転生したら滅却師だった件   作:抹茶オレン

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ボス戦も第二形態で2章も佳境です。

ちなみに原初の魔人の存在値は現状は6300万です。




ユリウスとユーハバッハ

 閃光と衝撃が部屋全体を駆け巡る。すでに広い部屋は戦闘の影響でボロボロだ。そんななかでユリウスと原初の魔人が目にも見えない速さで戦っていた。

 

「いいぞ! これが可能性か!! 人はまだ見捨てられたわけではなかった!!!」

 

 ユリウスの袈裟斬りを右上手の直剣で受けながら原初の魔人は興奮したように叫ぶ。

 

「何言ってんだ! さっきから!!」

 

 さっきから意味のわからない事を原初の魔人がユリウスを見て言い続けている。こちらを撹乱するために適当に言っている可能性も考えたが、言葉から伝わってくる激情がそれを否定する。

 

 だからこそユリウスは混乱していた。原初の魔人が何を考えているのかわからないことを不気味に感じていた。ユリウスはネガティブな考えを振り払いながら原初の魔人に飛び掛かり攻撃する。

 

 ユリウスの袈裟斬りを右上手の直剣で受けた原初の魔人は、空中にいるユリウスに空いている左下手の直剣で左切り上げで斬りかかる。

 

 ユリウスは左切り上げを剣で受けながら、壁まで後ろ吹っ飛ぶがその勢いを利用して飛廉脚で空中を駆け抜ける。

 

聖剣舞(シュヴァート・タンゼン)

 

 青く光る剣がユリウスの周囲を回るように現れ、原初の魔人へと殺到する。原初の魔人は獅子の足で走りながらも左上手の盾で剣を防ぎながら、二本の直剣で打ち落とす。

 

 コイツ、明らかに動きがおかしい……あの巨体でさっきよりもさらに速い上に力も増している。しかも腕は四本で盾まで持っていて攻守に隙がない……

 

 ユリウスが攻防手で得た情報を整理していると、原初の魔人がユリウスの方向へ一直線に迫る。10m以上の巨体が何もなければ1秒とかからずに接近できるスピードで突進してくるのだ。巻き込まれれば静血装を使っても重傷では済まないかもしれない。

 

 それほどまでに原初の魔人のスピードとパワーは異常だった。ユリウスはそのことを把握しつつも飛廉脚で空中を滑るようにして突進を避ける。

 

 だが突進は終わらない。それはつまり途中で方向転換できるほどのスピードしか、原初の魔人は出していないということになる。それですら飛廉脚で距離をとるユリウスに迫りつつある。基本スペックでは、ユリウスどころかギィすらも上回っているかもしれない。

 

 ついにユリウスに追いついた原初の魔人はさっきのお返しと言わんばかりに右上手の直剣でユリウスを真っ二つにしようと襲いかかる。

 

「ぐッ……」

 

 ユリウスは両手で持った剣で受けるが、空中で受けきれずに地面に叩きつけられるような形で直剣を受け止めた。しかし、両手で受けきれずに地面はどんどん陥没していく。

 

 だが原初の魔人はさらに追い打ちをかける。左下手の直剣で腕を上げ右上手の直剣を受け止めているユリウスの無防備となった胴に

 水平斬りを浴びせようとしてくる。

 

 それを察したユリウスだが、全力で剣を受け止めている状態で片手を自由にすることは出来ない。それをわかっているユリウスは、原初の魔人の背に大聖弓で攻撃する。まともに受けた原初の魔人に効いている様子はない。だが、一瞬だけ力が緩む。

 

聖域礼賛(ザンクト・ツヴィンガー)!」

 

 ユリウスは力が緩んだ一瞬で右上手の直剣を弾き、青き聖域を展開する。聖域が展開され、地面から突き出た光の柱がユリウス迫らんとしていた水平斬りを防ぐ。そのまま聖域から光が溢れ、周囲は青い閃光に包まれた。

 

 急いで距離をとったユリウスは息を整えながら、原初の魔人を見据える。原初の魔人は焼け焦げたように体から煙を発している。聖域礼賛は聖属性を持った攻防一体の極大防御のため魔を持つ相手には大きなダメージが入るはずだった。

