東京魔圏~この危険な東京で、僕はゴブリンを頼りに生き残る。最弱魔物かと思っていたけれど、実は最強でした   作:埴輪庭

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第94話「襲撃③」

 

 ◆

 

 麗奈がアーマード・ベアを召喚すると、一穂は一瞬安堵する様子を見せた。

 

「わあ……強そう!」

 

 嬉しそうに言う一穂だが、麗奈はただで使()()()()()()つもりはない。

 

「一穂、デモちゃんは偵察が得意なんだよね。何かできないの?」

 

「もちろんできるよ! デモちゃん、()()見て!」

 

 一穂がデモンズアイに指示を出す。

 

 すると巨大な眼球はさらに膨張し、瞳孔が限界まで開いた。

 

 一穂の視界に流れ込む情報の奔流。

 

「これは……」

 

 一穂の顔が蒼白になった。

 

「レア度7……蛇王竜サーペンタイン、レベル2」

 

 周囲にいた覚醒者たちが息を呑む。

 

 竹田が「レア度7だと……?」と呟き、佐藤が手で口を覆った。

 

 ──レア度7

 

 麗奈の心臓が早鐘を打つ。

 

 更に。

 

「能力は……『眷属喚び』と『アシッド・カノン』」

 

 一穂の言葉に、麗奈は内心驚愕した。

 

 ──この子、相手の能力まで看破できるの? 

 

 デモンズアイの真価を今更ながらに理解する。

 

 ◆

 

 轟音が響いた。

 

 自衛隊の対戦車ミサイルが次々と発射され、巨大蛇に着弾し、爆煙が上がる。

 

 1発で駄目なら2発、3発という事だ。

 

「あ……効いてる! 鱗が剥がれてる!」

 

 一穂が報告する。

 

 煙が晴れると、サーペンタインの金属光沢を放つ鱗の一部が剥がれ、黒い体液が滲んでいるのが見えた。

 

 ──1発じゃ効かなくても、沢山撃てば時間はかかってもダメージは与えられるってことね

 

 そんな事を思う麗奈。

 

「第二射、用意!」

 

 自衛隊の指揮官の声が響く。

 

 しかし、サーペンタインも黙ってはいなかった。

 

 中央の最も太い首がゆっくりと口を開く。

 

 暗い口腔の奥から、何かがざわざわと蠢いているのが見えた。

 

「あれは……」

 

 次の瞬間、無数の影が濁流のように溢れ出した。

 

「蛇だ! 小型の蛇が大量に!」

 

 誰かが叫ぶ。

 

 一穂が再びデモンズアイを通じて情報を読み取る。

 

「レア度2……蛇王眷属のリトル・サーペント、レベル1。能力は『微毒噛みつき』」

 

 ──リトル? 

 

 麗奈は目を疑った。

 

 物流センターに向かって這い寄る蛇たちは、全長にして100cmほどもある。

 

 サイズ感にしてアオダイショウといったところか。

 

 鱗は緑色の鈍い光沢を放っている。

 

 フェンスなど意味をなさない。

 

 するすると金網を登り、窓ガラスを突き破り、換気口からも侵入してくる。

 

「建物内に入られた! 覚醒者の皆さん、内部防衛をお願いします!」

 

 自衛隊員の切迫した声が響く。

 

 麗奈は即座に動いた。

 

「くまっち、近づいてきそうな蛇がいたらやっちゃって!」

 

 銀色の鎧のような毛皮を持つ巨大な熊は、低く唸り声を上げる。

 

 まるで「俺に任せろ」とでも言わんばかりだ。

 

 そして最初に窓から侵入してきたリトル・サーペントに、アーマード・ベアが前脚を振り下ろす。

 

 鋭い爪が蛇の胴体を捉えるが──。

 

「硬い……!」

 

 麗奈が驚く。

 

 レア度2とはいえ、リトル・サーペントの鱗は予想以上に頑丈だった。

 

 アーマード・ベアの爪で貫けないほどではないが、それでも硬質のゴムを貫いたような感覚だ。

 

 ()()()()にはそれが分かる。

 

 そうして群がる蛇の群れ。

 

 毒牙がアーマード・ベアの肩口に食い込む。

 

 が、銀の毛皮が牙を弾く。

 

 ──くまっちは大丈夫、だけど……

 

 麗奈は表情を一瞬顰める。

 

 アーマード・ベアから伝わってきた感覚は、リトル・サーペントの攻撃力は決して弱いものではなかった。

 

 牙の先から垂れる毒液は、アーマード・ベアの白く頑強な毛皮を僅かにどす黒く変色させている。

 

 戦闘向きではないモンスターはもちろん、生身の一般人ならとても耐えられないだろう。

 

「きゃあああ!」

 

 悲鳴が上がる。

 

 見ると、一般の避難民に蛇が迫っていた。

 

 竹田のプラントウィップが必死に蛇を絡め取ろうとするが──。

 

「く……重い! 引き剥がせない!」

 

 蛇の力は、プラントウィップでは制御しきれない。

 

 その時──。

 

「リリ=パティ、撃って!」

 

 凛とした女性の声が響いた。

 

 現れたのは手のひらに乗るほどの小さな少女たちだった。

 

 数十人はいるだろうか、皆が小弓を構えている。

 

 そうして小さな矢が一斉に放たれ、蛇の目や口の中など、鱗で守られていない部分を正確に狙い撃つ。

 

 蛇が苦痛に身をよじらせ、避難民から離れた。

 

「助かりました!」

 

 麗奈が声の主を見ると、若い女性自衛隊員が立っていた。

 

 迷彩服に身を包み、きりっとした顔立ちをしている。

 

「日山千夏三曹です。私も覚醒者なんです」

 

 ──『レア度3/群れ集う狩精・リリ=パティ/レベル1』

 

 麗奈の視界にステータスが浮かぶ。

 

 一本一本の威力は小さいが、数と精密さで急所を狙い撃つ戦法は見事だった。

 

「すごい……的確ですね」

 

「ありがとうございます。でも長時間は持ちません。彼女たち一人一人はか弱く、数と数で対応するのはかなり厳しいですから」

 

 日山が冷静に状況を説明する。

 

「皆さんの召喚モンスターと連携をしましょう」

 

「そうですね、私のくまっちなら囮になれます。群がってこられても大丈夫です」

 

「くまっち……アーマード・ベアの名前ですね。かわいいです」

 

 日山がいうと麗奈は少し照れるようにはにかみ、すぐに表情を切り替える。

 

「ではくまっちさんに囮になってもらって、群がる蛇をほかの召喚モンスターが倒すという感じにしましょう」

 

 麗奈や日山以外にも、少数だが戦闘向けのモンスターを召喚できた者はいる。

 

「いいですね、でも私たちだけだと──」

 

 麗奈が言いたいのは、要するに囮によって多くの蛇を集めてそれを倒すという作戦自体は良いが、囮となるモンスターがアーマード・ベアだけでは──という事だ。

 

 しかしその懸念はすぐに解消された。

 

「あー、あのう……儂も何かできるなら……」

 

 控えめに声をかけてきたのは老人であった。

 

 足元にはゾウガメのようなモンスターがいる。

 

 ──『レア度2/歴戦の老盾シールド・タートル/レベル3』

 

「囮とかは無理だと思うんだけど、パワーアップとか出来るっぽいよ~」

 

 と声をかけて来るのは、20代半ばとみられる水商売風の女。

 

 ──『レア度3/浄化されし小魔樹ザックーム/レベル1』

 

 戦闘には向かないが、支援やいわゆるタンク向けのモンスターの覚醒者たちだ。

 

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