転生したら滅却師だった件   作:抹茶オレン

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いつもの倍くらいあります。


2人の調停者と光の帝国

 ユリウスとギィは上空でミリムと相対していた。ミリムの様子は少し汚れているくらいで魔素量は減るどころか増えている。

 

 ミリムの周囲の空間は歪み始めている、空は雷が轟いており、大地は揺れ、近くの火山が噴火している。天変地異の言葉がこれほど似合うシチュエーションはないだろう。

 

 もし、こんな状況を見ている一般人がいたら上空に佇む3人は間違いなく、神のように見えていただろう。それ程までに状況は混沌と化していた。

 

「なぁギィ、こんな状況で言うことじゃないと思うんだが」

 

「どうした? 勿体振らずに早く言え。いつミリムが襲ってきてもおかしくないんだぞ」

 

 ミリムは俺とギィどちらを狙うのか迷っているようでその姿はどちらの獲物を捕食するか迷っている肉食獣の様だった。

 

「さっきヴェルザードがすごい目で俺の事見てきたんだけど、あれ何?」

 

「あー気にすんな……」

 

 考えたくないのか、ギィから歯切れの悪い返事が返ってくる。

 

 ミリムとの戦闘を変わる時のヴェルザードの表情はそれはもうすごかった。いや今考えるのは止めよう集中出来ない。

 

「じゃあ忘れる」

 

「そうしろ、来るぞ」

 

 どうやらミリムはギィに攻撃する事に決めたようでギィに襲いかかるが、それにギィは冷静にいなすように躱した。2人から溢れ出るエネルギーが周囲の空間に影響を及ぼし始める。

 

聖隷(スクラヴェライ)

 

 俺は周囲の魔素の分解を強化し霊子を絶対隷属させる。ミリムとギィの魔素も分解するため、かなりの負担がかかるが、全力で周囲に霊子の矢羽根を造る。余分な霊子は手足を霊子の鎧で覆った。

 

 霊子の矢羽根を操りミリムに霊視光線を浴びせるがまるで効いた様子はない。単純に俺の出力不足もあるだろうが、ミリムが硬すぎる。

 

 仕方なく、霊視光線を顔に浴びせる。ダメージはないがかなり眩しいので、嫌がらせにはなるだろう。

 

 あくまで俺の役割は聖隷(スクラヴェライ)で魔素を分解して周囲の影響を出来る限り抑えることとギィのサポートだ。

 

 ギィのサポートに関しては、不満はあるが贅沢は言ってられない。ちなみにメイド悪魔2人は、周囲に結界を張っているらしいがどこまで意味があるのやら…………

 

「オイ! これメッチャ眩しいんだが!?」

 

「無駄口叩く暇があったら! 戦いに集中しろ!」

 

 ギィが文句を言ってくるが知ったことか、戦いながらの光量の調整なんて今の俺には出来ない。大人しく我慢してもらいたい。

 

 そんな事を思っていると、ミリムがこちら来た。流石に鬱陶しくなったか……霊子の矢羽根を掛け合わせて剣を造りミリムの蹴りを防ぐ。

 

 だがかなりの威力で、受け止められてもそのまま吹っ飛ばされてしまう。ミリムが吹っ飛ばされた俺を追い、接近してくる。

 

苦悶の環(クヴァールクライス)

 

 ミリムの周囲に大聖弓を配置し、霊子の矢を放つがミリムは避けようとしない。このままであれば直撃するだろうが直前で霊子の矢は形を変えミリムの体を霊子が拘束する。

 

 ミリムが意味がないと言わんばかりに拘束を一瞬で破壊するが、追いついたギィがミリムを殴り飛ばした。

 

「危なかったな?」

 

 ドヤ顔しながらギィが問いかけてくる。

 

「どこを見てたんだお前、あんな簡単にこっちに来させんな」

 

「間に合ったんだからいいだろ」

 

「何もよくない。こっちに負担を掛けさせるな」

 

「細かいヤツだな」

 

「いいから、作戦通りにしろ」

 