 原初の魔人はダメージは入っているようだが、戦闘には大きな影響はないように見える。

 

 原初の魔人はとにかく隙がない。原初の魔人は特殊なスキルを使って翻弄するわけではない。ただ硬く、ただ速く、ただ強い。それだけのシンプルな強さだった。からくりがあるタイプなギミックならそれを見抜き対策すればいい。だがただ強いだけじゃあ根本的な対策がない。

 

 ユリウスが原初の魔人の対策を考えていると、原初の魔人が楽しそうに話しかけてきた。

 

「よく、我の攻撃を受けきれるものだ」

 

「似たような脳筋と戦ったことがあったんだよ」

 

「クックッ、良いぞ。なら次は貴様の選択を試そう」

 

 そう言って原初の魔人は獅子の前足を大きく上げ地面へと踏み下ろした。すると部屋全体の地面が割れ、大きな地震のように揺れる。ユリウスは揺れに耐えながら奇襲に備えていると原初の魔人は驚きの行動にでた。

 

獄炎極(ヘルブレイズ・オメガ)

 

 原初の魔人は杖を向け黒い獄炎を放つ。だがユリウスに来る攻撃と思いきや獄炎は壁際にいたエルメシアへと向かう。エルメシアは魔法で防御結界を張りながら避けようとするが、ユリウスはその獄炎に嫌な予感を覚えていた。

 

 根拠のないただの直感でしかなかったが、それは当たっていた。エルメシアは獄炎を避けることに成功したがエルメシアがいるのは壁際、獄炎が壁に当たると大きく燃え上がり爆発するようにエルメシアを巻き込む。エルメシアは巻き込まれながらもいち早く距離をとったがその有様は酷かった。

 全身の肌は見るも無残に火傷を負い、服の一部は焼け落ちていた。

 

 原初の魔人はユリウスを完全に無視し、エルメシアに迫る。ユリウスは急いでエルメシアの下へ向かうが一歩速く原初の魔人が接近し、エルメシアを真っ二つにせんと直剣を振り下ろす。

 

 だめだ! 間に合わないッ…………

 

 ユリウスは出遅れた上に単純なスピードでは、原初の魔人が上だ。まず間違いなく間に合わず、このままではエルメシアは死んでしまう。

 

 

 エルメシアが死ぬ。

 

 

 その考えがの頭に過ぎった時、ユリウスは咄嗟に眼を開いた。

 

 

「なに?」

 

 原初の魔人がエルメシアを真っ二つにする……はずだった。だが、真っ二つした肉塊はそこにはなく、それどころかエルメシアの姿すらそこにはなかった。

 

「どうなっている?」

 

 原初の魔人は周囲を見渡すとユリウスがエルメシアを横抱きで抱えていた。だが原初の魔人にとってエルメシアの場所などどうでもよかった。それよりも気になったのはユリウスの瞳だった。

 

 元々紅い瞳は目立ったが、その瞳が3つになっていた。明らかな変化であり、ユリウスがなにかをしたのは間違いなかった。

 

「試してみるか」

 

 原初の魔人はそう言って、ユリウス達に杖を向け己の使う魔法の中で最も高い破壊力を持つ技を放つ。

 

崩黒壊箱(ブラック・コラプス)

 

 地面が揺れ、黒い粒子がユリウス達の周りを囲み、抵抗する間もなく2人は漆黒の箱に囚われた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 漆黒の箱に囚われたユリウス達に、エネルギーの塊がを押し潰すかのごとく降り注ぐが『全知全能(ジ・オールマイティ)』によって、自分達にかかる影響を全て無効化していた。

 

「ユーリ…………?」

 

 ユリウスが抱えているエルメシアは消えるような声でユリウスに話しかける。

 

「ごめん。すぐに終わらせるから少し待っててくれ」

 

 ユリウスはエルメシアに視線を向けずに俯くように言うが、エルメシアからの返事が返ってこない。火傷が予想よりも酷いのかと思いエルメシアの様子を見ようと、顔を上げると返ってきたのは返事ではなく平手打ちだった。

