醒者の力を借りるしかない」

 

 その言葉を受け、吉村が資料らしき紙束をテーブルに広げた。

 

「ここにまとめたのは、実際に戦闘を経験した覚醒者の報告だ。魔樹の厄介さは痛いほど承知しているが、弱点がまったくないわけじゃない」

 

 吉村の声は落ち着いていたが、その表情は険しかった。

 

「要するに、覚醒者が魔樹をヤるってわけだろ?」

 

 そう呟いたのは、がっしりとした体格の女──ブレイカー・ロックを使役する覚醒者だった。

 

 彼女は腕組みをしながら、大森の説明を待つ。

 

「その通りだ。こちらとしては、A公園の中心部へ覚醒者を送り込みたい。しかし、モンスターの妨害が予想される。私たちは護衛と制圧を担当するが、正面突破は難しい」

 

 大森が苦い顔をする。

 

 三崎も先ほど見たブレイズ・ビートルやシムルグといった強敵がまた出てきたらと考えると、気が重くなる。

 

「そこで策がある。南北二手に分かれて進軍し、中央で合流するんだ。公園の北側はビル群が多く防御しやすいが、モンスターが出やすい。南側は開けた広場があるが、逆に遮蔽物に乏しい」

 

 大森の言葉に、吉村が続ける。

 

「北ルートには火力を多く配備する。南ルートは数を絞り、機動力重視で突っ切る。二方向から魔樹に迫れば、モンスターの迎撃を分散させられる」

 

「なるほど、理屈はわかった」

 

 黒髪の少年──ヘイト・ドールを肩に乗せた覚醒者が口を挟む。

 

「でもさ、こっちの人数が足りるのか? 俺らがどれほどやれるかなんて、正直わかんないだろ」

 

 少年の不安を大森は大きく頷きながら受け止める。

 

「少しでも成功率を上げるために、情報を共有し合う必要がある。どんなモンスターを使役し、どんなスキルを持つか。できる範囲で互いに話してほしい」

 

「あたしのブレイカー・ロックは盾として優秀だよ」

 

 ブレイカー・ロックの女がそう言って、周囲を見回す。

 

「私の子は火力が弱いけど、対象を一定時間幻惑できる。味方の攻撃に合わせる形で使えばいいと思う」

 澄んだ水色の光球──ルミナス・ソウルを従える沙理が静かに言った。

 

「ゴブリンは……まあ、補助とか範囲攻撃が得意です」

 

 三崎はそう答える。

 

 タイガー・ゴブリンやゴブリン・ジェネラル、キャスターを召喚できるという情報は既に吉村を通して自衛隊へ伝えてあるため、この場ではあえて省略して情報を開示した。

 

 なぜ他の覚醒者へこの場で明かそうとしないのかは、三崎本人もよく分からない。

 

 一瞬佐伯の事が頭をよぎったからかもしれない。

 

 自衛隊はともかくとして、覚醒者が常に善良な者ばかりであるとは限らないからだ。

 

「アーマード・ベアは単純に強いかな。でもモンスターが沢山出てきたら困るかも」

 

 麗奈も一言加える。

 

「割り振りは、こっちであらかた決めさせてもらう。各自衛隊員との連携も考慮した上での最適配置を行う」

 

 そうして話しているうちに大まかな編成が決まると、作戦の詳細が具体的に詰められていく。

 

 まずは北ルートに回る覚醒者たちと自衛隊の部隊を把握する。

 

 ビル街を進む関係で、工兵を中心にした隊員たちが同行することになった。

 

 瓦礫を除去しながら進むうえに、重火器を持ち運ぶ必要があるからだ。

 

「北ルートは派手に爆薬を使うことになるかもしれない。魔樹の根が道路をせり上げているような情報もあるからな」

 

 吉村の言葉に、工兵部隊の隊長が頷く。

 

「了解です。安全を確認しつつ爆破して進軍ルートを開きます。ただ、モンスターが出現した場合は護衛をお願いします」

 

「そこは任せてくれ。我々も身を挺して守る」

 

 吉村が拳を握り締める。

 

 一方の南ルートは、小回りの利く軽装チームで構成される。

 

 さきほどのヘイト・ドールの少年やブレイカー・ロックの女、そしてルミナス・ソウルの沙理が中心だ。

「南側は広い分、モンスターに囲まれる危険がある。だけど、そこを駆け抜ける──速度を重視するんだ」

 

 大森が地図上のラインを指し示す。

 

「公園の外周を大きく回り、中央広場へ接近する。北側と息を合わせ、ほぼ同タイミングで魔樹に取りつくのが狙いだ。もしタイミングがズレたら、お互いが孤立する」

 

「で、合流できたら魔樹を狙うんだな」

 

 黒髪の少年がわかりやすくまとめる。

 

「そうだ。モンスターは無視できないが、それでも目標達成を妨げる障害であって目標そのものではない。交戦は目標達成のための手段に過ぎない」

 

 大森はそう言った。

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