「ガァァァォァァァァァァァァ」

 

 ミリムが叫び声をあげる。声が衝撃波となって全身に襲いかかるが静血装で防御する。声だけでこの威力かとんでもないな。

 

 ミリムは荒れ狂う暴風のようにギィに攻撃を続けているがその全てをギィに軽く流されるか受け止めている。同じような攻防をすでに3時間程続けていた。

 

 戦っている時は気づかなかったがギィの技は洗練されている。ミリムに技もへったくれもないとはいえ、魔素量が3倍近く上のミリム相手によくやるものだ。そろそろ精霊女王が来てもいい頃合いだが

 このままいけば問題ないが…………

 

 しかし事態は突然訪れた。

 

「嘘だろ……コレ……」

 

 ミリムはギィとの距離が離れた隙に、巨大なエネルギーの塊を生み出した。それは炸裂すれば大陸の半分は消し飛ぶ程のエネルギーを内包していた。

 

「どうする?」

 

 ギィがどこか楽しげに聞いてくる。コイツはやっぱり俺を試してる。こんな状況で余裕なのは、アレを防ぐ手段があるからだろう。

 

 わざわざ聞く辺り、俺の判断が気になるのか、それとも別の目的があるのか、まぁ今そんなことを考えても仕方ない。コイツに頼るのは癪だしな。

 

「当然、防ぐ」

 

「どうやってやるつもりだ? アレに対抗するのは大変だぞ?」

 

 ギィはニヤニヤとウザい顔を浮かべながら聞いてくる。だが俺はそれを一蹴する。

 

「黙って見てろ」

 

 全知全能(ジ・オールマイティー)を使ってコレを防ぐのは今の俺には無理だ。単純な斬撃や拳などであれば、未来の改変は容易い。

 だが大陸の半分を消滅させるような攻撃は改変の規模が大きすぎる。

 

 要は俺の実力不足のせいで未来改変で解決は不可能ってこと。

 

 これからやるのは頭の悪い力技だ。しかもよりにもよって、魔素を生み出し続ける事が出来る相手にだ。馬鹿げてるとしか言いようがないが今の俺にはこれしか出来ない。

 

 

 無数の霊子の矢羽根を大きな羽にしミリムの周囲を囲うように等間隔に配置する。霊子の羽はミリムの周囲を回り始め、一部の羽がミリムの体を拘束する。

 

 結界のように構築した無数の羽の一つ一つが周囲の魔素を分解し、霊子を跡形もなく剥奪する(アーツ)

 

「フェーダーツヴィンガー」

 

 あっという間に巨大なエネルギー弾を分解し始めたが、ミリムの抵抗が大きい。

 原因はミリムの究極能力(アルティメットスキル)憤怒之王(サタナエル)』にある。権能は魔素増殖炉。ミリムは生きている限り無限に魔素を生成する事でき、フェーダーツヴィンガーと拮抗していたのだ。

 

「グッ、クッソ思ったより抵抗が強い」

 

 思わず悪態をつくがそうも言って慣れない。フェーダーツヴィンガーは聖隷を一点に特化させた技だ。今の俺にこれ以上の対抗手段はない。

 

 ギィが動かない以上、俺が止めないと大陸は終わる。俺は力を振り絞って霊子剥奪を強化する。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■」

 

 ミリムの苦しむ声が聞こえる。こちらが押し勝ったようだ。その事実に安心すると力が抜け、俺の意識は暗転した。

 

 

 

 

 

「期待以上だな。まさかミリムの『憤怒之王(サタナエル)』相手に力勝負で勝つとはな」

 

 気絶し落下しそうになったユリウスを抱えたのはギィだった。ギィはすでにミザリーから精霊女王ラミリスが近くに来ていることを知っており、あえてユリウスに黙っていた。ひとえにユリウスの力が見たかったからだ。結果は期待以上だった。

 

 ギィは嬉しそうにユリウスの顔を見る。似てないはずの親友とユリウスを思わず重ねてしまう。

 

「まぁ後はこっちでやるから、休んでな」

 

 

 

 

 

 

 

 俺は、いい匂いがして目が覚めた。目の前には赤髪の美女がいる。初めて会う美女だったが似てないはずのギィを思い出す。 

 

 というか、なんで目の前に顔がある? 