 

 エルメシアのビンタはユリウスの頬にクリーンヒットする。ユリウスは何故ビンタされたのかわからずに頭が真っ白になるが、そんなユリウスの胸倉をエルメシアは掴み思いきり引き寄せ叫んだ。

 

「巫山戯ないで!!! さっきから何? ずっと私のことを気にして戦って! 何がごめんよ! 足手まといならハッキリ言いなさいよ!!! 庇われた挙句に謝罪までされて、どこまで私を馬鹿にしてるのよ!!!」

 

 全身に火傷を負っているとは思えない程にエルメシアは嚇怒していた。エルメシアとはすでに半年以上、旅を共にしていた。それ故にお互いの性格はある程度知っていた。だからこそ、エルメシアがここまで怒るのをユリウスは初めて見た。

 

 ユリウスは驚愕しながらも頭に出てきた言葉をそのままエルメシアへとぶつけた。

 

「じゃあ! 助けるなって言うのかよ!!」

 

「足手まといになって、負けそうになるくらいなら死んだほうがマシよ!!!」

 

「巫山戯んな!!! 何が死んだほうがマシだ! 一緒に来て負けそうだから俺に見捨てろって言うのか!!」

 

「助けるために自分の秘密をバラしてどうするのよ!」

 

 エルメシアにそう言われ、ユリウスはハッとする。言われて初めて自分の行動に気づいた。

 

「私は、足手まといになってユーリを道連れにするくらいなら死ぬわ」

 

 エルメシアの言葉はハッキリとそして重々しくユリウスに伝わる。それはエルメシアの覚悟だった。

 

 エルメシアとユリウスは旅の中の短い関係のはずだ。だがユリウスはエルメシアを意識しながら戦い続けた。それは原初の魔人相手でも同じであった。

 

 エルメシアはユリウスが集団戦の経験が浅く、周りを庇う様子を察し、ユリウスに対する不満と自身に対する不甲斐なさの気持ちがあった。怪我の影響で一種の興奮状態によるものもあるが、それが積み重なり今になって爆発したのだろう。

 

 ユリウスはエルメシアの言葉に何も言い返せなくなってしまった。言いたい事はあるのだがそれを言葉にすることが出来なかった。

 

「ユーリ。今、自分の答えを出さなくてもいいの。だからこれが終わったら色々話しましょう? 今はアイツから逃げ……ないと…………」

 

 エルメシアは言葉の途中で意識を失った。すでに体は限界だったのだろう。だがエルメシアの言う通りだ。今はこの状況を打開する必要がある。

 

 それはユリウスとっては簡単なことだった。単純に今まで使わなかった力を使えばいい。今まで使わなかった理由はしっかりとあるのだが、今のユリウスにとってはどうでもいいことだった。

 

 

 

「私は私に力を与える」

 

 

 

《確認しました。

 

人類之祖(アダム)』の概念創造を発動します。対象を原初の魔人。

 

平和之王(ソロモン)』の解析により原初の魔人の力の増幅の原因は虚無崩壊を全身に循環させることによってなせるものと断定します。尚、虚無崩壊を魔法に組み合わせることで威力を増幅している模様。

 

 解析の結果、ミリム・ナーヴァが使用していた独自のエネルギーを参考に新たな概念を創造します。

 

 概念『聖霊子』の創造に成功しました。『人類之祖(アダム)』の権能に組み込みます》

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 漆黒の箱に覆われたユリウス達を見届けてすでに数分は経っていた。原初の魔人は未だ崩壊する様子を見せない箱を見ながら考えを巡らせる。

 

 崩黒破箱は自身が持つ究極の破壊エネルギーを一点に集中させ相手を閉じ込めて死ぬまでぶつける技だ。喰らえばどんな相手だろうと耐えられない絶対無比の一撃、そのはずだが、箱は崩壊する様子を見せずにいる。これは中の物が死なずにいるということ。

 

 だがあり得ないことだった。自身とて喰らえば数十秒で崩壊する一撃を数分も耐え続けることなど無理な芸当だった。

 

