東京魔圏~この危険な東京で、僕はゴブリンを頼りに生き残る。最弱魔物かと思っていたけれど、実は最強でした   作:埴輪庭

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第7話 佐伯

 

「これで分かったよね? 僕がリーダーだと認めるかい?」

 

 佐伯が言うが、当然こんな抜け駆けの様な事をした佐伯の事を認める者はいない……数人の取り巻き以外は。

 

「てめぇら……」

 

 陣内が凄むが、召喚モンスターもいなければ相手の数も佐伯を含めて5人だ。

 

 佐伯に与しない者は、陣内を含めて8人。その内6人は覚醒しているものの、2人は未覚醒だった。

 

 更に言えば、数の差で押し切れそうにもない。

 

 強力な魔物が行使できるのは三崎、陣内、絵里香の三人だが、その全員が今はモンスターを召喚できない。

 

 となると山本のパイソンと杏子のピクシー、あるいは先ほど覚醒に至った佐藤 弘人が戦力という事になるが──

 

「ふん、そんな小者で勝てると思うのかい?」

 

 佐伯の挑発に二人は言い返す事ができなかった。

 

 あっさりとやられるだろうことは目に見えている。

 

 ──が。

 

「やってみないとわからないだろ?」

 

 佐藤がそういって掌を佐伯に向けた。

 

 ──『レベル2/虚ろなるワンダラー・ナイト/レベル1』

 

 鈍色の鎧騎士が現れるやいなや、佐伯に向かって駆けだしていく。

 

 レベル差を鑑みても、誰がどう見ても自殺行為だ。

 

 しかし佐藤には佐藤なりの勝算があった。

 

 ──佐伯の奴は陣内とかとは違う。無口でスカした野郎だった。だからあれもどうせ脅しだ。怪物どもならともかく、同級生を平気で殺せる奴なんてそうはいない。でも俺は違う。俺は殺る時は殺る

 

 召喚モンスターがいくら強くても、召喚者本人を倒してしまえばいいだろうという考えは決して間違ってはいない。

 

 しかし、一点。

 

 佐伯の性格の見立てに於いて、佐藤は致命的に見誤っていた。

 

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 雪禍の銀騎士クラリッサが佐伯を護るように前に出て、ふ、と身じろぎをしたかとおもえば、ワンダラー・ナイトの前方の宙を切り裂いた。

 

「へ! どこ狙ってんだ!」

 

 佐藤が小馬鹿にしたように言う。

 

「お、おい佐藤……」

 

 だが陣内のそんな声に佐藤は怪訝そうな目を向け──そしてゆっくりと上半身だけが傾き、床へと落ちた。

 

 残されているのは佐藤の下半身だけだ。

 

 下半身だけが床に立ち──ややあって、切断面から大量の血が噴きこぼれた。

 

 見ればワンダラー・ナイトも同じ様に切断されている。

 

 突然目の前で行われた惨劇に、三崎たちは言葉もない。

 

「言っておくけど、彼から先に僕を殺そうとしたんだ。僕は降りかかる火の粉をふりはらったまでさ」

 

 悪びれずに言う佐伯には常のクールさはなく、どこか高揚している様にすら見える。

 

「教室の魔石は僕らが貰っていく。そして……絵里香、僕についてきなよ。君なら受け入れてあげてもいい。そこの三崎とかいう雑魚と親しいみたいだけど、相手は選んだほうがいいよ」

 

 そんな事を言う佐伯を絵里香は睨みつけ、顔をそむけた。

 

 絵里香の人柄的に佐伯の様な人間とは相いれないというのもあるし、なによりも絵里香は "幼馴染の" 佐伯が気持ち悪くて仕方がないのだ。

 

 そんな絵里香を佐伯は一瞬怒(ド)に染まった目で睨みつけ、「馬鹿だな……」と呟いて、銀騎士クラリッサで陣内たちを威圧しつつ悠々と魔石を拾っていく。

 

 そして──

 

「ま、いいさ。絵里香に免じてここで殺すのはやめてやる。でもすぐに後悔するだろうね。校舎はモンスターだらけ、弱いモンスターばかりの君たちがどうやって逃げ出すか見物だよ。よし、いくぞ」

 

 と言って取り巻きと共にその場を立ち去った。

 

 ◆

 

 

 教室に残ったのは三崎を含む7人。

 

「糞、あの野郎……」陣内が怒りを押し殺した様に言うが、どうしようもない。

 

「強力な召喚魔物もいないし、魔石もない……」

 

 杏子が肩を落とす。

 

 かといって諦めるわけにもいかなかった。

 

 まず何より死にたくないし、それ以上に残っている希望もまだまだあるからだ。

 

 時間が経てばクールダウンを終える者もいるし、白い魔石もどこかに落ちているかもしれない。

 

 戦力として十分とは言えないものの、召喚モンスターだって2体残ってはいる。

 

「私、こんなところで死にたくない……まだまだやりたい事だって沢山あるし!」

 

 不意に絵里香がそんな事を言った。

 

「来年のレイジバンのライブだって行きたいしっ」

 

 レイジバンとは昨今本邦の女子に人気な韓流アイドルグループである。

 

「わ、私も来年のライブ、絶対いくって決めてるし……」

 

 杏子が弱々しい笑顔でへらりと笑い、絵里香に同調する。

 

「そうだね、それにレア度やレベルが低くても、相性次第では勝てることもわかったし」

 

 三崎はブロンズバットに致命傷を与えたピクシーの事を言った。

 

「そっか、金属……だもんね、あの蝙蝠」

 

 杏子が笑顔を浮かべる。

 

「うん、そうだよ。だからまだ全然イケると思う。絶対生きて帰ろう」

 

「温い喝だなぁ、三崎らしいけどよ」

 

 陣内がボヤき、僅かに笑みを浮かべた。

 

 

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