 

「よぉ、目は覚めたか? どうだ美女の膝枕は元気が出るだろ?」

 

 何故か俺は膝枕をされていた。急いで起き上がると赤髪の女はニヤニヤしながら聞いてきた。

 

「それで感想は?」

 

「休むならベッドがよかった」

 

「つまらない感想だな。モテないぞ?」

 

「余計なお世話だ。というか誰?」

 

「ん? あぁ知らないのか、なるほどな」

 

 赤髪の女は良いことを聞いたと言って、またニヤニヤこちらを見ている。その顔はギィを思い出すからやめてほしい。

 

「ここはどこなんだ?」

 

「ここは白氷宮、ワタシの城だよ。オマエが気絶して3日ほど経ってる」

 

「戦いが終わったのか?」

 

「あぁ、精霊女王ラミリスが無事にミリムの暴走を納めた」

 

 なんとか無事に終わったようだ。俺はその事実に安堵するが途中で気絶したことに悔しさを覚える。まぁそれは別の問題なので今は飲み込む。

 

「なんで俺はここに?」

 

「気絶したお前をここに連れてきたんだよ。感謝しろよ?」

 

 そうして赤髪の女と話していると部屋のドアがノックされる。入ってきたのは緑髪のメイド悪魔だった。

 

「朝食の用意が出来ました。いかがなされますか?」

 

「だそうだ。10日近く何にも食べてないかったんだ精神生命体になったとはいえ、まだ食事も睡眠もまだいるだろう?」

 

「ん? 10日?」

 

「途中で5日、最後ので3日近く気絶してたんだよお前は」

 

 そんなに気絶してたのか俺は、知らない間にそんな時間が経過しているとは知らずに絶句する。今すぐ帝国跡地に戻ってしなければいけない事があるが、流石に腹が減った。今は素直に何か食べておくべきか。

 

「貰っていいのか?」

 

「客人だからな」

 

「俺、貴方と会ったことないと思うけど」

 

「挨拶は食事が終わってからだ。行くぞ」

 

 メイド悪魔に案内され、城内食堂で朝食をとる。赤髪の女はさっきからこちらをずっと見てくるので食事に集中出来ない。赤髪の女はどこかギィに似ている気がする兄妹だったりするのだろか? そもそも悪魔に兄妹っているのか? 

 

 そんな事を考えながら食事を終えると、赤髪の女が口を開く。

 

「さて、食事も終わったことだし挨拶といこうか」

 

「俺はユリウスだ。苗字は捨てた。これからはユリウス・ベルツと名乗る」

 

「そうか。オレはギィ・クリムゾンだ。よろしくなユリウス?」

 

 赤髪の女が赤髪の青年になりながら挨拶をする。その男を俺は知っていた。この前殺し合ったヤツの顔だ忘れるわけもない。

 

 この時の俺は、苦虫を100匹を同時に噛み潰した顔をしていただろう。綺麗な人だなと思ってた人に苦手なヤツが変身していたのだから当然だろう。

 

「趣味が悪いぞ」

 

「お前が勝手に勘違いしただけだ。悪魔に性別はないからな。オレは男を好んで使っているが、女だってなれるさ」

 

「俺の感謝の気持ちを返せ」

 

「オイオイ、どっちにしろお前を介抱したのはオレだぜ? 少しは感謝したっていいんじゃないか?」

 

「そうだな、食事を用意してくれた人には感謝することにするよ」

 

「そんなにオレに感謝するのがイヤなのかよ……」

 

 ギィが呆れたように言うが、なんで殺し合って仲良く食事がとれると思ってるんだコイツ……

 

 自分でもわかってる。ギィに苦手意識があるのは俺がこっ酷く負けたせいだ。その後急に馴れ馴れしくしてくるのだから余計に苦手になるに決まってる。

 