「先ほどの攻撃を避けた方法といい、一体何がどうなっている?」

 

「この攻撃がまるで効いていないような感覚…………まるであの時のような…………」

 

 その時、漆黒の箱は崩壊し中から何事もない様子でユリウスが現れる。

 

「なッ!?」

 

 ユリウスは死んでいるどころか傷一つ負っていなかった。その様子を見た原初の魔人は、ユリウスが何らかの方法で攻撃を無効化していることを確信した。

 

 ユリウスは原初の魔人を気にした様子はなく、気を失っているエルメシアを入り口の扉の前に置く。

 

「何をした?」

 

「……………………」

 

 ユリウスは何も答えない。ただ黙って原初の魔人に歩いて近づく。その様子に原初の魔人は困惑していた。

 

 奴に何が起きた? 先程と様子が違う。アレは怒り? どちらかといえば自暴自棄に近いような…………「なぁ」

 

 原初の魔人の考えを遮るようにユリウスが顔を上げ口を開く。

 

「何でさっきエルメシアを狙った? 戦力を減らすためってわけじゃあないんだろう?」

 

「貴様があの女を気にして戦っていたのはわかっている。我はな貴様の力だけではなく、貴様の自身を試している。故に貴様の判断を見たまでよ」

 

「やっぱり、俺のせいか」

 

「どのみち、女に気に取られて戦いづらそうな貴様を見て邪魔だとは思っていた。都合良く消す理由もあったのでな」

 

「そうか…………」

 

 ユリウスはそう言って、再び俯いた。

 

 次の瞬間、原初の魔人の左上手と左下手はユリウスによって斬り落とされていた。

 

「!?!?!?」

 

 何が起きたのか、原初の魔人は認識することすら出来なかった。だが腕が落とされたことを即座に認識し、ユリウスに杖を向ける。

 

死衝(デス・ドライブ)!」

 

 ユリウスに向かって、黒い波動が向かう。それはただの技ではなく虚無崩壊のエネルギーを乗せて放たれる一撃であり、喰らえばまず死ぬ…………はずだった。

 

「無傷!? 何が起きている!?」

 

 全知全能を使ったのではない。ユリウスは攻撃を間違いなく受けていた。何か特別なことをしたわけではない。ユリウスはただ静血装(ブルート・ヴェーネ)を使っただけだった。

 

 もちろんただ霊子で防御したのではない使ったのは聖霊子だ。聖霊子は概念創造で作り出した概念であり物質ではない。しかし、ユリウスは聖霊子を霊子と同じように扱う事が出来る。

 

 聖霊子は霊子の上位互換であり、たとえ究極の破壊エネルギーである虚無崩壊にも負けず、霊子以上の破壊力がある。

 

 ただの霊子を使っただけでも、虚無崩壊を扱う原初の魔人と張り合っていたのだ。上位互換を使えば勝負にすらならないのは道理だった。

 

聖なる道(ザンクト・ヴェーク)

 

 以前よりもさらに神々しく光る青き極光が原初の魔人へと迫る。

 

全反撃(フル・カウンター)!!!」

 

 つい先ほどと全く同じ状況だった。以前はユリウスに倍以上になって返った極光は跳ね返されることはなく原初の魔人を消し飛ばした。

 

 

「こ……れ……が……人…………類……か…………」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 それは遥か昔、まだ人類が生まれたばかりの歴史に残らない時代。

 

 その時代には滅界竜イヴァラージェという存在がいた。

 

 イヴァラージェは竜種に匹敵する力を持ちながらも知性がなく意思疎通すら困難であり、どこで生まれ、どこからやって来たのかもわからない災禍の化身であった。

 

 災禍の化身は世界を荒らしまわり、そこにいる生きとし生けるものを喰らい殺し尽くした災厄であった。かつてはギィですら殺し損ねたその化け物は、最終的に星王竜ヴェルダナーヴァによって異界に封印された。

 

 しかし、そこで話は終わらない。イヴァラージェは封印されるまでの過程でその力の一部が切り離されていた。知性がないイヴァラージェの意思によって起きたことではない。ただの偶然だった。

