転生したら滅却師だった件   作:抹茶オレン

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関係ない話ですがエルメシアの格好はシルビアの格好とほぼ同じです。


迷宮の試練

 光の帝国から出国しおよそ3週間、ユリウスとエルメシアは超魔導大国跡地付近に到着した。

 

「ひどいくらいの魔素濃度ね。ここは」

 

「しかも普段は砂嵐が起こり続けるから人どころか魔物だって近づかないだろうな」

 

 着いた時は砂嵐で何も見えなかったが、エルメシアが砂嵐を散らした事で周囲は晴天になっている。しかしかつてあった超魔導大国の様子はなく建物の跡を残し、砂に大地が覆われていた。

 

「調査するにしても砂に覆われてほとんど何もないぞこれは」

 

「一つだけあるわよ。目立つもの」

 

 そう言いながらエルメシアが指を指す方向を見ると、そこには遠くからでも見える程の巨大な大樹があった。しかしかつて見た青々とした葉に覆われた大樹の姿はなく、そこには朽ちるのを待つだけの枯れ木だった。

 

「あれがこの世界で二本のみ存在していた神樹よ」

 

 そういえば、前にきた時も案内役のエルフが神樹だとか言っていたな。しかしこの世界で二本のみ存在していたとはどういう意味なのだろうか? あれはただの樹木ではないような言い方だ。

 気になった俺はエルメシアに神樹について聞く事にした。

 

「神樹って何かすごい物なのか? それともただそう言われているだけなのか?」

 

 ユリウスの質問にエルメシアはほんの少し言い淀みながらも答える。

 

「ただの樹木ではないことは確かよ。私も詳しくは知らないのだけど何か世界にとって重要な役割を持っているのは間違いないわ」

 

「その神樹が枯れたってことは何かまずいことになるのか?」

 

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないわ」

 

 困ったな…………エルメシアの言うことが本当ならまずいかもしれない。『平和之王(ソロモン)』の権能の一つの過去の閲覧を行えば真偽を探るのも可能かもしれないが…………

 

 過去の閲覧は『全知全能(ジ・オールマイティ)』の未来視とは別ベクトルで強力な力だ。やろうと思えばありとあらゆる存在の起源や原点などがわかるだろう。だが緊急時でもないのに使うのはあまり良いことではない。

 

 やっている事は答えだけを教えてもらっているようなものだ。答えばかりを求めて自分から答えを探す事を放棄しては人として失格もいいとこだ。

 

 そもそもエルフのエルメシアが知っているのであればそれより長く生きているであろうギィが知らないはずもないだろう。そのギィが動きを見せないのであれば直近で何か起きるわけでないはずだ。

 

 にしてもエルメシアは何処でそんな情報を得たんだ? 少なくとも帝国には神樹についての情報をほとんど無かったはずだ。エルフという長命種だからだろうか? 

 情報源を知りたくはあるが何か言い淀んでいるようだし、今はやめておこう。

 

「ひとまず、神樹を調査して何もないようであればここを離れよう」

 

「そうね。何かしら残っているといいのだけど…………」

 

 そうしてエルメシアの情報源に疑問を持ちながら、ユリウス達は神樹に向かう。

 

「枯れていてもかなりでかい木だな」

 

「大きいのは遠目からでも分かっていたけど、想像以上ね……」

 

 神樹の根本は着いた2人だが、軽く1000mはあるだろう大きさに唖然としていた。

 

「枯れてはいるようだけど、この様子ならそう簡単には倒れないでしょうね」

 

 エルメシアが神樹に触れながら、様子を確かめている。

 

「そんなことがわかるのか?」

 

「かなり曖昧だけどなんとなくね」

 

 エルメシアは神樹の様子を確かめていくこと30分ほど、何やらおかしな物ががあったのかエルメシアはユリウスを呼んだ。

 

「ねぇ! ユーリ、これ自然な物だと思う?」

 

 そう言われてユリウスはエルメシアが指を指す場所を見てみるが、そこには掌程の窪みがあった。否、窪みと言うには不自然な程の綺麗なドーナツ型の窪みでさらには紋様のようなものまで掘られていた。

 

「他にはそれらしいものはなかったよな?」

 

「えぇ、ここにしか窪みはなかったわ。ここだけにこんなに綺麗な窪みがあるのは不自然でしょう?」

 