「まぁちょうどいい。元々お前とは話す事があったんだ」

 

「オレにか? なんだよ言ってみろ」

 

「その前に俺が気絶した後について話してくれ」

 

「いいぜ。元から説明するつもりだったしな」

 

 その後の説明をギィから受ける。なんとかミリム・ナーヴァの暴走は精霊女王ラミリスが抑えたらしく、その後はミリムが暴走した後、行方不明になっていた精霊竜を捜索したが残念ながら混沌竜へと変質しており、封印するしか無かったそうだ。

 

「なるほど、西側の大陸はどうなった?」

 

「オレたちの魔力の影響で砂漠化して魔素の暴風が吹き荒れているな。しかもだんだんと砂漠化が広がって来ている」

 

「そうか」

 

 やっぱり完全に防ぎきれなかったかだとするとやっぱりアレは必要かもな。

 

 そう1人で考えているとギィが話を進めたいのかこちらに視線を向けてくる。

 

「まだ被害は抑えられたほうだぜ? 最北西端の場所は完全に砂漠化したがオマエの帝国はまだのはずだ」

 

「なら充分な成果だろう。頑張った甲斐があったさ」

 

「あぁ、いい忘れた。そういやラミリスのやつが精霊をお前にやってたぞ?」

 

「は?」

 

「なんでも勇者の資格があるそうだぜ。良かったな?」

 

「ついでのように言うことじゃないだろ……これ……」

 

 ギィからとんでもない爆弾をぶん投げられた。俺は思わず頭を抑えてしまう。

 

「で? そっちの話って言うのはなんだ?」

 

 ギィが真剣な様子で聞いてくる。取引は2回目だが今回のは俺の今後の行動に大きく関わる話だ。俺は大きく息を吸って、息を整える。

 

「単刀直入に言う。俺も調停者になる」

 

 その言葉に先程とギィの雰囲気が変わり魔王に相応しい圧をかけてくる。

 

「何? 調停者の役割がどういう意味を持つのか分かっていってるのか?」

 

「わかってる。その説明も今からする」

 

 そう言うとギィは聞く姿勢をとってくれた。最悪即断られるのではないかと思ったが話は聞いてくれるらしい。ひとまず第一関門突破だ。

 

「今回の件、世界のことを考えるならミリム・ナーヴァは殺すべきだった。アレの力は暴走すれば世界を簡単に壊しかねない」

 

「かといってギィ、お前に調停者として自覚を持ってミリムを殺せなんて言うつもりはない。だから役割を分担しよう」

 

「分担?」

 

「ギィが世界に悪影響を及ぼす人を、俺が世界に悪影響を及ぼす魔物を間引く。そして、お互いのやり方に手出しはしないこと」

 

「ミリムの暴走を事前に止められなかったのは、情報不足が原因だろ? お前1人の調停者じゃあ致命的な状況になって初めて気づくなんてこともある。それじゃあ遅すぎる」

 

 そう今回の事件は、ギィが事前に気づいていれば止めることが出来たはずだ。ギィにも情報網があるだろうが、世界全体をカバー出来るわけじゃないだろう。それに知り合いだから甘い対応をとって世界が滅びましたなんてオチはあまりにも笑えない。

 

「言いたいことはわかった。ユリウスの言うことに一理あるのは認めよう。だがな、どうしてオマエが調停者になる? 使命感か? それとも正義感? そこをはっきりさせないと認められないな」

 

 ギィがとんでもない圧を発しながら聞いてくる。

 

「夢のためだ」

 

「夢?」

 

「俺は人類を信じている。魔王に調停者なんてやってもらわずとも、神なんていなくとも、人類は自分たちだけで前に進む事が出来ると信じている」

 

「ならなんで自分で支配しない。調停者にならずとも王になれば平和は作れるぞ?」

 

「平和が欲しいわけじゃない。平和も行き過ぎれば堕落する。

 俺が支配しても平和に出来ても新しい可能性は生まれない。俺が作ったシステムの中で型に嵌った奴が生まれるだけだ。

 人は争い、競う事で進化するそのため必要なのは支配じゃない。ある程度の自由だ」

 

