東京魔圏~この危険な東京で、僕はゴブリンを頼りに生き残る。最弱魔物かと思っていたけれど、実は最強でした   作:埴輪庭

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第9話 体育館

 ◆

 

 新田真由の小学生時代、彼女のクラスは男女比が大きく偏っていた。

 

 男子は多く、女子は少ない。

 

 そのため、自然と男子たちの間で女子を排除する風潮が生まれ、彼らは真由をからかったり、嫌がらせをしたりすることを楽しむようになった。

 

 真由は「女だから弱いんだ」とか「女子は役立たず」といった理不尽な理由で何かにつけてターゲットにされた。

 

 昼休みの校庭で鬼ごっこをしても、男子たちは真由をわざと狙ってきた。

 

 真由が泣きそうになると、彼らは声を揃えて笑ったり、さらなる追い討ちをかけたりもした。

 

 でも真由は悔しさを抑えながら、ただその場をやり過ごすしかなかった。

 

 自分が女だから、仕方ないからという理由で。

 

 そんなある日、一人の少年が転校をしてきた。

 

 それが三崎玲人だった。

 

「え? 女の子ってだけでいじめられるの?」と、三崎はそんな事を言った。

 

「変なの。港区の学校ではそんな事なかったんだけどなぁ」

 

 三崎は港区の小学校へ通っていたが、親の都合で引っ越してきたのだ。

 

 それを知っている男子たちは一気に白けた。

 

 まるで自分たちが田舎者だと馬鹿にされているような気がして……だからといって怒り出すのもなんだか "ダサい"気がしてしまう。

 

「もうやめない? こういうの。あっちの学校だとそういうのすぐネットに晒されちゃうし。顔まるわかりでネットで炎上なんてやだよ僕。家とかに凸きたりするかもだしさ」

 

 結果、これが鶴の一声となって女子に対する無意味ないじめは収まる事となる。

 

 これは三崎にカリスマがあったからというよりは、都心からやってきた者に "ダサい"と思われたくないという男心が作用したものだろう。

 

 しかし真由にとってその一言は衝撃だった。

 

 これまで誰も女子が受けている理不尽を普通に疑問に思うことすらしなかったからだ。

 

 クラスメイトの三崎が当たり前のように女子生徒を、自分を見てくれたことに、真由は初めて「自分の存在が否定されていない」という安心感を得た。

 

 そしてその日を境に、真由は玲人を強く意識するようになった。

 

 その想いはもはや執着といってもいいものだ。

 

 そう、真由は三崎に執着している。

 

 三崎が再び親の都合で都心へ戻り、高校へ進学する段になると、真由もまた同じ高校へ通う事にした程度には。

 

 ・

 ・

 ──三崎君……必ず行くから、どうか無事でいてね

 

 ◆

 

 一方銀座では、街中に轟音が響き渡っていた。

 

 黒田仁の前には恐るべき怪物──『レア度7/牛頭将軍レイバー・ミノタウロス/レベル4』が立ちはだかっていた。

 

 筋骨隆々、片手に振りかざした巨大な斧は地面に一撃を加えるたびに激しい震動を引き起こしている。

 

 ミノタウロスは高濃度のマナに反応し、銀座の霧の中に現れた特別なモンスターだ。

 

「グレーターデーモン……奴を倒せ!」

 

 黒田が声を上げると、グレーターデーモンが低い咆哮を上げ飛び上がり、宙空から猛然とミノタウロスへ向かって突進した。

 

 ミノタウロスは辛うじて躱したが、グレーターデーモンの空中突撃はまるで隕石の様に道路に大穴を空けた。

 

 だが、ミノタウロスの反撃も激しい。

 

 巨大な斧がグレーター・デーモンの胸を深く抉り、赤黒いの血が霧に染み込む。

 

 戦いは一進一退、周囲のビルも巻き込まれる。

 

 一撃一撃が致命傷になりうる攻撃の応酬。

 

 最終的にはグレーターデーモンは苦しげなうなり声を上げながらも、最後の力を振り絞ってミノタウロスに猛攻を仕掛け、これが功を奏した。

 

 グレーターデーモンの攻撃がミノタウロスの首元を貫き、牛頭の巨体が地面に崩れ落ちる。

 

 黒田は勝った。

 

 しかし、グレーターデーモンもまた深く傷つき、黒色の粒子となって消えてしまった。

 

 黒田が息をつく間もなく、遠くから人々の怒号が聞こえてくる。

 

 彼が殺した人々の家族や友人が、彼を追ってきたのだ。

 

 黒田がグレーターデーモンに同僚を殺させた所は、多くの者が見ている。

 

 復讐に燃える彼らの姿に、黒田は舌打ちする。

 

「……今は分が悪いな、糞っ」

 

 召喚のクールダウンがあり、再びグレーターデーモンを呼び出すには時間が必要だ。

 

 黒田は素早く状況を理解し、すぐに近くのマンホールの蓋を持ち上げ、下水道内部へと逃げ込んだ。

 

 ◆

 

 その頃教室では、三崎たちが次の行動について話し合っていた。

 

 学校内はもはや安全とは言えず、いつどこからモンスターが襲ってくるかわからない状況だ。

 

 彼らは各自の役割を確認しながら、手持ちの戦力を把握することにした。

 

 三崎は「卑しき尖兵ゴブリン」なら召喚できることを仲間たちに伝えた。

 

 そして、魔石が手に入れば「勇爪構えるタイガー・ゴブリン」を召喚できるかも、とも。

 

「タイガー・ゴブリンがいれば……少しは状況が変わるかもしれない。逃げつつ、時間を稼いで……陣内や瀬戸のクールタイムが終われば、ここから逃げ出せる可能性も大分あがるとおもう」

 

「でも逃げるっていっても……どこへ?」

 

 絵里香の言葉に皆黙り込む。

 

 どこもかしこもモンスターが跋扈していて、安全な場所などありそうもなかった。

 

 すると三崎が「完全に囲まれてるのかな、それとも手薄な所があるのかな」などと言いながら、窓から周囲を確認する。

 

「ああ、体育館の方はどう? 見た感じ、モンスターはいないっぽいよ。それに体育館って確か裏口がなかったっけ」

 

 三崎の言葉に陣内も窓から体育館を眺めて頷いた。

 

「あったな……それに確かにバケモン共もいないように見える」

 

「じゃあ決まりだね。皆もそれで大丈夫?」

 

 三崎の言葉に、一同は緊張した面持ちで頷いた。

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