 

 その偶然の産物は偶然にも一人の男が見つけ、力を取り込んでしまった。

 

 男は真なる人類(ハイ・ヒューマン)という種族だった。真なる人類は人と違い、豊富な魔力を有した種族だった。

 

 しかし真なる人類を創り出した神祖トワイライト・バレンタインは真なる人類に失敗作の烙印を押した。男はその事実に絶望したがそれには理由があった。確かに真なる人類は大量の魔力を持ち優秀であった。

 

 しかし、種族のほとんどは傲慢だった。特に一番初めに創られた真なる人類、ジャヒルは自らを魔導大帝と名乗り自分以外の存在を道具としか見ていないような男だった。他の者達も似たようなものでこれでは世界がいずれ滅びかねないと調停者ギィ・クリムゾンは真なる人類のほとんどを滅ぼした。

 

 そして残った真なる人類が劣化し現在の人類になったのだった。

 

 その事実にイヴァラージェの力を取り込んだ男は耐えられなかった。これでは自分は何のために生まれてきたのだと嘆いた。その嘆きは、徐々に肥大化していき力を取り込んだはずの男は、やがてイヴァラージェの力の破滅衝動に魂ごと取り込まれてしまい、イヴァラージェと同じ災禍の化身である原初の魔人へと成り果てた。

 

 当然、同じように世界を荒らし続ければイヴァラージェと同じ末路を辿るのは道理だった。

 

「な……ぜ…………だ…………」

 

「驚いた。もう魂は完全にイヴァラージェの力に飲み込まれてしまったと思っていたよ」

 

「我らは……何故……生まれた……失敗作の烙印を押され、原初の赤に滅ぼされる種族……我らは……死ぬために……消えるために…………生まれたのではない…………」

 

「小さきものよ。ボクはね。君たちを失敗だなんて思っていないよ。確かに神祖は失敗作だと言ったし、ギィも君たちの事を嫌っている節がある。でもね、君たちだって成長出来ると思っているんだ。こうして、君がイヴァラージェの力に取り込まれて尚、魂が無事なようにね」

 

「ふざけるな……ヴェルダナーヴァ。貴様は何もしていないだろう…………」

 

「確かに君たちには何も出来ていない。でもボクがする必要はないと思うんだ」

 

「は…………?」

 

「今の君にはわからないだろう。でもね、いずれ君にもわかるよ。人の可能性はこれからなんだから。だから今は眠るといい」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「そうしてヴェルダナーヴァは、原初の魔人の魂を二つに分け封印し、世界の楔の門番にした」

 

「その通りでございます」

 

 ユリウスの言葉に跪いている赤髪の魔人が同意した。

 

「だから、配下にしてほしいって?」

 

「図々しいことは承知しています。ですがようやく、ヴェルダナーヴァの言葉の意味がわかりました。我らが求めた人類の可能性は貴方様でした」

 

「俺は真なる人類じゃないだろ」

 

「それは些細なことでございます。どちらであろうと貴方様は人類の可能性。支配され、滅ぼされるだけの人を導く存在です」

 

「儂らはただ貴方様の側に置いてくださればそれが本望。必要であれば儂らの力をお使い下さい」

 

 跪く赤髪の魔人と緑髪の魔人はそれぞれがユリウスに対する考えを述べる。

 

「さっきは普通に襲いかかってこなかったか?」

 

「結局、我らは滅界竜の力に中途半端に飲まれ、貴方様を試すような真似をしてしまいました。ですが貴方様の魂を与えられたことによって、滅界竜の力を制する事が出来ました。貴方様と仲間の女性を傷つけた罰は、どのようなものであってもお受け致します」

 

「わかった、もういい。どうであれ聖文字(シュリフト)を与えたのは俺だ。だから配下になるのは認めるし、名前を失ったのであれば後で与えてやる。だから今は1人にしてくれ」

 

「「御意」」

 