「それだとオレが邪魔なんじゃないか?」

 

「何もせずとも、魔王を倒す勇者はいずれ現れる。人類がいる限りな」

 

 そう言いきった俺にギィは盛大に笑った。気分が良いと言わんばかりにそれはもう盛大に、笑いが収まると俺を見て言い放つ

 

「いいぜ、やってみろ調停者。その道は楽じゃないぞ?」

 

「やり遂げるさ、そのための力なんだ」

 

 こうして俺とギィの取引は成立した。俺が魔物をギィが人から世界を守る調停者としての役割を果たす。その道はギィの言った通り困難な道だろう。だから俺はどんな犠牲を払ってでも夢を叶えると誓った。そして俺は今から夢の礎を造りに行くのだ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 帝都の崩壊からすでに10日以上経っている。幸い、帝国は広く一部の地域は無事に残っていた。だが皇帝と王妃は死に町のほとんどがも破壊されてしまっては国としては終わりと言っていいだろう。

 

 まだ一部の地域が残っただけでも帝国は幸運だった。ほとんどの国は跡形もなくなった。偶然生き残った人々は一抹の希望を持って異常気象が起きていた超魔導大国ではなく、帝国を目指した。

 

 だが壊れた帝都を見て絶望する。もはや行く先すら失った人々は群れるように帝都に集まった。幸い帝国の辺境伯が民たちをまとめ食料などの支給をしていたが人が徐々に集まるにつれて限界が来た。

 

 崩壊した帝都で急造の家の部屋で辺境伯とキルゲが話していた。

 

「辺境伯殿、幸い今は冬ではありませんので森の食料は豊富です」

 

「キルゲ、それでは到底足りん。難民は10万はいるのだぞ?」

 

「わかっております。なので狩……」

 

 何か言いかけたキルゲが唐突に口を閉ざし、ある方向に剣を向けて警戒する。キルゲの向いた方向を見るとそこには立派な扉があった。あり得ない光景に言葉を失っていると、扉が開く。そこにはメイドと行方不明になったユリウス様がいた。

 

「それでは、お気をつけて。ギィ様も期待しておりましたが私個人としても応援させていただきます」

 

「ギィはともかく、ミザリーに応援されるようなことしたっけ?」

 

「えぇユリウス様はそれだけの偉業をなしたかと」

 

「応援は素直に受け取っておくよ。ありがとう送ってくれて」

 

 ユリウス様はメイドと楽しそうに話していたが、メイドが扉に入ると扉は消えた。

 

「ご無事でなりよりです。皇子」

 

「キルゲか。無事だったのだな」

 

「えぇ、私だけですが無事、帰還致しました」

 

「それは良かった。早速で悪いがドーラとエレナを集めてくれ」

 

「かしこまりました」

 

 キルゲはそう言ってすぐにドーラとエレナを呼びに部屋を出た。

 

「辺境伯、貴方にも悪いが頼みがある」

 

「なんなりと皇子」

 

「すぐに帝都にいる者をすべて集めてくれ。外に出ている者もすべてだ」

 

「かしこまりました」

 

 辺境伯は疑問も疑念もあったがそのすべてを抑えて、命令に従った。今のユリウスにはそうしなければいけないと感じる気迫があるのだ。

 

 

 

 

 3時間後、急造の部屋にユリウス、エレナ、キルゲ、ドーラがいた。ユリウスは今回の事の顛末を説明した。

 

「そんな事が……」

 

 エレナはあまりにスケールの違う話を飲み込む事が出来ないようでかなり動揺していた。キルゲとドーラは自分が何も出来なかった事を不甲斐なく思っているらしく、重々しく黙っていた。

 

「俺は国を再建するつもりだ。つまりこの国は人類が前に進むための礎になる。お前達はどうしたい? 俺に仕えるかどうかは自由に決めていい」

 