 そう言いながらエルメシアは腰からチャクラムを取り出す。そしてそれを窪みに嵌めると、神樹の一部が切り裂かれたように変形しいかにもな入口が形成された。

 

「さらっと取り出したけどさ、何そのチャクラム……」

 

「まさか私も本当に嵌るとは思わなかったのよ…………紋様が似てるから試しに嵌めてみただけよ…………本当よ?」

 

 エルメシアは必死に弁解しているが、流石に無理がある。たまたま見つけた窪みにたまたま持っていたものがピッタリ嵌るなんてまずあるものじゃない。

 

 そう思いながらエルメシアをジト目で見ていると聞いてもいないのにペラペラと話し始めた。

 

「違うのよ! 確かに怪しいけど本当に違うの! 超魔導大国はエルフの国だったし何か関係があるんじゃないかとか思ったりしてたけどまさかこんなに都合よくいくとは思わなかったの!!」

 

 必死に弁明し始めるエルメシア。ここまでの様子に信じたくなるがついこの前にコイツには騙されたばかりなので、素直に信じるつもりは一切無かった。

 

「じゃあ何処で手に入れたんだそのチャクラム。鍵になってたみたいだし、そんな物がそこら辺に転がっているわけでもないだろう?」

 

「…………実は…………」

 

 明らかに言い淀んでいるエルメシアだが、ついに覚悟を決めたのか意を決して話始めた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「つまりお前は今、家出中でその時に母親の大事にしていたチャクラムを持ってきていたと?」

 

「ハイ、ソノトオリデス」

 

「馬鹿だろお前……」

 

「馬鹿って何よ! アレはママが悪いのよ!!」

 

 アレとは何のことかは知らないがおそらくは家出のきっかけなのだろう。喧嘩でもしたのか? ツッコんでも良いことはないので詳しくは聞かないようにしよう。

 というかこれは情報源について探るチャンスか? 今聞くのは不自然にはならないはずだ。

 

「で? お前の母親はチャクラムについて何か言ってなかったのか?」

 

「いずれ私にくれるとは言ってたのよ? 自分には使えないからって」

 

「神樹については?」

 

「世界にとって大事な役割を持つ神樹の一つが超魔導大国にあったとは言ってたけど、チャクラムが関係してるとは何も言ってなかったわ…………」

 

 エルメシアが落ち込んだ様子で話す様子をみながらユリウスは今後のことについて考える。

 

 エルメシアの情報源が母親なのは確定したが神樹とチャクラムの関係はわからずじまいか……このまま進まない選択肢はない。周囲もすでに探索したが特段何かあったわけではない。

 

 チャクラムはすでに外してはいるが、入口は未だに閉じる様子を見せない。入口はこのままなのかそれとも時間経過で閉じるのかはわからないが、閉じるのであれば進むべきだろう。エルメシアが俺を罠に嵌めようとしている可能性はこの際考慮しない。流石にもっと手段があるだろうし、何よりエルメシアから害意や殺意は感じない。

 

「あんまり納得はいってないが考えたってしょうがないし、とりあえず進むか」

 

「そうね…………チャクラムについてはママにいつか聞くとして、やっぱり気になるもの」

 

 いくつかの疑問を抱えつつもユリウスとエルメシアは神樹の内部へと進むのであった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 と進んだはいいものの……

 

「ハァ……なんだよここ……」

 

「言わないでよ……考えないようにしてるんだから……」

 

「現実逃避しても何も変わらないぞ」

 

「そんなのわかってるわよ!! わざわざ言葉にしなくてもいいでしょう!?」

 

 

絶賛! 迷子中であった!! 