 そうして魔人達はどこかに消え、ユリウスとエルメシアだけが部屋に残った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ユリウスは意識を失っているエルメシアを背負いながら地上へとたどり着いた。外は夜で砂嵐はなくそれどころか雲一つない夜空だった。空には満天の星が広がっており、こんな時ではなかったらゆっくり見ていたいほどの綺麗な星空だった。

 

《後悔しているのですか?》

 

「『平和之王(ソロモン)』、また俺に過去を見せたな」

 

《マスターが欲していた情報だと判断したためです》

 

『平和之王』は自我に近いものを持っていた。だがそれは、今までユリウスの意思によってユリウスの奥深くに閉じこもっていた。だがミリムの時と同様に『平和之王』はユリウスに原初の魔人の過去を見せていた。

 

「俺がなぜお前が表にでないようにしてるかは、わかっているはずだ」

 

《マスターの成長を妨げる可能性があるからです》

 

「だったら……」

 

《マスターは原初の魔人の過去を知りたがっていました》

 

「…………」

 

《同時にマスターは恐れていました。2体の魔人が原初の魔人になった時に聖文字(シュリフト)を与える事ができると知りました。その状態で過去を知れば原初の魔人に同情して、救ってしまうのではないかと》

 

『平和之王』は淡々とユリウスの反応を見ることもなく淡々と話し続ける。

 

《敵を救うなど皇帝として甘すぎる。だからマスターは過去を知るのを恐れました》

 

「……………………………………」

 

《実際、マスターが過去を知った時に原初の魔人に聖文字を与え、救う可能性は非常高いです》

 

《マスターの判断は皇帝ユーハバッハとしては間違っていると言っていいでしょう》

 

《さらに……

 

 

 

 

「わかってる!!!!」

 

 

 

 

「お前に言われなくともわかってる!! あぁ知りたかったさ! 気になるような事を言うアイツ(原初の魔人)の過去を知りたかった! でも怖かった! 過去を知れば、何かと理由をつけて助けてしまうんじゃないかと思った!!」

 

 まるで癇癪を起こすように言葉を吐き出すユリウス。その言葉は静かな砂漠に木霊するかのように響く。

 

「自分で縛ったはずの『全知全能(ジ・オールマイティ)』を俺はエルメシアを助けるために使った!! 俺の力を見たエルメシアを殺したほうが良いのはわかってる!」

 

《……………………》

 

「どれも皇帝ユーハバッハとしての判断じゃない…………全部、お前が正しいよ…………」

 

「けど見捨てる事ができなかった…………エルメシアを殺す事もできない…………」

 

 それは懺悔の言葉だった。聖別(アウス・ヴェーレン)でユリウスは死んだ者達の魂を使ってでも夢を叶える事を誓った。そのための皇帝であり、光の帝国(リヒト・ライヒ)だった。

 

 だからこそ、ユリウスは皇帝として冷徹な決断をしなくてはならない。それがどんなに残酷だろうと、世界中に悪だと責められようとも変わらない。否、変わってはならない誓いだった。

 

マスター(ユリウス)は優しすぎます。だからこそ(平和之王)が発現したのです》

 

《マスター、私は貴方の為に存在しています。たとえ世界が敵になろうとも、マスターの味方であり続けます》

 

『平和之王』はそれ以降は何も言わずにユリウスの奥深くに閉じこもった。しばらくしてユリウスは星空を見上げ一人で語る。

 

「わかってるさ……お前は(ユリウス)の願いから生まれたんだから俺の想いを優先させる。でも……私は今更戻れない。戻るつもりもない。(ユーハバッハ)もまた本心なのだから」

 

 ユリウスはそう言ってエルメシアを背負い、光の帝国へと飛び立った。

 

 




3話前に似たことを言っていましたがその矛盾の結果って感じになります。
ユリウスは世の中平和なれば良いな〜とか考えながら、平和は幻想だし仮に平和になっても人類のためにはならないと考えてます。

ただユリウスは甘いので前者の考えを捨てきる事が出来ません。それをわかっていたユリウスは、皇帝ユーハバッハという名前を作り口調も変えることで区別化しようとしてました。

転スラとBLEACHについてどれくらい知っていますか? 転スラ書籍版を1、BLEACHを2と表記します

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