「私の主はユリウス様だと産まれた時から決まっていました。何があろうとこの命、自由にお使いください」

 

 ドーラは即答とした。ドーラは帝国に仕えていたのではなく最初からユリウスに仕えていたのだ。国が変わろうと忠誠は何も変わらなかった。

 

「ワタシも皇子、いえ陛下に忠誠を捧げ永遠に仕えましょうとも」

 

 キルゲも即答する。帝国が滅びる前からユリウスが皇帝になった時に仕えると決まっていた事だ。今更だろうとキルゲは考えていた。

 

「私は、ユリウス様の支えになりたく思います。ただそれだけです」

 

 エレナは何か迷いながらもユリウスの支えになることを選んだ。

 

「そうか、その忠誠を受け取ろう。()はお前たちに相応しい主になろう。そのために、まずは3人に()の魂を『聖文字(シュリフト)』を与えよう」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 崩れた帝都の一角に集まってきた難民や辺境伯から来た者達総勢10万人以上の人が集まっていた。人々達はなぜ集められたのかが分からずにいた。そのせいか何かが起きるのではないかと不安視する者もいる。

 

「皆の衆に話がある。つい先程、行方不明になっておられたユリウス様が帰還なされた」

 

 辺境伯の言葉に人々は混乱する。

 

 今更皇子がいるから何になるとヤジを入れる者

 

 悲報ではなく安堵する者

 

 そもそも興味のない者

 

 反応はそれぞれだった。それも仕方ないここには国も違う者がほとんどだ。他国の皇子がいるからなんだという意見はあながち間違いではない。

 

 普通、皇子1人にこの状況をどうにかするのは無理があるだろう。誰もがそう思っている。そんな状況でユリウスは空に立ち、民衆を見下ろす形で姿を現す。

 

 その瞬間、民衆は言葉を発する事が出来なかった。ユリウスから発せられる『英雄覇気』によって魅せられてしまったのだ。

 民衆が静まったのを見て、ユリウス、否。ユーハバッハは静かに口を開く。

 

「今、ここにいる者達は絶望に浸っている。

 それも当然だろう。一夜にして国が滅んだのだから、国が滅び希望に満ちている者など、そういないだろう。

 

だが笑え

 

希望に満たされていろ

 

この世界は天秤だ

 

何者かが絶望に満たされれば

 

他の何もかもが希望を宿す

 

だから絶望するな

 

これ以上のない希望に包まれていろ

 

その希望を叶えるための力は我が元にある」

 

 

 

聖唱(キルヒエンリート)

 

大聖樹(ハイリッヒバウム)

 

 

 ユリウスが右腕を上に掲げると青い光が放たれる。光はどんどんと膨張し枝分かれしていく、やがて巨大な大樹となりユリウスの背後に光の根を下ろした。

 

 その光景を一部始終見ていた民衆は目を奪われていた。誰もがその神秘的な光景に言葉が出ずにいた。

 

「私はここに光の帝国(リヒト・ライヒ)を建国し、皇帝ユーハバッハと名乗る。異論がある者は立って異論を述べよ。なければ……跪くといい」

 

 民衆は何も言わなかった。皆が一斉に跪き頭を垂れた。

 

 ある者は神と崇め

 

 ある者はその力に恐怖し

 

 ある者はその有り様に惹かれた

 

 巨大な光の大樹の前に立つ1人の皇帝に大勢の民衆が跪くその光景はまさに神話の光景であり、ここに光の帝国(リヒト・ライヒ)の歴史の1ページが始まったのだった。

 

 




第一章完!

第二章を書くためにちょっとゆっくりになります。

どこかしらでギィやエレナの幕間の話を入れようかなと思ってます。

第二章はある原作キャラとの関わりがメインです。
ヒントはエルフです。

転スラとBLEACHについてどれくらい知っていますか? 転スラ書籍版を1、BLEACHを2と表記します

  • 1と2を知っている 
  • 1は知らないが2は知っている 
  • 1は知っているが2は知らない
  • 1も知らないし2も知らない
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