 

 

 すでに神樹内部入ってからおおよそ一ヶ月は経過していた。その間、天井から地面、壁に至っても太い蔓のようなものに覆われた薄暗い迷宮を歩き続けていた。

 

「なぁ本当に進んでるのかこれ?」

 

「魔法で同じ場所は進まないようにしているし、マッピングだってちゃんとしてるわよ。ここが広すぎる上にずっと同じ光景だから一向に進んだように感じないだけよ」

 

「徐々に下に向かっていっているのだけはわかるけど、こうも同じ光景が続くだけでこんなに辛いのか……」

 

「ショートカットしようとしても蔓は再生するし再生するたびに迷宮が変化するから素直に進むしかないわ」

 

「わかってるが長すぎだろ。誰だよこれ作ったやつ絶対性格悪いぞ……」

 

「それについては激しく同意するわ……」

 

 ユリウスとエルメシアは悪態を吐きつつ、変わらない様子を見せない迷宮を進んでいく。それから半日ほどの時間が経ち、ようやく終わりが見えてきていた。

 

「この先か?」

 

「えぇ、この先は広い空間になっているはずよ」

 

「今まで広い空間なんて一つもなかったよな?」

 

「そうね。ここまでは全て狭い通路しかなかった。なのに広い空間があるということは……」

 

「ナニカがあるってことだよな」

 

「可能性は高いわね。罠か宝かは分からないけど」

 

 現在、ユリウスとエルメシアは岩で出来た巨大な扉の前にいた。2人はこの先に何かあることをそしてここが迷宮で一番下の階層であることもわかっていた。

 

「警戒しろよ。ここまで何もないのは明らかに不自然だ」

 

「わかってるわ。入口が隠されているのに中は手付かずなんて変だもの」

 

 ユリウスが巨大な扉を開けるとそこは今までと打って変わって太い蔓で覆われておらず、周囲は大理石のように綺麗な岩で埋め尽くされた円状の空間だった。

 

 壁際には白い柱が等間隔で建っていて、天井と地面の端には青い炎が燃え盛っていた。奥には装飾された綺麗な門がありその近くの柱の前に他の柱にはない石像が二つあるだけだった。

 

「思ったより何もないな…………」

 

「おかしいわね……」

 

 エルメシアが緊張したように疑念の声をあげる。ユリウスはそんなエルメシアの様子に疑問を覚えた。

 

「おかしいって何がだ? 確かに今までとは随分と違うデザインだが」

 

「そうじゃないのよ……私は今までこの迷宮は超魔導大国がつまりはエルフが作ったものだと思ってた。だけどおかしいわこの建築のデザインはどちらかというとドワーフが好むようなデザインよ

 ここは間違いなく迷宮の最深部のはず、だからデザインにもそれ相応のこだわりがあってもおかしくないのに……」

 

「つまり、この迷宮はエルフが作ったものではないってことか?」

 

「少なくともここはエルフが作ったものとは思えないわね……」

 

「その予想があってるとして、どうしてそんな迷宮がエルフの国の下にある?」

 

 ユリウスの疑念に嫌な予感を覚える2人だが、迷宮はそんな2人に考える時間を与えない。

 

 突如、2人の背後にあった扉が勢いよく閉まる。それと同時に天井と地面の炎が大きくなり部屋全体が青く照らされる。

 

「まずいわね。私の予想だとこの迷宮は超魔導大国以前からあったものよ……」

 

「それって何年前だよ」

 

「少なくとも数千年前ね。長ければ数万年かしら?」

 

「ふざけてるな」

 

 ユリウスとエルメシアはあまりにも前に存在していたという事実に思わず呆れてしまう。

 

 すると2人の前の門にあった二つの石像が崩れ始め、中にいたナニカが出てくるのは悪魔のような姿をしている化け物だった。

 

 1体は杖を持った小柄な老人のような姿だが髪は緑で肌は薄紫、結膜は黒く染まっており額には黒い紋様のようなものがある。その上コウモリのような緑色の翼が背中から生えていた。

 

 もう1体は長いちょび髭の生えた細身な男だが長くピンクに近い赤髪で肌は白に近い水色、手には闇のように黒い直剣を二本持っており結膜は黒く背中からはコウモリのような青い翼が生えている。

 

「杖を持った奴はお願いねユーリ」

 

「そっちは任せて良いのか?」

 

「当然でしょ? 負ける気なんかないわ」

 

「それは良かった」

 

 ユリウスとエルメシアはなんてこともないように軽口を交わしながら戦闘態勢をとる。

 

 

 迷宮最深部の試練が始まった。

 

 





超魔導大国の神樹は本作品のオリジナルです。

あと今回出てきた敵キャラはモデルになっているキャラがいます。

転スラとBLEACHについてどれくらい知っていますか? 転スラ書籍版を1、BLEACHを2と表記します

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